個性:斬魄刀ガチャ   作:らいこう

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第12話 USJ編4

 

 

 火災ゾーンへと進む道中。

 上鳴を八百万が支え、俺は先頭を行く。

 

 少し状況が落ち着いたところで、八百万がずっと胸に秘めていたような問いを投げかけてきた。

 

「玩具さん、一つ伺ってもよろしいかしら。『死神』と呼ばれるヴィジランテについて、ご存知?」

 

「……ああ、知ってたのか。耳が早いな」

 

 俺は隠し通すのを諦めたように、小さく息を吐いて言葉を返した。

 

「まあ、察してるだろうがあれは俺のことだ。雄英に入る前までは、ヴィジランテ活動をしていた。その時の呼び名が『死神』だ。因みに、自称じゃねぇからな。勝手につけられた二つ名みたいなもんだ」

 

「やはり……! 確かに、あの方が姿を消した時期と、あなたが雄英に入学した時期が符合しますわ。腑に落ちました」

 

 八百万は納得したように頷く。

 先ほどの俺の戦いぶりと、巷で噂される『死神』の情報が、彼女の中で一つに繋がったようだった。

 

「ちょうどいい。歩きながら、さっき俺が暴走した理由についても話しておこう」

 

 俺は前を見据えたまま、頭の中でまとめた答えを言葉に出していく。

 

「俺の体には『霊力』っつう、エネルギーが宿ってる。ヴィジランテ時代は実戦の中でそれを発散できていたんだが、入学してからというもの消費量が極端に減った。結果、出口を失った霊力が脳内に『戦え』と指示をだした。それが原因で俺は暴走したわけだ。一番効率よく霊力を吐き出せる手段が戦闘だったから、脳がそっちに引っ張られたんだろうな」

 

「供給過多による暴走……それでは、これからもその問題はつきまとうのでは?」

 

「安心しな。俺にも考えがある。前に才能がなくて諦めたことに、改めて挑戦してみようと思ってな。それができれば、霊力の蓄積問題は解決するし、俺自身の手数も増える」

 

「既に考えがあるのですね。お力になれることがありましたら、いつでも相談してくださいまし」

 

 八百万の誠実な申し出に「そん時は、頼らせてもらうよ」と返し、俺たちは火災ゾーンへと到着した。

 

 入口を塞ぐ瓦礫を素手でぶち抜き、中へ踏み込む。

 ドーム内は熱気、火の手、煙、そして崩落した瓦礫が入り乱れる地獄絵図だった。

 

 そして、微かに聞こえる戦闘音

 人がいるのは確定だ。

 

 火災ゾーンを移動しながら、俺は手持ちの魂石を確認した。

 温存していたN魂石70個、R魂石4個。これを一気に吐き出す。

 

「くそ、10連のために貯めてたのに、背に腹は代えられねぇか……!」

 

 俺の平均魂石収入は、一月に約190個前後ほど。

 R魂石は1月に15個前後。

 

 N魂石は取得してから、だいたい一ヶ月で自動的に消滅する。

 R魂石はもって数日だ。

 大事に温存していたのだが、仕方ない。

 

 最初に引くのはレアリティガチャ。

 適正レアリティの魂石を1個消費して、適正斬魄刀が1本手に入る。

 R魂石を4個消費して、単発で引いていく。

 

 ガチャを選択すると、脳内に映像が流れる。

 暗闇の中を、地獄蝶が一頭、ひらひらと飛んでいく。

 荒廃した大地。その中央に突き刺さる一本の斬魄刀。

 それを4回行う。

 

 結果は『双魚理』『神鎗』『灰猫』『蛇尾丸』。

 既に持っている斬魄刀は『飛梅』『灰猫』『蛇尾丸』なので、二つが被った。

 

 続けて、通常ガチャを回す。

 N魂石を10個消費して1回、回すことができる。

 ラインナップはN~SRまで。

 これも単発で引いていく。

 

 その結果は……R『断風』N『鬼灯丸』N『鬼灯丸』N『崩山』N『五形頭』N『劈烏』N『鬼灯丸』。

 

「クソ爆死!」

 

「ッ!? 唐突に叫ばないでくださいまし!」

 

「悪い……」

 

 やっぱり単発だと、R斬魄刀が全くでねぇ。

 そもそも、排出率がクソ低い。天井も最低保証もない。

 

 N:80%

 R:19%

 SR:1%

 

 それでも、SRが出るかもという希望が俺を通常ガチャに望ませる。

 回復系の『瓠丸』は出なかったが、いざとなれば俺には『骸ノ楔(むくろのくさび)』がある。

 

 これは卍解を模索する中で編み出した技。

 斬魄刀5本を消費して同ランクの指定、または一階級上の刀をランダムで出す合成技だ。

 5分しか維持できず、精神的疲労——おそらく霊力の過剰消費——を伴うが、特筆すべきは別の点にある。

 

