呪術廻戦in水神   作:白黒ととか

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あんな事になるには壮絶な過去がないとおかしいやろ

まぁなくても東堂ならなりそうか。

これも『存在してほしくない記憶』やね


第◼️幕 領域展開『無量空処』feat.ドブカス0

その日、禪院直哉は吐いていた。

 

胃液が尽きても尚、こみ上げる嘔吐感は止まらない。

 

場所は禪院家の修練場。

 

彼の視線の先には、叩き折られた数多の木刀と、自身の遅さを嘲笑うかのような空虚な空間だけが広がっていた。

 

「……追いつけへん」

 

直哉の脳裏に焼き付いているのは、二人の怪物の背中だ。

 

一人は、五条悟。

 

現代最強の呪術師。

無限を纏い、空間を跳躍し、あらゆる常識を「才能」の一言で蹂躙する男。

彼の速度は移動ではない。

「省略」だ。

彼我の距離など、彼にとっては存在しないも同然だった。

 

そしてもう一人は、水都梨那。

 

近年現れた、もう一人の特級。

彼女はふざけている。

戦場を舞台に見立て、スポットライトの下で踊るように呪霊を屠る。

その術式「水精操術」は、彼女が指一本動かさずとも、自動的に敵を殲滅する。

彼女のまとう空気は、直哉を、鼻で笑うかのよう(被害妄想)に軽薄で「僕の舞台(セカイ)に、君の速度は追いつけるかな?」 そんな幻聴が聞こえる(被害妄想)気がした。

 

「俺は……俺は、アッチ側に行く男や……!!」

 

甚爾君。

 

悟くん。

 

そして、あの女。

 

彼らのいる「彼岸」にたどり着くには、今のままでは駄目だ。

 

投射呪法? 

 

速い? 

 

そんなもんは慰めにもならん。

 

物理法則に縛られている時点で、俺は彼らに負けているんや。

 

直哉は鏡を見た。

 

そこに映るのは、端正な顔立ちの、着物を着崩した「格好いい(当社比)」男。

 

だが、その時。

 

直哉の目には、その着物が、髪の揺らぎが、手に持つ刀が、すべて「抵抗(ブレーキ)」に見えた。

 

「……捨てな」

 

直哉の中で、何かがプツリと切れた音がした。

 

「プライドも、見た目も、人の尊厳も。全部、空気抵抗や」

 

五条悟は空間を操る。

 

水都梨那は海のような質量で圧殺する。

 

なら、持たざる俺が彼らに並ぶには?

 

速度の極致に至るしかない。

 

「マッハや。音を、置き去りにするんや」

 

そのためには、服が邪魔だ。

 

皮膚が邪魔だ。

 

通常の繊維ではマッハの摩擦熱に耐えられない。

 

ならば、呪物化した特殊繊維で全身をパックし、一生脱げない縛りで強度を上げればいい。

 

武器を持つ腕が風を切るのが邪魔だ。

 

ならば、腕を使うことを禁じ、頭に流線型の槍をつければいい。

 

それは、人間であることを辞め、一発の「弾丸」になるという決断。

 

凡人が見れば狂気。

 

だが、彼にとってそれは、涙が出るほど純粋な「求道」だった。

 

「見てろや、甚爾君、悟くん……。俺は速くなる。誰よりも、何よりも」

 

鏡の前で、彼は自慢の金髪を撫でつけ、特殊スーツに袖を通した。

 

ピチリ、と肌に吸い付く感覚と共に、羞恥心が悲鳴を上げる。

 

だが、彼は笑った。

 

その姿が滑稽であればあるほど、捨てたものの大きさが証明される気がしたからだ。

 

「……ハッ、最高やないか」

 

こうして、禪院直哉は壊れた。

 

あるいは、「最速」という呪いに、自ら成ったのだ。

渋谷事変後の禪院家に関してどっちにするか迷ったので

  • 直哉:「僕はマグロやない特級や」ルート
  • 直哉:「人の心が無いんか?自分」ルート
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