機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~   作:にわ@タイトル単位作品作成者

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※タイトルのエピローグは読んでいただいている皆様向けに記しています。


File.12 虚無 ~エピローグ~

―戦闘は、終わった。

 

 ロンド・ベルは、

 公式な手続きに従い、

 戦闘報告書を提出した。

 

 ブライト・ノアは、

 淡々と事実を書き連ねた。

 

 アクシズ落下は阻止されたこと。

 ネオ・ジオンの主力は壊滅したこと。

 本隊の被害は、軽微であったこと。

 

 ただ――

 その戦闘が、

 どのように決着したのかについては、

 ほとんど触れられていなかった。

 

 意図的に伏せられたのか、

 それとも――

 言語化そのものが、不可能だったのか。

 

 報告書は、

 事実のみを淡々と並べ、

 理由も、過程も、

 判断の重さも記さなかった。

 

 それが、

 司令官としての選択だった。

 

 功労者の名は、

 どこにも記されていない。

 

 語られなかった。

 語ることが、出来なかった。

 

 ブライトは、

 手を止めることなく打ち込み続けた。

 

 書けなかったのではない。

 書かなかったのだ。

 

 あの光を、

 あの決断を、

 数字や文言に落とし込むことは、

 あまりにも軽すぎると、

 彼は知っていた。

 

 公式記録とは、

 残すためのものではない。

 忘れるために、

 整理された文章なのかもしれなかった。

 

 巨大な力は、

 同時に巨大な空白を残して消えた。

 

 そして、時は流れる。

 

 アムロ・レイは、

 再び通常任務へと戻った。

 チェーン・アギも、

 アストナージ・メドッソも、

 それぞれの持ち場へと戻っていく。

 

 戦争は終わり、

 日常は、何事もなかったかのように再開された。

 

 そんな中で、

 ひとつの噂が、

 静かに広がっていった。

 

 ――シャア・アズナブルが、

 姿を消したらしい。

 

 自室に閉じこもったまま、

 ある日忽然と消えたという。

 残されていたのは、

 短いメモだけだった。

 

『私の時代は、終わりを告げた』

 

 真偽は分からない。

 確かなことは、

 彼が表舞台から姿を消したという事実だけだった。

 

 一方で――

 

 オービタル・リーダーについて、

 公式に残された記録は、

 わずかしか存在しない。

 

 兵装のスペックを示す、

 一冊の簡素なカタログ。

 

 そして、

 アストナージ・メドッソが書き残した、

 整備メモだけだった。

 

 そこに、

 英雄の名は無い。

 

 あるのは、

 数字と走り書きだけ。

 

 それらもやがて、

 資料庫の奥へと押しやられ、

 歴史の海へと沈んでいくのだろう。

 

 誰にも知られず、

 誰にも称えられず。

 

 その一方で――

 

 ハサウェイ・ノアは、

 戦闘後、心を閉ざしたクェス・パラヤの傍にいた。

 

 突然奪われた無数の命。

 理解を拒む光景。

 

 その重さに、

 彼女の心は耐えられなかった。

 

 ハサウェイは、

 言葉を選び、

 沈黙を受け入れ、

 ただ寄り添い続けた。

 

 救えたのかどうかは、分からない。

 それでも、

 支えることだけは出来た。

 

 無常なる静寂の中で――

 

 今日もまた、

 時は、変わらず流れていく。

 

 何事もなかったかのように。




このお話により世界は分岐しました。
しかし残酷ですが時は進み続けます。

本編これにて完結となります。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

この後0時半にあとがきを予約投稿いたしております。
世界の裏側を知りたい方はよろしければお読みください。
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