機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
―戦闘は、終わった。
ロンド・ベルは、
公式な手続きに従い、
戦闘報告書を提出した。
ブライト・ノアは、
淡々と事実を書き連ねた。
アクシズ落下は阻止されたこと。
ネオ・ジオンの主力は壊滅したこと。
本隊の被害は、軽微であったこと。
ただ――
その戦闘が、
どのように決着したのかについては、
ほとんど触れられていなかった。
意図的に伏せられたのか、
それとも――
言語化そのものが、不可能だったのか。
報告書は、
事実のみを淡々と並べ、
理由も、過程も、
判断の重さも記さなかった。
それが、
司令官としての選択だった。
功労者の名は、
どこにも記されていない。
語られなかった。
語ることが、出来なかった。
ブライトは、
手を止めることなく打ち込み続けた。
書けなかったのではない。
書かなかったのだ。
あの光を、
あの決断を、
数字や文言に落とし込むことは、
あまりにも軽すぎると、
彼は知っていた。
公式記録とは、
残すためのものではない。
忘れるために、
整理された文章なのかもしれなかった。
巨大な力は、
同時に巨大な空白を残して消えた。
そして、時は流れる。
アムロ・レイは、
再び通常任務へと戻った。
チェーン・アギも、
アストナージ・メドッソも、
それぞれの持ち場へと戻っていく。
戦争は終わり、
日常は、何事もなかったかのように再開された。
そんな中で、
ひとつの噂が、
静かに広がっていった。
――シャア・アズナブルが、
姿を消したらしい。
自室に閉じこもったまま、
ある日忽然と消えたという。
残されていたのは、
短いメモだけだった。
『私の時代は、終わりを告げた』
真偽は分からない。
確かなことは、
彼が表舞台から姿を消したという事実だけだった。
一方で――
オービタル・リーダーについて、
公式に残された記録は、
わずかしか存在しない。
兵装のスペックを示す、
一冊の簡素なカタログ。
そして、
アストナージ・メドッソが書き残した、
整備メモだけだった。
そこに、
英雄の名は無い。
あるのは、
数字と走り書きだけ。
それらもやがて、
資料庫の奥へと押しやられ、
歴史の海へと沈んでいくのだろう。
誰にも知られず、
誰にも称えられず。
その一方で――
ハサウェイ・ノアは、
戦闘後、心を閉ざしたクェス・パラヤの傍にいた。
突然奪われた無数の命。
理解を拒む光景。
その重さに、
彼女の心は耐えられなかった。
ハサウェイは、
言葉を選び、
沈黙を受け入れ、
ただ寄り添い続けた。
救えたのかどうかは、分からない。
それでも、
支えることだけは出来た。
無常なる静寂の中で――
今日もまた、
時は、変わらず流れていく。
何事もなかったかのように。
このお話により世界は分岐しました。
しかし残酷ですが時は進み続けます。
本編これにて完結となります。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
この後0時半にあとがきを予約投稿いたしております。
世界の裏側を知りたい方はよろしければお読みください。