【本編完結】TS転生クソボケユメ先輩(死亡済・幽霊)が原作のn倍ホシノの脳を焼いていた話 作:死刑囚
感想返ししてたら普通に寝落ち爆睡して気づいたら朝でした。
おかげさまでぐっすり眠れました!()
というわけで――エピローグ、続く日常です。
それに伴い、本小説の小説情報に下記を追加いたしました。
タグ:ハッピーエンド
私の蘇生、あるいは復活。
困惑している子も多かったけど、ホシノちゃんを始めとした私を知ってくれている子たちはそれを泣いて喜んでくれた。
どこまでも透き通るような朝焼けは、無限の未来を感じさせてくれて。それで私はそのまま、打ち上げとしてホシノちゃんたちと一緒に噂の――私が生きてた頃はまだ無かったんだよね――柴関ラーメンへ……行こうとして。
「あなたは馬鹿なんですか!? 病院の方が先に決まってるでしょう!!」
問答無用でD.U.の病院にぶち込まれてしまった。
『神秘』の過剰解放で思いっきり動かしてたとはいえ、私は少し前まで死んでた身。身体のほうは栄養失調に水分不足、その他にも体調不良があれやこれやと山積み状態で。ラーメン食べに行きたい、なんて言ったらお医者さんにすんごい勢いで怒鳴られてしまった。
そうそう、その『神秘』の過剰解放……スーパーユメちゃんモードだけど。所謂リミッター解除系の技に近いらしい。みんなから貸してもらった力を束ねて、それを呼び水に限界以上の『神秘』を引き出す、そんな感じ。
『神秘』の二つ持ちをしていて、そして片方が空になった私にしか出来ない技能ではあるっぽいけど……要するに、蛇口を開けっ放しにするどころか水道管から直接水を噴射しているような状態らしく、異常に体力を消耗する。お医者さんの前で試してみたら、しこたま怒られて入院が一日延びてしまった。
まあ、銃弾一発とか一撃だけに使う分なら許容範囲内らしいけど、『セトの憤怒』と戦った時みたいに垂れ流しにするのはダメ、だそうだ。
もっと鍛えなきゃなぁ、なんてベッドの中で考えていたのを思い出す。
『全くもう、しょうがありませんねえ。ユメさんにはイチゴミルクを分けてあげますよ!』
『……断固、阻止します。当分は病院食ですね』
そういえば、アーちゃんやプラナちゃん、アインちゃん、ソフちゃん、オウルちゃんの声は聞こえる状態のままだ。『先生』という権能は失ったはずなんだけど、会話した記憶があるから大丈夫なのか……はたまた、かつて
詳しいことは分からなかったけれど、私にとってはまた話ができる、ってだけで充分だった。
「まさか、また貴女にお会いできるとは……! このような日を、どれほど待ち望んでいたことか……!」
「あはは……いろんな人に心配かけちゃったね、ごめんね。でも……うん、君もかっこいいおまわりさんになったみたいだね」
「ッ、恐縮です……、ッ。――ああ、そうだ! 貴女にお会いしたならばと、話したいことが沢山あるのです」
あと特筆すべきは、もうすっごく沢山の人がお見舞いに来てくれたってことだろうか。ほとんど病室に入り浸――ってたところをみんなに連行されてったホシノちゃんは除くとして、トリニティからはミカちゃんと、付いてきたらしきサクラコちゃん。
ゲヘナからはマコトちゃんとヒナちゃん、ミレニアムからはリオちゃん。ヴァルキューレからは……さっきの台詞を言って、感極まって泣いてくれたカンナちゃんが。
「貴女から教わった盾術も、どうにかヴァルキューレのカリキュラムへ落とし込めました。今では警備局の中に『即応機動隊』も結成され、市民の安全をより迅速に守れるようになったのです。また、各部隊には最低一人の盾持ちを配備し、公安局にも――」
「――……?????」
