異世界に転移した高校生、五十鈴は近くの大森林にエルフが存在することを知る。
彼は憧れの存在を一目見ようと危険な森に冒険し、噂のエルフに助けられる。
白銀のエルフの存在に惚れた彼はエルフと人間の架け橋になろうと決意する話。

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白銀のエルフ

 エルフ。それは魔法を駆使する人型種。

 エルフ。それは悠久の時を生きる長命の種族。

 エルフ。それは弓の扱いに長け、長い耳を持つ森に生きる民。

 

 

 ここ『モータス大森林』にそんな存在がいると聞き、

 転移者である俺、伊勢・五十鈴(いせ・いすず)は好奇心に突き動かされていた。

 

 そう、エルフといえばファンタジー定番の皆大好き種族である。

 数多のファンタジー小説でヒロインになる存在。

 

 異世界へと転移してきた俺は、日銭を稼ぐため冒険者という職に就いた。

 依頼を受けるため通っていたギルドで、ふと耳にしたのがエルフという種族の名だった。

 

 噂話程度に、冒頭のエルフによくある特徴を上げ聞いてみたところ、返ってきた返答は全て肯定。

 俺の思い描いていた理想のエルフ像と、寸分違わず一致していた。

 これは、実物を見に行かない理由がない。

 

 聞くところによれば、エルフ達は街には来ずに、定期的に森の入口で人間と木材など森の中で手に入る物や魔物の素材を交易してるらしい。

 期待に胸を膨らませ、俺は大人十数人で囲むような巨木が並ぶ、幻想的な緑の深淵へと足を踏み入れた。

 

 

 森に入って1時間程だろうか、耳に微かに聞こえてきたのはエルフの幻想的な声ではなく、腹に響く重低音グルルルルという、大型エンジンのアイドリングのような獣の唸り声だった。

 足を止め、巨木を背に息を潜める。

 のっそり姿を現したのは、体高5メートルはあろうかという巨躯、黄金の毛並みを逆立てた狼の姿。

 

 危険度Sランク『ムーンライトウルフ』

 

 それは鼻を鳴らし空気を嗅いだかと思うと、ゆっくりと此方に顔を向ける。

 

 バレた……! 

 

 咆哮と共に、黄金の閃光が跳ねる。

 俺は死に物狂いで地面を蹴った。

 森とはいえ、木々の間隔は広く、遮蔽物には心もとない。

 焦りで足元への意識が疎かになった瞬間、小石に足を取られ、盛大に転倒した。

 

 飛びかかってくる狼に

 ──やられる!? そう思った時……

 

『STOPだ! 森の獣よ!』

 

 野太い男の声。 視界を横切ったのは、白銀の閃光。

 重い衝突音と共に、『ムーンライトウルフ』の巨体が吹き飛ばされる。

 

 急ブレーキの摩擦音を響かせながら足を止めた姿は……

 

「な……トラック!?」

 異世界の森のど真ん中に佇む、2トントラック。

 何故こんな異世界に自動車が……理解が追いつかない俺をよそに、その車体は滑らかな駆動音と共に分解・展開を始めた。

 ボディが割れ、手足がせり出し、複雑な機械音を立てて、巨大な「鋼鉄の人型」へと変形を遂げたのだ。

 人型のそれは頭の部分で此方を見ると

 

『こんなところに人間の子供だと!?』

 と驚きの声を上げる、少々分かりにくいが困惑の表情に見えた……

 

 声をかけようとした、その瞬間。

 

 グルルルル……

 吹き飛ばされたはずの『ムーンライトウルフ』が、再び姿を現す。

 元トラックの彼へと唸り声をあげるが、

 

『OKだ獣よ、私は無駄な殺生は好まない。大人しく去るなら見逃すが――』

 忠告も虚しく、次の瞬間、ウルフは宙を舞う。 巨人は溜息をつくように右腕の銃口を向け、乾いた銃声が二発。『ムーンライトウルフ』はそのまま動かなくなった。

 

 

 巨人は、物言わぬ肉塊となったウルフを「ヨイショ」と軽々と肩に担ぎ、俺を見下ろした。

『ふぅ……危なかったな、BOY。パパやママに教わらなかったのか? この森の中はDANGEROUSだと』

 

 そう注意すると、彼は耳──正確には側頭部の装置に手を当て、

『此方、ハイルーフ。森の中でMONSTERに襲われてた子供を保護した、直ちに帰還する』

 と、誰かと通信を始めた。

 

 その姿を見つめながら、俺の胸は高鳴っていた。

 ……思ったエルフとは違ったが、もうこんなの惚れるしかないじゃん!! 

 

 

 エルフ。それは魔法(科学)を駆使する人型種。

 エルフ。それは悠久の時を生きる(機械生命体故)長命の種族。

 エルフ。それは()の扱いに長け、長い耳(アンテナ)を持つ森に生きる民。

 

 これは俺が現代知識を活かしてエルフと人間たちとの架け橋になる物語。

 




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