機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~   作:すずき 虎々

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第五話 技術改革

第5話 技術改革

 

「大尉、レイ大尉。」

 資料の山とおびただしい数のモニターの僅かな隙間から、アムロは顔の3分の1程度をのぞかせて「何か。」と一言だけ答える。

 

「グラナダの基地から、緊急の出頭命令が来てます、何をやらかしたんですか。」

 

「心当たりなんてないさ。言われたことはやってるんだ、この間だってオメガサイコミュの転用化計画書を設計図付きで提出したばかりさ。ビットだって、出力の最適化と筺体の最小化っていうオマケ付きでな。」

 

「あぁ、あれ私も見せていただきましたけど、あんなものを解析すること自体普通じゃないのに、小型化までしちゃうなんて、伊達に天才と呼ばれてはいませんね、大尉。」

 

「煽てたって何も出やしないぞ。」

 

「ちぇっ、昨日CMで見た新作のフラペチーノがおいしそうだったのに。」

 

「無事に帰ってこられたらな。僕はこのまま一旦家に戻ってから、着替えて直ぐにグラナダに向かうよ。催促のメールが来たら、もう出発したって返しておいてくれ。あぁ、あと基地のシャトルの使用申請も出しておいてくれ。」

 

「了解で~す!」

 

0084 8月 某日

 

アムロがシャアの計らいで、ジオン軍に入隊し、そのままジオニックの本社に出向してから実に5年の月日が経過していた。

少尉待遇で入隊してからすぐに、奪取したガンダムのリバースエンジニアリングにとりかかり、僅か3週間で解析に成功したのを皮切りに、ジオン公国軍で正式採用されていた機体へのフィードバック、エネルギーキャップ方式を取り入れることによるビーム兵装の小型化、新型次期主力量産機の設計変更及び開発、当時謎に包まれていた[シャロンの薔薇]と呼ばれる、この世界では開発されていないはずのサイコミュシステムの解析及び軍事転用化と、強奪したガンダムへの搭載など、入隊してからの僅か数か月で、アムロが残した成果は数え切れず、入隊後最速最年少昇進を果たし、一年戦争終戦時には中尉に昇進。つい先日、モビルスーツの骨格であるフレーム構造の革新的な技術や、次代のサイコミュシステムであるオメガサイコミュシステムの設計に成功し、試作機の建造に着手するところまでこぎ着けた功績で、大尉に昇進していた。

 

アムロは、自宅に着くと玄関の扉を開けて中に入ろうとする。すると、見慣れたパンプスが土間にあるのに気付いた。

「レクス帰っていたんだ。早かったね。」

レクスと呼ばれた女性はキッチンから顔だけ出して答える。

「アムロこそ、今日はどうしたの、こんな時間に。何か食べる。」

「いや、いい。グラナダから呼び出されたから、今から着替えて向かうよ。」

「あら、何かやらかした。」

「君までメリルと同じこと言うなよ。向こうに体がないとならない用事なんだろ。」

彼女は、アムロがサイドセブンのイチバンチコロニーで通っていた学校のクラスメートだった。イチバンチコロニー襲撃の際、避難訓練で200名の民間人が、現在はソドンと呼ばれる連邦製の強襲揚陸艦に避難していた。

アムロがシャアからその避難民のリストを見せてもらった際に、知った名前が誰もいないと落胆しかけた時、唯一見かけたのがレクス=オリバ、彼女の名前だった。

グラナダで、他の民間人と共に下ろされるはずのレクスだったが、彼女と話す機会を与えられたアムロは、彼女の両親が乗ったランチは戦闘に巻き込まれて死んだ事を聞き、身寄りのなくなった彼女を放っておくこともできず、自分がジオン軍に入隊し、ジオニック社に出向することになったと話し、自分と一緒にサイドスリーに来るかと尋ねたところ、彼女もその誘いに応じたことから、現在もアムロの家に居候しているのであった。