なんだか知らないうちにヴァルキューレの戦力も上がってるみたいだけど、私が昔やったのはカンナちゃんに盾の使い方を教えたくらいだし……それを広めたのはカンナちゃんの努力なんだから、謙遜することないのにね。
そして他には連邦生徒会からもリンちゃんを始めとした、彼女たちが一年生のころに付き合いのあった子たちが来てくれた。みんな泣いてくれたり、泣きながら笑ってくれたり、心配してくれてたってのを思い切り伝えてくれた。
ちょっと毛色が違ったのは、矯正局の中からビデオメッセージを送ってくれたカヤちゃんだろうか。二時間半にも及ぶメッセージの内容を要約すると『帰ってきてくれたのは嬉しい』『でもなんでこんなに遅くなったんですか』『叶うならば私のことを助けてほしかった』というものに集約されはするんだけど――これについても、彼女が大変だった時に助けられなかったという引け目がある。退院できたら、面会に行こうと思う。
「はあ……それで、どうして――いえ。どのようにして、ご無事でお戻りに? 連邦生徒会長含め、私たちもあれほど探したと言うのに、まるで見つからなかった貴女が……」
「えーっと、私も目が覚めてから分かっただけなんだけどね。砂漠で『色々あって』遭難しちゃって、そこで意識不明の仮死状態になった……らしいんだ。で、それを見つけてくれたのがアビドス砂漠の奥の方に住んでたお医者さんの人で、目が覚めるまでお世話してくれてたんだよね」
『
これは先生とも相談して決めたことで、事実はどうあれ『本当に死んで、本当に生き返りました』というのは、広めるには余りにも劇薬すぎる、という理由だった。他には、そもそも私は行方不明扱いになっていた、ってこともある。
本当のことを知ってるのは、先生とシッテムの箱の中のみんな、アビドスのみんな、私を助けに来てくれたミカちゃん、ヒナちゃん、そしてマコトちゃんくらいだ。……結構多いね?
他のみんなについては、連邦生徒会にも、あるいは不良もとい良のみんなにも、私の死と再生については伏せてある。
そうそう、良の子たちと言えば。
「ユメさんッ! よくぞお戻りになられましたッ! お疲れ様ですッ!!」
「「「「お疲れ様ですッ!!」」」」
“!?”
「ちょっ、待っ、ストーップ!! 放免祝いか何かに間違えられちゃうから!! 私が出たのは病院であって少年院じゃないから!! ほら解散! 隊列組んでお辞儀するのもやめて!!」
退院してアビドスへ向かう際――つまり今日。彼女たちはアビドスの校門前にずらーっと並んでお辞儀で出迎えてくれた。退院の付き添いで来てくれた先生と、『シッテムの箱』の中のアーちゃんたちがすごい目をしてたのが忘れられない。
なんでも彼女たちはずっとアビドスに暮らしていたけれど、どこの学校にも所属せずにいたらしい。私に、義理を通してくれていたのだそうだ。
気にしなくて良いとは言ったんだけど、誰も彼も好きでやっていることだから、と笑ってくれる。……生き返ってからこっち、ちょっと涙腺が脆くなってる気がするね。
で、なら彼女たちは私が帰還した今、アビドスに入学・編入するのかと言えば……そうでもないらしい。色々と理由は言っていたけれど、総括すれば引け目があるらしい。アビドスに対しても、元の所属校に対しても。
あと、半分強くらいのメンバーは『いやあたしらみたいなのがホシノとユメさんの間に入るなんて』……みたいなことを言ってたけど、どういうことなんだろう。それについてはよく分からないので置いておくとする。
とはいえ――いくら希望があるとはいえ、これだけ私たちに力を貸してくれたみんなに報いることが出来ない、なんてのは良くないわけで。
「……というわけで先生。ちょっと力貸してくださいね?」
“もちろん、ユメのやりたいことを手伝うよ。”
“こういうお願いごとなら大歓迎だよ!”
