この勇者が透き通る世界でも慎重すぎる   作:かげもじ

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31話を投稿しました。


プリンセス・ブレイクダウン

〈百合園セイア視点〉

 

セ「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!」

 

――何なのだ、あれは!!この世に存在していい生物ではない!!!

 

信じがたいものを見た。息が苦しい。あのドレイクという者の力だろう。首を絞めつけられる感覚が残っている。

 

ミ「セイアちゃん!!!」

 

大きな音を立てて部屋の扉を開けたのは、ミカだった。彼女は私の姿を見て、顔が真っ青になった。

 

ミ「セ、セイアちゃん!しっかりして!!」

セ「み、ミカ.....」

ミ「!?」

ミ「誰か!!誰か人を呼んできて!!セイアちゃんが.....セイアちゃんがおかしいの!!」

正「は、はい!わ、わかりました。」

セ「ゲホッ、ゲホッ!!」

 

その時、私は黒い感情が芽生えてしまった。

――ミカ.....そうだ、君が勇者を呼んだから!あの二人に危険が迫っているんだ!!!

 

セ「君が勇者を呼んだから!!」

ミ「!?」

 

――は!?私はなんてことを....

 

ミ「あ、あ.....」

 

――ミカ.....私は君に.....また同じことを.....。これは、私が招いた失敗。もっと慎重になるべきだった....。

 

私の意識は、そこで途切れた。

 

〈リスタルテ視点〉

 

セイアちゃんが倒れたと連絡があった。私は急いで正義実現員会の子が送ってくれた座標の部屋に行った。すると

 

声「人殺し!この魔女め!!」

 

トリニティの生徒の怒号が、部屋の外にまで響き渡る。私はその声を聞き、駆け足で部屋に向かった。扉の前に人だかりができていた。

 

「みんな!!」

 

私の声にティーパーティの子が気づいた。

 

ティ「リスタルテさん!!!」

正「先生は?」

「聖哉は今、大事なようがあって.....」

ティ「聖園ミカです!!!」

「!?」

 

怒りが籠った声。その声を聞き、思い出した。セイアちゃんはミカちゃんに会おうとしてたことを....

――ミカちゃんが部屋に入ったときに、セイアちゃんが倒れていたから、勘違いされてる!!!

 

「待って!!ミカちゃんは何も.....」

 

(ドゴーン!!!)

 

突然、部屋の壁が壊れた。中から出てきたのは、ミカちゃんだった。彼女は辺りを見回した後、私の存在に気づいたからか、手を振ってきた。

 

ミ「やっほー、リスタ☆」

「ミカちゃん、何で....一体何が....」

 

私の言葉にミカちゃんは微笑み返した

 

ミ「ごめん、リスタ。私は錠前サオリが許せない。もう止まらないの。」

 

ミカちゃんはそう言って、凄まじいスピードで駆け出して行った。

 

「ま、まずいわ。あの目、本当にサオリちゃんを.....」

 

私はミカちゃんより先にサオリちゃんたちに会うために、飛翔のスキルを使ってアツコちゃんが攫われたところに向かった。

 

空を飛んで、10分くらいたった頃、トリニティの郊外で誰かが倒れているのを見つけた。近づいてみると、サオリちゃんだったことが分かり、安堵した。ひどい傷だ。アリウスの生徒に狙われたからだろう。私は治癒魔法でサオリちゃんを治した。

 

サ「ん.....ん?」

 

治癒魔法を施した時、サオリちゃんが目を覚ました。

 

サ「貴方は....女神....!」

 

サオリちゃんは私を見た瞬間、両手を地面につけて土下座のような体制になった。

 

サ「女神....アツコが攫われた.....。ほかのメンバーもドレイクの襲撃により、散りじりになり、生死不明だ。」

「そ、そんな.....。」

 

サオリちゃんは震えた声で

 

サ「このままでは.....アツコは.....姫は、死んでしまう....。」

「!?」

サ「明日の朝.....夜明けとともに『彼女』に殺されてしまう....。貴方たちを殺そうとした私たちの話は信じられないだろうが.....」

「信じるわ!!!」

サ「!?」

 

確かにこの子たちには思う事もある。だけど

 

「貴方を信じるわ。」

サ「女神.....。アツコは、元よりそのように育てられた存在なんだ.....。」

「!?どういう事?」

サ「アツコは『生贄』にされる運命にあったのだ。姫の運命を変えたいなら、彼女の命令に従えと....。」

 

――そう言う事だったんだ.....

