ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
「琴音、落ち着いて聞いてほしい……悠仁が、死んだ」
「じゃあ私の目の前に立っていらっしゃる方は誰なんでしょうね。ドッペルゲンガーですか?」
「あれ?汐見先輩には教えていいんすか?」
「チェー、乗ってきてよつまんない。教えていいよ、というか知っておいてもらわないと君が困るよ?万が一バレた場合僕の責が問われるんだけど彼女にも覆いかぶさってもらえるから」
「つまりスケープゴートですね。迷える子羊としては哀しいです」
「どうだろうねえ頂点捕食者」
ケニアから帰ってきて早々京都高専で楽巌寺学長先生曰く宿儺の器が死んだと聞いた私はこりゃいかん後輩たちのメンタルケアと五条先生の怒りにさらされたであろう伊地知さんの胃のケアをしなければとなんとか時間を作って東京校までやってきた。まぁ普通にある程度時間がかかったんだけど。
んで、来ると思ったよという五条先生のお話をそこそこにとりあえず後輩のところへとやろうとしたら首根っこひっつかまれて瞬間移動したと思ったらそこには虎杖君がいた。あらまぁ?と思ったのもそこそこにこれなんか隠したな?という結論に至りました。しょうがないなあ五条先生は。
「まぁ死んでなくて安心したよ。ところで下手人は起きてるの?」
「何だ、汐見琴音」
「特級相手にしたって聞いたけどまあ一年生が五体満足で勝てる相手じゃないから君がやったんでしょ。その点はお礼言っといてあげる。でも虎杖君殺したのも君でしょ多分。だからプラマイゼロで。とりあえずこれだけあげる」
虎杖君の手に口を作って返事をした宿儺に対して五条先生にあげるプリンのついでに作ったマドレーヌを押し込んだ。ずいぶんと間抜けな声をあげて押し込まれたマドレーヌを吐き出そうとした宿儺ではあったけど2回咀嚼して黙った。ほらやっぱ食べるの好きじゃん、ウケるー。
「虎杖君は食べる?いやー、私が海外行ってる間に殺されるだなんて不憫だね君。どうやって生き返ったの?」
「え、いただくっす……ウマッ!?いや、俺自身どうやって死んで生き返ったのかはわかんねーんすよ。なーんも覚えてなくて」
「はぇー。悪い子ちゃんめ」
「なんで!?俺被害者だよね!?」
「それよりももっとよこせ」
記憶がない、というのは事実だけどなんかあったなこれ。宿儺が乗っ取った後で心臓を抜き取ったっていう話だし。それまでは呪力で血を全身に巡らせてたにしろどうやって生き返らせたのかが問題だ。反転術式を使った宿儺なんだろうが、何かしら縛りを結んだな。そのくらいはやってのけるだろうし、虎杖君は呪術初心者だ。騙すのだって容易い、私の忠告は真面目に聞いてたんだろうけど寧ろそれを建前か何かにされたか?