今では衰退してしまったアビドスの、それでも良いところの一つ。かつては超巨大マンモス校だった、って訳あって……一時期は『分校』の数も相応に多かった。
そして私はアビドス生徒会長の端くれとして、そのすべての分校がいつ成立して、いつ解散して……そして、どの分校は未だに『生徒が存在しないから休校状態となっているだけで、まだ存続状態にある』のかを把握している。
そう。つまるところ、私は彼女たちをアビドスの分校生として迎え入れようと画策している。探せばちょうど良く数年前に休眠状態となった近場の分校もあったしね。
まあ流石に書類を書いたり、連邦生徒会や他の学園との折衝があったりとすぐには行かないが……それでも、一月もしないうちに彼女たちはアビドス高校――『ネシュメト分校』の生徒になれるはずだ。
本当はもっと色々とやりたかった仕事もあるにはあるんだけど、病院のベッドで書類を見てたらホシノちゃんに取り上げられてしまい、今できたことはこの程度だけ。
そして、私は――。
「それで、今日の『対策委員会』の議題ですけど……まずは、借金返済に向けての内容です。カイザーグループからの圧力は小康状態になりましたが、だからといって借金が減ったわけではありません」
「ん、ホシノ先輩も帰ってきたし、これでやっとちゃんと進められる。早く今月分の返済額だけでも稼がないと」
「うへ〜……! あ、謝って許してくれたじゃんかぁ〜……!」
「それとこれとは別ですよ、ホシノ先輩」
私は……。
「今月分の返済と以降の計画の詳細については後で詰めるとして、議題だけ整理しましょう。もう一つは、生徒会長についてです。その、今では暫定的に私が務めさせていただいていますが……」
「よっ、アヤネ会長! うへ、おじさんも立派な後輩を持てて幸せだぁ」
「いやいや。アヤネちゃんがホシノ先輩に、って打診したのを保留にし続けてるのはホシノ先輩じゃない……なんで引き受けないのよ」
「まあ……そりゃあ、その……ねぇ?」
「セリカちゃん。ホシノ先輩にとって、生徒会長って言えば……」
私は……そう! この、後輩たちが和気藹々と話している対策委員会室に踏み込めていないのである!
いやね、私である俺の頭では理解してたんだけど……それでも、私にとっての『アビドス高校』は、二年生までのまだ人がいた時を含めてなお、ホシノちゃんと二人きりの場所だったわけで。端的に言うと、心の準備が済まないのだ。
“ほらほら、ユメ。入らないの?”
“今日退院だって言ってないよね、サプライズだーって。”
「ちょ、ちょっと心の準備が〜……その、先生、もうちょっと後で……」
“駄目だよ。あんまり時間ばっかり掛けても良いことないからね。”
“ほら行くよ、私もついていってあげるから!”
「わ、ちょっ、先生待っ――」
がらがらと開かれる、『アビドス廃校対策委員会』の部室、その扉。目に飛び込んできたのは……ああ。『原作』で見た通りの、本当にそのままの光景。
私がまだ在校していた頃には、もはや使われなくなって久しい、物寂しいがらんどうの学園祭事務局室だったその部屋。そこを見るたびに、こんな未来に思いを馳せたものだった。
しかし今、そこでは現実に、後輩たちが笑っていて。寒々しい空き教室だったそこには、活気と、希望と、そして未来がいっぱいに詰まっていて……ほんの少し、うるっとしてしまう。
「あ、先生。お疲れ様です――えっ、ユメ先輩!?」
「――うへぇっ!?」
アヤネちゃんの声に反応して、どんがらがっしゃん、とけたたましい音。デスクにへんにょりとへばりついて、伸びーっとしていたホシノちゃんがひっくり返って椅子から落ちた音だ。
「わぁ⭐︎ 今日退院だったんですね〜、サプライズですか?」
「ん、水臭い。言ってくれたら迎えに行ったのに」
「あはは……みんなも忙しいだろうし、OG一人にわざわざ時間を取ってもらうのもね」
「……シロコ先輩に同意します。確かにあたし達と面識は無かったですけど、私たちのことを助けてくれたんですから……迎えにくらい行かせてくださいよ」
「――せ、先生! どうしよう、私の後輩たちがとっても優しくて立派だよぉ〜……!」
“あはは。それはユメが作って、ホシノが守ってきたアビドスがあったからこそだよ。”
“それはそれとして……ホシノ、大丈夫?”