サオリちゃんはトリニティに最初からそこまで恨みはなかった。酷いことをしてきたのも、アツコちゃんのためだった。だけど、命令をこなしていく過程でベアトリーチェに洗脳されてしまったのだ。

 

サオリちゃんはそう言うと、一つの爆弾を手渡してきた。

 

「さ、サオリちゃん、これは!!」

サ「『ヘイローを壊す爆弾』だ。私の命は握ってもらって構わない。どうかアツコを....姫を助けてくれ....。」

「.....顔を上げて、サオリちゃん。あと爆弾も渡して。」

サ「!?し、しかし....」

「貴方を殺すなんてことはしない。それに聖哉流に言うと、そんな危険物を持ってると誤爆する可能性があるからね。」

サ「女神.....。」

 

サオリちゃんは辺りを見回した。何かに気づいたように目を見開いた。

 

サ「女神....勇者はどこにいるのだ?」

「あー、それはね.....先にアリウスの方にいるのよ!」

サ「本当か!!!流石だ。この状況を察して、先回りするとは.....。」

 

サオリちゃんを安心させるために咄嗟に、嘘をついてしまった。正直、聖哉が何処にいるのかも、何をしてるのかもわからなかった。だが、あの先見性に富んだ勇者なら、もしかしたら、もうアリウスで偵察をしてるのかもしれない。

 

サ「なら、勇者と合流するまで私が前線で戦おう。行こう、女神。」

 

聖哉の言いつけを破ってしまった。だが、このままにしてるとミカちゃんがサオリちゃんを....

 

2人でアリウス自治区に向かっていると、倒れているヒヨリちゃんを見つけた。

 

サ「ヒヨリ!!!」

「安心して。眠らされてるみたいだわ。」

 

私はすぐさま治癒魔法を施し、ヒヨリちゃんを目覚めさせた。

 

ヒ「ん-、ここは....」

サ「ひ、ヒヨリ!」

ヒ「り、リーダー.....。どうしてここが.....。」

「良かったわ、ヒヨリちゃん。」

ヒ「.....。」

 

ヒヨリちゃんは私を見るや、目を見開いて後ろに下がった。

 

ヒ「.....え、ええっ!?シャーレの女神さんがどうしてリーダーと一緒にいるんですか.....!?」

サ「それは.....。」

ヒ「女神さまがいるってことは、あの勇者さんもいるんですね!つ、ついに天罰の時がやってしまったんですか?私知ってますよ!シャーレの勇者は、反抗した子を独房に入れて、やばいことをするって!!」

 

――聖哉の噂って、そんなことになってたの!?確かに似たようなことをしてたけど.....

 

「安心して、ヒヨリちゃん。聖哉はここにはいないけど、私はあなたを助けに来たのよ。」

ヒ「え、え?」

サ「女神の言う通りだ、ヒヨリ。『シャーレ』の先生が、私たちの手助けをしてくれる。」

ヒ「.....!?」

「皆で、アツコちゃんを助けましょう。」

 

私の言葉にヒヨリちゃんは、はっとした。

 

ヒ「そうだ、姫ちゃん.....。私たちで、姫ちゃんを助けられるんでしょうか.....?」

 

するとヒヨリちゃんは、沈んだ顔になり

 

ヒ「リーダーの居場所を教えれば、アリウス自治区に戻れるよう便宜を図ると『彼女』に言われました....。」

サ「.....っ!?」

「そ、そんな....!」

 

サオリちゃんは覚悟を決めたように、目を瞑った。

 

サ「そうか。ならば、そうするといい。」

ヒ「....えっと?」

「さ、サオリちゃん!?」

サ「私の居場所を『彼女』に伝えて、そのまま自治区に戻れ。そうすればヒヨリ、少なくともお前には迷惑はかからない。」

ヒ「は、はい!?わ、私は....。」

サ「いつかこんな日が来ると、わかっていた。お前は今までよく私に付き合ってくれた。」

ヒ「ええと、その.....もう断ったんですけど....。」

 

ヒヨリちゃんの言葉に、私とサオリちゃんは少しの間、思考が停止した。

 

ヒ「.....な、何ですか、その裏切り者に理解を示すみたいなムーブ。私ってそんなに簡単に裏切ると思われてたんですか?」

 

ヒ「そもそも、『彼女』の言葉が本当かどうかもわかりませんし....それに、もう私たちは同じ船に乗った運命共同体のようなものですし....私一人で自治区に戻ったって、何の意味も....。」

 

ヒ「それに....私一人が救われたとして、アツコちゃんは.....。わ、私もみんなでアツコちゃんを....姫ちゃんを助けられるなら、そのほうが良いと思うんです....。」

 

ヒ「それはリーダーだって同じじゃないですか?だから私を助けに来たんですよね?」

サ「あぁ、そうだ。」

 

――この光景を見せてやりたいわ、ベアトリーチェ!いくら裏切らせようとしても、この子たちは強い力で繋がっている!!

