やはりボクが八幡をおちょくるのはまちがっていない 作:モンゴル産シーラカンス
6.原作開始後
ハチが奉仕部に入部した次の日に、ボクも入部届けを平塚先生に提出をした。
何かを悩んだ様子だったけど、無事に許可をされて晴れて奉仕部の一員だ。
放課後にその教室へ行ってれば、窓辺の椅子に座る黒髪ロングの美少女が本を読んでいた。
「……あら、あなたは……」
「今日から奉仕部に入部することになった女だよ。私の名前は
「……部長の
スレンダー黒髪美人。
学年主席の才色兼備。
扉を開けるとその雪ノ下に訝し気に見られたため、にこやかに受け答えをする。
まあ、そこまで仲良くするつもりはないけど。
「さて、そう言えばハチはこの部室で何をしてるのかな?」
「まあ、普通に読書してるけど……」
「ああ、なるほど。いつも通りだね」
なんかハチが微妙な顔をしている。
まあ、言外に読書をしてるのがニュートラルみたいな言い方だからね。
実際に教室でもボクが話し掛けないときは、読書してるか寝てるフリをしてるかだもんね。
「……随分と親しいのね?」
「うん、言ってなかったけど、私とハチは幼馴染みの友達なんだ。部活の邪魔になるような会話はなるべくしないようにするから、安心して欲しい」
その言葉を聞くと、雪ノ下は驚愕したように唖然とする。
「…………本当にあなたに友達が居たのね。信じられないわ」
「嘘だと思ってたのかよ……自分がそうだからって相手もそうだと思うのはどうかと思うぞ?」
「私は別に友達なんて必要としていないもの。私の女友達は全員最後には敵になったから」
「何なの?魔王に洗脳でもされちゃったの?何がどうしたらそうなるんだよ」
別にドヤる事もなく、分かりきっている事実を言うかのように雪ノ下は口を開く。
「単純な話よ。──私が可愛過ぎたから」
「えぇ……自意識過剰が過ぎるだろ、コイツ……」
ドン引きしながらハチが呟いた。
……ふむ、こればかりは原作知識無しでも分かるな。
「告白されたってだけで裏切り者扱いにされたり、単純な嫉妬かぁ。あれってこっち側からは防ぎようがないからどうしようもない話だよね」
「…………なるほど、まさか私の言うことをすぐに理解してくれるとは思わなかったけれど、あなたもそうだったのね」
「え?何で分かり合っちゃってんのお前ら?何のことを言ってんだよ」
雪ノ下は驚いた顔をするがすぐに理解したように頷く。
まあ、あるあるということだ。
「男子からの無遠慮な好意に女子からは嫉妬からの嫌がらせ。端的に言うと、誘蛾灯に集る蛾というわけよ。それこそ、寄ってくるのが美しい蝶だけならまだしも、有害な害虫だとしたら迷惑きわまりないわ」
「ワタシ達のような美少女には割りとありがちってことだね。まあ、ハチには理解しづらいかもだけど」
「いや、それって俺だけじゃなくて多くの奴が共感しづらいと思うんだけど?」
リコーダーを持ち帰ったりしなくちゃいけないのは宿命と言ってもいいね。
本当に馬鹿だよねー。
流石に辟易としちゃったよ。
まあ、イギリスの方が色々と大変だったけど。
そんなことを思っていると、コンコンと控えめなノックが響いた。
「し、失礼しまーす」
比企谷八幡のヒロインの1人。
キョロ充巨乳。
「(原作だと別に嫌いなキャラじゃなかったけど、ボクがハチと一緒に居るためには雪ノ下同様に邪魔なんだよねー)」
そんなことを思いながら表情には一切出さない。
「(別にハチは心清らかな聖女みたいな子が好きなわけじゃない。それこそ、腹黒な部分とかも別に嫌いになる要素じゃないのは分かってる。実際にその部分を見せても失望とかはされていないしね。でも、重い女みたいに思われるのは沽券に関わるんだ。王子様系女子としてはね)」
異常なまでのあの直感を騙すために、表情管理は勿論、声音の高さまでしっかりと把握済み。
本気で笑ったときと演技で笑うときの差異を写真で見比べたり、録音して普段の声音の高さと柔らかさを完璧に調べたんだから、ハチに見破られる可能性はほぼゼロ……それでも、断言できないところが怖いよね。
そして、由比ヶ浜の話が進むと、八幡がクラスでボクが他の子達と話しをしているときの、寝たフリ作戦の話になり遂に八幡の口から暴言が飛び出した。
