呪術廻戦in水神   作:白黒ととか

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明日の13時くらいでアンケート締め切りして多い方の話を投稿します


第5幕

新宿決戦、終結。  

 

史上最悪の呪術テロと、千年の時を超えた呪いの王・両面宿儺との死闘は、多大な犠牲と引き換えに幕を閉じた。  

 

東京は傷ついていた。

 

物理的にも、霊的にも。  

 

だが、人々は逞しい。

瓦礫の山となった新宿の区画整理が進み、呪術高専もまた、次なる日常へと歩みを進めようとしていた――はずだった。

 

「……足りません」

 

高専の仮設会議室。

目の下に濃い隈を作った伊地知潔高が、絶望的な声で呻いた。  

彼の手元にあるのは、山積みになった請求書の束と、真っ赤な数字が並ぶ復興予算の試算表だ。

 

「全然、足りないんです……! 補助監督の人員補充、結界の修復費用、遺族への補償、そして何より五条さんがブッ壊した街の賠償金! 高専の予算だけじゃ、到底賄いきれません!」

 

胃薬の瓶を握りしめる伊地知の悲鳴が響く中、当の元凶である五条悟は、高級そうな革張りのソファにふんぞり返り、上機嫌で足を組んでいる。

 

「いーじゃん別に。日本が滅びるよりマシでしょ」

「その日本経済が死に体なんですよ!!」

「あーあ、伊地知もうるさくなったなぁ。……ま、そんな君に朗報だ」

 

五条はサングラスをずらし、蒼い瞳でニヤリと笑った。  

テーブルの上に、一冊の分厚いファイルを放り投げる。

表紙には英語で『The Vision Silence(神の目は語らない)(仮題)』と書かれていた。

 

「復興資金、ドカンと稼げる案件を持ってきたよ」

「……は? なんですかこれ、映画の台本?」

「そう。しかもハリウッド超大作。主演オファーが来てるんだよね」

「主演? 誰にですか。まさか五条さんが?」

「違う違う。僕が出たら映画館ごと吹き飛ばしちゃうでしょ」

 

五条は楽しそうに、部屋の隅にある窓辺を指さした。  

そこには、瓦礫の撤去作業が進む新宿の景色をバックに、優雅にティーカップを傾ける少女が一人。  

白髪に、左右非対称の瞳。小柄ながらも圧倒的な存在感を放つ特級術師――水都梨那である。

 

「僕の後輩ちゃんにだよ」

 

 

 

 

 

 

事の発端は、数週間前に遡る。

 

決戦直後の新宿。

 

まだ黒い煙が燻る中、生存者の捜索を行っていた水都の姿が、たまたま来日していた世界的

映画監督の目に留まったのだという。  

 

雨に濡れ、瓦礫の上に佇む彼女の姿は、あまりにも幻想的で、神聖で、そして何より「画」になっていた。  

監督はその場で「彼女こそが私の探していた女神(ミューズ)だ!」と叫び、五条経由で熱烈なオファーを送り続けていたのだ。

 

「……ふん。ようやく世界が僕に追いついた、というわけか」

 

水都はカップをソーサーに置くと、芝居がかった動作で髪を払った。  

 

その表情は不敵そのもの。

自信に満ち溢れ、これから訪れる栄光を確信しているかのような「強者」の笑みだ。

 

「ハリウッド……映画の聖地、夢の都。まぁ、僕ほどのスター性があれば当然の帰結だね。むしろ遅すぎたくらいだよ。この水都梨那、いや、フォカロルスの輝きをカメラごときが捉えきれるか心配だが……民草がどうしてもと言うなら、一肌脱いでやろうじゃないか」

 

高らかに宣言する水都。  

 

だが、その内心は大嵐だった。

 

(ぎゃああああああああ!! ハリウッド!? 無理無理無理! 絶対無理だって!! 英語だよ!? 確かに勉強はしたけど、日常会話と演技は別次元でしょ!? しかも全世界公開!? 失敗したら『日本の恥』『勘違いコスプレ女』ってネットで叩かれる未来しか見えないよぉぉぉ!!)