 

「これで、あとはミサキちゃんだけね。」

サ「ミサキの場所なら心当たりがある。多分あそこだろう。」

 

サオリちゃんはミサキちゃんがいる場所に心当たりがあるそうだ。私たちはサオリちゃんの後を追った。

 

少し歩くと、だいぶ放置された橋が見えた。そこに人影が一つ。ミサキちゃんだった。

 

サ「ミサキ....。」

ミ「.....!」

 

こちらに気づいたように振り向く。

 

ミ「リーダーにヒヨリ.....そして、『シャーレ』の女神か.....。そっか.....そういう選択なんだね、リーダー。」

 

ミ「まさかリーダが、ね......それに、女神もそれを受け入れたんだ....。どっちにせよ、予想外だったな。」

 

ミサキちゃんは声を低くして、こう言った。

 

ミ「私たちは勇者と女神を始末すれば、アリウス自治区に戻れる。」

「!?」

ミ「そこにいるヒヨリも、リーダーも同じ話を聞いたはず。だよね?」

ヒ「わ、私が受けた提案は少し違いましたけど....。」

サ「....ああ、そう言われたな。先生を始末すれば私たちの裏切りを許す、と。」

 

ミサキちゃんは、私の眼前に来て、こういった。

 

ミ「.....いつ後ろから引き金を引くかわからないのに、貴方は私たちを信用できるの?しかも、それが『かつて自分を殺そうとした相手』なのに?」

サ「.....。」

 

私は息を飲んだ。確かに私は銃弾が当たれば、無事では済まない。それにチェイン・ディストラクションが付与されてれば、私は死ぬ。

――それでも.....

 

「もしそうなら、サオリちゃんはとうに私を殺してるわ。」

ミ「そっか....。でも姫を救うのは無理。」

 

そう言って、ミサキちゃんは橋の高欄の部分に立った。

 

サ「ミサキ、何!?」

「ミサキちゃん!!!」

 

ミサキちゃんの表情からは絶望や焦燥の感情が分からない。すべてが無意味と言わんばかりの表情だった。

 

ミ「仮にあの勇者が協力するとしても、『彼女』はまだしも、あの『怪物(ドレイク)』には勝てない。貴方たちを殺せる武器だって持ってる。」

 

ミサキちゃんは問いかけるようにこう言った。

 

ミ「もし仮にアツコを救出できたとして、そこに何の意味があるの?」

「.....っ!」

ミ「帰る場所もないこの世界に取り残されて、泥水を啜って生きるだけの......この無意味で苦しい人生が続くだけでしょ?」

サ「.....。」

ミ「苦痛ばかりだった姫の人生を引き伸ばして....そこに価値があるの?」

 

ミサキちゃんは吐き捨てるように言った。

 

ミ「『全ては虚しいものである(vanitas vanitatum)ただそれだけが、私たちが納得できる真実。それとも、リスタルテ.....全てを超越する存在であるあなたなら、この答えを知ってるの?」

 

ミサキちゃんは今にも、身を投げ出そうとしてた。正直、何も言葉が出なかった。私は女神。人間だったころの記憶がない私には、彼女たちの気持ちを本当の意味では、理解できないだろう。この世界に生を受けて頃から、絶望も生温い現実を突きつけられてきた子たち。

――こんな時、聖哉ならなんて声をかけてたのだろう.....

 

サ「黙れ、ミサキ。」

「!?」

 

サオリちゃんはいつもより、声を低くしていた。

 

サ「それで?苦痛だらけのお前の人生も安息を迎えたという事なのか?――そんな脅迫が私に通じると、本気で思っているのか?」

ミ「....。」

サ「良く聞け、ミサキ。お前がそこから飛び降りるなら――私もすぐに追いかけて飛び込む。服の中に何か重りを淹れてたとしても無駄だ。お前がそうやって脅そうと、私はお前を生かして見せる。」

 

サ「今まで何度やっても無駄だったのに、今回は成功できるとでも思っているのか?」

「え....。それって...」

 

ミサキちゃんはサオリちゃんの言葉に目をつむり、こういった。

 

ミ「.....まあ、自身は無いかな。」

 

ミサキちゃんは高欄から降り、何かを決意したように目を瞑った。

 

ミ「わかったよ.....リーダーの命令なら、従う。今回も最後までお供するよ、リーダー。」

 

ミサキちゃんの言葉にサオリちゃんは

 

サ「....あぁ、頼んだ。」

「それなら、急いだほうが良いわね。」

 

私たちは、アリウス自治区に向かった。

――でも、みんなは聖哉がアリウスにいると思っている。でも実際は、何処にいるかわからない状態。もしもの時は、私が.....

