機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
U.C.0093 3月12日
某時刻 ~アクシズ針路上~
「目標!アクシズ中央部!
第二射用意!!」
クラップの艦橋に号令が叩きつけられた瞬間、別動隊全体が張り詰めた沈黙に包まれた。
第二射まで、残り5分。
この時代の戦場において、それはあまりにも長すぎる時間だった。
敵影は見えない。
異常な熱源反応もない。
だが――
“来ない”と断言できる者は、誰一人としていなかった。
ミノフスキー粒子に満たされた宙域では、索敵という行為そのものが、ほとんど祈りに近い。
敵が存在しないのか、ただ見えないだけなのか。
その違いを知る術は、もはやなかった。
艦橋では、モニターに映る天体の様子と――
それに確かな一撃を加えようとするオービタル・リーダーの姿を、見守るしかなかった。
静寂の中、時間だけがゆっくりと流れていく。
一方、ユウは護衛のジェガンに座り、握る操縦桿にじっとりと汗が滲むのを感じていた。
機体は沈黙している。
スラスターも武装も動かさない。
それでも、戦場の圧力だけは、容赦なく体を押さえつけた。
5分。
ただ待つだけの5分。
機体は沈黙している。
スラスターも武装も動かしてはいない。
それでも、全身が戦場にさらされている感覚だけは消えなかった。
(あれが……コメットブレイカー……)
モニターに映る、オービタル・リーダーの巨大な兵装。
人の手で造られたとは思えない代物だった。
人の手で、アクシズを砕ける可能性があるという話。
――もはや仮定ではなかった。
表層しか狙っていないにもかかわらず、
既に三割が失われている。
この規模の天体で、それは決定的な数値だ。
残りを砕けるかどうかではない。
問題は――
次で、どこまで削れるか。
(あれなら……
やれるかもしれない……)
時間だけが、無情に流れていく。
――チャージ完了。
その報告が、ついに艦橋へ届いた。
「こちらオービタル・リーダー!
チャージ完了!第二射、発射可能!」
一拍の間もなく、クラップの艦長が叫ぶ。
「よし……!
第二射!撃てええぇぇッ!!」
号令と同時に、オービタル・リーダーの機体が微細に姿勢を変える。
照準の最終調整が、瞬時に完了した。
「了解!第二射!
発射あぁぁぁ!!」
トリガーが引かれた、その瞬間――
――警告音。
砲身を取り囲むΔ型配置のIフィールド発生装置、
30基のうち3基が出力限界に達した。
保護フィールドの一部が揺らぎ、
局所的な破綻が生じる。
エネルギーの収束が僅かに揺らぎ、
照準が――ほんのわずかに、右下へとずれる。
だが放たれた第二射は、
アクシズを確かに焼き裂いた。
赤く灼けただれ、溶岩と化した表面。
その向こうで――
上部の一角が、なおも残っている。
「――まだ、でかすぎる……」
完全ではない。
決定打では、なかった。
艦橋に、沈黙が落ちる。
その直後、
コメットブレイカー後部。
5基の融合炉から断続的に閃光が散る。
その背に小さく光を反射し、
艦橋にいる者全員から見て、
異常があるのは明白だった。
しかし、砕けたはずの天体は、まだ脅威として存在している。
その事実だけが、重くのしかかっていた。
その沈黙を破ったのは――
「こちらオービタル・リーダー!」
熱を帯びた声が、通信に割り込む。
「第三射再装します!
まだ、撃てます!!」
一瞬の静寂。
そして――
艦橋の空気が、さらに一段、張り詰めた。
――戦いは、まだ終わらない。