「……このビッチめ」
「ビッチ言うなし!あたしはまだ処じ──って、わわっ!なんでもない!」
売り言葉に買い言葉だとしても今のは擁護できないかな。
うーん、そもそも原因が同じクラスだと認識してなかったことだから、これはハチが悪いね。
「別に恥ずかしいことでもないでしょう。この歳でヴァージン「わわ!ちょっと何言ってんの!?高二でまだとか恥ずかしいよ!雪ノ下さん、女子力低いんじゃないの!?」……はあ、くだらない価値観ね」
本当に呆れたような声音で本を閉じる雪ノ下。
一般的な感性を知らないもんね、君は。
「確かにね。ああ、ちなみに私も処女だよ」
「って、さらっと祐天寺さんも何言ってるの!?女の子がそんなこと言っちゃダメだから!」
いや、まあ、ボクもそんな価値観は存在しないけどね。
元男に女子力を求められてもなぁ。
まあ、ハチ以外に体を許すつもりとか微塵もないし。
「ふむ、となると……やはりあの噂は嘘だったようね」
「噂?何の話かな?」
「いえ、あなたが男性経験が豊富という噂よ。私の耳にも届くくらいには噂は出回っているみたいね」
ああ……あれね。
まあ、何と言うか余りにも馬鹿馬鹿しくて相手にするのも嫌なんだけど……。
「私を抱いたとか言う男子のデマカセが広まったというだけだよ。そう言う、安っぽい見栄に付き合わされるのはゴメンなんだけどね。そのせいか、最近だと私に告白してくる男子の中に、それ目的で近付いている男子の割合が増えてきてね。この前は『付き合うことが無理なら1度くらい抱かせてくれ』なんて言われたよ」
「うわぁ……最低」
「ええ、そのような下劣な男がこの学校に居るとはね、不愉快だわ。あと、その件を黙っておくと次々に同じ様なのが増えるわよ?何かしら対処をした方がいいわ」
「大丈夫だったのか?」
三者三様の反応だった。
「襲われ掛けて問題になったから、それについてはもう済んでるよ」
「「「は!?襲われた……!?」」」
血走った目で近寄られたときは嫌悪感が半端じゃなかったね。
まあ、元男子だからこそ対処はバッチリだけど。
「咄嗟に足を振り上げて金的をして撃退をしたから大丈夫。泡を吹いて気絶してたからね。あと、その彼も退学になっていたから大丈夫だよ」
サッカーを習っていて良かったよ。
ズドンって感じだったね。
「(というか、ボクとしてはそんな奴よりも目の前に居る美少女2人の方が危険視してるんだけどね。変な同情だとか勘違いだとか思われないために、ハチとは仲の良い女友達として関わってきたけど、この2人……特に雪ノ下が相手だとどう転ぶか分からない。共感という点で言えばこの2人以上にするのは無理だと思う)」
ハチと恋人として結ばれる女の子なんて、ボクからすれば泥棒猫と変わらない。
原作の存在を考えれば、本来ならその関係性は逆なのかもしれないけど、そんなことは知ったことじゃない。
だって2人がハチを避けていた1年前から、同じクラスで仲良くしていたんだから。
「(それなのに、盗られるなんて許せないよね)」
だからこそ、最善手を打たなくてはならない。
今まで積み重ねたアドバンテージをフル活用して打てる会心の一手を。
「それじゃあ、ハチ。付き合おっか」
◇
「は……?え?はあ……?」
椅子2つ分離れた席に座る、幼馴染みの王子様系爆乳美少女に突然告白をされた。
「って、ええええッ!?」
俺や雪ノ下が座る席から、2mほど離れた位置に座る由比ヶ浜が椅子から立ち上がりながら驚愕する。
まあ、分からなくもない。
なんなら、俺の方が驚いてるまである。
──だが、俺は比企谷八幡だ。
俺は世の中に上手い話が転がっていない事を知っている。
今さら、この俺が勘違いだとかすると思っているのだろうか?
甘い、MAXコーヒーよりも尚甘い。
なんなら、糖分控えめと言ってもいい。
振られることに関して百戦錬磨のこの俺に、こんな分かりやすいトラップを仕掛けて引っ掛かるなんて思っているのか?
俺から冷静さを奪うどころか、動揺1つ誘うことはできないと言うことを教えよう。
「どうにゅう……んんっ!どういうつもりだ?」
はい、すいません。
普通に動揺してます。
えー?なんなのコイツ。
今までそんな素振りなかっ……なかったか?
