ドーモ。ヴィランスレイヤーです。これはニンジャが来てヴィランを討つ物語。   作:白白明け

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今更ですが、ヒロアカの小説版、雄英白書を読み始めました。オフの日のヒロアカキャラが見られて、とても楽しいです。
原作にはない、ほのぼの日常は必見です!
ただ2巻の峰田=サンの行動には、心優しい読者諸君も眉を潜めてしまうことでしょう。彼ならばやりかねない。いや、やるでしょう。しかし、実際にやったら停学では…?アイエエ…。

雄英白書の千分の一くらい、皆さまの暇つぶしになれば幸いです
\(^o^)/




林間合宿⑧

 

鬱蒼とした森の中。カラテ警戒をしながら進んでいたコジュウタの足が止まった。進んでいた獣道。その行く先が二手に分かれていたのだ。それぞれの方向から感じ取れる殺伐(サツバツ)たる(イクサ)雰囲気(アトモスフィア)忍者(ニンジャ)の鋭敏な感覚が感じ取る。

 

コジュウタは言った。

 

「二手に別れましょう」

 

緑谷出久は首を振る。

 

「うん」

 

彼らは共に此所まで来た。しかし、それは向かうべき方向が同じだっただけのことだ。怪我を負った緑谷出久のことをコジュウタは気にかけるが、ずっと一緒と言うわけにもいかない。

 

「無理は禁物デス。ワカッタ?」

「うん。フジキド君も気をつけて」

 

コジュウタよりも先に緑谷出久が茂みの中に消えていく。その足取りに迷いは無い。クラスメイトの窮地(ピンチ)を前に、身体が勝手に動いていた。

 

「彼が弱いと・・・?」

 

コジュウタは爆豪勝己の言葉を思い出す。爆豪勝己との雑談の中で、時折、彼、緑谷出久の名前が出た。幼馴染みという関係性。爆豪勝己が緑谷出久の名を口にする時、それは常に罵倒と共にあった。

短い付き合いだが、爆豪勝己の口の悪さを知っているコジュウタにして、眉を潜めてしまう類いの汚い言葉(スラング)。だが、実際に言葉を交して見れば緑谷出久という少年は弱さとは無縁な傑物に思えた。

爆豪勝己と己との認識のズレ。その歪さに気づきながらも、答えは出せない。

 

「イヤーッ!」コジュウタは気持ちを切り替え、森の中を疾走する。

 

そして、殺伐(サツバツ)たる戦へのエントリーを果たした。

 

 

 

BLAM!BLAM!BLAM!銃声が響く。鉄哲徹鐵&拳藤一佳VSマスタードの(イクサ)は佳境を迎えようとしていた。

 

(サイ)は投げられた」

 

マスタードが言う。

 

2丁拳銃を交差(クロス)させたカラテ姿勢のままに鉄哲徹鐵と拳藤一佳を見る少年には余裕があった。僅かに息を切らせているが、その目は油断なく冷静だ。対して鉄哲徹鐵と拳藤一佳には余裕がなかった。肩で息をする2人。2対1という構図の優位性を覆すだけの実力(カラテ)をマスタードが有している。眼前たる事実であった。

 

「まさに賽は投げられた。(ヴィラン)連合という埋め火。この小さな炎を消す事なく吹き荒らす事が叶うなら、ヒーロー社会という幻像は消え去り、その土壌に革命という美しい花々が咲き乱れるんだ。・・・優れた者だけが優遇される社会。不平等だ。僕ら(ヴィラン)という弱者が、ヒーローという強者を屠る。これは僕らにしかできない。弱者である、僕らの義務さ‼」

 

マスタードの怒声が雷のように2人を打ち据えた。その怒声に2人は僅かに怯む。

マスタードが最初に言った2~3人は殺すと言った言葉。嘘も偽りも無かった。拳銃の銃弾は拳藤一佳にとって当然の如くに致命的であり、ピストル・カラテは鉄哲徹鐵の肉体を持ってしても致命的なダメージを蓄積させた。

雄英というヒーロー科の最高峰。そこに所属する自分達は強者であるという自負が2人にはあった。しかし、彼らは未だに発展途上。熟成を待つ青い果実に過ぎない。

だが、おお!見よ!2人の目から闘志は消え去っていない!