 

私は、懐から一丁の拳銃を取り出す。これは、難度SSプラスの世界で聖哉が私にくれた銃だ。聖哉特性の魔弾が三発も装填されている。威力もこの世界の銃より高い代物だ。

 

私は向かっている途中、銃の状態を確認する。すると

 

「げぼっ!?」

全「!?」

 

前を見てなかったので、電柱と衝突してしまった。

 

サ「あ、あの、女神?」

ミ「何やってるのさ.....」

ヒ「わ、私もよくやっちゃいます。雑誌を読みながらとか.....。」

 

私のドジっぷりで、ちょっとは和んだのかな?

 

私の恥ずかしい出来事は一旦おいて、ミサキちゃんが何かに気づいた。

 

ミ「おかしい.....。」

サ「確かにな.....。」

「ど、どういう事?」

サ「敵が一人もいない。私たちの行動を察知して、送り込む敵兵はおろか、警備の奴らもいない。」

 

――た、確かに、言われてみればそうね。

その時、私はあることに気づいた。

 

「そうか、そうなのね!!」

サ「女神。何かわかったのか?」

「聖哉よ!もうアリウスに潜入して、先に敵を倒してるのよ。」

全「!?」

 

サ「流石だ。これなら、安全に潜入できるだろう。」

 

私は少し不安だったが、その不安もかき消すように、アリウスに通じるトンネルについた。

 

ミ「まさか、こんなに呆気なく戻ってこれるなんてね.....」

サ「あぁ、これで....「と、でも思った?」

 

全「!?」

 

暗闇から、現れる銀河のようなヘイローを持つ星女。

 

「もう、こんなところに....。」

サ「聖園、ミカ.....。」

 

ミカちゃんは、天使のような笑顔で微笑んだ。その影には、明らかな殺意が感じ取られた。

 

ミカ「先生は、居ないんだね、リスタ。それなら容易かもね。」

サ「お前は、檻の中にいると聞いたが?」

ミ「出てきちゃった☆.....早く、貴方たちに会いたくってさ。だってほら.....私たち、まだお話しなきゃいけないことがあるんじゃないかなって。」

「ミカちゃん.....セイアちゃんのことは、貴方のせいじゃ....」

 

私の言葉にミカちゃんは、首を横に振った。

 

ミカ「違うよ、リスタ。私のせい。でもね」

 

ミカちゃんは豹変した表情で

 

ミカ「錠前サオリ。貴方が一番悪い。」

 

――ま、まずいわね、この状況....!

聖園ミカは、トリニティでもツルギちゃんと並べれる能力値を持つ。対してこっちは、サオリちゃんも中々ステータスだけど、ミカちゃんとは倍以上離れている。正直言って、三対一でも、勝負にはならないだろう。

 

私は何かないかと、聖哉に持たされていたバックを漁った。すると、ある箱が出てきた。

 

「こ、これは!?」

 

〈予想外の事態に対応できる七つの道具〉

 

『リスタ。お前が単独行動すると予想して、こういう者を用意しておいた。』

 

いや、全部、お見通し何ですけど!?

 

サ「め、女神、そんな箱とにらめっこしてる場合ではないぞ。」

「そ、そうね。と、取り合えず、皆。できるだけ時間を稼いでほしいの。」

ミ「無茶を言うね....でも、わかった。」

ヒ「う~、やるしかないんですね。」

 

ミカ「やる気?相手にならないと思うけど....!」

 

ミカちゃんがとんでもない速さでサオリちゃんたちに接近する。彼女の攻撃をサオリちゃんたちは辛うじて避け、反撃しようとするが、逆にカウンターを喰らってしまう。

 

サ「くっ!?」

ミ「やっぱり、とんでもないね。」

 

私は彼女たちが時間を稼いでくれている間に物陰で聖哉の道具箱を取り出す。箱の中には、説明書のようなものが入っていた。

 

