機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~   作:にわ@タイトル単位作品作成者

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File.10 激突

U.C.0093 3月12日

同時刻 ~アクシズ針路上~

 

 コメットブレイカーの再装填が行われる。

 再び融合路が悲鳴に近いうなりを上げ出してから、

 2分40秒が経とうとしていた頃……。

 

 索敵警戒中のユウは、

 ジェガンの機首をわずかに振り、

 護衛線の外縁をなぞるように、

 前方宙域へと視線を走らせていた。

 

 ――視界に、違和感を感じる。

 

 次の瞬間、

 赤い機影が正面に現れる。

 

 色が、先に目に入った。

 輪郭は、遅れて追いつく。

 

 重い。

 異様なまでに、完成された機影。

 

 ユウの視線は、

 急速に接近してくる機体――

 その赤い軌跡を確実に捉えていた。

 

(……来たか!しかしこの機体色……まさか!?)

 

 明らかに異常な動き。

 ――他の奴では相手にならない。

 

 考える間も無く……

 ――機体を前に出した。

 

 赤い機体…サザビーは一気に距離を詰める。

 そのカメラアイに映るのは、

 護衛線の奥にある、

 明らかに不釣り合いな砲を備えた異物……

 

 ――艦ではない。

 MSだった。

 

 理解した、その瞬間。

 迎撃に迫る護衛機。

 それを排除すれば、

 道は開く。

 

 赤い機体の腹部が白く光る。

 

 放たれたメガ粒子は護衛機へ…

 ユウの乗るジェガンへ――一直線に迫りくる。

 

「――っ!」

 

 考えるより早く、機体をひねる。

 理由はない。

 ただ、その角度は“死角”だと

 あの機体での経験がそう言っている。

 

 光が、ジェガンの目前を掠める。

 

 サザビーの中で、

 シャアの意識は、

 最初から、

 護衛機など取るに足らない存在としてしか捉えていなかった。

 

 彼にとって、

 優先順位は、最初から決まっている。

 それが揺らぐことはない。

 

 ――だが。

 

 彼の予想より、相手の腕は遥かに良い。

 

 それだけのことだ。

 

「邪魔をするな!」

 

 低い声。

 誰に向けたものでもない。

 それでも、

 言葉にしなければ保てない焦燥があった。

 

 問いを消される時間が、迫ってくる。

 投げかける前に、

 意味が、失われてしまう。

 

 それだけは許すまいと、

 サザビーが――ファンネルを展開する。

 

 戦場に赤い光点が散る。

 障害となる護衛機、

 ――ユウのジェガンを排除するべく牙をむく。

 

「くっ……!」

 

 数は分からない。

 配置も追えない。

 

 だが、

 一発でも抜ければ終わる。

 

「……マリオン……導いてくれ……!」

 

 誰も答えを返してくれるわけでは無い。

 それでも、死にかける度に、

 何度も無意識で口にしてきた言葉。

 

 意味は、知っている。

 それが何を指す言葉かも、

 なぜ口をついて出るのかも。

 

 だが、

 考える余裕は、すでになかった。

 

 衝撃。

 

 シールドが砕け散った。

 

 破片は、

 オービタル・リーダーへ向かわない。

 

(……まだ、やれる)

 

 根拠はない。

 だが、

 ここで退けば終わることだけは、

 はっきりと分かっていた。

 

 赤い光点が帰っていく。

 狙うならここしかない。

 

 赤い軌道に銃口を向け、

 ――引き金を引く。

 

 一射。

 撃った頃には射線を通り過ぎている。

 

 二射。

 当たる寸前で赤い軌道がずれた。

 

 三射。

 当たるかと思えばシールドでいなされる。

 

 次の瞬間、

 僚機の援護射撃が飛び交う中を、

 ――容易くすり抜け、

 赤い機体が距離を詰めてくる。

 

 判断は一つ。

 懐に――踏み込む。

 

 速い。

 正確で、無駄がない。

 

 だから、分かっている。

 狙われているのは、自分ではない。

 

 ――邪魔だから、切りにくる。

 

 ビームサーベルが引き抜かれる。

 

 一合。

 

 ビームトマホークが振るわれ、

 それをビームサーベルが受け止める。

 

 粒子でできた刀身がぶつかり合い、

 刃が弾ける。

 

 刹那。

 

 次の瞬間には、

 攻守が入れ替わっていた。

 

 速い。

 間を置かず、二、三度、

 光刃が交差する。

 

 決着はつかず、

 互いに一度、間合いを置く。

 

 ジェガンとサザビーは、

 踏み込める距離を残したまま、

 ほんの一瞬、動きを止めた。

 

 サザビーの中で、

 シャアの視線が、再び構造体を捉える。

 

 燃え残るアクシズ。

 その先にある、世界。

 

「……まだだ」

 

 言葉が、短い。

 

 今一度、その目で、

 ――"標的"を捉える。

 

「……終わらせるわけにはいかん!」

 

 苛立ちを滲ませるように、

 そう言った。

 

 ユウも、身構える。

 

 次の一歩で、

 互いの刃が、確実に届く。

 

 どちらが先に動くか――

 そんな問題じゃない。

 

 ――"赤い彗星"と、

 かつて"青い死神"に

 選ばれたパイロット。

 

 この距離で踏み込めば、

 必ず、どちらかが死ぬ。

 

 二機は、

 その事実だけを挟んだまま、

 微動だにしなかった。

 

 互いに、

 踏み込めば戻れないことだけを、

 感じ取ったまま。

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