機動戦士ガンダムGQuuuuuuX SIDE AMURO ~少年が見た戦争~ 作:すずき 虎々
第9話 覚醒
「アムロ起きろ、アムロ起きろ。大変、大変。」
「なんだよハロ、もう着いたのか。」
母艦への帰投をオートパイロットに委ねたアムロは、滅多に取れない仮眠で、疲れを癒していたが、唐突なハロの声で起こされる。
目を覚ましたアムロの目に最初に飛び込んだのは、幾つもの青白い光の玉が膨らんではしぼんで行く様だった。
「アレはなんだ、何が起きているんだ。」
アムロは直ちに自機に接続されていたブースターをパージして、操縦をマニュアルに切り替えると、グリムアーチに通信を試みるが、ミノフスキー粒子の濃度が戦時下のような上がり方をしていて、まったく通信が通らない。
「なんだっていうんだ。」
アムロは誰にともなく悪態をつくと、今度は光通信に切り替えて通信を試みる。すると、ようやくグリムアーチからの返信が帰ってきた。
返信内容を見たアムロは、驚きを隠せずに独り言ちる。
「なんだよ海賊って、しかもよりによってこのタイミングで、偶然だとでも言うのかよ。」
すると、グリムアーチとの距離が縮まったからか、音声通信が雑音交じりで聞こえた。
「大尉、レイ大尉、聞こえますか。レイ大尉、レイ大尉、応答願います。」
「あぁ、聞こえた、ロレントか、いったいどうなっている。何があった。」
通信士のロレント曹長が悲痛な声で現状報告をする。
「海賊の襲撃を受けています。連邦系の機体ですが、識別コードが解析できないので、おそらく軍人崩れの海賊だと思います。」
「守備隊はどうなった。」
「全員撃墜されました、艦ももうもちません。」
「10カウント後に後部ハッチからクアックスを射出しろ。」
「し、しかし、あれは兵装が訓練用に。」
「いいから出せ、あとはこっちでなんとかする。」
「了解しました。」
チベ級重巡洋艦グリムアーチの後部ハッチが開くと、アムロがクアックスと呼んだモビルスーツが、射出された。
アムロは、自機をマニュアルで操作すると、相対速度を合わせることなく、そのままモビルスーツとのドッキングに成功する。
アムロは、コックピットのコンソールを操作すると、機体の訓練用リミッターの解除プログラムを直接入力して次々と武装の出力を戦闘レベルへと引き上げる。
連邦の軍人崩れと評された、所属不明の機体が視認できる範囲に2機、母艦は視認出来ないものの、この宙域に母艦なしはありえないので、おそらくデブリの陰にでも隠れているのだろう。
2機のモビルスーツにしても、通常のキャノンタイプのキャノンなしで、1機はサーベルとシールドを構えていて、もう一機は見たことのない長尺のライフルを装備している、連邦の軽キャノンをカスタムした機体なのだろう。
2機のモビルスーツは、こちらを認めると、ゆっくりと近づいてくる。まるで、獲物を追い詰めるハンターのような動作だった。
「おぉ、まだ元気そうなのがいるじゃないの。楽しませてくれよ。」
サーベルを構えているモビルスーツのパイロットが、猟奇的な眼差しで、アムロの乗るクアックスを舐めるように見ながら言った。
「モンシア、こっちだってアレンがやられてるんだ、油断するんじゃないぞ。」
「中尉、わかってますって、俺様はあんなドジは踏みませんよ。」
「あのモビルスーツ、なんだか雰囲気が違うな。慎重に行くぞ。モン、モンシアーーー!」
モンシアが自機の横でライフルを構えるバニングに答えようと、モニターからほんの一瞬目を離した隙に、アムロの駆るクアックスは、モンシアの視界から消えると、モンシアの駆るモビルスーツの足元からビームライフルの一撃を放つ。
モンシアは、視界から急に消えたモビルスーツに、驚きの声を上げる間もなく、足元からのビーム射撃を受け、あえなく爆散するハメとなった。
「迂闊なヤツ。」
アムロは一言言い捨てると、そのままバニングの乗る機体に迫る。
「なんだ、あの動きは、どうなってるんだあのモビルスーツは、あれじゃまるで噂に聞くジオンの赤い盗人野郎みたいじゃないか。」
アムロは、バニングの駆る機体との距離は目と鼻の先というくらいにまで接近したところで、直感が走る。
完全なる意識の外からの攻撃、猛然とバニング機に襲い掛かるクアックスの左側、やや斜め後方から迫る光の矢。
通常のパイロットであれば、その攻撃に気が付くことも、まして反応することなど不可能な位置と距離からの一撃に、それでもアムロは全力で急旋回を試みる。
しかし、間に合わない。
「やられる!」
思わずアムロがそう口にした瞬間、クアックスの左肩辺りにビームキャノンの狙撃が直撃した。
はずだった。
たしかに衝撃はあった。
その証拠にクアックスのパイロット保護プログラムが作動し、Dデバイスがアムロの身体を抱きかかえるようにサポートし、それによってアムロが衝撃で脳震盪を起こすことはなかった。
狙撃が着弾する瞬間、クアックスのモニターには、左後方の映像が歪み、ビームの光跡が弾かれて逸れる様子が記録されていた。
アムロもその映像を確かに見た。
しかし、そこに疑問を挟んでいる猶予はない。
刹那、アムロはクアックスをビームの光跡をたどって向きを変え、モニターにすら何も映らない暗闇目掛けてビームライフルを発射する。
「出てこなければ良いものを。」
先程の一撃で、命を落としていたかもしれなかったことなど、まるで意に介していないかのようにアムロが言い捨てる。
狙撃用の特殊仕様軽キャノンのコックピットで、手ごたえを感じていたキース少尉だったが、表示されない敵機撃墜を知らせるアラームが鳴らないことに疑問を感じた次の瞬間、自機のモニターに映しだされた、緑色に光る点が、一瞬にして拡大されて行くのを見て、かろうじて発した、最後の言葉。
「え?」
その光跡は軽キャノンのコックピットを捕らえ、周囲の装甲毎一瞬にして蒸発させ、熱核反応炉をも貫いたことによって、誘爆を引き起こし、青白い火球を膨らませる。
「キーーーーーーーーーース!」
バニングは、ほんの一瞬の間の味方2機の撃墜を目の当たりにして、既にいつもの冷静な判断を下すことが出来なくなっていた。
バニングの思考は乱れていた。
唯一の救いは、モンシアもキースも、痛みや恐怖を感じる間もなく蒸発して死んだということくらいだろう。
この戦闘において、一言確実に言えることは、今、目の前にいるパイロットを敵に回したことが不運だった。ただ、それだけのことだ。
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