機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0093 Madness AXIS Breaker~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
同時刻 ~ロンド・ベル本隊~
ラー・カイラム艦橋。
メインスクリーンに映るアクシズは、もはや“小惑星”とは呼べない姿になっていた。
全体の八割。
それが、赤黒く灼け崩れ、表面は溶岩のように煮えたぎっている。
「……あれが……」
誰かが、思わず呟く。
確かに効いている。
間違いなく、削いでいる。
人の手で放たれた一撃が、
あれほどの質量をここまで変貌させたという事実は、
艦橋全体にアクシズを止めるこの作戦への希望を意識させていた。
「……効いている。
これなら、止められる可能性はある……!」
ブライト・ノアは、低く息を吐いた。
判断は、まだ終わっていない。
それでも――
この作戦の成功が、確実に近づいていることを、はっきりと理解していた。
だが、戦闘は終わっていない。
「各員、気を抜くな!
こちらに引き付け続けろ!」
浮足立ちかけた艦橋要員を、その声が現実へと引き戻す。
――その時だった。
「――ジェガン、カタパルトデッキより発進!」
突然の通達に、艦橋がざわつく。
「誰だ!?」
「許可は出していないぞ!」
一瞬の逡巡。
「止めろ!」
「間に合わん!」
そして――
ジェガンは、返答もなく加速し、戦闘宙域の外縁へと向かっていく。
すると、格納庫管制より報告が入った。
『ハサウェイです……!
ハサウェイがジェガンに乗って出撃しました!』
報告は、チェーンの声だった。
「――なんだと!?」
ブライトは、反射的に叫んだ。
だが次の瞬間には、艦長の顔に戻っている。
「……チェーン、追え。
あれを一人で行かせるな」
『了解!』
『リ・ガズィ、チェーン、出ます!』
リ・ガズィがラー・カイラムを発艦し、ジェガンを追う。
同時刻 ~戦闘宙域の外れ~
アクシズの進行によって押し出されるようにして残された、静かな空間。
そこに――それはいた。
――沈黙した巨大モビルアーマー。
破損した外装を晒しながら、ただ漂っている。
「……クェス……」
ハサウェイは、ジェガンのコクピットから通信を開いた。
「クェス!聞こえるか!?僕だ、ハサウェイだ!」
しばしの沈黙。
やがて、弱々しい応答が返る。
「……ハサ……ウェイ……?」
生きている。
その事実だけで、胸の奥が締め付けられた。
「今すぐそこを離れるんだ!
こんな所にいたら――」
「……もう……よく、わからない……」
迷子のような声。
それは、兵士でもニュータイプでもなく、ただの少女のものだった。
その時、リ・ガズィが並ぶ。
「ハサウェイ!」
チェーンの声は、怒りよりも困惑に近かった。
「あなた……一体、どうしたいの?」
問いかけは、責めるものではない。
覚悟を、問うものだった。
一瞬の沈黙。
ハサウェイは、前を見たまま答える。
「助けたい」
それだけでは、足りないと分かっている。
だから続ける。
「……助けるしか、ないんだ」
言い訳でも理屈でもない。
ただ、それしか選べないという、剥き出しの答え。
チェーンは、しばらく黙っていた。
そして――小さく、息を吐く。
「……本当に、困った子ね……」
呆れたように、けれど優しく。
「仕方ないわね。……手伝う。」
通信越しに、ハサウェイは何も言えなかった。
ただ、強く頷く。
巨大な影の中で、
三人の行く末が、静かに重なっていく。
半壊したアルファ・アジールを背にし、
三人はラー・カイラムへと戻って行った。
はい。このようにクェスは生存することとなりました。
聡明な皆様は既にお察しいただいているかと存じますが、
これによる歴史的影響は非常に大きいでしょうね。