 

「悪が弱くて、正義が強えェ。それのどこが間違ってんだァ?ヒーローが強くて、誰が困るってんだァ‼」

 

鉄哲徹鐵が踏み込む!

 

「イヤーッ!」

 

マスタードの銃撃!

 

「イヤーッ!」BLAM

 

それ掻い潜り鉄哲徹鐵が接近!アイアンアッパー!

 

「イヤーッ!」

 

マスタードが反動カラテで弾く!衝突!

 

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

2人の間に生まれた僅かな隙!反応速度は・・・僅かにマスタードが速い!

銃口が鉄哲徹鐵の顔に、その中でも最も柔らかい部分である眼球に向けられる!

ここで拳藤一佳のインターセプト!巨拳が振るわれる!

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

マスタードは手痛い反撃を受け、数十センチ宙に浮き上がった。

 

「イヤーッ!」

 

その隙に鉄哲徹鐵が瞬時に踏み込み、浮かび上がったマスタードに左右の拳を叩きこんだ。

 

「グワーッ!」

 

更に吹き飛ぶマスタード!

拳藤一佳の無慈悲な追撃!

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

マスタードはワイヤーアクションめいて吹き飛ばされ、木の幹に身体を打ちつけた。

 

身体から力が抜け、ズルズルと地面に座り込むマスタード。“勝っている時がアブナイ”。ミヤモト・マサシのあまりにも有名な(コトワザ)。油断大敵。鉄哲徹鐵と拳藤一佳を前にマスタードは気を緩めるべきではなかったのだ。

 

「ゲホ、ゲホッー、テメェのどこが弱者だァ。糞ガキ」

「鉄哲。大丈夫か?」

「ああ、問題ねェ。けど、このレベルの(ヴィラン)があと何人、居やがるゥ。他の奴らが危ねぇぜェ」

「そうだね。ガスも晴れたし、速く皆と合流しよう。ああ、その前にコイツを拘束しないと・・・」

 

拳藤一佳がマスタードに近づく。彼女もまた気を緩めるべきではなかったのだ。

 

BLAM!銃声。

 

「ンアーッ!」

「拳藤ォ⁉」

 

拳藤一佳が顔を押さえて地面に蹲る。

吹き飛ばされても尚、離すことのなかったマスタードの拳銃から硝煙が上がっていた。

 

「拳藤ォ!オイ!しっかりしろよ!」

 

鉄哲徹鐵が拳藤一佳に駆け寄る。顔を撃ち抜かれた。普通なら即死だ。しかし、幸いにもマスタードの弾丸は拳藤一佳の顔の左側を僅かに掠めていく軌道。外れていた。

しかし、その際に生じた衝撃波が左眼球に伝わり・・・おお!南無三(ナムサン)

拳藤一佳の視界の左半分が真っ赤に染まっていた!

 

「ごめん。鉄哲・・・油断した・・・」

 

拳藤一佳の奥ゆかしい謝罪。自分の身に起きた悲劇を押しのけ、他者を慮る言葉に鉄哲徹鐵が吠えたッ!

 

「ウオオオオオゥ‼許さねぇぞ‼糞ガキッ‼殺してやる‼」

 

ヒーロー科らしからぬ汚い言葉(スラング)

それは実際、爆豪勝己が日常的に口にする言葉ではあったが、よもや鉄哲徹鐵の口から出ようとは!コワイ!

大股でマスタードに近づきヤクザ・キック!

 

「ザッケンナコラー!」

「グワーッ!」

 

右手から拳銃を弾き飛ばす!

続いてのヤクザ・キック!

 

「スッゾコラー!」

「グワーッ!」

 

左手から拳銃を弾き飛ばす!