 

内心で頭を抱え、のたうち回る水都。  

 

しかし、彼女の顔面筋肉は完璧に制御されている。

これまで「水神」を演じ続けてきた彼女にとって、ハッタリは呼吸と同じだ。

 

「どーする? 断るなら僕が代わりに行っちゃうけど」

「なっ……! 断るわけがないだろう!」

 

五条の挑発に、水都は反射的に立ち上がった。

 

「この僕が、逃げるとでも? 笑止! いいだろうバカ目隠し、そして伊地知。この案件、僕が引き受けた! 出演料(ギャラ)はすべて復興に回すがいい。それが、ノブレス・オブリージュ……強き者の責務というものさ!」

 

ビシッ! とポーズを決める水都。  

その背後には、見えないスポットライトと薔薇のエフェクトが幻視できるほどだ。

 

「さっすが〜! じゃあ決定ね。伊地知、スケジュール調整よろしく。来週から渡米だから」 「ら、来週ぅ!? 待ってください、水都さんは特級案件の任務がまだ……!」

「あー、聞こえない。あ、そうだ梨那。向こうのマスコミには『正体不明の日本人美少女』って触れ込みで行くから。本名は伏せて『RINA』で通そうか。その方がミステリアスでカッコいいでしょ?」

「ふふん、悪くない演出だ。名は記号に過ぎない。僕の演技が世界を震わせるのさ」

 

(うわぁぁん! 来週!? 心の準備が! パッキングが! あと美味しいスイーツのお店チェックもしなきゃいけないのに! 台本覚えられるかな、監督怖くないかな……ヌヴィレット……じゃなくて、誰か助けてぇぇ!)

 

内心で涙の海を生成しながら、水都は不敵な笑みを崩さない。  

こうして、呪術界の至宝にして最大の爆弾、水都梨那のハリウッド進出が決定した。

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

成田空港のVIPロビー。  

そこには、見送り(という名の野次馬)に来た高専生たちの姿があった。

 

「すげぇ……マジで行くんだ、ハリウッド」

 

虎杖悠仁が、ブランド物のサングラスをかけた水都を見て感嘆の声を上げる。  

彼は映画好きだ。

これから水都が飛び込む世界の凄さを、誰よりも純粋に理解している。

 

「サイン、今のうちに貰っといた方がいいかな。なぁ伏黒」

「……やめておけ。調子に乗るぞ」

 

伏黒恵は呆れたように溜息をついた。  

だが、その視線は以前よりも少しだけ柔らかい。

宿儺との決戦において、彼女の術式『万海蒼宴舞』がどれほど味方を鼓舞し、救ったかを知っているからだ。  

彼女の虚勢が、誰かを救うための「嘘」であることを、彼は知っている。

 

「ちょっと梨那さん! これ、私へのお土産リスト! 絶対買ってきてよね!」

 

釘崎野薔薇が、分厚いメモを水都に押し付ける。  

彼女の目は「私も連れて行け」と言わんばかりにギラギラと輝いていた。

 

「LA限定のコスメと、あとあっちで流行ってる服! サイズは分かってるわよね? あと、向こうでイケメン俳優と知り合ったら即連絡すること! いい!?」

「やれやれ、相変わらず俗物だねぇキミたちは。……まあいい。僕の凱旋を待つ間、せいぜい退屈しないように励むことだ」

 

 

 

ところ変わって成田空港のVIPラウンジ。  

 

水都梨那は、ふかふかのソファに深々と体を沈めながら、手元にある「紙束」を忌々しげに見つめていた。  

それは先ほど、釘崎野薔薇から手渡された『お土産リスト』である。

 

(……いや、厚くない? これ辞書? 広辞苑なの?)

