ドーモ。ヴィランスレイヤーです。これはニンジャが来てヴィランを討つ物語。   作:白白明け

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皆様の暇つぶしに成れば幸いですm(_ _)m




林間合宿⑥

 

 

マタタビ荘。

「グワーッ!」ブラドキングの逞しい腕が、全身にケロイドめいた火傷を負った(ヴィラン)の首を締め上げる。イレイザーヘッドが出て行って直ぐ、補修組の生徒たちが待機していた部屋にやってきたこの(ヴィラン)は、即座にブラドキングの個性『繰血』によって捕らえられた。()()()()()()()

「コンテニュー」(ヴィラン)はニヤリと笑うと、ヘドロめいて崩れ落ちた。ブラドキングは舌打ちを鳴らし、腕についたヘドロめいた物体を振り払う。

「ブンシン・ジツですね」コジュウタが言う。ブラドキングは頷いた。「どんな個性かはわからんが、本体を叩かない限り無意味だ」

コジュウタが立ち上がって言った。「オレが行きましょう」「・・・待機だ」「・・・デスが」「待機だ。いいな」「・・・ハイヨロコンデー」

コジュウタが座り直す。一生徒であるコジュウタが、ブラドキングの状況判断に口を出す行為は奥ゆかしさに欠ける。それを理解しながらも、コジュウタの表情は険しい。

外で(イクサ)が起きていることは確定的だ。蚊帳の外である状況が、コジュウタの精神を焦らせていた。

「皆サン。無事でしょうか・・・」「ん。大丈夫」小大唯がコジュウタの手を握る。「大丈夫」自分に言い聞かせるようにそう言ったいた。

その時、部屋のドアが開かれる。入って来たのは(ヴィラン)との戦闘を掻い潜り、避難してきたマンダレイと数名の生徒たちだ。

「ブラドキング!」「マンダレイ!無事でしたか。状況報告を」「ごめん。負傷者が出たわ。ピクシーボブもやられた。今は虎が(ヴィラン)2名を足止め中よ。ラグドールにもれ連絡がつかない。他にも(ヴィラン)がいる可能性が高いわ!」

A組の飯田天哉が負傷者を慎重に背から降ろす。床に横たえられた生徒はポニーであった。

B組の補習組の3人がポニーの側に駆け寄る。「ポニー=サン・・・」「ポニー」「嘘だろ、おい!しっかりしろって!」

飯田天哉が言う。「頭を打っています。慎重に!」

ポニーの額は割れ、赤い血が流れている。気を失っている様子で返事はない。ギリとコジュウタが奥歯を噛む音が、横にいる小大唯と物間寧人にも聞こえた。

 

ブラドキングが問う。「避難できた生徒はこれだけですか?」

マンダレイが答える。「もう1人いたのだけど・・・、洸太を助けるといって行ってしまって・・・。ごめんなさい。私、あの子がいつもどこに行っているか知らないの」「誰でしょう」「緑谷という子よ」

 

「おい。コジュウタ。落ち着けよ。な」物間寧人がコジュウタの肩を叩く。「ワカッテマス」コジュウタは片膝をつき、ハンカチでポニーの額を押さえた。ハンカチに血滲む。赤点さえ取らなければ、彼女に側にいられたのにという後悔が彼を苛む。

 

「私は虎の加勢に。ブラドキングは此所で生徒の保護を。イレイザーヘッドはどこ?」「外へ。すれ違わなかったか?」「クソッ、入れ違ったわね」

マンダレイが部屋を飛び出して行く。「なにか情報が入り次第テレパスします!」「頼みます」

 

(コジュウタ=サン)コジュウタは傷ついたポニーを前に、師匠(マスター)、ニンジャスレイヤーからの教育的指導(インストラクション)を思い出していた。

(躊躇しても逸ってもならぬ。心の乱れは、イクサを敗北に導く最大のひとつなり。どんな状況下であろうと己のカラテを高めれば、即ち、揺るぎなし)

養父にして師匠(マスター)、ニンジャスレイヤーはかつて彼にそう説いた。どんな状況下であろうと自らの精神や感情を御し、平常心を保つことの重要性を。それは平均的(ヘイキンテキ)と呼ばれる精神修練のひとつであった。

 

「・・・センセイ」コジュウタは立ち上がり、ブラドキングの前に立った。「オレも洸太=サンの居場所に心当たりがあります」「本当か。どこだ?」「口で説明する時間は無いと状況判断しマス」「・・・ダメだ。お前1人を行かせるわけにはいかん」「子供を見捨てますか?」

険しい視線を向けてくるコジュウタに、ブラドキングは彼の両肩に手を置いて言った。「・・・コジュウタ。お前だって子供だ」

2人は数秒、無言で視線を交しあった。コジュウタの瞳には鬼火めいた青白い光が燻っている。他の生徒は両者の間に流れる殺伐(サツバツ)たる雰囲気(アトモスフィア)を感じ取り唾を呑んだ。

その時だ。マンダレイの個性『テレパス』(テレパス・ジツ)により、脳内に流れる声!