「いや、分厚すぎでしょ!!」

 

説明書とは思えないほどの分厚さ。傍から見たら本と間違われるだろう。

 

『まず、この武器は絶体絶命の時だけ使え。他に策があるのに道具に頼ろうとするな。』

 

相変わらず冷たい物言いにイラっとしたが、今回は絶体絶命と言ってもいい状況。遠慮なく使わせてもらおう。

 

『まず相手のステータスが自分たちのステータスより高い場合、3p目に行け、低い場合は次のページだ。』

 

私は、言う通りに3p目を開くと

 

『敵が銃を使ってくるタイプなら12p、敵が剣を使ってくるタイプなら16p・・・・

 

いや、ほぼすべての武器を網羅してる!どんだけ、慎重なのよ.....

 

『いや、敵が銃だけ使うとは限らない。すべての可能性を頭に入れろ。その足りない脳に詰め込んだなら、26pに行け。』

 

いや、急に失礼なんですけど!?何で、説明書でも馬鹿にされないといけないのよ!!

 

『敵がリスタの事を狙っていたら32p、第三者のことを狙っていたら35pに行け。』

 

す、凄い!そんなことまで想定してるの!?

 

『よし、ここまで敵の情報を絞り込めたなら大丈夫だ。これから使う道具の説明を行う。幼稚園児でも簡単に扱えるように説明してやる。』

 

いや、マジで失礼なんですけど!誰が、幼稚園児よ!!

 

『では、3番の武器を出せ。』

 

説明書の通りに三番と書かれた箱を開けた。すると中には、筒状の形状で大きなピンがある手榴弾のようなものだった。

 

『魔導閃光弾。基本的な仕組みはアメリカが開発したM84スタングレネードと同じだが、魔弾同様に凝縮還元魔力を使って、威力を何倍にも高めてある。人間なら一瞬で失明するレベルだ。だが、使用者に影響が出れば本末転倒。お前にはアイプロテクションレンズを使ったサングラスを一緒に入れておく。』

 

ま、魔導閃光弾!!!な、何かめっちゃすごいんですけど.....でも、これを使って、サオリちゃんたちを助けなきゃ!

 

私は魔導閃光弾を手に取り、サオリちゃんたちのところに駆けつけた。

 

ミカ「ねえ?ねえねえサオリ?本当にこれで終わりなの?」

サ「くっ.....!」

ミ「....ここまでかな....」

 

ヒヨリちゃんは気絶しており、サオリちゃんも満身創痍。だが、ミサキちゃんを拘束しているミカちゃんには、傷一つついていない。

――ここで行かなきゃ、皆が....

 

私は閃光弾のピンを抜き、ミカちゃんの所に投げた。

 

「おんどりゃ――!!!」

ミカ「!? リスタ!!」

サ「女神.....。」

 

閃光弾が地面に激突した瞬間

 

「へ?」

 

(ドカーンッ)

「どわぁぁぁぁぁぁ―――!!!」

 

強烈な爆発により、辺り一帯は吹き飛ばされ、爆風によって、私たちはトンネルの中に強制的に飛ばされた。

 

―――――――――――――――――

 

〈アリウス自治区・遺跡〉

 

目が覚めると遺跡のようなところにいた。

――てかっ、威力ヤバすぎるでしょ!?あの勇者はスタングレネードって知ってるの?もう少しで死ぬところだったんですけど....

 

ミ「気づいた?女神。」

「ミサキちゃん....ほかのみんなは?」

ヒ「私は大丈夫ですけど....リーダーが...」

 

ヒヨリちゃんが指した方向には、満身創痍のサオリちゃんがもたれ掛かっていた。

 

「た、大変!!」

 

私はすぐに治癒魔法で回復した。するとサオリちゃんは目が覚めた。

 

サ「ん、ん.....め、女神、ミサキ、ヒヨリ。」

ミ・ヒ「リーダー!!!」

「サオリちゃん、大丈夫?」

サ「あぁ。女神のおかげで助かった。」

「.....ねぇ、サオリちゃん。その女神って呼び方辞めない?リスタで良いわ。」

 

私の言葉に、サオリちゃんは一瞬、驚いたような表情をしたが、すぐに微笑み。

 

サ「なら、そう呼ばせてもらおう、リスタ。」

「うん.....ここはどこなの?」

 

遺跡のようなところに避難してきたらしい。

 

ミ「アリウス自治区はもう少し先。ここは元は遺跡だったんだけど、内戦が終わった後は訓練場としても使われてたの。」

 

――内戦.....聖哉がそんなこと言ってたような.....