 

パラパラとページをめくる。  

 

『限定色のリップ(品番〇〇必須)』

『現地の古着屋Aのヴィンテージデニム』

『謎のセレブ御用達スムージー』

 

そこには、英語とカタカナがびっしりと羅列されていた。

 

(無理だ。断言しよう、無理だ! 僕の英語力はあくまで台本(スクリプト)ありきなんだよ! こんな細かい品番を店員に尋ねて、あまつさえ「在庫がない」なんて言われたらアドリブで対応できるわけがないだろう!? それに何より――)

 

水都は震える手でリストを閉じた。

 

(……こんな荷物、一人で持てるわけがないだろうがぁぁぁ!! 僕は女優だぞ!? か弱い乙女だぞ!? 筋肉ゴリラの真希とは違うんだよ!!)

 

冷や汗が背中を伝う。  

このままでは、ハリウッド・デビューの前に「パシリ」として疲弊し、レッドカーペットで足がつる未来が見える。  

 

どうする。

 

どうすればこの危機(ショッピング)を回避しつつ、威厳を保てるのか。  

水都の脳内(スーパーコンピューター)が高速回転を始めた。

 

 

――3秒後。  

 

 

彼女はサングラスをずらし、搭乗口のガラス越しに見送りのメンバーを凝視した。  

 

そこには、まだ興奮冷めやらぬ様子で手を振る、栗色の髪の少女がいる。

 

「……そうだ。簡単なことじゃないか」

 

水都は優雅に立ち上がると、ラウンジの自動ドアを逆走し、再びロビーへと舞い戻った。

 

「え、梨那さん? 忘れ物?」

 

きょとんとする虎杖たちを無視し、水都は釘崎野薔薇の目の前でビシッと指を突きつける。

 

「釘崎野薔薇! 君に名誉ある任務を与えよう!」

「は? 何よ急に」

「単刀直入に言おう。……僕の『付き人(マネージャー)』兼『護衛(ボディーガード)』として、共にロサンゼルスへ来る気はないか?」

 

一瞬の静寂。  

その場にいた全員の思考が停止した。  

いち早く再起動したのは、やはり当事者の釘崎だった。

 

「――は?」

「勘違いしないでくれたまえよ? 僕は一人でも問題ないが、向こうのパパラッチは凶暴だと聞く。万が一にも僕の美しい顔に傷がついたら世界の損失だ。そこで、君のような威勢のいいボディーガードがいれば安心だと思ってね」

 

水都は髪を払いながら、あくまで「君のためを思って」という体で続ける。

 

「もちろん、旅費は全額バカ目隠し持ちだ。撮影の合間には自由時間もある。……どうだい? このリストの品、自分で選びたくはないかい?」

 

ドクン、と釘崎の心臓が跳ねた。  

 

ハリウッド。

LA。

ビバリーヒルズ。

全額負担。

買い物し放題。  

 

彼女の脳内で、田舎娘の欲望のリミッターが粉砕される音がした。

 

「行ぐッ!!!!」

釘崎は食い気味に、いや、もはや水都の胸倉を掴まんばかりの勢いで叫んだ。

 

「行きます!! 行かせていただきます!! 荷物持ちでも靴磨きでも何でもやるわよ!! パスポート持ってる! 今持ってる!!」

「よし、契約成立だ! さあ行くぞ、我が忠実なる下僕よ!」

「ついて行きます梨那様ァ!!」

「ちょ、ちょっと待ってくださいお二方ァァァ!!」

 

そこへ、青ざめた伊地知が全力疾走で割って入った。

胃薬の瓶がポケットから飛び出す。

 

「ダメです! 絶対にダメです! 釘崎さんも1級推薦の任務が控えてるんですよ!? それに航空券の手配だって、今からじゃ席が……」

 

伊地知の正論。  

 

しかし、それを遮ったのは、背後から近づいてきた長身の男――五条悟だった。

 

「あ、それなら大丈夫だよ伊地知」

「五条さん!? 何が大丈夫なんですか!」

「だって今回の移動、僕のプライベートジェットだもん」

 

五条はケラケラと笑いながら、滑走路の方を親指で指した。

 

ガラスの向こう。  

 

