僕は夜道を歩いている。
少し止まってみた。薄暗い電柱の光によってほのかに照らされる道は、僕をとてつもなく不安にさせる。
この道は前以外見えないほどに暗い。とにかく、歩くしかない。僕はそう考えまた進み出した。
そもそも僕はなぜこの夜道を歩いているのか、目が覚めたらこうだった。ただそれだけ。そもそも、この道を抜けたら僕は何をするんだ?
そんなこの夜道にぴったりな暗い考えを頭に浮かばせながら、僕は歩いて行く。
歩き出してからもう何時間経っただろうか?もう足は限界で喉が乾いている。この道を抜ける前に僕は死んでしまうのではないか?
いいや、とにかく歩くしかない。こんな所で死にたくない。そう思いながら歩くと道の端に自動販売機が見えてきた。自動販売機の中には一般的なジュースや水が入っていて、僕はそれが欲しくてたまらなかった。
けれど、僕にはびた一文たりとも持っていない。くそ、僕はやっぱり死んでしまうのか?いや、何も律儀に金を払って手に入れなくてもいいじゃないか。僕は死にそうなんだ。
邪な考えに駆られた僕は生まれて初めての悪事に手を染めた。その方法とは、直接拳で自動販売機のガラスを割るという方法だ。多少怪我はするかもしれないが、渇きで死ぬよりはましだ。
そう思った僕は拳を振るった。が、結果はガラスなど割れず、ただ僕の拳が血を流しただけだった。
くそ、なんでこんなことをしようと思ったのか僕でも分からない。きっと、この異常な状況が僕をこうさせたんだろう。僕は決して、決して普段はこんなことをするような人間じゃないんだ。そう言い聞かせながら僕はまた進んでいった。
しばらく進むと前に分かれ道が見えてきた。
一方には明るくて先に草原が広がっている道、もう一方にはここよりさらに暗い道。どっちに進めばいいんだ?と一瞬考えてみたが、そもそも考える余地なんて無かった。どう考えても明るい道の方がいいに決まっている。
いや、逆に明るい道は危険なんじゃないのか?あまりにもあからさますぎる。僕は混乱していた。
その時思い出したのはこの夜道に入る前の僕の人生だった。入る前の僕は決していい人生を送っていたとは言えず、毎日いじめられ蔑まれの人生を送っていた。
僕は毎日が怖かった、死にたかった、生きたくなかった。周りがいじめてくるのもそう思った理由だったが、何よりそんな状況に置かれながらも変われず、ただただ被害者ぶって泣いている自分が嫌いだった。
けれど変わるチャンスなんて無く、僕は大人になっていった。そして未来への不安を抱きながら生きていたら、この夜道に辿り着いたんだ。
そうだ、僕は変わりたかったんだ。だったら明るい道を選べばいいんじゃないか、明るい道を選べば、変われる気がした。だから僕は明るい道に進んだ。もう暗い道を進むのは嫌だ。
明るい道を進んだら、見えていた通り、草原が広がっていた。それだけだった。何も無かった。戻ろうとしたが、もう後ろには何もなく、馬鹿らしいほどに草原が広がっていた。
なんでだなんでなんだ。僕が何をしたんだ?いや、何もしなかったからか。そもそももう一方の暗い道には何があったんだ?いや、そんなことを考えても意味はないか。僕にはもう死しか待っていないんだ。忘れていた空腹と渇きを思い出した僕は生きる活力を失っていた。最後に自分で何かを決めたのはいつだろうか。このまま生きていくより、自分の選択で人生を終わらせれられてよかった。
僕はほのかな満足感を抱いて意識を失った。