「あ、あと十秒待って!!」
そしてきっかり十秒後、ホシノちゃんは机の下から俊敏に飛び出てきた。髪を一つに纏めて、スカートの丈を少し長くして。ネクタイも緩めず、きっちりと首元まで締めた、やたらときりっとした顔のホシノちゃんが。
……うーん。ゆるふわだらーん、としたホシノちゃんも可愛くて好きだけど、凛々しいホシノちゃんもカッコ良くて好きだなぁ。頬が緩んでしまうのが自覚できる。
「――すみません先輩、急に来られて驚いてしまって。お見苦しいところを見せてしまいました」
「ううん、こっちこそごめんね? 会議の途中に邪魔しちゃって。私のことは後でいいし、続きを聞かせてくれるかな」
「はい、分かりました。では――」
「ちょっ、待って待って待って!! ホシノ先輩、流石に無理があるから!?」
ホシノちゃんはじろり、とセリカちゃんを睨め付ける。うーん、やっぱりセリカちゃんは昔のホシノちゃんみたいなところがちょっとある、というか。子猫っぽさが可愛らしいな、と思う。
「どうかした? セリ……黒見さん。会議の途中ですよ」
「黒見さん!?!?」
「……ん、ホシノ先輩。流石に無理がある……」
「な、なんのことですか? 私はずっとこんな感じでしょう」
「……んふっ、ふふ……けほっ。ふ、ふふ……」
「ど、どうしましたか先輩!? 何も変なところはないでしょう!?」
思わず、我慢しようとした笑みが漏れてしまう。ホシノちゃん検定一級を持つ私から見れば、今のホシノちゃんは……私が帰ってきたことによる喜びと、どう接すべきかという緊張と照れ、それらのハイブリッドだろう。きっと間違いないね!
ただでも、それを私から突きつけるのは流石に忍びない。だからここは、愛すべき後輩たちの力を借りよう。
「ふふ……ね、みんな。普段の、みんなの知ってるホシノちゃんがどんな子か、教えてくれる? 私ももちろん、ホシノちゃんの可愛いところは知ってるけど。みんなの……みんなと一緒に過ごしたホシノちゃんの姿が聞きたくてさ」
「……ん。まず……いつも眠そう。会議にもよく遅れてくる」
「遅れてくるというか、来ても途中で居眠りしてることも多いわよね。で、アヤネちゃんに怒られてるの」
「ちょっ……!?」
ふふふ。ホシノちゃん、後輩からぐさーっと刺されるその痛みは私も経験したものなのだよ。慌てて口を塞ごうとしてるけどシロコちゃんとセリカちゃんには届いてない。セリカちゃんなんて、さっきは黒見さんなんて言われたからかとても良い笑顔で笑っている。
「あとは〜……お買い物とか、そういうのにあんまり付き合ってくれませんね、ホシノ先輩? 水着、買いに行った時もすぐに切り上げようとしましたし……」
「そう! ホシノ先輩、こっちのことばっかり気にするくせに自分のことに無頓着なのよ! そりゃ先輩が強いのは知ってるけど、ふらふらしてるから危なっかしくて……よね、アヤネちゃん!」
「あ、あはは……」
それにしても。
こうして、ホシノちゃんのことを弄って笑うみんなの、なんと楽しげで、幸せそうなことか。込み入ったことを聞かずとも、何があったかを詳らかに確認せずとも。彼女たちが過ごしてきた期間が、どれだけ幸せなものだったかが伝わってくる――そして、それを中心になって作り上げたのが、誰であるのかも。
「――でも。ホシノ先輩は、私たちのことを本当に大切にしてくれるよ」
「……そうですね。シロコちゃんを助けてくれたのも、私を迎え入れてくれたのもホシノ先輩ですし……私たち三人だけの時も、ずっとこの学校が無くなってしまわないように、奔走していました」
ホシノちゃんは――どこか驚いたような、安心したような。そして、救われたような、そんな表情で目を見開いている。
