ハンドグリッパーズ   作:伝説のファミチキ

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この物語はフィクションです。
実在の人物とは一切関係がありません。


第二話「握者」

瓦礫の山の中で、外山街児は一人立ち尽くしていた。

 

足元には崩れたコンクリート。

視線を上げれば、壊れた町の残骸。

 

「……」

 

何か言わなきゃいけない気がした。

でも、声が出なかった。

 

街児は自分の右手を見つめる。

拳は、さっきからずっと握られたままだ。

 

(……開いたら……)

 

理由は分からない。

ただ、怖かった。

 

その時。

 

「……いつまで、そうしてるつもり?」

 

背後から、声。

 

「ひっ……!?」

 

街児は肩を跳ねさせ、慌てて振り向いた。

 

そこにいたのは、見知らぬ少女だった。

金髪に、青い目。

手には黒いグローブ。

 

「だ、誰……?」

 

声が裏返る。

 

少女は少し驚いたように目を瞬かせた。

 

「……そんなに警戒しなくていいわ」

 

「べ、別に……警戒とか……」

 

言い訳しながら、街児は一歩下がる。

 

「私はジェン・ダー。

通りすがりの、ハンドグリッパー」

 

「……は、ハンド……?」

 

聞き返す声は小さい。

 

ジェンは、街児の拳に視線を落とした。

 

「まだ、握ってるのね」

 

「……え……?」

 

「自覚、ない?」

 

街児は慌てて手を見る。

 

「あ……いや……その……」

 

(いつから……?)

 

「さっきの、見てた」

 

ジェンの言葉に、街児の胸がぎゅっと縮む。

 

「……町が……壊れるところ」

 

「っ……」

 

「し、知ってるんですか……あいつのこと……」

 

語尾が、消え入りそうになる。

 

「直接じゃないけど」

 

ジェンは静かに答える。

 

「でも、似た被害は何度も見た」

 

街児は唇を噛んだ。

 

(俺だけじゃ……ない……?)

 

「あなたね」

 

ジェンは、はっきりと言った。

 

「力に、目覚めかけてる」

 

「え……ち、力……?」

 

「ハンドグリッパー」

 

ジェンはグローブを外し、軽く手を握る。

空気が歪む。

 

「ひ……」

 

街児は反射的に後ずさった。

 

「わ、俺……そんなの……」

 

「でも、あなたは違う」

 

ジェンは街児の拳を見る。

 

「《絶対把持》タイプ」

 

「ぜ、絶対……?」

 

街児は首を振る。

 

「む、無理です……俺……

ケンカとか……したことないし……」

 

ジェンは少し困ったように笑った。

 

「そういう問題じゃない」

 

「……」

 

「でも」

 

ジェンは、真剣な目で言う。

 

「離さない人は、長生きしない」

 

「……」

 

街児は俯いたまま、ぼそっと言った。

 

「……でも……」

 

「?」

 

「……もう……奪われるの……

やなんで……」

 

声は小さい。

けれど、確かにそこにあった。

 

その瞬間。

 

鼻を突く、不快な臭い。

 

「う……っ」

 

街児は顔をしかめる。

 

「な……なに……この……」

 

ジェンが舌打ちする。

 

「最悪……」

 

瓦礫の向こうで、誰かが笑った気がした。

 

「覚えときなさい、街児」

 

ジェンは低く言う。

 

「この世界には、

“握らせない”ことで勝つ奴もいる」

 

街児は、震える指で拳を握り直した。

 

「……そ、それでも……」

 

「俺……離さない……です……」

 

ジェンは、少しだけ目を見開き、

そして小さく息を吐いた。

 

「……ほんと、危険なインドア系ね」

 

こうして外山街児は、

望まぬまま――

戦いの世界に足を踏み入れた。

 

――第二話・完。

 




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