ドルオタゴリラ呪術師とリアルロシアンルーレットチンチクリン 作:カフェイン中毒
「第二回チキチキ!目指せ初心者脱却!呪術講座~~~!!」
「イエーイ!ってあれ?第一回は?」
「一回目の受講期限は去年の今頃となっております!」
「めっちゃ前じゃん!というか五条先生は?」
「諸般の事情でご欠席とのことで。なんだ私じゃ不満か虎杖後輩?生前のアレソレをばらまくぞ?」
「待って俺先輩に何かしてないし今でもできる気がしない!」
いうまでもなく第一回は去年の乙骨くんの件であるからして、第二回呪術講座の開講と相成りました汐見琴音ですコンゴトモヨロシク。それはともかくとして死んだことにされた虎杖君は呪術に関しては初心者、中身のイカレ具合は100点満点とのことなんだけど初心者故殺されてしまったところもあるので知識と技術のレベルアップは急務!
で、京都でのほほんと片腕なのに私と互角に殴り合ってくるでお馴染み夏油さんといつも心にマイフレンドこと葵君と一緒にずぞーーっと抹茶を啜ってたら五条先生に呼び出されてしまいまして、泣く泣く東京にやってきました。帰ったら葵君の分厚い胸筋に抱き着くことを目標に頑張っていきます。
「と、いうわけなんですがある程度の呪力操作はやれるようになってるみたいだね?んー、呑み込みが早い。感心感心」
「え、そういうのやっぱ見ればわかるもんなんすか?」
「そりゃね?あ、五条先生は特別枠だよ。それでも普通の術師なら呪力操作云々は見ればわかるかな。ねーすっくん?」
「小僧のそれはもはや操作しているかなどどとはいえんがな。貴様で最低限だ」
「てっきびしー。というわけなんで最低限の私を目指して頑張ろうか虎杖君」
「なんでコイツ俺は無視する癖に汐見先輩だけ素直に返事するんだよ……」
「くはっ!貴様は路傍の石ころと目の前の馳走を同じに見ているというのか?」
うるせぇ!とほっぺにできた口にセルフビンタする虎杖君を見ながらやっぱり何言っても多分聞かれてるなこりゃという検証をすませて頷く。んー、一定条件で魂ごと宿儺を眠らせるとか出来たら色々教えてあげられて便利なんだけどなー。何とか引っぺがせないもん……引っぺがしたら虎杖君どうなるかわかんないからやめとこ。
さて、今まで虎杖君がやってきた修行というのは夜蛾学長の呪骸を用いて映画鑑賞をしながら一定の呪力を流し続けることだけらしい。呪力の自覚と回し方を学べる超初心者向けの訓練だと思う。乙骨君は里香ちゃんがいたから無意識のうちに呪力とはなんぞや程度までは理解が進んでいたのでこれをやる必要はなかったし。
「じゃあ呪力を流す、まではできると思うから集中してみよう。私の手本に合わせて部分部分に呪力を集中させること!」
「ウッス!」
「よしいい返事!まずは右手!」
虎杖君の威勢のいい返事に一つ頷いて私は掌を彼に見せてわかりやすいようにゆっくりと呪力を集中させる。彼はそれを見て自分の右手につたないながらも呪力を集中させて集める。んー、そうそうできるじゃん!あとは繰り返しだよ~~。
「あの、先輩。いっすか?」
「なにかな~~?」
「えっと、五条先生の術式ってやつ見せてもらったんスけど、先輩の術式っていったい何なんすか?一回伏黒に聞いてもわからねえって返されちまって」
「んーそうだな~~、まず一つ注意ね虎杖君。術師に対して術式を聞くのは基本的にダメだよ。開示って言って術式の効果をバラす縛りで威力をあげたりとかは例外だけど、聞かれて対策つまれたら困るから」
「あー、そうなんすね。その開示ってやつ、五条先生が見せてくれたのがそういう事なんすかね?」
「そそ。で、ばぁ~~~~」
『ヒーホー!』
「うわああああああっ!?」
なんていい反応をするんだ虎杖君は。基本的な注意で私に目を向けさせた瞬間に彼の背後に後ろ手に隠したタロットカードを砕いてジャックランタンを召喚してのいないいないばあ。それに天井付近まで飛び上がった虎杖君がソファの後ろまで転がって何事かと構える。
「はい、これが私の術式。何に見える~~?」
「え、ジャック・オー・ランタン……めっちゃ外国っすね。ケルトだかなんだかが起源でしたっけ?」
「博識さんだね。私の術式は基本的に伏黒君の術式とそう変わらないよ。式神みたいなもので中身が違うだけ。どう?」
「……どうって言われても……かわいいなあって感じかなあ?」
「虎杖君、握手」
