転生ユニちゃんは笑いたい   作:夜明けの鐘楼

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転生者が居るなら他作品の知識で強化を狙う、よくあるネタです。
超人が跋扈する世界なら似たような条件さえ整えれば多分出来るようになるとは思うんですよね。


転生ユニちゃんは導く

 困った。非常に困った。

 困惑する沢田綱吉――――もといツナを前に私は思わず考え込んでしまう。

 言語の問題。よくよく考えればすぐに思い至らなくちゃいけなかった。

 前世で日本人だからって日本語が話せるとは限らない。と、いうかイタリアに転生して何の苦も無くイタリア語を話せる時点でその可能性に気が付くべきだった。

 日本語を話せていたからって今生で日本語が話せるわけじゃないことを。

 頭の中で考えている事だってイタリア語で、口に出す言葉もイタリア語だ。

 魂が日本語を覚えていてもそれを出力する身体が日本語に適応していないんだ。

 

「え…………っと」

 

 それでも彼と話さなければいけない。

 自分の願いを叶えてもらう為には、彼の協力が必須だから。

 死ぬ気になって考える。この身体で一度も使った事が無かった日本語という未知を魂から脳に出力して言葉を出す。

 

「あ…………ぼ、く。ユニ」

「ユニ?」

「ユニ・ジッリョネロ…………」

 

 何とか名前を言えただろうか?

 ダメだ。日本語で考えて話そうとすると頭の中でとっちらかる。

 ちゃんと話せているのか、ちゃんと日本語として相手に伝わるか。

 ああもう、後ろでニマニマしてこっちを見ている保護者達の生暖かい視線が恥ずかしい。

 

「いっしょ、に…………あそ、ぼ?」

「う、うん…………」

 

 自分が差し出した手をツナは恐る恐る此方に伸ばして来る。

 そして彼の手が私の手に触れてからゆっくりとその手を握り締めた。

 

   +++

 

 沢田綱吉、もといツナは幼いながらも友達と呼べる存在が居たことは無かった。

 何も無いところで転んだり、ボールで遊べば明後日の方向に飛んで行ったり顔面に直撃して泣き出してしまったりしたせいで周囲からはダメツナと呼ばれて遠巻きにされていた。

 一緒に遊びたいと言っても「お前鈍臭いし、ダメツナだからやだ」と断られた事もあった。

 だからこそ、初めて出来た友達の存在はツナにとって嬉しいものだった。

 

――――ユニ・ジッリョネロ。

 

 イタリアからやって来たというフードを被った同い年ぐらいの子ども。

 言葉は分からない、日本で暮らしてきて今まで他国の言語に触れて来なかったツナにはユニの話す言葉は未知のものだ。

 だがそれでも、仲良くなれたとは思う。

 表情は笑顔で態度も優しく、上手く話せないながらも片言でもツナに伝わるように接してくれていた。

 友達と遊んだ事が無いツナにとって、ユニは初めて出来た友達だった。

 最初は未知の言語を喋る()に恐怖していたツナだったが、気が付けばそんな事も気にならなくなっていた。

 

「ツっ君ー。そろそろ帰るわよー」

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎて気が付けば夕暮れになっており、母親の呼ぶ声が聞こえた。

 

「そろそろ帰らなくちゃ…………」

 

 本当の事を言えばもっと遊んでいたかった。

 だが母親の言う事は聞かなくちゃいけない。そう考えた綱吉はユニの手を引いて母親達の所へ行こうとする。

 その瞬間、ツナとユニは突然現れた何者かの手によって持ち上げられた。

 優しさ等欠片も無い乱暴な手段で、驚きの声を上げる間も無く連れ去られて車の中に運ばれる。

 

「ツっ君!?」

 

 家族の切羽詰まったような叫び声が聞こえたものの反応する事も出来ず、ツナとユニの二人は見知らぬ誰かの車によって攫われることとなった。

 その後は流れるように猿轡を付けられて声を出せないようにさせられ、両手と両足を縛られて身動き出来ないようにさせられる。

 

「大人しくしなければ殺す」

 

 どこまでも冷徹な殺意に満ちたその言葉に綱吉は涙を浮かべながら動けなくなる。

 突き付けられる恐怖が全身を支配し、震えが止まらなくなる。

 そして車が止まると外に連れ出されて生活感の無い寂れた廃墟の一室に閉じ込められた。

 

「う、うぅ……………」

 

 何が起こっているのか、ツナには全く分からなかった。

 ただ一つ分かるのは自分達をここに閉じ込めた男達は、決して優しさを此方に向ける事は無いという事ぐらい。

 その事実に絶望していると、ユニは両手足を縛っていた縄を解いて自由になっていた。

 

「ふぅ…………乱暴、だ」

「むぐっ?」

 

 口につけられていた猿轡も外して自由の身になっていたユニにツナは驚き目を見開く。

 

「声、出さないで」

「む、むぅ」

 

 優しく語り掛けるユニの言葉の通りにツナは声を出さないように息を止める。

 そして、ユニが持っていたカッターによって両手足の縄と猿轡から解放された。

 

「これで、動ける。自由になった」

「あ、ありがと…………」

「あまり声は出さないで」

 

 口に人差し指を当てて「しーっ」とジェスチャーをするユニに促され、ツナは口に手を当てる。

 もしかしたら、外で聞いているかもしれない。聞こえないように声を殺さなければならない。

 

「後は脱出するだけ」

 