 俺の個性『斬魄刀ガチャ』のラインナップには、俺が解号を理解していないものや、能力を把握していないもの、アニオリの刀は含まれない。

 だが、この『骸ノ楔』を使うと、解号不明の刀であっても「始解状態」で擬似的使用できるようになる。

 

 これによって、俺はRから『肉雫唼(みなづき)』と『刺絡(しがらみ)』。

 SRから『斬月』『神剣・八鏡剣』。

 URから『鞘伏』を引き出すことが可能だ。

 

 SR5本を消費すれば、ガチャでは手に入らないURの『鞘伏(さやふし)』を狙いに行くことだって――いや、人生で一度もSRが5本手に入ったことなんてないわ。

 そもそも、SRは数時間しか保存できない。

 

 物理的に不可能だろう。

 URを5本消費して指定するなんてのは、もっと非現実的だ。

 

 そもそも、URなら他の斬魄刀で十分だしな。

 それでも、Rを5本を消費すれば回復系の斬魄刀を確実に呼べる。

 いざという時のために、R斬魄刀を5本以上、所持しているという安心感が俺を包んでいた。

 

 思考を切り替え、黒煙の先を見据える。

 そこには一人、縦横無尽に跳ね回るクラスメイトの姿があった。

 

「あれは……尾白か!」

 

 彼が器用に尻尾を使い、ヴィランたちを翻弄している。

 だが、流石に数が多すぎる。

 

「尾白ぉ! 加勢するぜぇ!」

 

「……ッ! 玩具!? 上鳴に八百万さんも……助かるよ!」

 

 俺は即座に斬魄刀を構え、密集するヴィラン共へと飛び込んだ。

 

 一撃。

 踏み込みと同時に、先頭の男の顎を柄頭で打ち抜く。

 二撃。

 返しの刃で、横から襲いかかってきたヴィランの武器ごと叩き伏せる。

 

 斬るまでもない。

 正確な打撃と峰打ちだけで、群がる雑魚どもを次々と地に這わせていく。

 

「くそっ、増援か!?」

 

 狼狽える敵の懐に滑り込み、呼吸を整える暇も与えず鳩尾に拳を叩き込んだ。

 瞬く間に一帯を制圧し、俺たちは合流を果たす。

 

「玩具! ありがとう、助かったよ!」

 

「火災ゾーンは尾白一人か?」

 

「多分ね。他には見なかったよ」

 

「そんじゃ、残りをすべて蹴散らしてセントラル広場へ戻るぞ。羽搏(はばた)きなさい――『劈烏(つんざきがらす) 』」

 

 刀身を手のひらで押し潰した瞬間、刃が数多の黒い手裏剣へと散り、上鳴や八百万を護るように旋回し始めた。

 

「さっさと終わらせる」

 

 ※ ※ ※

 

 火災ゾーンのヴィランを一人残らず無力化し、拘束を終えた俺たちは、迷路のような廃墟を抜けてセントラル広場へと急いでいた。

 視界が開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、世界の中心を体現するかのような激闘だった。

 

「オールマイトだ……!」

 

 尾白が安堵と興奮の混じった声を上げる。

 その視線の先では、平和の象徴が漆黒の怪物――脳無と正面からぶつかり合っていた。

 

「すげぇな……あの脳無相手に、真っ向からやり合ってやがる」

 

 一目でわかった。

 あの個体は、俺が山岳ゾーンで沈めたものとは『格』が違う。

 俺が戦ったやつは、おそらく調整不足の試作品。

 

 目の前でオールマイトと拳を交わしているのは、彼を殺すためだけに完成させられた、対・平和の象徴用兵器だ。

 

 広場近くには、緑谷や爆豪、切島、轟たちの姿も見える。

 どうやら無事に合流できているらしい。

 

 俺たちはヴィランの後方、ちょうど死角になる木陰に身を潜め、勝負の行方を見守った。

 

 ――ドォォォォォンッ!!

 

 拳と拳がぶつかり合うたび、大気が爆ぜ、USJ全域に強風が吹き荒れる。

 

「きゃ……!?」

 

「うおっ!?」

 

 八百万と尾白がたじろぐほどの衝撃波。

 俺は飛ばされないよう、ふらつく八百万と気絶寸前の上鳴をがっしりと掴み、地面に踏みとどまる。

 尾白は強靭な尻尾を近くの木に巻きつけて必死に耐えていた。

 

「なんつう威力だよ」

 

 連打に次ぐ連打。

 オールマイトは血を吐きながらも、目にも留まらぬ速さで脳無を圧倒していく。

 100%の力で脳無の再生が追いつかないほどのラッシュを叩き込み、彼は咆哮した。

 

(ヴィラン)よ、こんな言葉を知ってるか!!?」

 

