溢れた幸せをこの手で   作:奏でる芸術文

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プロローグ とある絶望の終着点

「......クックック...。」

 

赤色に染まった空と喧騒を忘れた町並みに、たった一つのつぶやきが木霊する。

空が赤く染まった日はもはやいつのことだかわからず、空にそびえ立つ6つの黒い柱はいつもの光景になってしまった。

 

「...我々は研究者ですが、研究対象がいなければどうしようもありませんね。」

 

かつてこの巨大な都市を闊歩していた少女たちはもはや見る影もなく、ただ、無機質な雨が振り続けるのみである。

この都市の命運を賭けた戦いは、希望の喪失という形で幕を閉じた。

命運を背負った大人は古代の信仰の産物に敗北し、残った神秘は色彩に残らず吸収されてしまった。

 

「......ずっと貴方が抱えていたこの端末、気になっていたんですが。」

 

この方舟に残ったものたち、彼らは神秘をもたない。

生徒たちが姿を消し、住民たちが混沌によって命を落としていったとしても、諦めることを知らない。

 

「......やっと、調査することができました。」

 

その粘り強さは、いつかは厄介で困らされたものであったはずだ。

でも今において、それを邪魔だと非難するものはいなくなってしまった。

 

「......方舟に作用する力、先生。貴方がこれを?なぜ?どうやって?」

 

3つの穴が空き、明らかに破損したタブレットはなおも沈黙している。

これを利用するものはもうおらず、OSも役には立たない。

はずだった。

 

「...まぁもういいことですね。当人はいないんですから。」

 

そのひび割れた男は、ポケットから一つのカードを取り出した。

そのカードは元は鮮やかな黄色であったが、ひどく黒ずんでしまって見る影もなくなった。

 

「...カードの代償は、もう払われています。」

 

空が青い春の日のうちに、先生という人は彼を訪れた。

表情からは明らかに嫌であることが伝わってきたが、それでも、最後に託す事にしたのだ。

「"どうしようもなくなったら、お前に託す事にするよ。"」と。

 

「...今回の奇跡は、一時的なシッテムの復元、ですか。」

 

ひどく傷ついた黒いスーツに身を包んだ男も、先生が持っていたクレジットカードのことを知っている。

それは、代償を要求する。それは、奇跡を起こす。謎は深まるばかりである。

 

「研究対象がなければ研究者も意味がありません。今回は貴方のために行動する事にしましょう。」

 

偶然、または仕組まれたように、二人の願いが一致した。

さぁ、あとは、動かすだけ。

 

「どうか、良き結果を、お望みいたします。」

 




一話めを読んで頂き、ありがとうございました。
これからもよろしくお願い致します。
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