 

「ザッケンナコラーッ!」

「グワーッ!」

 

鉄哲徹鐵が小柄なマスタードの身体を、襟首を掴んで乱暴に持ち上げる!

マスタードは笑っていた。

 

「ほら、見ろ。ヒーロー志望なんて、一皮剥けば僕らとなんら変わらない。今の君はまるで(ヴィラン)だ!」

 

鉄哲徹鐵は襟首を掴む手に力を込め、マスタードの首を締め上げる!

 

「シネッコラー‼」

「ゲホ、ゲホッー、あ、ハハ、殺せば・・・いいさ。ゲホッー、僕が死んだところで、革命の火が絶えることはない。僕がそうであるように・・・革命の意志を継ぐ者が・・・必ず現われる・・・」

 

マスタードは両腕をダラリと垂らした。既に抵抗の意志はない。あの女、拳藤一佳を殺せなかったことは残念だが、この男、鉄哲徹鐵の矜持を砕けるのなら十分だと考えていた。

 

『テメェに誰も殺させねぇ覚悟なら十分にあるぜェ』

 

戦いの前に鉄哲徹鐵が吐いた。癪に障る言葉。マスタードは確かに誰も殺せなかった。しかし、マスタードが鉄哲徹鐵にマスタードを殺させるのだ。これ程に痛快な戯言もない。

 

「富める者が居る限り・・・人民が戦いを止める日は絶対に来ない!」

「うるせぇッ!黙れコラーッ!殺してやる‼殺すぞコラーッ!」

「やって、みろよ。言葉のままに、()ってみろよー!」

「ウガーッ‼」

 

その時だ。ヒュン、と風が鳴った。

マスタードを締め上げる鉄哲徹鐵の腕に手裏剣(スリケン)が突き刺さっていた。

 

「グワーッ!」

 

鉄哲徹鐵がマスタードを手放す。

 

「ゲホ、ゲホッー」

 

マスタードの生存本能が大きく息を吸わせた。

 

「やりすぎデス。徹鐵=サン」

「ハァーッ、ハァーッ・・・」

 

鉄哲徹鐵の息が乱れる。彼の瞳は壊れかけのデジタルカメラめいて、覚束(おぼつか)ないフォーカスの試みを繰り返す。揺らぐ視界に映るのは、森の中からゆっくりと歩み寄る灰色髪の少年、コジュウタだ。

 

「徹鐵=サン。貴方いま、危険な状況デス。盲目的憤怒が制御できず、貴方自身も望まぬ事をしようとしていた」

 

鉄哲徹鐵を落ち着かせる為の静かな口調。しかし、滲み出る殺伐(サツバツ)たるアトモスフィアをコジュウタは隠そうともしていなかった。

もし、自分の言葉が今の鉄哲徹鐵に届かぬのなら、躊躇なく再び手裏剣(スリケン)を投擲するだろう。その覚悟があった。

 

「戦意を喪失した者も見境無く殺す。見境無く殺す獣と化すのなら、それこそはオレが・・・いえ、オレ達が最も忌み嫌い嫌悪する、(ヴィラン)の所業そのものデス。そうでしょう。徹鐵=サン」

 

コジュウタの言葉で鉄哲徹鐵は己のやろうとしていたことを自覚して、心から悔いた。

そして、自分が本当に為すべきだった事を思い出す。

 

「コジュウタ!すまねェ。拳藤が、拳藤が撃たれた。撃たれたのに、俺ァ・・・⁉」

「直ぐに手当をしましょう。手伝って下さい」

 

2人はマスタードから背を向けて、拳藤一佳の手当を開始する。

マスタードは呆然とした。

放って置かれている?自分が?ナンデ?

 

「おい!お前ら!コッチみろよ!」

「拳藤ォ!しっかり気を持てよ!」

「大丈夫デス。傷は浅い。失血も軽微デス」

 

「コッチ向けって言ってんだろ!」

 

マスタードが叫ぶが、2人は無視だ。

 

「ふざけんなよコラ!」

 

マスタードが拳銃を拾い、向ける。

コジュウタが振り向きもせずに手裏剣(スリケン)を後方に投擲!