照れくさそうに微笑む、シロコちゃんとノノミちゃん。それに続いて、穏やかに微笑むアヤネちゃんが言葉を引き継いだ。
「私たちだって、何も知らない訳じゃないんですよ? 不良チームの人たちと、夜遅くまで学区の見回りをしてくれているのも。何か起こるたびに飛んでいって、アビドスを守ってくれているのも。ね、セリカちゃん?」
「な、何よ!? そりゃあ、私はバイトしてるから夜もたまーに先輩を見かけたりしてて……自分一人でなんでも抱え込みすぎなのは、ずっと心配してたけど。でも、反省して謝ってくれたし……ああもう! わ、笑わないでよ!?」
「……うへ。やっぱりセリカちゃんは可愛いなあ」
「なあっ!?」
「ふふ、そうだね。まるで昔のホシノちゃんみたい! 他の子たちも、もちろん可愛いけどね?」
「う、うへっ!? 私、こんなにツンツンしてましたか!?」
「うん、すっごく! まあ、他の子もそれぞれホシノちゃんに似てるところがあって……うん。ホシノちゃんが、私のいないアビドスで何をしてきたのか。分かった気がするよ」
聞きたいことは全部聞けて、それは私の思っていた通りの、あるいはそれ以上の答えだった。
「ありがとうね、みんな。……ね、ホシノちゃん」
「……っ、なんですか、先輩」
「
「……はい、そうです」
「でもね、それはホシノちゃんが必死に歩いてきたことの証なんだ。……ずっと前に言ったかな? 先輩とは、後輩と同じ目線で、けれど一歩前を歩いて……どの道を歩くかを選んで、拓くものだって。それは辛くて痛い道だけれど、それはホシノちゃんが、みんなの前を歩いてたからこその痛みなんだって」
ぽん、とその小さな肩に手を置く。やっぱり、大きくなった。身体だけじゃない、その在り方が立派な『先輩』として花開いた。きっとホシノちゃんの背中は、それを追う彼女たちからすれば、とっても大きくて頼もしいものだろう。
だから。
「――だから、ホシノちゃん。次の生徒会長は、ホシノちゃんが務めるべきだよ」
「……ッ、聞こえてたんですか。けど、私はっ……」
反論は、ない。きっとホシノちゃん自身、理解はしているんだろうね。そしてその上で、まだ引き受けられていないことについても、感情が追いつかない、と言うよりは……私の口から聞くまでは、首を縦に振れなかった、ってことだろう。
だったら私の役目は、その絡まったものを解きほぐすことだ。
「ホシノちゃんが、ホシノちゃんの先輩である私を尊重して、大切にしてくれてるのは、とっても嬉しいよ。私……アビドス生徒会、生徒会長である梔子ユメとしても、ホシノちゃんみたいな素敵な後輩が、ずっと私を想ってくれているのは、とっても幸せだと思ってる」
「……ユメ、先輩」
にっ、と笑う。何も心配することなんてないんだよ、と示すように。
「けど。誰かの後輩は、いつか絶対に誰かの先輩になる。渡されたバトンを引き継いで、先頭に立って道を切り拓いていくことになる。私の場合は、ちょっと強引というか投げ渡すみたいになっちゃったけど……それでもホシノちゃんは、私のバトンを受け継いで、アビドスを守ってくれたよね」
「……恐る恐る、何が正しいのかも、分かりませんでしたが……っ。はい、頑張った、つもりです……っ」
「うん。だから、ホシノちゃんはもう立派な『先輩』。この子たちにとって立派で、頼れる、ちょっと抜けてる『先輩』と言えば……それは、ホシノちゃんのことなんだ」
だから、と私は続ける。
ここはもう、私たち二人だけの……梔子ユメと小鳥遊ホシノしかいないアビドス高等学校じゃない。小鳥遊ホシノが前に立って、その後ろに砂狼シロコ、十六夜ノノミ。奥空アヤネ、黒見セリカ。彼女たちが足跡を刻んだ、そんなアビドス高等学校なのだから。
