機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~   作:すずき 虎々

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第七話 片鱗

第7話 片鱗

 

 新型試作モビルスーツのコックピット内、半球状のモニターには、周囲の宇宙空間がAIによる画像補正を受けた状態で映し出される。

 パイロットの右手側に投影されたエアリアルモニターには、機体各部の状態が詳細に表示されている。

 エアリアルモニターのオレンジ色の光が、パイロットのヘルメットバイザーに反射して、パイロットの表情を読み取ることはできない。

 中央コンソールの下から左右に伸びるペダルを踏む脚に、一気に力を込めるパイロット。

 機体の加速は、生身の人間が耐えられるGの限界値に近い。

 先程までは一年戦争の凄惨さを物語るかのように漂っていたデブリが、今は無数の弾丸が自分に向けて撃ち込まれているのではないかと錯覚する程に迫りくる。

 しかし、パイロットはその全ての破片を華麗に回避し、まるで障害物など何も無いかのように機体をコントロールしている。

 デブリのエリアを抜けると、そこにはジオン公国軍正式採用量産機であるザクが3機と、ドム2機の計5機が待ち構えていた。

 5機のモビルスーツは、新型試作モビルスーツを認めると、問答無用で襲い掛かる。

 スラスターを全開にして迫るドム2機の内、先頭の1機がジャイアントバズを放ち、即座に軌道をそらすと、続くもう1機のドムが白熱させたビームサーベルで切りかかる。

 新型試作モビルスーツは最初の砲撃を難なくかわすと、軌道をそらして立ち去るドムの背面に、ビームライフルを1射して撃墜し、自機の背後から迫るドムの、袈裟斬りに振り下ろされるビームサーベルを、サーベルを中心軸として、回転運動で回避すると、そのまま勢いを殺すことなく、ドムの無防備な胴体側面に蹴りを入れる。

 ドムの斬撃が命中していれば留まっていたであろうポイントには、ザクのマシンガンによる銃弾が殺到するが、既にそこに新型試作機の影はない。

 次の瞬間、ザクの頭上から三本の光の矢が降り注ぐ。それは、ドムを蹴りつけた勢いで、上方に移動した新型試作機が放った、ビームライフルの光だったのだ。

 3機のザクを無力化した新型試作機は、蹴られた反動で態勢を崩し、未だ立て直すことの出来ていないドムに急接近すると、人間でいうところの喉元に、ビームサーベルの切先を突き立てる。

 すると、全員のコックピット内スピーカーから「しゅ~りょ~!」という声が聞こえる。

 「メリル、タイムは?」

 「レイ大尉、これ以上タイム詰めてどうするんですか。開発者がテストパイロットのモチベーション下げちゃダメでしょ~。」

 「これくらい少し慣れれば誰でもできるさ。」

 「いやいや、普通背後からの攻撃なんて、回避できるわけないじゃないですか。ねぇガバナー少尉。」

 「大尉の背中をとったと思った時は、もらったと思ったんですけどね。」

 「ガバナー、背中に目を付けるのはパイロットの基本だろ。」

 「申し訳ありません。」

 「しかし大尉、そうは教えられますけど、それが出来たら撃墜されるパイロットなんていませんよ。」

 「堕とされちゃ困るからそう教えてるんだよ、ボース。それと、パール、ソナー、ハートキー、戦闘中に敵を見失うヤツがあるか、陣形は太陽の位置を考えて組むんだ。」

 「「「「「はっ!」」」」」

 「それで、大尉、なんでまた1号機の調整なんて始めたんですか。もうじき2号機の建造始まりますよ。あっちは超小型ビットの出力調整やら、仕様変更やら、色々あるんじゃないですか。」

 「それもそうだが、パイロットの生存率を上げたいからな、AIにはなるべく沢山のパターンをラーニングさせないと。しかし、現状ガンダムで俺より高いスコアを出せるパイロットがいないなら、俺がやるしかないだろう。結局は2号機にもフィードバックするんだし、どっちをやっても同じことさ。」