 

ミ「10年くらい前、アリウス自治区の内部が二つに分かれておきた戦争の事。」

 

ミサキちゃんはその話をしたくないようだった。今は無理に聞かないほうが良いだろう。

 

ヒ「アズサちゃんと初めて会った場所もここでしたよね....」

「そ、そうなの!?」

ヒ「どの訓練だったかな.....射撃か、爆弾製作か....。大人の『命令』に従わなかった子が酷く殴られていて....。」

「.....。」

ヒ「周囲はみんな、見てるだけで.....。でもその子は何度も起き上がって、ずっと大人を睨んでいました.....。」

 

ヒヨリちゃんは沈痛な表情で話した。

 

ミ「....思い出に浸るのは後にして。今は任務に集中するよ。」

ヒ「....。」

ミ「.....ねぇ、リスタ。正直に言って。勇者は何処にいるの?」

サ・ヒ「!?」

 

その言葉を聞き、ドキリとした。ミサキちゃんはもう全部わかっているのだろう。ここは正直に言ったほうが良いと思った。

 

「ごめん、皆。聖哉はここにいない。というか、何処にいるのかもわからないの。」

全「!?」

 

驚くのも無理ない。聖哉がもうアリウスに潜入していると聞いて、ベアトリーチェに勝つ希望が出来た。その希望が今、一瞬にして崩れたのだから.....

 

私が落ち込んでいると、突然、皆が笑い出した。

 

「え、え?」

ミ「知ってるよ。」

「え!?」

サ「リスタは噓をつくのが下手なんだろう。顔に出ていた。」

「う、嘘!?」

ヒ「私は後から、リーダーに聞いたんですけどね.....」

 

――わ、私って、そんな顔に出てたの!?それより....

 

「お、怒ってないの?」

サ「.....今の私たちは、貴方に助けられている状況だ。確かに勇者という戦力が無いのは乏しいが、貴方は有無を言わず、『信じる』と言ってくれた。私たちはそれだけで、良い。」

ミ「それに、リスタの言った通り、あの勇者ならもう乗り込んでる可能性はあるからね。」

ヒ「そ、それまでは、私たちが戦います。」

「みんな.....。」

 

そうよ、聖哉ならもうアクションを起こしている!それに、このメンバーなら、ベアトリーチェに勝てるわ!!!

 

ミ「で、どうやって行くの?」

サ「ルートはすでに考えてある。――アリウス分校の旧校舎に向かう。」

 

サオリちゃんの言葉に、2人は目を見開いた。

 

ヒ「きゅ、旧校舎ですか?あ、あそこは、かなり長いこと放置されていた廃墟ですよ.....!?」

「そこに何かあるってこと?」

サ「.....姫から聞いた話だが。かつて生徒会がアリウス分校を建設する時、バシリカと分校をつなぐ地下回廊を作ったのだとか。」

ミ「その昔――トリニティ連合に反対したアリウスの脱出を支援したのが、ユスティナ聖徒会。アリウスを最も糾弾した彼女らが、アリウスのトリニティ自治区外脱出と再建を主導したの。」

サ「回廊はかなり昔に作られたものだから『彼女』も見落としている可能性が高い。遠回りになるが、安全にバシリカまで侵入できるはずだ。」

ミ「その回廊の場所は知ってるの?」

 

ミサキちゃんの言葉に、サオリちゃんは申し訳なさそうに

 

サ「いや....まずは回廊を探すところからだ。」

ミ「そう....。」

「でも探す価値はありそうね。それに.....。」

ミ「それに?」

 

私はバックからさっきの箱を取り出した。

 

ヒ「そ、それはさっきの....。」

ミ「結局、それは何なの?」

サ「リスタ.....。」

 

私は両手を大きく広げ、高らかと言った。

 

「これが慎重すぎる勇者が用意した万が一の万が一に備えた『セブン・アーティファクト(七つ道具)』よ!!!」

 

 




サ「リスタ。勇者はなぜ、あれほどまでに慎重なのだ?」
「.....いろいろあったの....でも、私の口から言う事ではないわ。」
サ「.....そうか、すまない。」
「良いのよ。でも、安心して。聖哉は絶対、駆けつけてくれる。私たちにできることは、最後まで諦めないことよ!だって、聖哉は....いや、私たちは

レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整っている)』なんだから!!!」

サ「!?そうだな!!」

「次回、『二輪の花の円舞曲(ワルツ)』」

読了いただき、ありがとうございました。



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