駐機場には、一般的な旅客機とは一線を画す、流線型の美しい機体が鎮座していた。

機体側面には、控えめに(しかし確実に主張するサイズで)五条家の家紋と、『SATORU GOJO』という筆記体のロゴが入っている。

 

「定員には余裕あるし、野薔薇の分の機内食も今から電話すれば積めるでしょ。あ、シャンパン……は未成年だからダメか。高級ジュース用意させとくね」

「じぇ、ジェット……!?」

「あいつも連れてっていいよ。向こうで梨那の世話係がいた方が、僕も安心だしね。伊地知、野薔薇の任務は全部、七海か冥さんあたりに回しておいて」

「そ、そんな無茶な……! 私の胃壁が……!」

 

崩れ落ちる伊地知を尻目に、水都と釘崎はハイタッチを交わした。

 

「聞いたか野薔薇! 神の乗り物は用意された!」

「アンタ最高よ!! 一生ついてく!」

「ふふん、良い心掛けだ。では行くぞ、ボン・ヴォヤージュ!」

 

 

 

 

数十分後。  高度一万メートルの空の上。

 

 

 

「うっわ、やっば……何これ、家じゃん……」

 

釘崎は、五条のプライベートジェットの内装に口をあんぐりと開けていた。  

全席が本革張りのマッサージチェア機能付き。

足元にはペルシャ絨毯。

壁にはなぜか有名な画家の絵画が飾られ、専属のCAがうやうやしくウェルカムドリンク(最高級マスクメロンの生搾りジュース)を運んでくる。

 

「これが特級(五条悟)の財力……! あいつ、普段ふざけてるけどマジで御三家当主なんだ……」

「まあ、これくらいは当然の嗜みさ」

 

向かいの席で、水都はグラスを揺らしながら涼しい顔をしている。  

だが、その内心は釘崎以上に荒れ狂っていた。

 

(何この飛行機!? 部屋じゃん!? ていうかWi-Fi爆速! 私の部屋より広いよ!? あのバカ目隠し、お金持ちだとは知ってたけどここまでとは……! ありがとうバカ目隠し! 君の性格の悪さはこの財力でチャラだよ!)

 

「梨那様、これから向こうに着いたらまずはどうします?」

 

釘崎がガイドブックを開きながら目を輝かせる。  水都は組んだ足を組み替え、窓の外の雲海へと視線を投げた。

 

「まずはホテルにチェックインして……そうだな、役作りのために『現地の空気』を取り込む必要がある。具体的には、ロデオドライブあたりの視察だ」

「それただの買い物ですよね!?」

「『視察』だ! 女優には衣装のインスピレーションが必要なんだよ!」

 

水都はニヤリと笑い、サングラスをかけ直した。  

隣には、強力無比な荷物持ち(兼ツッコミ役)。  

移動手段は超VIP待遇。  

不安要素だった「孤独な海外生活」は、一転して「女子高生?の修学旅行(超豪華版)」へと変わっていた。

 

「頼りにしているよ、僕のマネージャー。……あ、あとで機内食のデザート、僕の分あげるから、英語のメニュー翻訳してね」

「はいはい、任せなさいって!」

 

機体は太平洋を越え、夢の都へと加速する。  

水都梨那と釘崎野薔薇。  

呪術高専きっての「自己肯定感最強コンビ」によるハリウッド制圧劇が、今まさに幕を開けようとしていた。

 




釘崎が英語読めるのはその方がかっこいいからとかのミーハーな理由

こんなことしてる場合か?と言う疑問は五条悟が生きてるからできる暴挙ということで。
止められる人間がいないというのが実情というか...。

楽巌寺学長以外のお爺ちゃん組がメロンパンに殺されていないし
御三家に関しても加茂家は死滅して
五条家はバカ目隠しが主導しているので動かない
禪院家は次期当主候補筆頭がピチピチの槍人間になって一家総鬱に

誰が止められるんやこれ

渋谷事変後の禪院家に関してどっちにするか迷ったので

  • 直哉:「僕はマグロやない特級や」ルート
  • 直哉:「人の心が無いんか?自分」ルート
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