機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
よろしければ見てやってください。
U.C.0093 3月某日
某所にて。
カムランとブライトは補給についての話し合いを行っていた。
「……それと、もう一つあります」
そう言ってカムランは端末を操作し、画面を表示したままブライトに差し出した。
「この間、スターアラウンダーズ社と言う民間企業の方から話を聞きまして。
オービタル・リーダーという機体です」
「…SO-000-CB…オービタル・リーダー?」
ブライトはどこか聞きなれない名前に疑問を持つ。
「はい。
名目上は天災対策用重機となっていますが…
実際はコロニー落としを想定した、防衛用の砲撃モビルスーツでした。
そのため、大出力を前提に設計されているとか…」
カムランの説明にブライトは驚きを隠せなかった。
「……随分と割り切った発想ですね」
「理屈は分かります。
ただ、実際に効果があるかどうかは……
私には判断がつきません」
カムランは少し間を置いて続ける。
「例のミサイルと同じ便で回しています。
何かに使えそうでしたら使ってください。」
「承知しました。
こちらで預かります」
こうしてブライトはカムランからオービタル・リーダーを受領するのであった。
カムランとブライトが話をしている一方、
ラー・カイラムの格納庫では巨大なクレーンに吊られた機体が、ゆっくりと格納庫へ降ろされていた。
重装甲、直線的な外装、過剰なまでの砲装備。
アナハイム系らしい、火力を最優先した無骨なシルエットだった。
その足元に、三人の姿がある。
アストナージ、アムロ、チェーン。
「……見た目は、完全に火力偏重型だな」
アストナージが腕を組み、機体全体を見回す。
「運動性は最低限。
最初から距離を詰めさせない設計だ」
「逃げることは、あまり考えてないみたいですね」
チェーンの言葉に、アムロが短く応じる。
「必要がない前提なんだろ」
三人の視線が、自然と上方――
異様に長い砲身へと吸い寄せられる。
「……しかしこれは」
アムロが、ふと呟く。
アストナージは、手元の簡易端末を操作し、参考資料を表示する。
画面には、かつて整備したZZガンダムのデータ。
「外見だけならZZに似ているが…」
そう言ってから、少しだけ声を落とす。
「でも実際は、徹底してピーキーな機体だ」
「ピーキー?」
チェーンが首を傾げる。
「頭部を見ろ。
バルカンが外されてる。
近距離戦は最初から想定されてない」
三人の視線が、頭部へと向く。
そこには――いかにも“それらしい”形状の砲口があった。
「……ハイメガキャノン?」
チェーンがそう口にすると、アストナージは首を横に振る。
「形だけだな。
触った形跡がなかった。」
「え……?」
「内部構造を確認したが…」
アストナージは端末の表示を切り替え、簡略化された断面図を映す。
「エネルギー供給系統があったような形跡がない」
チェーンは一瞬、言葉を失う。
「最初から、積んでいない……?」
「断定はできん。
だが、後から外したなら積んでいた痕跡は残る」
そう言われてチェーンはハッと何かを思い出す。
「……資料で、これに似たような、
ZZのフルアーマープランの余剰パーツを使った
設計案を見たことがあります」
そう言ってチェーンは端末を忙しなく操作しだした。
「……あった。これです」
表示された設計書を、アストナージに差し出す。
アストナージは受け取り、画面に目を走らせる。
「……FA-010A……FAZZ?」
低く、確認するように呟く。
「五年前、実戦投入の記録あり……全機喪失」
画面をスクロールしながら、短く鼻を鳴らす。
「なるほどな。
確かに、素体として使われた可能性はある」
アムロが、少し意外そうに見る。
「そんなに似てるのか?」
「ああ。見た目はかなり近い。
火力一点張り、割り切った砲戦用。
思想も含めて素体になった可能性は高い。」
だがアストナージの指は、途中で止まった。
FAZZの設計書と、
目の前の実機とを見比べる。
「――“コメットブレイカー”……」
低く、噛みしめるように呟く。
「FAZZで言うところのハイパー・メガ・カノンと同じ位置にある。
だが……別物だ」
端末の表示が切り替わり、
砲身内部の断面が映し出される。
「通常のMS用ビーム砲なら、内部は空洞だ。
しかし実際には、用途の読めない層構造が詰め込まれている。」
「加速器でもない。
集束器でもない。
冷却用にしちゃ、手が込みすぎてる」
チェーンが小さく息を呑む。
「じゃあ……何のために?」
「分からん」
アストナージは間を置かずそう返す。
「少なくとも、“単純に威力を上げる”ための構造じゃない」
その会話を、アムロは黙って聞いていた。
視線は機体に向けたまま――
だが、見ているのは装甲の奥。
もっと遠い場所。
「……距離感が合わない」
ぽつりと、アムロが言う。
「MS同士で戦う前提じゃない」
「勘か?」
アストナージが問う。
アムロは、わずかに首を横に振った。
「……ただの違和感だ」
アムロの煮え切らない返答にアストナージは釈然としなかった。
しかし次の説明に向けて端末の表示を切り替える。
「……確かに、違和感はある。
射程のスペックだけは、どう考えても異様だ。
MSの航続距離を、完全に超えてる」
「威力は?」
アムロの問いにアストナージは端末を触る。
「テストデータが無い。
カタログにも、威力に関する記載は見当たらない。
無理に当てはめるなら……」
アストナージは、そこで一度言葉を切ると持っていた端末で計算を始める。
「艦載メガ粒子砲クラスってところじゃないか?」
それ以上は、誰も口にしなかった。
この時代の常識では、そこが上限だった。
アストナージは最後に、端末を閉じる。
「結論としてはこうだ」
一拍置いて。
「データが無いから何とも言えない部分はあるが――
強いて言えば、過剰に慎重な、超長距離砲撃用の実験機」
アムロは、小さく息を吐いた。
「……射程と目的が、噛み合ってない」
格納庫の中央で、
オービタル・リーダーはただ静かに固定されている。
――“理解できる範囲の兵器”として。