幼馴染みとはいえ他の男子よりも距離感が近いとは思っていたが、そういうつもりだったの?
八幡、聞いてないんだけど?
ルートが解放されているなら、あらかじめ教えておいてくれない?
「こ、告白!?祐天寺さんってヒッキーのこと好きだったの!?さいちゃんと川崎さんと3人で居るところを何度か見たことあったけど、2人ってそういう関係だったんだ!?」
「……ハッキリと言わせて貰うなら、時と場所を選んで欲しいのだけど」
俺としてもほぼ初対面の女子2人の前で告白されるのは、気恥ずかしいものがある。
どうせなら2人っきりとかで…………いや、やっぱりおかしくないか?
「そうじゃなくて、ハチには偽装彼氏になって欲しいんだよ。私の体目的とかで近付こうとしてくる男子もこれで減るだろうしね」
「ああ、なるほど……そういうことね」
あーはいはい、そういう展開ねー。
まさかのニセコイ展開か。
まだ始まったばかりの作品だけど、なかなか面白いラブコメだよな。
俺としては金髪ヒロインよりも 黒髪ヒロインの方が好みではある。
可愛いよな、小野寺。
あんなにも健気だと最終的に主人公と結ばれなくても、幸せになって欲しいキャラだよな。
「でも、その相手が比企谷君でいいのかしら?諦めない男がいると思うのだけれど」
失礼って言葉はコイツの辞書にはないようだな。
……だが、否定ができないのも事実。
彼氏役ならばより適格な奴がいるだろう。
そして、そう思ったのは俺だけではないらしい。
「確かに、葉山君とかならともかくヒッキーだとそうなっちゃうかも」
雪ノ下に続く学年成績2位の男子。
誰にでも優しく誰にでも親しいスクールカーストの頂点。
サッカー部の主将を務めるイケメンだ。
……なんか、事実を羅列するだけでコイツ、ムカつくな。
「適当な男子を選んだら下手に勘違いされたり、それを理由に迫るような男子が現れるだろう?自分で言うのはアレだけど、私の体が女子高校生離れをしている自覚はあるからね。信用のおけない人物は無理だよ。それこそ、八幡は無理やりとかしてこないだろう?」
「まあ、それはそうだな」
それは無い。
一時の感情でそんなことをしてしまえば俺は俺を許せない。
だからこそ、そんなことはしないと断言できる。
でも、間違いなく世界最高峰レベルのメリハリがついた凹凸のある体なのは紛れもない事実なので、どうか気軽にボディタッチとかはやめてくださいお願いします。
「確かに、人間的な信用で言えば葉山君は合格だけど、今度は女子からの嫉妬だとか面倒だし、私の個人的な感情で言わせて貰えば彼だけはないかな。それこそ、由比ヶ浜さんからしても私が彼にそういうことを頼むのは困るだろう?三浦さんが煩くなるだろうからね」
「うぐっ……それはそうかも」
彼女のグループに居る女王様、
語気が強い金髪ドリル。
そんな彼女は葉山隼人に惚れている女子の1人だ。
その三浦が葉山と優希が付き合うようなことになれば戦争が起こる。
火薬庫に火炎放射器を噴射するようなものだ。
キョロ充の由比ヶ浜がそんなことをしたい筈もない。
「まあ、そういうわけだからよろしくね、ハチ」
「いや、その……あれがあれで、それだから…………」
「うん、受けてくれて嬉しいよ。ありがとう、ハチ」
「えぇ……」
俺の反応を見て全部無視したぞ、コイツ。
王子様なのか女王様なのかハッキリしろよ。
いや、雪ノ下と同じ様なのが増えたら大変だ。
カラッとした王子様系女子で居てくれ。
「あれ?そう言えば、何で由比ヶ浜さんはここへ来たんだっけ?」
切り替えが早すぎぃ!!
え?何?今の完全に終わった話?
彼氏彼女は本気?冗談?どっち!?
「そ、そういや、そうだな……何しに来たんだ?お前」
動揺を必死に抑えながら会話の流れに乗る。
俺達の今のやり取りを聞きに来た野次馬か何かなの?
「あっ、そうだ。あたしまだ言ってなかった……っていうか、祐天寺さんが突然変な話しをしだしたせいだからね!?」
「確かにそうね」
そんなこんなで依頼を聞いたあとに、家庭科室で由比ヶ浜のクッキー作りが始まり、俺は何故か炭を食わされた。
今年の2月に優希からチョコを貰ってなかったら、家族以外に貰った初めてのチョコが炭になるところだったぞ。