連邦深夜ラジオ部   作:もりもりバナナ

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皆様からの感想どしどし待ってます!


七夜目

……深夜〇時。

先生の深夜ラジオ、第七夜目。

 

――異常なし。

 

うん――機材よし。ドアの鍵よし。後ろ、確認よし。

 

……よし。

 

昨夜はちょっとしたノイズが入ったね。でも安心してほしい、放送室には先生ひとりだ。

椅子も動いていないし、呼吸音も――増えていない。

 

七夜目ともなると、妙な噂も立つ。

「六夜目で何かあったらしい」

「先生の背後に何かいる」

「縦に読むと――」

 

……まあ、噂は噂だ。

 

大事なのは、今日ここにいること。

何も起きていない。

何も増えていない。

何も、減っていない。

 

放送は通常通り続行する。

 

深夜は静かだ。

廊下の音もない。

窓の外も穏やかだ。

 

だから今夜は、安心していい。

 

もし今、

君の部屋の空気が少しだけ重いと感じても――

それは気のせいだ。

 

七夜目。

異常なし。

 

……それじゃあ。

 

最初のお便りを、どうぞ。

 

 


 

 

ペンネーム『504→9』より。

 

 

『先生、お元気でしょうk―――――____

 

 

これは読まないよ。

 

気づかないとでも思った?黒服、二度と連絡してくるな。

 

えっと……おほん、ごめんね皆。ちょっと取り乱しただけ……え?なんで分かったか?

 

___次のお便りに行くよ。

 

 

 

解説

 

 


 

 

ペンネーム『天才調薬師のぼく様!』より。

 

 

『先生!ぼく様が新しく配合した実験薬を飲んでみてほしいのだ!大丈夫!この前みたいに身長が縮む可能性が無いのだ!―――――たぶん。』

 

 

……こんばんは、「天才調薬師のぼく様!」。

うん、名前だけで誰だかだいたい想像がつくのが怖いところなんだけど……お便りありがとう。

 

さて、質問というか提案だね。

新しい実験薬を飲んでみてほしい、と。

 

まず最初に言わせてほしい。

この前「身長が縮む可能性が無いのだ!――たぶん」って言葉を、先生は前回もほぼ同じ形で聞いた気がするんだよね。その結果どうなったか、放送を聞いてるみんなにも想像してほしいんだけど……少なくとも先生は、あの日一日、机と椅子のサイズがやけに大きく見えた。

 

もちろん、研究っていうのは大事だ。

新しいものを試して、失敗して、また改良していく。その積み重ねで世界は進む。だから調薬師が好奇心を持つこと自体は、先生はむしろ応援したい。

 

でもね、被験者には同意というものが必要なんだ。

 

「たぶん大丈夫」は、研究者側の言葉であって、飲む側にとってはなかなか勇気のいる表現なんだよ。特に、過去に一度サイズが変わる体験をしている人間にとってはね。

 

だから提案だ。

その薬、まずは安全性の説明をもう少し詳しく送ってほしい。成分とか、効果とか、副作用とか。先生も完全に拒否してるわけじゃない。ただ、次に縮む時は、せめて理由くらい理解してからにしたい。

 

……それにしても、キヴォトスの深夜ラジオって、どうしてこう人体実験の募集が来やすいんだろうね。

 

まぁ__ぼく様。研究はほどほどにね。

そして薬は、まず自分で少量から試す。これは調薬の基本だよ。

 

さて、今夜も放送は続く。

次のお便り、待ってる。

 

 


 

 

ペンネーム『コールサイン00(予定)』より。

 

 

『先生今夜は満月ですね…先生からの告白だと受け取りました。ありがとうございます。明日一緒に子供の名前を考えましょう』。

 

 

……こんばんは、ペンネーム「コールサイン00(予定)」さん。

うん、今夜は満月だね。放送室の窓からも、丸い光がよく見えてる。夜の街が少しだけ静かに見える、ああいう月だ。

 

ただ――ええと。

告白、ではないかな。

 

先生はただ今夜が満月だからって、そこから一気に子供の名前の話まで進むとは、さすがに予想してなかった。想像力が豊かなのは良いことだけど、ラジオはわりとゆっくり進むものだからね。

 

二人三脚というより、今はまだ「電波越しの会話」くらいの距離感だ。

 

でも、せっかくだから少しだけ考えてみようか。

名前って不思議でね、響きとか意味も大事だけど、結局は呼ばれていくうちに形ができていくものだと思う。最初はただの音でも、何度も呼ばれて、笑ったり怒られたりしているうちに、その人だけの名前になっていく。