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

マスタードの手から拳銃を弾き飛ばす!

応急処置の手を止めぬまま、コジュウタは地獄の底から響くような冷たい声色で言った。

 

「強請るな。今、貴方に拘っている暇はありまセン」

 

マスタードは羞恥と屈辱に塗れながら、奥歯を噛み締めた。

そして、呪い(ノロイ)めいた言葉を吐く。

 

「ザッケンナコラー!人民の代表者たるこの僕が、そんな女の怪我より軽いってのか‼僕はマスタード!偉大なる同士の意志を継ぐ者ッ、革命戦士マスタードだ‼」

 

マスタードが落とした拳銃を拾い、連続前転。

そして、もう一つの拳銃を拾い上げると隙の無いカラテモーションを行い、暗黒武道ピストルカラテを構えた!

 

「イヤーッ!」

「・・・ヤンナルネ。貴方が人民の代表者?いつ、アンケートを取った?」

 

応急処置を終えたコジュウタが立ち上がる。

そして、マスタードの前に立ちはだかる。

コジュウタは鉄哲徹鐵に言う。

 

「拳藤サンを連れてマタタビ荘へ避難を。彼の相手はオレがします」

 

鉄哲徹鐵は首を振った。

 

「悪ィな。頼んだァ」

 

鉄哲徹鐵が拳藤一佳を背負って走り去る。

マスタードはその背を銃撃しようとしたが、立ちはだかったコジュウタの隙の無さに動くことができなかった。

 

「お前・・・なんなんだ?」

 

此所でようやくコジュウタの挨拶(アイサツ)

 

「ドーモ。マスタード=サン。コジュウタ・フジキドです・・・」

 

これは実際異常事態(イレギュラー)(イクサ)とは挨拶(アイサツ)に始まり、介錯(カイシャク)によって終わるもの。相手が(ヴィラン)であるなら、尚更のこと。その通常をコジュウタが忘れていた訳ではない。

ただ負傷した拳藤一佳とポニーの姿が重なって・・・ああ、コジュウタとて鉄哲徹鐵と同じように冷静ではいられなかったのだ。

 

「・・・いえ、違うナ」

 

おお、見よ!両手を合せた奥ゆかしい挨拶(アイサツ)を行うコジュウタの身体から溢れ出す陽炎めいたアトモスフィアを!

着ていた雄英のジャージが歪み、青黒い忍者(ニンジャ)装束へと変貌していく様を!

溢れ出す血中ニンジャカラテの成分によって組み上げられていく腕鉄甲(ブレイザー)面頬(メンポ)面頬(メンポ)に刻まれる『敵』『討』の殺伐たる伝説的(エンシェント)漢字(レリーフ)を!

 

「ドーモ。ヴィランスレイヤーです」

 

直後、マスタードの身体は震え上がった。

 

(馬鹿な。僕が・・・震えている⁉)

 

それは日本人の魂に刻まれた忍者(ニンジャ)に対する根源的恐怖!マスタードは実際立派であった。ただの常人(モータル)であったなら、直ぐさまNRS(ニンジャリアリティショック)を発症し、失禁気絶していただろう。

だが、革命戦士に失禁はない。マスタードは身体の震えを止める為、決意を言葉に変えた。

 

「純粋闘争します」

 

「イヤーッ!」

 

ヴィランスレイヤーが迫るッ!

BLAMBLAMBLAM!拳銃の連射が迎え撃つ!

 

「イヤーッ!」

 

ヴィランスレイヤーは弾道を易々と見切りながら接近!

 

(ヤバいヤバいヤバい!)

 

マスタードは歯噛みしながら、尚もトリガーを引いた。あと2発撃つまでに、ヴィランスレイヤーは懐に飛び込んでくるだろう。

 

「口ほどにもない。貴方には奥ゆかしさがまるで足りない」

 

ヴィランスレイヤー嘲笑った。BLAM!