ジャックランタンを今可愛いと言ったね虎杖君。君は今気づかぬ間に私の好感度を爆上げしたぞ後輩。これはお夜食を奮発せねばなるまい。なにがいい?私は基本オールマイティに何でも作れるから何言ってくれてもいいよ。頭の上に???と浮かべつつも私と握手する虎杖君の手の甲にまた口が現れる。
「見た目は確かにあの黒髪の小僧の式神とはそう変わらんだろう。だが中身はどうだ?比べ物にならん。その気になれば町一帯の人間の魂を抜いて冥府へ案内することもできよう。それをかわいいとは、ある意味で貴様に感心したぞ小僧」
「うっせえな。ってことはまさかとは思うんだけどそれって」
「うーん、大体本物って認識でいいよ。これ以上は史上最悪の術師が聞いてる上では説明できないかなー」
「クヒッ、今更聞いても聞かなくても変わらん。貴様が俺の蹂躙される事実もな」
「はいはい、戯言は自由になってから言ってねおじいちゃん~~」
時たま宿儺の茶々に邪魔されつつもちょうどいい勘違いをしてくれたのでそれを利用しつつ術式の誤魔化しに成功してほっと一安心。でもいつまで誤魔化せるかな~~。類例を見ないかつとても酷似しているから式神の亜種でまだ誤魔化せるんだろうけどあそこまで見せた宿儺がどれ程コレを鵜吞みにしてくれるか。
「お、いるね悠仁。そんで琴音も。ちょうどいいからちょっときて」
「およ?」
あれ?五条先生って確か今日出張だから私にお鉢が回ってきたんじゃあ、という質問は言葉になることなく突然入ってきた五条先生に虎杖君ともども首根っこひっつかまれて何も言う暇もなく瞬間移動した。そして、目の前に広がるのは湖と明らかに特級っぽい呪霊だった。んー、報告で聞いたことないから未登録の特級かなー。富士山みたいな頭―。
「ソイツらは……!」
「見学の虎杖悠仁くんとバトンタッチ要員の汐見琴音ちゃんでーす!」
「富士山!頭富士山!」
「富士山だ~~~。ん?バトンタッチ要員?私にやれと申しますか?」
「そだよ。あんまりにも弱すぎて悠仁のお手本にもできそうになくてさー。琴音ならいい感じに領域に入れて倒してくれるかなって」
「明らかに怒ってますけど」
しゅっぽー!という間抜けな音を出して頭の山の山頂どころか耳らしき部分からも乗騎を噴出している富士山呪霊を指さしながらそんなことを言う私と明らかに戦闘態勢を解いた五条先生を見比べる。やれってことね、了解です。さて、おふざけもここまでだ。強いねあの呪霊、だけど怖くない。無人島で戦った五条先生の方がよっぽど怖い。だから大丈夫。
「ふん、貴様が汐見琴音か。このようなみょうちきりんな輩が儂をしのぐだと?構うのも時間の無駄だ。領域展開―――蓋棺鉄囲山」
「はい、悠仁注目!これは領域展開と言って、術式の奥義のようなものだ。結界を展開して術者の好きなように中身を塗りつぶす。これの厄介なところは」
「いや五条先生前!前見てくれよ!汐見先輩大炎上!?」
「そうそう、あーんな風に術者の術式が必中になるんだ。当たるべくして当たる。そして当然防ぐ術もある」
「ペルソナ―――サトゥルヌス」
領域展開使えるんだこの呪霊、と領域に入った瞬間に大炎上した私がふむふむと頷く。召喚器で頭を撃ちぬくのが間に合っているので全く問題ない。燃える赤いヒトガタのペルソナ、サトゥルヌスに火炎は吸い込まれ私には傷一つない。当たっても効かないんだなこれが。私が燃え上がったのを見て心配してくれる虎杖君は初々しいなあ。皆はもうハイハイ無事でしょ無事って感じで心配もしてくれないもの。
「ああいう風に術式で防ぐ。そしてもう一つは結界の外へ逃げる。これがなにも持てない術師がやれる領域への対抗手段。そしてもっともポピュラーな対策はこっちも領域を展開することだ。琴音」
「はーい!じゃあ押し合おう呪霊さん!領域展開―――『
「ぬぅっ……ばかな……!?押し負けるだと……!?」
「ねえ呪霊さん……何百年生きてるかしらないけどさ……最後に本気で死に物狂いになったのっていつ?私はねえ!割と毎日そんな感じだよ!一番やばかったのは半年くらい前!」
負けるはずがない、という傲慢で形作られたマグマの領域は負けるもんかという負けん気で作り上げた群青の領域に押される。強い、強いんだよこの呪霊。まともな一級術師程度なら片手どころか指一本で鼻ホジりながら勝てるよ。けどね、強さにかまけすぎだ。知らないでしょう呪霊さんは。人間が呪霊相手にどれほどの死に物狂いで向かって行くかってことを!