 

(イレイザーヘッドと合流。(ヴィラン)の狙いは生徒であるとの状況判断により、A組B組総員―――プロヒーロー、イレイザーヘッドの名に()いて、戦闘を許可する‼)

 

コジュウタが言う。「センセイ!」ブラドキングは顎に指を当てて思案する。「・・・少し待て」

「オレは滅多に待たない!」「ならば滅多に待て」「ワカッタ!」コジュウタは席に戻り、座った。

そして、大きく息を吸い、大きく息を吐く。「スゥー・・・ハァー・・・」精神を集中させる為、チャドーの呼吸を繰り返す。

「大丈夫かい?」物間寧人がコジュウタに話しかけた。

コジュウタが答える。「本音を言えば、今すぐに(イクサ)に赴きたいデス」

しかし、コジュウタ・フジキドはブラドキング、(かん)赤慈郎(せきじろう)を尊敬し敬意を払う。センセイであり、やはり学ぶべき事は多い。

「そりゃそうさ。僕らのブラキン先生なんだから」物間寧人は言った。信頼が滲み出ていた。

 

思案していたブラドキングは決断する。これは実際、彼の教師生命をかけた決断的状況判断であった。「コジュウタ!準備ができ次第、救援に()け!ただし(ヴィラン)と遭遇してもまずは逃走を第1とせよ!お前の足なら、逃げ切れる筈だ!戦闘はあくまで最終手段と心得よ!わかったな!」

物間寧人は腕を組んで頷く。「ほらね」コジュウタは勢いよく立ち上がった。「ハイヨロコンデー!」

 

ブラドキングの決断的判断にA組生徒から声が上がる。

切島(きりしま)鋭児郎(えいじろう)が言った。「ダチが狙われてんだ!頼みます!オレも行かせて下さい!」

ブラドキングは首を振る。「ダメだ!他の生徒は此所で待機」

飯田天哉も続く。「足になら僕も自信があります!(ヴィラン)の数が不明ならば、戦力は少しでも多い方が!」

芦戸三奈も続く。「戦えって‼相澤先生も言ってたでしょ‼」

コジュウタが必死ならば、彼らも必死だ。友達のピンチになにもできない歯痒さは同じ。

しかし、ブラドキングは彼らとコジュウタを同一視しない。彼らには決定的に、欠けているものがあった。「イレイザーヘッドの判断は自衛の為だ。皆が此所へ戻れるようにな」

「「「でも!」」」尚も詰め寄る彼らにそれを伝えるべきかブラドキングは考えている。

其処に割って入ったのは物間寧人であった。「おいおいおい、A組は奥ゆかしさがないよね」

この場の誰よりも奥ゆかしくない物間寧人は言う。「誰と張り合っているか、わかっている?ハッキリ言ってレベルが違うんだよね」

「どういう意味だよ!それ!」切島鋭児郎が物間寧人に詰め寄る。彼は男気の漢である。売られた喧嘩は買う。鉄哲徹鐵と似たアトモスフィアだ。

しかし、物間寧人は怯むこと無く続けた。「勘違いしないでくれよ。僕と君を比べて言ったわけじゃ無い。僕らとコジュウタを比べての話」

 

切島鋭児郎の視線がコジュウタに向かう。・・・しかしッ、其処には既にコジュウタの姿はない!「なっ⁉いない⁉」「えっ、ナンデ⁉」A組生徒たちが慌てて辺りを見渡すが、教室のどこにもコジュウタの姿はなかった。

「ん」小大唯が空いていた窓から外を指さす。そう、既に彼は窓から飛び出して(イクサ)へのエントリーを果たしていたのだ!一体いつから・・・ブラドキングから「征け」と言われた直ぐ後の事である!ハヤイ!

