機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
この話は被害側のお話です。
ショッキングな内容となっておりますので予めご了承ください。
…グロテスクな表現は無いので空気以外は残酷じゃないはずです。
U.C.0093 3月12日
某時刻 ~アクシズ周辺宙域~
その異変を、
シャア・アズナブルは即座に“理解”することが出来なかった。
「……何だ、今のは」
アクシズ周辺の空域が、
数秒間――白に染まった。
瞬きの間ではない。
目を逸らす暇すら与えないまま、
それは、そこに注ぎ続けられていた。
灼光。
だが、切り裂くというより――
焼き尽くし、押し流すような光だった。
太い軌道を描いたそれは、
命中した瞬間から、
アクシズの表層を赤熱させ、溶かし、削り取っていく。
噴き上がる光と破片。
だが爆ぜることはない。
焼き尽くしながら、貫いていく。
五秒。
そのあいだ、
巨大な天体は、
途切れることなく、
巨大なエネルギーに貫かれていた。
爆発ではない。
衝撃波でもない。
――照射。
破壊ではなく、
削り、なおかつ全てを貫き通す――粒子。
シャアは、全天周モニターに映る光景から目を離さなかった。
そして――
その視界の端に、
赤く灼けただれ、
溶岩と化したアクシズの表面が映る。
「……焼いた、だと……?」
通信回線が開く。
重なり合う声、怒号、悲鳴。
混線の向こうで、艦橋が混乱に陥っているのが分かった。
『総帥!
シャア総帥、ご無事ですか!?』
ナナイ・ミゲルの声だった。
必死に平静を保とうとしているが、動揺は隠せていない。
「……ナナイか」
シャアはモニターを睨んだまま、低く応じる。
「状況を教えてくれ」
『は……はい』
一瞬の沈黙。
それは情報を整理する時間であり、
同時に――覚悟を決める間でもあった。
『部隊の損耗率は……
すでに六割に達しています……』
サザビーのコクピットに、
沈黙が落ちる。
『それと――
アクシズは……三割……消失しました……』
「…………」
シャアの喉が、わずかに鳴った。
『レズン機、ギュネイ機――
両機とも、反応を確認できません』
「……まさか……」
その瞬間、
ようやく“理解”が追いついた。
「ええい! やってくれるな、ブライト!」
歯噛みする。
だが、湧き上がったのは怒りだけではない。
――戦慄。
これは、想定していた兵器ではない。
『総帥!
新たな反応です!』
ナナイの声が、鋭く割り込む。
『ミサイル多数、接近中!
……軌道が違う。
目標は……アクシズです!』
「……目標が、アクシズ……」
迎撃を考慮しない軌道。
破壊ではなく――確実な効果を狙った撃ち方。
「……っ!」
シャアは即座にサザビーのスラスターを噴かせる。
「ちいぃっ!
やりすぎだぞ、ブライト!!」
怒鳴りつけるように吐き捨てながら、
その目はすでに戦場を見据えていた。
戦力は削られた。
想定も崩れた。
だが――
ここで止まるわけにはいかない。
同時刻 ~アクシズ前線宙域~
レズン・シュナイダーの機体は、
回避という概念すら与えられぬまま、白の中へと呑まれた。
警告音も、断末魔もない。
ただ、存在そのものが焼き払われる。
ギュネイ・ガスの反応も、ほぼ同時に消失した。
――理由も、理解も、感情すら残さずに。
クェス・パラヤは、
その“消失”を見たわけではない。
だが、感じてしまった。
範囲外だと思っていた場所にまで、
死が及んでいることを。
それは、
攻撃を行った側にとってすら想定外の直径。
一切の殺意を伴わない一撃が、
無差別に、均等に――命を削り取っていく。
「……ぁ……」
アルファ・アジールは、
辛うじて“形”を保っていた。
だが、装甲は焼き裂かれ、
機体の下半分が失われている。
「なに……これ……」
一斉に消えた、無数の“声”。
敵も味方も区別のない、
膨大な死が――波となって押し寄せる。
「……やだ……」
体は震え、自らの肩を抱く手に、力が入る。
「こんなの……戦争じゃない……」
怒りも、興奮もない。
あるのは――圧倒的な恐怖だけだった。
アルファ・アジールは、
その場に縫い止められたように、動かなくなる。
…ギュネイファン並びにレズンファンの方、申し訳ありません。
お二方には歴史を変えるための礎となっていただきました。
ギュネイの死につきましては、両陣営がオービタル・リーダーに対して認識の齟齬を起こした結果として発生した必然となります。
お二方の死に哀悼の意を表します。