欲しかったら暫くお黙りくださーいというと虎杖君の手にあった口は引っ込んでいった。それならまぁいいか。今日は皆一緒に来てるわけだからあんまりにも虎杖君にかかりきりになるわけにはいかないし。虎杖君に近いうちに鍛えてあげるよー、と言って宿儺が欲しがったら分けてあげて。全部食べても当然オッケーと作っておいたお菓子を渡した。んで五条先生と一緒に部屋を辞したわけなんだけど。
「なんか縛り結んでますよね絶対」
「あ、やっぱ琴音もそう思う?内容がわからないのが不安なんだけどさ、しょうがないよね結んじゃった物は。できるだけ僕は悠仁から目を放さないようにするから、ごめんだけど恵達の方お願い。君の方がこういうのは上手いから」
「しょーがないですねぇ。私騙すの嫌いなんですよ?」
「ほんとに~~?呪術師なのに~~~?」
小ジャンプしてバチコォンと顔面に展延ビンタをかましてやる。それは戦闘面で裏をかくためであって人に嘘をついて云々は嫌いだっつーの。嬉しいサプライズなら話は別だけどさ。忘れてたでしょ五条先生~~私が無下限をノータイムで突破できること。まあ今のはわざとくらったっぽいけど。
「おいっすおいっす~~。ん、これどんな状況?」
「ん、
「そういうことよ、琴音先輩。ついでに真希の顔も見に来たんだけど……なんだかあんな顔から動かなくて。おーいお姉ちゃん?お姉ちゃーーん?」
「え、いやだって真依……真依!?」
「そうだけど……?」
「だってお前今私のことをお姉ちゃんて」
「言ったわよ?事実じゃない。呪術の腕前がどうとかなんだとか琴音先輩見たらどうでもよくなるでしょ?結局生き残れば勝ちなのよ。私は私らしく、それでいいわ」
後輩たちに会いに行こ―と探してみれば意外や意外、一緒に来た葵君と真依ちゃんが伏黒君と釘崎ちゃんそれに真希ちゃんが一緒にいた。軽い挨拶をして輪に交じろうとすると真希ちゃんが驚愕の表情というか、ありえないものを見る目で不思議そうに真希ちゃんを見る真依ちゃんを愕然とした感じで見ていた。あーー、真依ちゃんだいぶ変わったもんねえ。
乙骨くんの件があった去年からなんだけど何とか週末は京都に顔出してた私、真依ちゃんとちょこちょことお話していたんだ。何というか、心配だったから。歓迎会の時の様子も含めて。禪院家のアレソレがクソっていうのは直哉さんをみて話して聞いて理解はしてたつもりなんだけどちゃんと私が私として向き合うべきだと思ったからね。
真依ちゃんは入学当初すぐ人を煽ったりとかまあいろいろと内から外を閉ざして攻撃的な言動をするのが目立った。それは禪院家で醸造された呪術師のなりそこないという評価に対するコンプレックスとかの裏返しだし、自分を置いて出ていった真希ちゃんに対する一種の逆恨みのようなものから来ていた。本当は一緒にいたかったし、堕ちてほしかったんだよ。
ただ、それは禪院家の常識で固められたものだ。私はただ真依ちゃんにここは禪院家ではなくもっと広い世界でもっと違う常識があると教えてあげた。呪術なんてなくとも生きてはいけるし、抵抗できないなら頼ればいい。真依ちゃんは一人じゃないよって根気強く教えてあげただけ。そしたらなんか、素直な妹になっちゃっただけ。うん、私悪くない。
「折角会いに来たんだからそんな顔しないでもいいじゃない。そりゃあ、別れた時は結構いろいろ言ったけど。今は結局別々だけど会いに来た時くらいは仲良くしましょ?」
「お前……それでいいのかよ。だって私は」
「ストップ。それは私が勝手に呪ってただけ。お姉ちゃんだってわかってるんでしょ。あそこにいたらお姉ちゃんも私もダメになってた。なら、今のこの形は正しかったのよ。幸せではないけど、普通になったのよ?」
「ねぇ……何この重い空気?真希さんの妹?伏黒これどういうことなのよ」
「俺に聞くんじゃねーよ。えーと汐見先輩これ」
「はいそこまで!積もる話はあるだろうけどそれはタイマンでしてもらいましょうか!うん、様子を見に来たんだけど意外と凹んでないね一年生」
ぴく、と伏黒君と釘崎ちゃんは反応をする。当然でしょと見返してくる釘崎ちゃんは頼もしい限りなんだけど。こういうのは表に出すべきだと私は思うんだよねえ。私たちは呪術師だから内に溜め込んでも呪いは発生しないけど、言い換えればそれは無制限に表に出しても平気ということだ。ましてや人が木っ端のごとく死ぬこの業界だからこそ表に出すべきだと思うんだよ。泣けってことじゃないけど。
