機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~   作:すずき 虎々

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第六話 光る海

第6話 光る海

 

グラナダ基地特殊機体開発研究本部

グラナダに到着したアムロは、キシリアの執務室ではなく、研究棟の7階に案内され、最奥の部屋に通された。

その部屋は、仄暗く、明かりは固定端末のモニターの光のみ、どこかかつての自身の部屋を想起させるような雰囲気を醸し出してはいるが、各机は、それぞれ機能的に整理されており、足の踏み場はしっかりと確保されている。

入口のドア向かいの壁面は全てガラス張りとなっていて、開発中のモビルスーツが見下ろせるようになっている。しかし、見渡す限り、キシリアの姿は見当たらない。

「アムロ・レイ大尉、入ります。御命令に従い出頭いたしました。」

「こっちだ。」

部屋の右奥にあるパーティションの奥から声がしたので、アムロはそのまま声の方へと進むと、パーティションの奥に、見たことのない機器が設置してあり、さらにその奥、こちらを向いた状態で、キシリア・ザビがヘルメットを脇のテーブルに置き、足を組んでオフィスチェアに座っていた。

中央に設置された機器は、機器と言っても下はただの展示用か何かの台にしか見えず、上部にはドーム状のケース。その中に浮かぶT字型の金属片が、エメラルド色に輝いていた。いや、輝いているのではなく、発光していた。それ故見たことのない機器と思ったのだが、どうやらそのT字の金属片自体が、浮遊し、発光しているように見える。

「ほんの少し前までは、ここまでではなかったのだがな。キサマが来た途端これだよ。アムロ・レイ大尉。」

「これは、只の金属ではないということですか。」

「わかるか。流石だな。現在わかっているのは、これがゼクノヴァの発生点で、発光状態でこのように回転していたということだけだが、キサマの言う通り、只光って回るだけの金属ではないということだ。現にキサマがこの部屋に入った途端、ほんのりとした発光が、このように強く発光するに至ったことを考えると。特定の人間に対して反応を示す金属だということだ。」

「これが機械という可能性は。」

「既にその辺りの解析は済ませてある、種類までは特定できなかったものの、これは紛れもなく金属片であるということだけは判明している。」

「閣下は自分にコレを見せてどうなさるおつもりですか。」

「キサマにこれを預ける。オメガサイコミュの完成に生かして見せよ。」

「つまり閣下はコレがサイコミュとの関連性がある物質であるとお考えなのですね。」

「キサマが近づいただけでこの反応なのだ、そう考えるのが妥当だろう。残念なことに今はシャリア・ブルも任務中だしな。私がこれまでに引き抜いたメンツをキサマも知っておろう。今からでも遅くはないのだぞ。」

「何度もお断り申し上げておりますが、私など戦場に出たとしても、恐ろしくて引き金を引くことなどできはしません。それくらいなら、まだ機械いじりをさせていただいた方が、より多くのパイロットの命を守ることに寄与することが出来ると考えております。拾っていただいた御恩に報いることが出来ると考えております。」

アムロは言い終えて深々と頭を下げる。

キシリアは身を乗り出して眉根を顰めると、一つ呼吸を置いてアムロに答える。

「ふん、そのような賢しい言い草は好かん、尤もらしい理屈を並べおって、貴様もシャアに似てきたのではないか。まぁよい、確かにキサマの知識と頭脳は軍に多大な貢献を果たしてはいるのは承知している。その金属の解析を急ぐことで、キサマの求めるものにも近づくのではないか。シャロンの薔薇といい、その金属といい、この世界に有るべきものではないことは確かだろう。急ぎ解析してみせよ。それが出来たのなら、パイロットへの転身は忘れてやろう。」

「了解いたしました。それでは、こちら、お預かりいたします。」

そう言うと、アムロはドーム状のケースからT字型の金属を取り出そうと、それに手を触れた。

 

刹那、アムロは七色の光の海に沈んで行くかのような感覚に襲われた。

 

かつて、シャロンの薔薇と呼ばれる、この世には存在しないはずのサイコミュ搭載型モビルアーマーに初めて触れた時と同じような、鼓膜の振動による音の伝播とは違う、脳に直接流れてくるかのような『ラ・ラ』という音と共に、時の流れが自分を絡めとって行くような感覚、それでいて、恐怖は感じない、むしろ穏やかな安らぎ、居心地の良さを覚える。

アムロはこの音を以前どこかで聞いたことがあるという確信はあれど、どうにも思い出せないもどかしさを感じる。むしろ、この感覚がその答えにたどり着くことを阻害しているかのようにすら感じる。

 

『もてあそばれている?』

 

アムロがそう感じる程に、七色の光の海の波が寄せては返す。

 

その海の中心に一人の少女の顔が徐々に浮かび上がってゆく。

 

もう少しで少女の顔が露わになると思った瞬間、目の前に走る稲妻のような感覚。

 

「シャア…。」

 

アムロは無意識のうちに、自分を救ってくれた人物の名を口にする。

 

永遠にも感じる程に長い時間のようで、瞬きする程の短い時間のようでもある。

 

時間の膨張と収縮をゆっくりと繰り返すような。

 

只々自分の身体が波に攫われて流されて行くような。

 

心地よい母の腕の中で眠りに落ちてゆくかのような。

断末魔の叫びを聞かされているような。

 

自分自身を否定も肯定もせず、只そこにあるような。

 

何の答えも示さないまま、唐突にその情動は終わりを告げる。

 

「今のはいったいなんだったのだ。」

キシリアはたった今起きた現象に、驚きを隠せずにいた。しかし、それは脳に映し出された映像の表面を眺めていただけにすぎない。

しかし、アムロは知ってしまった。今自分が手にしている物が何なのか、自分という存在がこの世界に与える影響、自分自身が何者なのか、何処からきて、何処へ向かうべきなのか、何を成し、何を成さぬべきなのか、光る海に漂う少女。

 

アムロは一言だけ告げる。

 

「いずれ大佐は戻られます。」

 

 

 




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