「だから――小鳥遊ホシノ。私の跡を継いで、彼女たちの前に立つのは、君しかいないんだ」
ホシノちゃんは、一度だけ天井を見上げた。見上げて――きらきらと輝く、そして何よりも力強い光を湛えた、しっかりとした瞳で、私を見返してくれて。
「……分かりました。アビドス高等学校、生徒会長の任。小鳥遊ホシノが、受け取ります」
「よろしいっ! ……あ、ごめんね勝手に進めちゃったけど、みんな大丈夫だよね!? えっと、奥空生徒会長ちゃんも!」
「ええっ!? い、いえ、その、アヤネで大丈夫です! それに私は代理というか仮ですし!! ホシノ先輩が務めてくださるなら、それが……!」
「……うへ〜。まったくもう、みんな好き勝手言うんだから……先輩も含めて、ですよ。でも、やるって言っちゃいましたし……ま、頑張りますよ」
そう言って、ホシノちゃんは後輩たちを見つめて、眩しそうに目を細めた。……分かるよ、ホシノちゃん。
私たち、先輩のことを信じて、同じ道を歩んでくれる子たち。いずれ自分の道を定めて、先を行く私たちと肩を並べてくれるみんなの、その日を想像することが、どれだけ眩しくて、待ち遠しくて、嬉しいか。
私も、本当によくわかる――なにせ、今日。私はやっと、ホシノちゃんと肩を並べられたのだから。
「うん……安心した。それにそもそも、私は生徒会長できないしねぇ」
「うへ? どういうことですか、ユメ先輩?」
「いやあ、だってさ。私、二年も失踪してたんだよ? 二年、つまり学年で言うなら五年生ってところだし、とっくの昔に卒業してるはずの存在、OGだ。学校に入れてくれたのも、卒業生って枠だからとかだと思うし……」
しん、と部室が静まり返る。全員の視線が私を射抜く。視線の色は、疑問いや、懐疑? 何を言ってるんだろう、って感じかな。
……そっか、流石にみんな想像してなかったのかな? 私は二年前、ホシノちゃんが一年だった頃の三年生だ。仮に死んでいなかったとしても、順当に卒業してアビドス高校からは去っていたはずの人間。
まあ、だとしてもアビドスのどこかで喫茶店でも構えてたと思うけど、それはそれ。本来ここにいないはずの存在である、ということに変わりない。
「見た目、というか肉体的には……死んでた間の成長は止まってるみたいだけど、私は年齢的には十九歳……に、なってる筈だし。それに、キヴォトスに於いて通常の高等学校は三年制で、加えて大学を併設、あるいは兼任している学校はない。そうですよね、先生?」
“流石はアビドスの元生徒会長だね、ユメ。”
“うん、学校の事情という意味では、その通りだよ。”
「はい、ありがとうございます。……まあ、そういう訳だから。私は卒業済み、って形になるんだよ」
“…………はぁ。”
“ユメ。大変申し上げにくいことなんだけどね。”
「ほぇ?」
先生が――とても形容し難いような、くしゃっとした顔になっている。伝えにくいことを伝えなければならない、と言わんばかりの表情だ。
見回してみれば、みんなぷるぷると震えて顔を伏せている。……それほどまでに、問題があることなのだろうか。
「ん゛ふっ……なんというか、その……この人、ホシノ先輩みたいよね……」
「せ、セリカちゃん!!」
「どちらかと言うと〜……ホシノ先輩がユメ先輩に似ている、のだと思いますよ⭐︎」
「その〜……私たちは先生から先に聞いてたんだけど。落ち着いて聞いてくださいね、ユメ先輩」
先程、ホシノちゃんにやったのと同じように……私の両肩に、ぽん、と手が置かれる。片方は先生で、もう片方は……シロコちゃん?