「即断即決。外野がゴチャゴチャ言う間に、コジュウタは三歩先を行く」物間寧人が語るのは、コジュウタをよく知るB組生徒が少なからず感じていたことであった。

「1日目のサバイバル。僕らが9時間半かけた道のりを、コジュウタは3時間さ」

A組生徒の驚いた声。「嘘だろ⁉」「3時間だと⁉」「お昼に間に合ったの⁉」

物間寧人がヤレヤレと首を振る。「こっちがヤンナルネだよ。それがコジュウタと僕らの間にある距離。アイツはねえ、物語で言うなら主役を張れる器だよ。そして、僕らは・・・ほら、君らの所の彼がよく言っているじゃないか。脇役(モブキャラ)さ」

クラスメイトの爆豪勝己がB生徒に言っていた暴言を思い出し、A組生徒たちは黙り込む。

だが、物間寧人はなにもA組を論破したかったわけじゃない。

 

「だから僕ら(B組)コジュウタ(アイツ)を追いかける。今、感じている悔しさをバネにして、追いつくための努力をする」

 

ただ今は、後学のために安心して見ておけと言いたかったのだ。ニンジャのイクサを。

 

 

 

 

 

マスクをした灰色髪の少年が、森の中を渡る。森は燃えていた。黒煙が周囲に立ちこめる。煙の中を進む少年の目が険しさを増す。此所から出水洸太の秘密基地までの距離は彼の足ならば数分と掛からない。しかし、方角は鬼門(キモン)であった。不吉な三日月が所なさげに浮かぶ。

外は(イクサ)場であった。研ぎ澄まされたニンジャ聴覚が、森のあちこちで鳴り響く(イクサ)場の音を拾う。その度にコジュウタは足を止めたい衝動に駆られたが、最優先すべきは幼き少年、出水洸太の安全を確保することだ。今はプロヒーロー達を、友人達を信じるしかなかった。燃える森の中を熱風が吹き抜ける。この炎の中を駆け抜ける道こそが最短距離だが、実際危険な道だ。

燃える大木がコジュウタの方へと倒木!「イヤーッ!」コジュウタは側転回避ッ!勢いを落とすことなく青黒い疾風(カゼ)と化して走り抜ける!燃える木々は次々と地面に伏せる。既に完全に炭化したモノもある。殺伐(サツバツ)とした雰囲気(アトモスフィア)の中、吹き抜ける青黒い疾風(カゼ)の疾走は、森の中にポカンと空いた木々のない空間で止まった。

「ネホヒャンッ」青緑の肌をした(ヴィラン)が立っている。バイザーと一体化したヘッドギアとビッドギャクを装着したその(ヴィラン)の足元には、おお、なんということか!ラグドールが頭部から血を流して倒れていた!

「其処でナニをしている」コジュウタが問う。(ヴィラン)は振り返り、言った。「ネホヒャンッ」「イヤーッ!」コジュウタが手裏剣(スリケン)を6枚連続投擲ッ!手裏剣(スリケン)虻蜂(アブハチ)めいた軌道を描き、(ヴィラン)に向かうッ!決断的戦闘開始ッ!出水洸太を助けなければならないが、ラグドールを見捨てることも出来ない!コジュウタは目の前の(ヴィラン)を高速戦闘にて討つことを決めたッ!

「ネホヒャンッ!」ヴィランは背中から6本の腕を生やし、手裏剣(スリケン)を叩き落とすッ!6本の腕にはチェーンソーやネイルハンマー、ドリルといった工具がくっ付いていた。

「バイオめいている。まともじゃナイね」コジュウタがジュー・ジツを構えると、バイオ(ヴィラン)は6本の腕を大きく広げた。ギュイィィィン。チェーンソーとドリルが動き出す。「フウーッ!フウーッ!」バイオ(ヴィラン)はノシノシとコジュウタへ近づく。その動きは実際警戒心が欠如していた。コジュウタに対する恐怖というモノが微塵も感じられない。それもそのはず。バイオ(ヴィラン)こと、脳無(のうむ)は恐怖や不安を感じる脳の部位である扁桃体(へんとうたい)を外科手術によって切除されているのだ!コワイ!

脳無はコジュウタまで畳にして約5枚分の距離まで近づく。コジュウタにとっては十分に必殺の間合いである。「イヤーッ!」コジュウタの右手から、手裏剣(スリケン)が3枚放たれる!と同時にコジュウタは跳躍していた!火より早く攻めよ!

投擲された3枚の手裏剣(スリケン)が、脳無の眉間、喉、心臓といった急所に向かって飛来する!

クラスメイトたちを相手にするヒーロー基礎学では使えない禁じられた殺人的手裏剣(スリケン)・ジツだ!