 「そんなだからキシリア閣下もしつこく言い寄ってくるんですよぉ~。」

 「それも、コイツがロールアウトすれば終わるさ。」

 「そうだ、大尉、2号機の仕様変更の件ですけど、本当にアレで良いんですか。接続用のソケットだってあんな数をバラバラで、オートで接続とか相当複雑なプログラムにしないと、難しいですよね。」

 「あれは筺体側でコントロールすると聞いている。こっちは仕様どおりのソケットを用意すればいいんだろ。」

 「了解で~す。」

 

 アムロが母艦である、チベ級を試験隊用に改修したグリムアーチとの相対速度をマニュアルで合わせ、淀みない動作で着艦する。

 「着艦動作レコードOKで~す。」

 「了解。」

 

 アムロは新型の試作機からおりると、メリルがファイルのつまったバインダーを胸に抱えてクルクルと回りながら待ち構えていた。

 「大尉、どうでした。UNM製のコックピットは。Dデバイスは使ってないんですよね。」

 「あぁ、今回も操作は全て操縦桿とペダルがメインだよ。それでも各部のレスポンスは段違いだし、今のところエラーも出てはいないみたいだしな。ただ、操舵のイメージを操縦のアシストに変換する際のアポジモーターの駆動に若干のラグを感じたのと、あと全般的にトルクが弱いから、そこは調整が必要だな。」

 「トルクはこれでも結構目いっぱいなので、ギアから検討します。」

 「そうだな、ここはパイロットの命に直接かかわる部分だし、妥協はしたくない。」

 「了解で~す。」

 

 アムロは艦内の重力エリアに与えられた自室に戻ると、すぐさま端末に向い、デスクに投影されたキーボードを叩く。

 「アムロ、休め、アムロ、休め。」

 部屋の隅でおとなしくしていたハロが、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、アムロの過重労働に対する警告を繰り返している。

 「そうも言っていられないさ。早いとこ1号機の調整を完了しないと、2号機はイオマグヌッソのキーデバイスも兼ねてるからな、せっつかれてるのさ。来年にはもう可動実験に入るつもりらしいからな。」

  アムロがモニターを睨みながら、修正コードを入力していると、モニターの右側の中空に新たに!マークのアイコンが投影された。

 アムロはその投影されたアイコンに触れるような動作をすると、新たにエアリアルモニターが投影されて、新着のメールが表示される。

 「一時間席をはずしただけでこれだ……。」

 アムロが自室から出て、新型試作モビルスーツのテストトライアルに挑んでから、ものの小一時間といったところだが、メールサーバーには17件の未読メールが表示されている。

 アムロは、上から順にタイトルだけをチェックして、自分が見るべきか、只のCCか、優先順位は、と、確認作業をすすめていると、その中の一件に、総帥府からのメールを見つけたので、メールを開いてみると、差出人はイザベラ・アービングとあった。

 イザベラは、総帥府に所属していて、階級は確か准将。役職が公開されていないので、呑気な士官には、専ら総帥の妾などと噂されているが、実際は軍内部のあらゆる情報にアクセスする権限を持つ、情報面におけるいわば公安のような存在である。

 「イザベラ准将が俺に何の用だっていうんだよ。」

 アムロはいかにも面倒そうに悪態をつくと、メールを読み進める。

 「オメガに使った材料の資料、そんなもの資材班に聞いてくれればいいのに。」

 メールには、オメガサイコミュシステム搭載型モビルスーツ開発の件で、当初予定していた材料の他に、新たに追加調達した資料の用途が不明の為、使用目的とその効果などがわかる資料を持参して、サイド3の総帥府にあるイザベラの執務室に、本日中に来るようにと記載されていた。

 「だいたい、俺が今トライアル中だって知っているだろうに、今日の今日で出頭しろって。これだから階級制度ってヤツは。」

 と、誰にともなく吐き捨てる。

 アムロは自室から艦橋に電話をかけ、事情を説明してカタパルトの使用許可を取ると、そのまま最低限の荷物とハロを抱えて、モビルスーツデッキへと向かった。

 

 サイド3に到着したアムロは、乗機から降りると、メカニックに帰りの為のブースター装着を依頼すると、そのまま総帥府へと向かうのだった。

 




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