"ん...んぅ...。"
気がつくと、ひどく体調が悪かった。
体はまるで鉛どころか金と錯覚するぐらい重く、気がついた時から肌をジリジリと焼かれる感覚がしている。
時間が立つにつれてお腹の虫も悲鳴を上げてくる。正直まぶたも重たいため目を開ける事も叶わず、回りがどんな事になっているのかの把握する難しい状況である。
少しずつ体の自由が失われていき、
ついには、いしきを、
てばなした。
「......あ...、ひt......い?!」
最後に、霞む視界に、オアシスが映った気がした。
再び目を覚ますと、知らない天井が広がっていた。
おそらく来客用だと思われるなんとも言えない硬さの寝具と無機質な白さをした天井。少し首を傾けると、設置されている棚の中には応急手当のためだと思われる簡素な医療品などが揃っておる。しかし、明らかに準備室などに使われる部屋の大きさや地面が少し遠い窓の外を見ると、おそらく学校の保健室に相当する部屋である事がうかがえる。
周辺を見回して観察していると、遠くから足音が近づいてきた。
近づいてきた足音は今自分が寝転がっている部屋の前で止まり、ガチャリという音と共にドアノブが回されて、入口の扉が開いた。
???
「...あ、おきたんだね?気分は大丈夫かな?」
???
「......先輩、やっぱこんな怪しいやつ、放っておいても良かったんじゃないですか?」
扉の先にいたのは、対照的な特徴を持つ二人の少女だった。
片方は空を写した川のような髪を腰ぐらいまで伸ばし、体中に絆創膏が貼ってある発育の良い少女。
それと対照に、桜のような短髪と突き刺さりそうな瞳、こじんまりとした体型の少女。
ユメ
「挨拶はするべきだよね...?こんにちは!私は
???
「......挨拶いります?」
ユメ
「ホシノちゃん!初対面だし久しぶりのお客さんだよ?!挨拶は大事でしょ!」
ホシノ
「...はぁ、
ユメ
「よくできました。」
どうやらここはアビドスという場所にあるの学校の中らしい。
空色の髪が人がユメ、桜色の髪の人がホシノ、だそうだ。
ユメ
「貴方は私達が砂漠のパトロールをしてるときに、砂漠のど真ん中で倒れてたんだよ?後少しで死んじゃうとこだったかも!」
キャ~っと、ユメと名乗った少女はわざとらしく肩を竦める。
ユメ
「それで...貴方はどこの学園の生徒かな?特にどこの制服ってわけじゃなさそうなんだけど...」
そこで自身の話を聞かれ回想してみると、なにもなかった。
自分がなぜ、どうやって砂漠に来たのか、自分はどこで、どんな生活をしていたのか、ましてや自分の名前すら、何一つ思い出す事ができない。
"すみません、わかんない、です。"
ユメ
「え、わかんないの?!き、記憶喪失ってこと?ど、どうしたら...。」
想定外な返答に動揺したユメを横目に、ホシノは冷静に奥においてあるカバンを指さした。
ホシノ
「記憶喪失もなにも、荷物がそこにあるじゃないですか。一緒に落ちていたのだからこいつのものでしょうし。」
ユメ
「そうだった!さすがホシノちゃん!じゃあ確認してみて!」
そう言ってユメは表面に砂のついたスクールバッグを差し出してきた。
ジーっとファスナーを開けて中を見ると、いくつかものが入っている。
なんのためかわからない筆記用具の筆入れやいくつかの着替え、学校用のジャージも入っているが広げてみると、どの学園とも合わないデザインなそうだった。
内容物をひっくり返して一つ一つ確認していくと、学生証とスマホが出てきた。
学生証には自分の顔写真がしっかりと貼られており、間違いなく自身の持ち物である証明がなされていた。名前部分には「
スマホはロックが掛かっていて開かない。四桁のテンキー式だったので学生証に書いてある誕生日を打ち込むとロックは解除された。ザルだなぁ。
スマホを開けたはいいが中身はまるっきり新品同様で、初めて新品同様であることを憎く感じたのだった。
ユメ
「どう?なにかわかった?」
"すみません、名前はわかりましたが学校だけはどこにも書いてありませんでした...。"
ユメ
「まず名前もわかんなかったの?!ほんとに大丈夫?!...あれ、それって学生証?じゃあ学校は書いてあるはずでしょ?」
「学生証は学園側が発行するものだから、学園ごとに特徴があるからわかりやすいんだよね。ほら、アビドスはこんな感じ。」
そう言ってユメは自分の学生証を懐から出し、自分に見せてくれた。大まかなデザインは自分が持っているものと同じだが、ユメの学生証にはアビドスの学校のシルエットらしき意匠や校章っぽいマークが施されている。
観察しているとユメが、「あ、違う違う、私のじゃなくて君のが重要なんだった。」というので自分のが学生証を共有する。
ユメ
「名前は...クロナっていうんだね!よろしく、クロナちゃん!」
「......おかしいな。製造した学園、所属している学園ともに書いてない。それどころか校章もデザインもなくて無地になってる。」
ホシノ
「......先輩、やっぱ怪しいですって。」
ユメ
「でもこれが本当だとしたら、クロナちゃんは行く場所がないことになるんだよ?!ここはキヴォトス、学校に在籍している生徒が多数を占めてるんだから、身分がないのとおんなじ意味なんだよ?!」
ホシノ
「...こんなやつ、ブラックマーケットにでも放っておきましょうよ。あそこは学籍がない人が沢山いる場所ですし。」
ユメ
「あそこは治安が悪くて危ないんだから...あれ、そういえば武器は?」
ホシノ
「たしか、倒れてたときから回りに武器らしきもの落ちていませんでしたけど。」
ユメ
「ますます不思議...クロナちゃんほんとに生徒?武器を持っていない人なんて見たことないのに...。」
ユメによると武器を持っていない人より露出狂のほうがいると言われているらしい。いや、どこにそんなヤツがいるっていうの...。
ユメ
「うぅん...、武器もなくて学籍もないなら、キヴォトスが生きて行けないよねぇ...。」
ホシノ
「先輩、だから放っておきましょうって。」
すると、ユメはなにかを閃いたらしく、ホシノの提案も気にせず電球が頭の上に浮かんでいそうな顔をした。
ユメ
「そうだ!クロナちゃん。アビドスに来ない?」
ホシノ
「ユメ先輩?!」
自分の提案を一切合切無視した提案に、ホシノが驚いた反応をする。
"私はそれでいいんですけど..."
ユメ
「うんうん...!クロナちゃんが入ってくれればアビドスも生徒数3人!三人よれば文殊の知恵って言うし..!」
ホシノ
「先輩?!ねぇ先輩?!話聞いてました?!」
おそらくだが、聞いてはいると思うよ。
ユメ
「よし、今日からクロナちゃんはアビドス1年生ってことだね!これからよろしくね!」
ホシノ
「先輩?!こんな得体のしれないヤツと同級生ですか?!先輩?!先輩ぃ?!」
こうして私は、アビドス高等学校一年生になった。
騒がしそうで、これから楽しそうで楽しみだ。
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