脳無は3本の腕で3枚の手裏剣をガード!そして、残る3本の腕でコジュウタが振り下ろすチョップをガード!チョップをガードした腕の内、2本はチェーンソーだ!ギュイィィィン。チェーンソーがコジュウタの腕を切り落とそうと唸るッ!ナムアミダブツッ!

コジュウタはチェーンソーを蹴り上げ、上空に飛ぶッ!重力を無視した動き!空中で3回転半した後、気合いの声(カラテシャウト)と共にコジュウタの右腕が鞭のようにしなり、目にも止まらぬ速度で2枚の手裏剣(スリケン)が射出される!「イヤーッ!」「ネホヒャンッ⁉」手裏剣(スリケン)が脳無の両目を直撃!バイザーを破壊!通常なら(イクサ)を決着させるワザマエ!しかし、脳無は怯むことなくコジュウタを追って上空ジャンプ!「ネホヒャンッ!」2本の腕を地面に着けた蛙めいたジャンプだったが、コジュウタは脳無のカエルジャンプを予測していた。コジュウタは脳無の頭を踏みつけ、さらに高くジャンプ!「イヤーッ!」「ネホヒャン!」

 

コジュウタの右腕が鞭のようにしなり、目にも止まらぬ速度で2枚の手裏剣(スリケン)が射出される!「イヤーッ!」「ネホヒャンッ⁉」手裏剣(スリケン)は脳無の6本腕の内の2本に突き刺さった!

更にコジュウタの左腕が鞭のようにしなり、目にも止まらぬ速度で2枚の手裏剣(スリケン)が射出される!「イヤーッ!」「ネホヒャンッ⁉」手裏剣(スリケン)は脳無の残る4本の腕の内の2本に突き刺さった!

更にコジュウタの右腕が鞭のようにしなり、目にも止まらぬ速度で2枚の手裏剣(スリケン)が射出される!「イヤーッ!」「ネホヒャンッ⁉」手裏剣(スリケン)は脳無の残る2本の腕に突き刺さった!

 

6本腕全てを無力化したコジュウタは再びチョップを脳無に振り下ろす!「イヤーッ!」「ネホ⁉」手刀が右鎖骨を砕き、胴体にめり込む!

コジュウタは更にもう一方の手でチョップを脳無に振り下ろす!「イヤーッ!」「ヒャンッ⁉」手刀が左鎖骨を砕き、胴体にめり込む!

「イヤーッ!」コジュウタは続けざま、両手をめり込ませたままカラテ・スプリングキック!

「ネボォッギャンッ⁉」脳無の身体は独楽(コマ)のように回転しながら吹っ飛び、地面をゴロゴロと転がった。

「ゴウランガ!」コジュウタは残心(ザンシン)を忘れない。脳無のことをカラテ警戒するが、起き上がってくる様子はなかった。

 

 

 

 

 

「ハッ、ハッ」息を切らしながら森の中を駆け抜ける緑髪の少年がいた。A組生徒、緑谷出久である。その背には出水洸太がしがみ付いている。緑谷出久の身体はボロボロであった。

それもそのはず。彼は恐るべき殺人(ヴィラン)、マスキュラーとの(イクサ)を終えたばかりである。

そう!驚くべきことにこの地味目の少年は、出水洸太の秘密基地にやってきたマスキュラーを打ち破り、彼を救い出すことに成功していたのだ!実際大金星(キンボシ・オオキイ)だ!

マスキュラーを打ち破るほどの緑谷出久の個性(チカラ)とはなにか・・・残念ながら今は申し上げることが出来ない‼

 

「緑谷兄ちゃん!ほら、あれ!」出水洸太が指を差す。そこには反対方向から駆けてくる灰色髪の少年がいた。コジュウタである。コジュウタの腕にはラグドールがお姫様抱っこで抱え上げられていた。

「ドーモ。緑谷=サン」(イクサ)場故にコジュウタは略式挨拶(アイサツ)

「ど、どーも。フジキドくん」「コジュウタでドーゾ。洸太=サンも無事でヨカッタ」「うん。緑谷兄ちゃんが助けに来てくれたから」

緑谷出久の身体はボロボロであった。特に両腕の怪我はヒドイ。だらりとぶら下がるだけの腕は、彼が経験した殺伐たる(イクサ)を一目で理解させるモノであった。

「キンボシ・オオキイ!緑谷=サン。オツカレサマでした」「あ、ありがとうございます」「後の救助はオレが引き継ぎましょう。緑谷=サンは洸太=サンとラグドール=サンを連れて避難を」