「ん、作った甲斐があった。ナンバーも特別、受け取ってほしい」
差し出されたそれを手に取る。柔らかく伸縮性のある生地と、それに反してしっかりと縫製された布製品のようだ。
手にとって開いてみる。私の髪と同じ、エメラルドグリーン色のそれは、三箇所に丸く穴の空いた、すっぽりと何かに被せる、あるいは被るための服飾雑貨のようで。
もしもこれを被ったら、という時を想像すれば、ちょうど額に当たる位置にワッペンが縫い付けられている。それは数字ではなく、
「……目出し帽? えっ、なんで?」
「ん、コードネームは覆面レジェンド」
「いや、あの、私、卒業……」
“ユメにはかなり酷なことかもしれないけど、率直に言うね。”
“単位が、ぜんぜん足りてないよ。”
「――……ほぇ?」
単位。たんい。それが何を意味しているのかは勿論理解できる。BDを用いての学習が主ではあるが、各学校で行われるテスト結果はきちんと各学校から連邦生徒会に提出されている。
それについても問題はないはずだ。バイトしながらだってしっかり勉強していたし、死ぬまでに単位を落としたことなんて一度も――。
「――あっ」
“うん、そういうことだよ、ユメ。これ自体は、ユメに非があることじゃない。”
“けれど、事実として、三年生次のカリキュラムが途中で止まってる。テストも受けられてない。卒業認定を出す訳にはいかないんだ。”
“有り体に言って、残念だけど――留年だよ。それも、二留だ。”
留年。
留年。
りゅうねん……。
「え、え、え、うぇぇぇぇえぇっ!?!? な、なんでぇーーーっ!?」
ぶふっ、と誰かが堪えきれずに噴き出す。いや、誰かというかもう全員だ。何なら、『シッテムの箱』の中からすら笑い声が聞こえてくる。
は、恥ずかしい……っ!! 羞恥心と、ほんの少しの恨みを込めてホシノちゃんを抱き締める。
「もがーーっ!? むぐ、もがもがっ……!?」
「ひ、ひぃん……! どうしようホシノちゃん、せっかく先輩らしくカッコつけようと思ったのにぃ〜!!」
「ぷはっ!? うへ、せ、先輩っ! 抱きつく時は言ってからにしてください!! もう……まあ、先輩としては不本意かもしれないですけど……」
そう言って。
ホシノちゃんは、おずおずと手を回し、抱き締め返してくれた。
「……でも。もう少し一緒に学校に通えるのは……その。嬉しい、ので。……我慢、してくれませんか、ユメ先輩?」
――……それは。ホシノちゃんが上目遣いで繰り出したそれは、私にとって反則級の威力を持っていた。きっとキヴォトスの何らかの条約に抵触していると思う。可愛いのは十分に知っていたけど、ここまで可愛いとは。
そして、その提案を拒否する理由は私には無い。というか、一緒に学校に通えるならそれ以上のことなんて無いというか……まあ、同級生になっちゃうから先輩の威厳なんてかけらも無くなっちゃうけど、些細なことであって。
「我慢だなんて、そんなわけないよっ! ホシノちゃんと、もう一度一緒に過ごせるなら――私にとって、それ以上の幸せは無いんだからねっ!」
「……はい。私もです、ユメ先ぱ……もがっ、だから力っ、強っ、もがーっ!?」
こうして。
紆余曲折の回り道をして。色んな人を、いっぱい悲しませて、迷惑をかけて。そしてそれ以上に、色んな人に助けてもらって――その道の果てに。
一度は途切れたはずの、私の道は繋がって。
「だったら、改めて自己紹介っ! アビドス生徒会、兼っ! アビドス廃校対策委員会っ、三年生っ! 梔子ユメだよ、よろしくねっ!!」
私の、
◆あとがき
こんなところまでお読みいただきありがとうございます。
作者の死刑囚です。
まずは、ここまでお付き合いいただきましたことに多大な感謝を申し上げます。
思い返せば二月ごろ、デカグラマトン編の最後の方を泣きながらプレイして「ブルアカってやっぱ神だなあ……」となっている時に、デカグラ編のあれこれの設定を入れれば温めてたこれが書けるんじゃね……? と天啓が落ちてきたのが始まりです。
そこから約半年、拙い文章ではありましたが、一旦ここまで書き上げることができたのは読者の皆様の温かい感想、評価、ここすきなどなど、更新のたびに本当に沢山頂けましたおかげです。
本当に執筆の力になっていました、ありがとうございます。
おかげで、当初の構想通りクソボケを復活させてハッピーエンドに持っていくことができました。
さて、エピローグも終わり。書くべきは書きましたのでここで筆を置――ける訳がないよなぁ!?
メモロビ(通常)! メモロビ(臨戦)! 水着イベ! メモロビ(水着)! 晄輪大祭! 他にもいろいろ!
戻ってきたクソボケ、梔子ユメの日常なんかを書いていきたいと思いますので、勝手ながら【完結】ではなく【本編完結】とさせていただきます。
最後に、こちら作者のえっくす・ついったーアカウントとなっております。大したことは呟いておりませんが、気になることあればお話かけくださいませ。
アカウント:@kusoboke_writer
では最後に、重ねてになりますが、ここまでのご愛読ありがとうございました!
ここからも、引き続きよろしくお願いいたします!