 なんて事も無いと言わんばかりに手を回しながら、ユニは上を見上げる。

 ツナもつられて同じように上に視線を向ける。

 視線の先には子ども一人分が何とか通れそうなくらいの大きさの穴があった。かつては窓があったのだろう。しかし今は見る影も無く、ガラスの破片が付いている。

 確かにあそこからなら脱出は出来る。高さはあるが瓦礫を上手く使えば届くかもしれない。

 だが――――

 

「む、むりだよ…………」

 

 ツナの脳裏に過ぎるのは自分達をここに閉じ込めた男の顔。

 その男が言った殺意が込められた目を思い出して、ツナは恐怖で震えて動けなくなる。

 

「だい、じょうぶ」

 

 目をぎゅっと瞑り涙を流すツナに、ユニは頬に触れながら優しく話しかける。

 

「ぼく、みらいを見れる。エスパー」

「え、エスパー…………?」

「うん。エスパー。ここから出てけば、家族に会える。ちょっと、痛かったり怖い思いするけど…………でも、会える」

 

 断言するユニの力強い瞳にツナは気圧される。

 

「もし、もしもだよ? ここで助けてくれるのを待ってたら」

「あまり良い結果にはならない。それはここから出てく方もそうだけど、何もしないよりはずっとマシだから」

「…………ユニは、すごいね」

 

 次第に流暢に日本語を話し始めるユニにツナはそう呟く。

 多分、ユニは自分なんかよりもずっと頭が良い。だから、ユニは自信を持って自分の選択を決められる。

 自分なんかとは違う。ダメツナって呼ばれて、友達が居ない自分とは全然――――。

 

「そんな事は、無い。くやしいけど、本当にくやしいけど僕は自分一人じゃ何もできない。未来を見る事が出来ても自分一人じゃその未来を変える事も、望んだ未来を掴むこともできない」

 

 ユニはそう言うとツナの手を強く握りしめる。

 

「お願い。ツナの力を貸して」

「で、でもオレの力なんて…………」

「きみは自分が思っているより凄い力が眠ってる。それがきみが求めているものではないけれど」

「…………どうして、そこまでオレの事を信じてくれるの?」

「未来を見て知ってるから。きみが誰よりも優しくて、誰かの為に命をかけられる人間だってことを」

 

 力強い言葉にツナは一瞬言葉を失う。

 今まで、こんな風に自分の事を褒めてくれた人は居なかったから。

 だからこそ、初めて出来た友達の信頼に応えたかった。

 

「…………行こう」

「うん」

 

 ユニの言葉にツナは頷く。

 今でも怖い。だけどそれ以上に胸の内から暖かいものが沸き上がってきていた。

 その感情がなんという名前なのか、今のツナにはまだ分からなかった。

 

    +++

 

 ツナを説得して廃墟の窓枠からの脱出に成功した私達は現在、身を潜めながら人が居そうな場所を目指していた。

 周囲一帯は人通りの無い寂れた土地だけど、車の中で見ていたからどっちに行けば人が居るのかくらいは分かる。幸いな事に子どもだと油断してくれていたからこのまま行けば、何事も無ければ街に辿り着くだろう。

 そう上手くいかないというのは分かり切った話ではあるけれど。

 

「ユニが見た未来でのオレって、どうなってたの?」

 

 見つかりやすい道路ではなく、茂みに身を潜めながら移動をしているとツナが話しかけてきた。

 どうなってた、か。改めて言葉にすると上手く伝えるのが難しい。

 多くの人を助けた正義の味方っていうのはちょっとあれだ。

 嘘では無いし本当に救世主であるのも事実。だけど最終的には無かったことにされるからあまりこの言い方も良くは無い。

 戦う事だって、ツナは好んで無いのだから。

 とはいえ、それ以外なら伝えても良いだろう。

 

「僕が見た未来だと、光よりも速く動けるようになってた」

「光よりはやい?」

「うん。本当に少しだけだけど、物凄く速く動けるようになる」

 

 ある程度ではあるけど日本語も流暢に話せるようになったし上手く伝えられると思いたい。

 本当は光速で突っ込んでくる相手の攻撃を見切り、相手の速度よりも速く顔面に拳を叩き込んだ上で、周辺に被害を出さず相手を五体満足のまま戦闘不能に持ち込んだという大分頭のおかしい事をやってるわけだけど。

 だぶーら*1の亜光速キック以上の攻撃を迎撃しておいて無傷で済んでいるのだって本当におかしいレベルだ。

 

「そこまでしか未来を見れてないけど、もっと成長すればザ・ワールド*2だって使えるようになるかも」

「ざ、わーるど?」

「時間を止められる必殺技だよ。光より速く動けるなら理論上は可能だからね」

 

 もしかしたら本当に出来るようになるかもしれない。

 光より速く動く事、超光速の領域に到達したならその世界に入門した事になるのだから。

 技術を極めた結果、異能になるというのはありえない話じゃない。

 

『…………そう上手くはいかないだろうけどね』

 

 思わずイタリア語が出てしまう。

 実際、頑張ったところで出来るわけがないだろうが。

 

「さ、後もう少しで人が居るところにつくよ――――」

「見つけたぞガキども」

 

 瞬間、私達の身体が凍り付き、咄嗟に視線を動かしてしまう。

 視線を向けた先には私達を誘拐した男達が怒りの形相を浮かべて、拳銃を此方に向けていた。

*1
呪術廻戦(モジュロ)のダブラ・カラバ

*2
ジョジョの奇妙な冒険のDIO、もしくは東方projectの十六夜咲夜




現時点のツナはユニの事を男の子だって思ってます。
まあ半ズボンでフードを被ってるから仕方ないネ。
日本語って難しいですよね。自分の一人称だけでも沢山あるんだから。
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