機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
日付はともかく、場所をわかりやすく、流れを阻害しないようにするため、前提情報(時刻横)につけています。
予めご了承ください。
―U.C.0093 3月12日
某時刻 ~アクシズ針路上~
作戦開始まで、残り三分。
艦内に流れるのは、必要最低限の環境音だけだった。
ラー・カイラムを中核とする本隊は、すでに所定の宙域に展開を完了しているはずだ。
現在別動隊は、アクシズ落下針路上に配置されている。
ミノフスキー粒子と距離のため、
その存在は、誰の視界にも映らない。
――ロンド・ベルの識別コードを持ちながら、
公な記録として残す予定の無い別動隊。
「全機、配置を確認。――ミノフスキー散布率、予定値を維持」
落ち着いた声がブリッジに流れる。
「敵の姿は?」
「……確認できません。」
オペレーターの声には、わずかな硬さがあった。
それは失態ではない。想定通りの状況だった。
ミノフスキー粒子はすでに散布されている。
だが、この距離、この軌道、この相対位置では――
互いを“戦場の存在”として、まだ認識できない。
彼らがいるのは、戦線のさらに外側。
現時点では、交戦が想定されていない宙域だった。
本来ならば、交戦どころか、索敵すら行う理由もない。
少なくとも、今この瞬間は。
数十分後にはこの場所は、確実に戦闘空域へと変わるだろう。
「……静かなもんだ」
呟きは小さく、誰に向けたものでもなかった。
「こちらオービタル・リーダー。予定通りコメットブレイカーをチャージ中。作戦開始時刻には撃てます。」
オービタル・リーダーのパイロットは
行動を共にするクラップへ短く通信を入れる。
その肩に乗せられたコメットブレイカーは、すでに眠りから目覚めていた。
今はその咆哮に備え、
五基の融合炉が同調し、低く唸りを上げている。
「目標、アクシズ外延部本体側。照準を固定します。」
パイロットはそう告げるとオービタル・リーダーにその巨大な砲身を、
――ゆっくりと持ち上げさせるのであった。
別動隊周辺では、直掩任務に就くジェガン小隊が静かに散開していた。
一定間隔を保ちつつ、各機は推力を最小限に抑え、わずかな姿勢制御だけで宙域に静止していた。
各機はセンサーの熱源反応と周囲を注視しながら、
決定的な情報が得られない状況を前提として行動していた。
だからこそ、パイロットたちは視線と勘、
わずかな姿勢変化や推力の乱れにまで意識を集中させている。
この宙域で敵を護衛対象に近づけることだけは、
絶対に避けなければならない。
小隊の中心にいる機体は、前線で敵を迎え撃つためのものではなかった。
オービタル・リーダーとクラップを包み込むように、
ジェガン小隊は広めの警戒半径を保ち、“先に見つけ、先に止める”配置を維持する。
敵が現れるとすれば――
それは、こちらが察知した瞬間には、
すでに決定的な距離に踏み込まれている可能性が高い。
直掩機として出撃していたジェガンよりクラップへ通信が入る。
「こちらユウ。周囲に敵影無し。」
クラップとオービタル・リーダーの護衛を務めるユウ・カジマである。
「了解。引き続き周囲警戒に当たれ。」
クラップからの指示に「了解」とだけ返すとすぐ周囲警戒に戻る。
作戦開始の時刻は、刻一刻と迫っていた。