 大地を砕く勢いで踏み込み、オールマイトの右拳がしなる。

 

Plus Ultra(更に向こうへ)!!!!!」

 

 渾身の一撃。

 脳無の巨体はUSJの強固な天井を紙細工のようにぶち抜き、青い空の彼方へと消え去った。

 

「……これが、No.1の力か」

 

 ぽっかりと開いた天井を見上げ、呆然と独りごちた。

 理屈を超えた、ただ純粋な強さ。

 

 だが、その余韻を切り裂いたのは、全身に『手』を纏った男の苛烈な声だった。

 

「チートがぁ……! 脳無さえいれば、奴なら、何も考えずに立ち向かえるのに……!」

 

 男は喉を狂ったように掻きむしり、苛立ちを剥き出しにしている。

 

 ――妙だ。

 

 脳無を飛ばした後のオールマイトが、一歩も動かない。

 

 ダメージの蓄積か?

 それとも別の理由?

 

 助けに入るべきか迷ったが、もし俺の勘違いで、不意打ちを狙っているのだとしたらかえって邪魔になる。

 

 俺は息を潜め、タイミングを計った。

 

「そうだ、黒霧! あの蒸気野郎に貸してた脳無を呼び戻せ! 駒を回収して、仕切り直しだ!」

 

「死柄木弔……落ち着いてください」

 

「早くしろ!!」

 

 黒霧と呼ばれた靄の男が、自身の体を広げ始める。

 

 ――出るなら、今だ。

 

 奴らは背後の俺たちに気づいていない。

 さらに、ワープの個性を使う瞬間は隙ができるはずだ。

 俺は身を隠していた木陰から、音もなく斬魄刀を抜き放った。

 

「射殺せ――『神鎗(しんそう)』!!」

 

 解号と共に、刀身が音速を超えて伸長する。

 狙うは手の男——死柄木の足。

 

 ――まずは、機動力を奪う!

 

「ッ!!?」

 

 刀身は一瞬で彼我の距離を詰め、死柄木の足を貫いた。

 よし、手応えあり。

 

「もう一発!」

 

 神鎗を引き戻し、すぐさま二射目を放つ。

 だが、奴は咄嗟に地面を転がって回避していた。

 

「後ろからコソコソと……虫ケラがぁ!!」

 

 こちらの存在が露見したが、構うものか。

 俺は絶え間なく神鎗を伸縮させ、連続突きを繰り出す。

 

 風を切り裂き、呼吸さえ許さない刃の雨。

 手、足、肩、確実に奴の肉を削り、追い詰めていく。

 

「死柄木弔!」

 

 そこへ、戻ってきた黒霧が間に入り、空間を歪めて盾となった。

 俺はすぐさま刀を引き戻し、攻撃を止める。

 あの靄に呑み込まれれば、攻撃がどこへ繋げられるか分かったもんじゃない。

 

「黒霧……! 脳無はどうした、早く呼び出せッ!」

 

「……死柄木弔。脳無は既に、何者かに倒されていました」

 

「……は? そんな訳あるか! あれはオールマイト用の試作品だぞ! 雑魚にやられるはずが——」

 

 死柄木の視線が、鋭く俺を射抜いた。

 アイツラの言っていた脳無は、俺が倒した奴だろう。

 既に、駒は取っている。

 

 次の攻撃を考えていたその時――

 

「1-A。クラス委員長飯田天哉!! ただいま戻りました!!!」

 

 USJの入口に、校長をはじめとする雄英のプロヒーローたちが勢揃いした。

 

「あぁ……ゲームオーバーだ」

 

 死柄木が忌々しげに吐き捨てる。

 逃がすまいとスナイプ先生の銃弾が唸りを上げ、死柄木の四肢を正確に撃ち抜いた。

 

「今度は殺すぞ……平和の象徴、オールマイト……!」

 

 深手を負った死柄木を回収し、黒霧の靄が渦巻く。

 俺も最後の一撃を放とうとしたが、奴らは霧の彼方へと消え去った。

 

 嵐が去った後のような静寂。

 崩落した天井から差し込む陽光が、戦いの終わりを告げていた。

 

「……よし、これで後処理も終わりだ」

 

 拘束した爆煙隊や山岳ゾーンのヴィランたちが、ヒーローたちの手によって次々と連行されていく。

 

「玩具さん、本当にお見事でしたわ」

 

「ウェ〜イ……」

 

「いや、俺の方こそ助かったよ。一緒に転移したのが優秀なヒーローで良かった」

 

 疲弊した仲間たちの顔を見て、ようやく俺の肩からも力が抜けた。

 こうしてUSJでの戦いは終わったが、1年A組、玩具漂白(がんまひょうはく)としての戦いは始まったばかりだ。

 

 俺たちは雄英のヒーローたちに迎えられながら、USJを後にした。




これで、USJ編終了です。
打ち切ります
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