 

アムロは士官服に着替え終わると、鞄を持って玄関へと向かう。

「レクス、行ってくるよ。どのくらいかかるかわかったら連絡するから。」

と、同居人であるレクスに声をかけると、彼女もそれに答える。

「わかった、お土産楽しみにしているわね。あと、ご飯ちゃんと食べてね、最近全然食べてないでしょ。わかるんだから。」と言ってアムロの腹部に握った左手でグリグリと擦り付ける。

アムロは優しい表情になって「わかったよ、じゃあ行ってくる。」と言い、レクスの唇にキスをした。

玄関先で「いってらっしゃい、気を付けて。」と言っているレクスに、右手を上げて答えるアムロは、そのまま基地のシャトル発着場へと向かった。

 

グラナダに到着すると、シャトルの発着場には既に、軍の者が迎えに来ていた。

「大尉、お待ちしておりました。本部でキシリア閣下がお待ちです。」

「キシリア閣下だって?それならそうとメールに書いてくれても良いだろうに。いや、わかるけどな、それなりの書き方があるだろう。」

「申し訳ありません。閣下からの厳命でしたので。」

「それなら仕方ないが、兄弟げんかも程々にしてほしものだけどな。」

アムロは愚痴を零しながらも、用意されていた車の後部座席に乗り込む。

車内での世間話で、ここ最近の軍内部の情勢などを聞かされる中、アムロは気になる話に耳を傾けた。

「先日観測されたゼクノヴァで、残留物が発見されたとか。」

「ゼクノヴァ?大佐はまだ発見されていないのか。」

「はい。」

「シャリア・ブル中佐はまだソドンに乗って探しているのだろ?」

「そのようですが、めぼしい成果は報告されていないと聞いております。」

「大佐は生きているさ。たまに強く大佐の存在を感じることがある。」

「やはり大尉はニュータイプのような事をおっしゃいます。」

「そんな良いものじゃないさ。僕がモビルスーツに乗ったとして、大佐のような活躍なんてできっこない。キシリア閣下からも、顔を合わせるたびにパイロットになれと言われるけど、引き金を引くのが怖いパイロットなんて、死にに行くようなものじゃないか。」

アムロは元来内気で心根の優しい少年だった。青年となった今も、根本的な性格は変わっていない。

その性格故に、戦争の道具であるはずのモビルスーツ開発においても、いかに敵を効率よく排除するか、兵装の威力を上げるかという点よりも、どうすればパイロットが生還できるか、人が死なずに済むかという一点にのみ力を注ぐことで、皮肉にも、高性能なモビルスーツを生み出すことに成功していた。

そんな彼が着目したのが、一年戦争で猛威を振るった、〈MA-08〉ビグザムのIフィールドジェネレーターだった。

あのシステムを一般のモビルスーツに搭載することが出来れば、生存率が上がると考えたアムロは、システムを開放型にすることで、モビルスーツに搭載可能なサイズまで小型化することに成功していたが、今度は実体弾に対する脆弱性の問題という、大きな壁に行く手を阻まれた。

しかし、その致命的な問題までも、アムロは解決してしまう。

ビーム兵器の中でも、ビームサーベルという兵装は、加熱された金属粒子をミノフスキー粒子の幕で覆うことで、サーベルとしての形状を保つことが出来る。その技術をシールドに転用することを思いついたことで、モビルスーツ開発における技術レベルは数段進化したといえるのだ。しかもそれは、人間が危険を察知した際の脳波の波形を解析し、サイコミュデバイスによるオートコントロールで展開する、サイコミュを機体の防御システムに活用するといった、画期的なアイデアと言っても過言ではない。

あくまでも理論上はという話ではあるものの、アムロ・レイという男がジオン公国に所属したことで得られた恩恵は、僅か数年の短い時間で、数倍の技術的進歩をもたらしたのであった。

 




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