機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~   作:にわ@タイトル単位作品作成者

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File.09 急行

U.C.0093 3月12日

某時刻 ~アクシズ周辺宙域~

 

 再び――

 アクシズ周辺の空域が、白に灼かれた。

 

「……ッ!」

 

 サザビーの全天周モニターに、

 先ほどとは異なる軌道で走る“光”が映し出される。

 

「何だと……!?」

 

 一撃目からの、間隔が……。

 ソーラ・レイや、グリプス2では――あり得ん。

 

 ――早すぎる。

 

 再びの照射は、アクシズの中央を外れ、

 わずかに下方を舐めるように貫いた。

 

 超高熱の粒子が直撃し、

 焼かれ、砕けた岩塊が、

 その膨大な熱量に飲み込まれていく。

 

「……クッ……!」

 

 歯噛みする。

 

「やってくれたな……ブライト……!」

 

 怒りはある。

 だが、それ以上に――焦燥が胸を締め付けた。

 

 通信が割り込む。

 

『総帥、状況を報告します!』

 

 ナナイの声は、明らかに切迫していた。

 

『アクシズは……大半が失われました!

 損耗率、推定で八割以上!

 ですが……上部構造が、まだ……!』

 

「……八割、か」

 

 シャアは、残骸と化した天体を睨みつける。

 

 完全ではない。

 だが――十分だ。

 

 地球から奴らを追い出すことは、もう叶わない。

 だが――痛みを、今一度思い出させることなら。

 

「落とす」

 

 低く、だがはっきりと告げる。

 

「残骸でも構わん。

 腐りきった連邦に今一度思い知らせる」

 

『……わかりました、総帥』

 

 その直後、開かれた通信の奥から別の声が割り込む。

 

『アクシズ前方に新たな敵影あり!

 別動隊と思われる部隊を確認!』

 

「――見つけたか!」

 

 シャアの声が、鋭く跳ね上がる。

 

 サザビーのスラスターが唸りを上げた。

 

 機体が反転し、加速する。

 

「このままでは済まさん!!」

 

 赤い彗星は、迷いなく――

 この惨事を引き起こした、”元凶”へと突っ込んでいった。

 

 

 

同時刻 ~アクシズ前線宙域~

 

 嫌な予感がした。

 

 理由は、はっきりしている。

 だが、言葉にする前に――体が理解していた。

 

「……シャア……」

 

 νガンダムのコクピットで、

 アムロは低く名を呼ぶ。

 

 アクシズの損壊。

 二度目の照射。

 そして、戦場の空気が一瞬で変わった感触。

 

 ――別動隊が見つかった。

 

 確信に近いものがあった。

 

 通信を開く。

 

「各機、聞いてくれ」

 

 交戦中のMS隊に、落ち着いた声を投げる。

 

「このまま敵主力の足止めを続けてくれ。

 前へ出すな」

 

 一拍。

 

「俺は、シャアを追う。

 ケーラ、ここは任せる」

 

「了解しました。大尉」

 

 返答を聞き届け、通信を切る。

 

 その直後――

 νガンダムは戦線を離れ、加速した。

 

 戦場の喧騒が、背後へと遠ざかっていく。

 

 ――到達まで、およそ三分半。

 

 シャアが着くまで、

 少なくとも二分はかかるはずだ。

 

 追いつくまで……一分半。

 

 だが……。

 ――相手はシャアだ。

 並のパイロットでは、そこまでもたない。

 

「……間に合ってくれ」

 

 それは命令でも、計算でもない。

 ただの願いだった。

 

 追いつけるかどうかは、分からない。

 それでも――行くしかない。

 

 ユウの顔が、ふと脳裏をよぎる。

 

 見えない敵に警戒しながら、

 引き金を引く時を待っているはずだ。

 

「頼む……」

 

 νガンダムは、

 赤い彗星が残した軌跡をなぞるように、

 ただひたすら、加速を続けていた。

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