ヴィランスレイヤーが迫る!BLAM!

ヴィランスレイヤーが迫る!

 

「イヤーッ!」

 

ヴィランスレイヤーが懐に潜る!

 

マスタードは渾身のカラテ!

 

「イヤーッ!」

 

右の拳銃射撃反動を用いたピストルカラテ!マスタードの上半身が沈みながら回転し、鋼鉄銃底(じゅうしょう)でスピニング・裏拳(バッグナックル)を前方に叩きこむ!

 

「イヤーッ!」

 

ヴィランスレイヤーはこれをブリッジ回避。このブリッジ回避(ムーブメント)自体は、拳藤一佳との(イクサ)で目撃している。故に驚くべきは其処ではない。

ブリッジ回避の速度(スピード)制御姿勢(ポイント)無駄の無さ(キレ)、全てが拳藤一佳の見様見真似とはレベルが違う!元より忍者(ニンジャ)のブリッジはただの回避動作(ムーブメント)に非ず・・・攻撃に転ずる準備動作(ムーブメント)であることを、聡明な読者諸君ならばご存じだろう‼

ヴィランスレイヤーは仰け反った姿勢のまま後ろへ回転しながら蹴り上げた。

 

カラテ奥義、サマーソルトキックだ!

 

ピストルカラテによる迎撃は間に合わない。マスタードは咄嗟に両腕でガードを固める。

サマーソルトキックが命中!

 

「グワーッ!」

 

ラグビーボールめいて吹き飛ばされるマスタード!

ガードの上からでもダメージは甚大であり、彼は自分の両腕の骨が粉砕骨折する音を聞いた。

 

「どうした?」

 

ヴィランスレイヤーは油断ならぬカラテを構えながら、肩で息をするマスタードを見下ろした。

シュコー、面頬(メンポ)から湯気が漏れる。高温化した体温が、吐息を水蒸気へと変えたのだ。

 

「純粋闘争とやらを見せてみろ」

 

ヴィランスレイヤーは油断ならぬカラテ姿勢のままじりじりとマスタードへ近づく。

(ヴィラン)、討つべし。復讐のアトモスフィアを纏う忍者(ニンジャ)は、まだ闘争を望んでいる。

だが、南無三(ナムサン)。マスタードの両腕は粉砕骨折済み。もう拳銃を握ることはできない。ピストルカラテは死んでいた。

 

マスタードは小刻みに息を吐き、冷静さを維持する。今にも相手の殺意に圧され、失禁してしまいそうだった。これ以上の戦いは自殺行為以外の何物でも無いと、脳細胞(ニューロン)が警告する。敵と己の力の差は歴然。コジュウタが忍者(ニンジャ)装束を纏った瞬間に魂が訴えた根源的恐怖は正しかったのだ。

今のマスタードがニンジャと真正面からやり合うなど、突進してくるダンプカーに無策で突っ込むようなものだったのだ・・・。

 

「ま、待て。待ってくれ」

 

マスタードは緊張で心臓が爆発しそうだ。

 

「ああ、解った、悪かった。ごめん。落ち着け、落ち着いてくれ。僕はもう戦えない。見てよ、ほら、腕がもう折れている」

 

ヴィランスレイヤーが無残に折れ曲がったマスタードの両腕をちらりと見る。歩みを止めた。

マスタードは安堵しながら、立ち上がりヴィランスレイヤーの前に立つ。

 

「自首するよ。反省した。だから、許してくれ」

 

マスタードの口から出た謝罪の言葉。

だが、ヴィランスレイヤーは…

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

マスタードの折れた手首を掴み上げ、内側に向けて捻り上げる!

 

「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」

 

マスタードが上げる苦悶の悲鳴(こえ)

 

「ヤめて止めてやめてぇ!」

「イヤーッ!」

 

涙でにじむ視界に回転蹴りが急接近し、視界いっぱいに広がった。

そして、マスタードはなにも見えなくなった。

 

 





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