無人島に残された巨大なクレーター。
その中心で、地面に対し垂直に突き刺さった銀色の物体――禪院直哉。
摩擦熱で赤熱し、シューシューと煙を上げるその「人間杭」を前に、五条悟と水都梨那は腕を組んで見下ろしていました。
「……で、どうするんだいこれ」
水都が呆れたように呟きます。
彼女の隣には、シャボン玉のような泡に包まれたタツノコ姿の式神『シュヴァルマラン婦人』がプカプカと浮いています。
「引っこ抜くにしても、熱すぎて触れないよ。まるで焼き石だ」
「僕の『無下限』なら触れるけどさぁ」
五条はしゃがみ込み、地面から生えている直哉の足(ピチピチスーツのせいで足の指の形までくっきりしている)をツンツンと突っつきました。
「下手に引っ張ると、首から下がちぎれて『頭(槍)』だけ地面に残っちゃいそうなんだよね。このスーツツルツルして滑って掴めないし」
すると、地中深くからくぐもった声が響いてきました。
『……早よ……せえ……』
「おや、喋った。生命力だけはゴキブリ並みだね」
水都は優雅に『諭示裁定カーディナル』を振ると、地面に突き刺さる直哉に向けて切っ先を向けました。
「仕方ない。まずは冷却だ。――行け、ジェントルマン・アッシャー、クラバレッタさん!」
彼女の号令と共に、マンマルタコ姿の紳士と、重厚なヤドカリ姿の式神が現れます。
「水をかけたまえ! ただし、急激に冷やすと彼が割れるかもしれないから、優しくね!」
ジュウウウウウウッ!!!!
サロンメンバーたちが放った水流が直哉のスーツにかかった瞬間、凄まじい水蒸気が爆発しました。
サウナのロウリュどころの騒ぎではありません。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛熱っ!! いや冷たッ!! どっちやねんボケェ!!』
地中から絶叫が聞こえますが、二人は無視しました。
「よし、温度は下がった。次は引き抜きだ」
五条が立ち上がり、準備運動のように肩を回します。
「梨那、君の水で穴の中に『潤滑油』代わりに水を流し込んで。僕が術式でスポンと抜くから」
「了解だ。……まったく、特級術師の初仕事が『地面に刺さった変態の介護』とはね」
水都が指を鳴らすと、直哉が刺さっている穴の隙間へ大量の水が注ぎ込まれます。
泥水が溢れ出し、直哉の身体が少し浮き上がった――その瞬間。
「術式順転・『蒼』」
五条が指先に呪力を込め、直哉の頭上(つまり足の裏側)に「吸い込み」反応を作りました。
掃除機に吸われるゴミのような勢いで、禪院直哉が空高く射出されます。
スポポーーーンッ!!
小気味よい音と共に、銀色の流星が空を舞いました。
彼は空中で器用に回転すると、スタッ、と地面に着地します。
「……ふぅ」
そこには、泥まみれになりながらも、頭の上の槍を得意げに光らせる直哉の姿がありました。
特殊繊維のスーツは傷一つついておらず、その異常な耐久性を証明しています。
「手間かけさせたな。……せやけど見たか? 今の僕の硬度」
直哉は髪(スーツの中に収納されているためツルツルだが)をかき上げる仕草をし、ニヤリと笑いました。
「地面と喧嘩して無傷。これが『特級』の装甲や」
「……」
「……」
五条と水都は顔を見合わせ、同時にため息をつきました。
「帰ろうか、梨那。彼をここに置いて」
「賛成だ、悟。この島ごと封印してしまおう」
「待てや!! 置いてくな!! 僕、泳げへんねんぞ!!」
結局、五条が襟首(スーツ)を掴んでぶら下げる形で、三人は高専へと帰還しました。
その姿はまるで、宇宙人にキャトルミューティレーションされる銀色の獲物のようだったと、後に補助監督の伊地知は語っています。
渋谷事変後の禪院家に関してどっちにするか迷ったので
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直哉:「僕はマグロやない特級や」ルート
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直哉:「人の心が無いんか?自分」ルート