「会って2週間ちょいだっけ。虎杖君には私1回しか会ってないけど気持ちのいい子だったよね。葵君も残念だねぇ。会ったら私くらい気に入ったかもよ」
「それは残念だ。そういえば姉妹校交流戦の話は聞いたか?」
「あ、それ聞いた。京都行けるんでしょ!?良かったら案内してよ先輩たち!」
「?何を言ってるの?去年は東京校が勝ったから私たちが東京へ行くのよ。あなたたちは迎え入れる側」
「そういうことだ。して、メンバーは誰だ?お前らも出るつもりか?」
「はい。3年生は停学で乙骨先輩も海外だからどうしても人数が足りないと……」
伏黒君のその言葉を聞いて明らかに葵君はトーンダウンというか元気を失っていった。今までだったらボコボコにして無理やり何とかしようとするのだろうけど私が先んじてどうしようもありませんと根回しを済ましているのでしゃーないかと無理やり納得してる感じだ。
「そうか……残念だ。伏黒、お前がいくらか強くなったのは分かる。だがそのままでは俺には勝てん。京都校をそこら辺の呪霊や呪詛師と同じとみれば足元をすくわれるのはお前らだ」
「わかっています。汐見先輩が直接面倒を見ている京都校が弱いわけない。加茂先輩や西宮先輩もいる。胸を貸してもらうつもりです」
「うむ!貫くつもりでかかってこい!」
「いいなー、私も交流会でたーい」
「え?汐見先輩、出ないんですか?」
釘崎ちゃんが目を丸くして出ないの?と聞いてくるので出たくても出れないんですよ、と伝えれば最大戦力出さないってナメてんの?という強気の返事。うわー、ここら辺アレだ。秤君たちと同じ反応過ぎて結構好感度上がった。いいなー釘崎ちゃん負けん気強くて。これは真希ちゃんも可愛がりたくなるわけだよ。
「お前はあの惨状見てないからそんなこと言えんだよ……」
「あの惨状って何よ。いや汐見先輩が強いのは分かってるわよ?でも交流会出ないってのはもったいなくない?」
「そうじゃない、この人本気にさせるんだったら東京は狭すぎる。この人ニコニコしてて親しみやすいけど五条先生との決闘の時、無人島一つ丸ごと消し飛ばしてるんだよ」
「異議あり!あれは五条先生の茈が衝突した結果であって私単体じゃ……できないこともないか。やろうと思ったら多分普通にできるや」
「ちょっとこの人野放しにしていいワケ!?核爆弾じゃない!」
「そうかもしれないが五条先生とこの人比べてみろ。どうだ?」
うん、やろうと思ったらできるよ無人島ボンっってするくらいなら。私を後ろから抱きしめて満足げにしていた釘崎ちゃんが慌てて飛びのいてちょっと悲しい私。だけど伏黒君の言葉に釘崎ちゃんは私を見て、宙を見て、私を見て、宙をみてを繰り返し。またすっと私を後ろからハグする体勢に戻った。
「そんなことどうでもよくなったわ。そもそも私汐見先輩好きだし」
「まぁ核の起動スイッチを持ってるのが五条先生だったら慌てて逃げるか遺書を書くだろうが汐見先輩なら別に持ってても面白半分で押したりしないってわかるだろ?」
「いや私は面白かったら押すよ?それはともかくとして五条先生って一年生にすらそんな評価なの?何というか、アレじゃない?もうちょっとマシな教師やってないの?」
「悟は適当だからな~~。琴音くらいちゃんと色々かっちりやってくれると嬉しいんだけど。喧嘩してるかと思ったらそんなことなかったな」
「しゃけ、いくら」
おやまぁ、パンダ君に狗巻君じゃないですか。そりゃあ、仲間同士で痴話喧嘩なんてばからしいことこの上ないので私の目の黒いうちはそうそう見逃さないよ。私が入る前は京都と東京は仲あんまりよくなかったかもしれないけど私がいる限り仲良しにしてあげるからね!
「うーん、でもパンダ君の言ってることはスタンスの違いかなあ。五条先生見せないように色々やってるだけで私はフルオープンにしてるから働いてるように見えるだけだよ。おー、スカーフにしてるんだイッカスー」
「しゃけ!」
「まぁ実際、東京も京都も癖の強いやつらばっかりだ。そんな奴らが揃いも揃って琴音には頭が上がらん。一番怖いのは琴音かもな」
「まぁ、敵には回したくないよな。琴音センパイは」
「
うんうん、と頷く一同。それはちょっとひどくないですかー?と私は頬を膨らませてみるものの何となく納得している自分がいてちょっと悲しくなるのだった。もう注意するとか怒るのやめようかなあ、くすん。