コジュウタの提案に緑谷出久は首を振る。「え、まっ、待って下さい!」

しかし、コジュウタは言う。「ダイジョブダッテ!ラグドールの身体を前にくくりつけます。幸い、此所からマタタビ荘までは近い。緑谷=サンなら、辿り着けるでしょう。だから、ダイジョブダッテ!」

緑谷出久と合流できたことで、ラグドールをマタタビ荘まで送り届ける時間を節約できたことは幸いだ。森はまだ燃えている。森を覆う綿飴めいた毒ガスも消えていない。

「助けを求めている。オレは赴かねばなりません」「僕も、マンダレイに伝えなきゃいけないことがあって・・・大変なんです。だから、コジュウタくんに、洸太くんをお願いします。水の“個性”です。絶対に守って下さい!お願いします!」

緑谷出久は出水洸太を地面に降ろすと、コジュウタ達を置いて行こうとする。

「マテッコラーッ!」コジュウタの口から出たのはヤクザ言葉(スラング)だ!コワイ!

実際側にいた出水洸太は震えていた。緑谷出久も驚き、足を止める。

コジュウタは表情を切り替え言う。「落ち着きましょう。情報共有デス。大変な事とはなんですか?」

緑谷出久が言う。「(ヴィラン)の狙いがわかったんだ。かっちゃんが狙われてる。それと・・・君もだ。コジュウタくん」「爆豪=サンとオレが?アイエエ、ナンデ?」「わからないけど、君たち2人は体育祭で目立っていたから。狙われたのかも知れない」

雄英体育祭は全国放送された。1年生ステージの同率1位であったコジュウタと爆豪勝己の知名度は実際高い。そんな2人が学校行事で(ヴィラン)に襲われた。確かにセンセーショナル。殺害や誘拐されようものなら、雄英の権威は地に落ちるだろう。これは(ヴィラン)の狡猾な作戦であった。

「だから、コジュウタくんには、洸太くんを連れて避難して欲しいんだ」緑谷出久の言葉は正しい。しかし、コジュウタは首を振った。「なんでさ!」焦る緑谷出久が詰め寄る。

コジュウタは言う。「緑谷=サンの怪我は尋常じゃない。避難すべきは実際アナタだ」コジュウタの言葉も正しい。

「君が避難して!」「いえ、アナタが避難すべきだ」「君だって!」「アナタだ!」

平行線に見えた会話を終わらせたのは、目を覚ましたラグドールだった。「キティたち・・・うるさいニャン」「「ラグドール(=サン)!ヨカッタ!」」

コジュウタの腕から降りたラグドールは出水洸太の手を取りながら言う。「私が洸太君を避難させるから、2人でマンダレイの所へ。無理はダメよ。伝え次第、2人も避難するの。わかった?」

「わかりました!」「ハイヨロコンデー!」2人はかけ出した。助けを求められている!その思いが2人を突き動かすのだ。

 

2人の姿は直ぐに森の中に消えた。出水洸太が言う。「2人とも・・・大丈夫かな」

目には涙が滲み出ていた。「僕・・・緑谷兄ちゃんのこと殴ったんだ・・・。コジュウタ兄ちゃんにも酷いこと言ったし・・・。僕、まだごめんも・・・ありがとうも・・・!言えてないんだよ・・・!」

ラグドールは出水洸太を抱きかかえ、走り出しながら答える。「大丈夫にゃん。緑谷キティのことはよく知らないけど、もう1人の子は強いのよ。全部終わったら、一緒にありがとうって言おうね」

「うん」出水洸太は涙を拭う。ラグドールは笑った。「大丈夫。()()()()()()()()()()()()」「・・・え?」出水洸太が顔を上げる。そこにあるのは見慣れたラグドールの大きな眼。しかし、それは・・・出水洸太の知らない眼だ。「お前・・・誰だ・・・?」

震え上がる小さな身体を逃がさぬように捕らえながら、ラグドールは嘲笑(わら)った。

その笑顔がドロリと溶ける。「アイエエエ!」「アハハ、アハハ」「アイエエエ!助けてッ、助けンー!ンー!」「コタロー君は耳が良いから、叫んじゃダメなのです」「ンー!ンー!」「アハハ、コタロー君にまた助けて貰っちゃいました。やっぱりカッコイイのです」

 

(ヴィラン)、トガヒミコは恍惚な表情で不気味に笑う月を見上げた。

 

 

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