機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
旧あらすじを読んだ方はいろいろ察されているかと存じますが、
温かく見守ってやってください…。
―U.C.0093 3月某日
暗い。
音もなく、上下の感覚も曖昧な空間。
アムロは、そこに立っていた。
――違う。
「立っている」という感覚だけが残っている。
光が、滲む。
その向こう側に、
見慣れた――見たくなかった輪郭が浮かび上がる。
「……ララァ」
声は出たが、響かなかった。
彼女は微笑んでいる。
いつもと同じ、穏やかな表情で。
「大丈夫よ、アムロ」
その声は、耳ではなく頭の奥に直接届く。
「あなたたちは、守られる」
アムロは眉を顰める。
「……何の話だ」
答えは返ってこない。
代わりに、光景が変わる。
闇の中に、一本の“線”が現れる。
あまりにも細く、あまりにも長い。
それは光であり、
同時に“意志”のようにも見えた。
「星を穿つ盾」
ララァが、静かに言う。
「人々を守りたいという思いの結晶」
アムロの胸が、ざわつく。
「……そんなもの、あるわけない」
否定の言葉は、どこか弱い。
ララァは、少しだけ首を振る。
「救世の閃光」
その言葉と同時に、
“線”が一瞬だけ、強く輝く。
それは兵器ではなかった。
人の祈りでもなかった。
――誰かが、そうであろうとした結果。
アムロは、一歩後ずさる。
「……やめろ」
「アムロ」
ララァは、優しく呼ぶ。
「あなたが戦う理由とは、違う」
その瞬間、
視界が白く弾けた。
アムロは、跳ね起きる。
「……っ!」
荒い呼吸。
全身が汗で濡れている。
周囲は、ラー・カイラムの自室。
静かな艦内音だけが聞こえる。
アムロは、額を押さえた。
「……夢、か」
そう呟いても、
胸の奥に残った“違和感”は消えない。
言葉だけが、残っている。
――星を穿つ盾。
――救世の閃光。
「……悪い冗談だ」
そう言いながら、
アムロはもう一度、目を閉じることができなかった。
―U.C.0093 3月某日
ラー・カイラム ブリーフィングルームにて。
円形の卓上に戦域図が投影される。
表示されているのは、巨大な質量――アクシズ。
その周囲に複数の予測進路と、迎撃想定宙域が引かれていた。
ブライト・ノアが口を開く。
「今回の作戦目的は単純だ。
核ミサイルを撃てる位置まで持っていく」
画面が切り替わる。
別動隊の航路と編成が表示された。
「クラップ級一隻。
護衛にジェガン小隊一個。
隊長はユウだ」
ユウ・カジマは軽く頷く。
「搭載物がある」
ブライトの操作で、別のデータが表示される。
見慣れない型式番号と、不釣り合いなサイズの大砲を背負ったシルエット。
「オービタル・リーダーだ」
アムロが腕を組んだまま言う。
「……砲戦機、だな」
「そうだ」
ブライトは淡々と続ける。
「射撃は牽制扱い。
命中や戦果は期待しない」
クラップ級艦長が補足する。
「射撃地点まで運ぶ。
撃ったら即離脱。
それ以上の運用は想定していません」
戦域図に、細い一本の線が引かれる。
核ミサイルの射程よりも、さらに外側。
「異様な射程だな」
アムロの呟きに、ブライトは答えない。
「ジェガン小隊は、クラップから離れるな」
ブライトはユウを見る。
「会敵した場合、交戦は認める」
「どこまで?」
ユウの問いに、ブライトは一拍置く。
「深追いはするな。
近寄らせなければ、それでいい」
それ以上は言わない。
アムロが本隊を指さしながら口を挟む。
「足止めは、作戦には入れないんだな」
「……結果的にそうなるかもしれん」
ブライトはそう答える。
「だが、そうなるとは思えない」
核ミサイルの軌道を表示させる。
「決定打はこれだ」
「だろうな」
アムロは別動隊の表示に映った1点を見ながら即座に返す。
「俺もこの機体に賭ける気はない」
「そうだな」
短いやり取りで、それ以上の言葉はない。
ブライトは最後に全員を見渡した。
「使えるものは使う。
何としてもアクシズを止めるぞ」
ブリーフィングは、それで終わった。
誰も、
何秒稼ぐかなど話さない。
誰も、
誰が止めるかを語らない。
ただ、それぞれが
自分の持ち場だけを理解した。
ここでまさかのユウ・カジマ登場です。
某ゲームでの本編史実設定を生かしてみました。
…この時点でこの人に何をさせるのか完璧な形で気づけた人は本当にすごいと思います。
ある程度予測はつくかもしれませんがね。