相手の領域を押す私の領域から刈り取るものが現れて呪霊に向かって行く。呪霊の魂を欲しがり自らと同じ何もない物と同化させんとリボルバーから多種多様な属性弾を雨あられと撃ち出しながら嬉々として相手の領域に入って……当然のように燃えた。やっぱハンドル握れないのはダメか。五条先生の無限で溺れたんだし当然の結果だ。ただ、燃えただけで消えるほど無意識は弱くない。
「領域と領域がぶつかればより洗練されて強い領域が相手を塗りつぶすんだ。この場合、琴音の領域が呪霊の領域を上回っている」
「ふざけるな!儂の領域が小娘の領域に上回られることなどあるはずがない!」
「あるんだなこれが。確かに君は人より長く生きているんだろうしその分だけ術式を理解し洗練させている。僕の目からもそれは明らかだ。だけど長すぎる生は感覚を鈍らせる。死が遠くなればなるほど本気の感覚も遠のく。そのでっかい一つ目かっぴらいて見ろよ呪霊。そのちっさい小娘は……死に物狂いのスペシャリストだぜ?」
「ぬ、ぐ……ぬおおおおっ!?」
死の感覚、私が私である以上切り離せないもの。10年共にあり続けいつの間にか無意識の中に存在する死にすら触れることを許された。死というものの後ろには何もない、がけっぷちだ。死ぬということは死なないように全力を尽くした結果に過ぎない。だから私は全力を尽くすという事ではだれにも負ける気はしない。死というものを誰よりも理解しているからこそそうならないために最後の一滴以上まで絞り出せると胸を張って言える。
実際のところこの呪霊の領域は私と強度で争えばどっこいくらいだ。だけど今は私が圧倒している。それはただ一つ、力の絞りだし方の違いに過ぎない。乱暴に言えば私を前菜扱いしてんじゃねーよいてこますぞってこと。
相手の術式効果で燃え盛る刈り取るものは呪霊に殺到しまるで餌に食いつく餓狼のようにリボルバーを捨てて素手で呪霊に群がった。素手で引き裂かれるように解体される呪霊ののたうち回る声が響く。スプラッタ映画のゾンビに群がられるようになっている呪霊を眺めてある程度のところで領域を解いた。
「なぜ……殺さん……!?」
「聞きたいことがあるのと、呪霊操術の人にあなたをプレゼントしようかなーって」
「ふざけるなああああっ!!!貴様ら人間に好き放題されてたまるか!」
「お、さっすが琴音。見事にやってほしいことをやってくれたねえ。ご褒美をあげよう!さあ五条ティーチャーの胸に飛び込んできなさーい!」
「それは後で葵君でやるので却下デース。これ持ち帰って夏油さんにあげていいですか?情報を抜くならそのあとでやった方が楽でしょ。はい瞬間移、虎杖君しゃがんで!」
もはや頭だけになった呪霊をつまみ上げて五条先生に見せる私と私を畏怖の目で見る虎杖君、両手を広げる五条先生。ハグ要求はどうせ無限があって触れられなくて私が悲しい思いをするだけになるだろうから却下で。いいか悪いかわかんないけどお土産ができたと五条先生に瞬間移動を要求した瞬間虎杖君めがけて何かが飛んできた。
咄嗟に虎杖君に抱き着いて押す、すっぽ抜けた首だけ呪霊を何かが持っていった。虎杖君を貫こうとする尖った木の根を彼を持ち上げて飛びのいて躱すものの見事に逃げた方向とは逆に追い込まれてしまった。領域展開の直後だったので術式が焼き切れてしまっている。何か召喚しておけばよかった―――!
「すいません五条先生、にげられちゃいました」
「いや、これは僕が悪い。僕の目をすり抜ける呪霊がいたなんて想定外だ。君でも多分、追いかけるのは無理じゃないかな。この森全体が隠すのに協力してるとかそんな感じだ」
「アノスンマセン、この態勢はダメっす。おろして……」
虎杖君を横抱きにしたまま真面目な話をしている私と顔を隠している虎杖君を眺めた五条先生が噴き出すまでそう時間はかからなかった。えーいいじゃん。