モニター室の空気は、凍りつくのを通り越して、熱狂と戦慄の坩堝(るつぼ)と化していた。
映し出されているのは、神話の再現。
現代最強の術師・五条悟と、神の如き力を行使する少女・水都梨那。
二人がかりでの、呪いの王に対する一方的な蹂躙劇。
「……おいおい、マジかよ」
日下部篤也が、信じられないものを見る目でモニターに齧り付いていた。
彼の額には玉のような汗が浮かび、手元のタバコはとっくにフィルターまで燃え尽きている。
「あの領域……本当に味方の強化かよ?」
「味方の強化……ですか?」
三輪霞が震える声で尋ねる。
日下部は乾いた笑いを漏らしながら解説した。
「ああ、五条の血を強制的に削り取って、それを燃料に五条と式神の火力を底上げしてやがるんだ。……だが、五条は反転術式で即座に回復する。減った端から回復し、その回復した分をまた削って火力に変える」
「永久機関……ですね」
乙骨憂太が呟いた。
その表情には、純粋な驚愕が張り付いている。
特級術師である彼だからこそ、理解できてしまうのだ。
あの少女、水都梨那が解放した呪力の総量が、自分すらも遥かに凌駕する次元にあることを。
(入学した頃の僕の呪力量を10とするなら、今の彼女は60……いや、それ以上だ。底が見えない。あれが『水神』……)
「熱(アツ)いじゃねえか!!」
沈黙を破ったのは、秤金次だった。
彼は目を輝かせ、興奮を抑えきれない様子で拳を握りしめる。
「命をチップにベットして、最強の火力を叩き出す! しかも演出(ステ-ジング)はド派手なオペラときた! あの姉ちゃん、分かってんねぇ! これぞ『熱(フィーバー)』だろ!!」
「……チッ。水を差されたと思ったが」
鹿紫雲一が、腕を組んで不満げに鼻を鳴らす。
だが、その瞳は画面の中の水都――『原始胎海』を統べる神の姿から離れられないでいた。
「あれほどの出力を見せつけられちゃあな。俺が出る幕はねぇよ。……認めざるを得ん。あれは『別格』だ」
戦闘狂である彼をして、介入を諦めさせるほどの圧倒的な格の差。
モニターの中では、式神たちが宿儺をボールのように殴り飛ばし、五条悟が楽しそうに追撃を入れている。
そして、水都による「術式の開示」。
『原始胎海』の性質――受肉体に対する猛毒性が明かされた瞬間、虎杖悠仁が身を乗り出した。
「魂を……引き剥がす!?」
「そうか……! あれなら!」
虎杖の顔に希望の光が差す。
宿儺を殺せば、受肉している伏黒恵も死ぬ。
それがこれまでの絶望的な前提だった。
だが、水都の『
不純物である宿儺だけを洗い流し、本来の持ち主である伏黒を救うことができる。
「頼む……! 頼む、伏黒を助けてくれ!!」
虎杖の祈りに呼応するように、画面の中で五条の黒閃が炸裂し、水都の巨大な水の刃が振り下ろされた。
宿儺の魂が吐き出され、消滅していく。
その光景を見届けた瞬間、家入硝子が深く、長く息を吐き出した。
「……はあ。あのバカ(五条)、本当に死ぬかと思ったけど……また教え子(後輩)に救われたな」
彼女の目元には、隠しきれない安堵の色が浮かんでいた。
五条が真っ二つにされた瞬間、誰もが最悪の結末を覚悟したのだから。
「勝った……今度こそ勝ったんだよな!?」
パンダが叫ぶ。
画面には、廃墟の中で倒れる伏黒恵と、それを抱き起こす五条。
そして、勝利のポーズを決めた直後に糸が切れたように倒れ込み、五条に支えられる水都の姿。
「……ああ。アイツらの勝ちだ」
日下部が呟くように言った。
モニター室は、しばしの静寂の後、爆発的な歓声に包まれた。
誰もが知る最強と、遅れてきた神による、奇跡の逆転劇。
その結末に、観客たちは惜しみない喝采を送るのだった。
渋谷事変後の禪院家に関してどっちにするか迷ったので
-
直哉:「僕はマグロやない特級や」ルート
-
直哉:「人の心が無いんか?自分」ルート