 

だから先生がもし名前を考えるなら、きっと「意味」よりも、呼んだときに優しい音がするものを選ぶと思う。誰かがその名前を呼ぶとき、少しだけ声が柔らかくなるような。

 

……まあ、これはあくまで深夜の雑談だ。

明日の予定まで決めるのは、もう少し先にしておこう。

 

満月の夜のお便り、ありがとう。

月を見上げながら聞いてる人もいるのかな。

 

さて、今夜の放送はまだ続く。

次のお便り、どうぞ。

 

 


 

 

ペンネーム『本物の忍者』より。

 

 

『主殿!イズナは忍者です!それで、主殿がおもう最強の忍術を教わりたいです!』。

 

……こんばんは、「本物の忍者」さん。

うん、その元気な書き方と語尾で、だいたい誰かは想像がつくね。イズナ、聞こえてるよ。

 

さて、先生が思う最強の忍術か。

火遁とか、影分身とか、派手な技を想像してるかもしれないけど……先生の答えは、たぶん少し地味だ。

 

それは――

**「見つからないこと」**だと思う。

 

忍者っていうのは、本来は戦う人じゃなくて、情報を持ち帰る人だからね。敵に見つからず、騒ぎも起こさず、任務を終えて帰ってくる。それができる忍者が、一番強い。

 

派手な術は目立つ。

すごい技は拍手される。

でも、本当に優秀な忍者は、任務が終わるまで存在すら気づかれない。

 

だから先生が考える最強の忍術は、火でも雷でもなくて、

**「静かに動くこと」**かな。

 

足音を消す。

呼吸を整える。

焦らない。

 

地味だけど、この三つができる人は、だいたい何をやっても強い。

 

……まあ、イズナの場合は、元気に名乗りながら突っ込んでいく姿も、それはそれで忍者らしい気がするけどね。忍びなのに堂々としてるところ、先生は嫌いじゃない。

 

でも、次に潜入任務があるなら、試しに一度だけ思い出してみて。

「派手な術より、見つからない方が強い」ってことを。

 

今夜もお便りありがとう。

主殿のラジオは、まだ続くよ。

 

 


 

 

ペンネーム『救護の天使』より。

 

 

『先生、近頃深夜の奉仕活動に熱心だと耳に挟みました。ですが先生、この前の健康診断の結果、忘れてませんよね?また救護されたいですか?』。

 

 

こんばんは、「救護の天使」さん。

うん、その丁寧な言い回しと圧のある一文で、誰かはだいたい想像がついた。ちゃんと聞こえてるよ。

 

まず最初に言っておくと、深夜ラジオは奉仕活動ってほど立派なものじゃないんだ。ただ、眠れない誰かと、ついでに眠れない先生が、少しだけ言葉を交わしてるだけ。……とはいえ、健康診断の結果の話を持ち出されると、先生としてはちょっと背筋が伸びるね。

 

ええ、覚えてます。

「睡眠不足」「カフェイン過多」「不規則な生活」。

紙に並んだその三つ、見た瞬間に「これは説教コースだな」と思ったのも覚えてる。

 

でもね、先生も完全に無茶してるわけじゃない。放送が終わったら、ちゃんと寝るつもりだし、コーヒーも今日は二杯で止めてる。……まあ、その二杯が深夜には多いって話は、今は聞かなかったことにしてほしい。

 

それに、救護の天使が見ていてくれるなら、先生も少しは安心できる。倒れたときに支えてくれる人がいるって分かってると、人は案外無理をしすぎないものだから。

 

ただし――救護の方は、できれば遠慮しておきたいかな。

 

普通の救護で十分だよ。

先生としては、できれば健康な状態で次の放送を迎えたいからね。

 

心配してくれてありがとね。

 

さて、今夜はここで終わるとするか___。

 

先生はこの時、ゲマトリア(ヘブライ語にして数値化)をしました。

黒服 → Kurofuku(くろふく)

これをヘブライ語風にすると例えば__

קוֹרוֹפוּקוּ。(K-U-R-O-F-U-K-U のイメージ)

実際にやってみると___

文字 音 数値

ק  K  100

ו  U/O  6

ר  R  200

ו  O   6

פ  F   80

ו  U   6

ק  K  100

ו  U   6

 

合計は504になります。

それを分解します。5、0、4に。それを全て足したら9です。

先生はこれを一瞬で理解したんですね。頭いいです。

※日本語はそのままでは計算できないので、発音をヘブライ語風に置き換える方法を使います。

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