葬送フリーレン~アフターオレオール~ 作:rvr75_raiden
長い旅の末、フリーレン一行は
そこから南下を始めた彼らはシュタルクの希望によりクレ地方戦士の村へ立ち寄る。
そこでシュタルクが目にしたのは放棄されて荒れ果てた故郷の姿だった。
滅ぼされた村で遺品を弔うシュタルクは村への残留を決意する。
旅の別れを告げるシュタルク。そして共にあることを望むフェルン。
そのすれ違いにフェルンは涙する。
そんな二人にフリーレンは告げる。
『二人はもっとわがままでいい、頑張った二人のわがままなら何百年でも付き合える』
その言葉に覚悟を得たフェルンはシュタルクへと向き直る。
『何故傍で支えて欲しいと言ってくれないのか。
私は何一つ諦めたくない。シュタルクが本当に願うことは何なのですか』
遂に互いの本音をさらけ出した二人は一つの結論にたどり着く。
■いつかの厄災
「はぁ…はぁ…はぁ……うあぁぁぁああぁぁぁぁ!」
燃え盛る村と森を背に、赤い少年は必死に走る。
―― 生きる。生きなければ。
そうしなければ何もかも失う。立ち向かった勇気も。受け取った願いも。
背後から獣型魔物の唸り声と吠え声が複数聞こえる。
追いつかれまいと森を走るが子供の足だ。
慣れた森でも、獣の足は容赦なく距離を詰めてくる。
痛い。苦しい。怖い。どうしてこんな事に――
突然の出来事だった。村の兵舎が一瞬で消し飛び、周りの家に火の手が上がった。
その後は、地獄のような光景しかなかった。
――ここが、噂に聞く戦士の村か。
兄貴、親父、みんな。立ち向かった戦士たち。
村の外へ逃げた人々は無事か。もう何もわからない。
――本来は名乗りを上げるのが礼儀だが今回は用向きが異なるのでな。
――名は聞かん、全員剣を抜け。そして戦士の誇りを賭して全力で俺に抗え。
――お前たちの目の前に立ちはだかるのは魔族最強の戦士だ。
「うあっ」
ガッ!と木の根に足を取られて勢いよく転ぶ。
受け身を取ることもできずに倒れてしまった。
立ち上がろうとした時には既に魔物に囲まれていた。
「誰か……誰か助けて!」
『お前は生きろ』と告げた兄の顔が頭をよぎる。
死ねない、死ぬ訳にはいかない。
魔物は『グルルル……』と喉の底から唸り声を上げる。
牙を向き、ゆっくりと少年の周りを回りながら機会を伺っている。
そのうちの1匹が低く姿勢を取った。
だめだっ、やられる!!
瞬間、ズドッ!重い刃物が地面に刺さる。木工用の大きな鉈だ。
低く姿勢を取っていた魔物が力なく倒れる。飛ばされた首がドサッという音を立てて転がった。
「――おい、怪我はないか小僧」
上方から声が聞こえた後、ズドンという地響きが鳴る。
少年の前に降り立ったのは年老いたドワーフの戦士だった。
「フン、騒動に紛れて魔力と血肉を貪りに来た魔物共か……」
ドワーフの戦士はマントの中からハンドアックスを2本を取り出し、両手に持つ。
「俺にはもう大斧は振るえん。しかし、こんな物でも貴様ら小物には十分だろう」
「……おじさん、おじさんは誰?」
少年は立ち上がり魔物と対峙するドワーフの戦士に問う。
「俺か。俺は戦士アイゼンという。小僧、名前は?」
✧ ✧ ✧ ✧
少年が答える間もなく、魔物の一匹が低く構えた。
「遅い」
魔物が飛びかかる一瞬の隙。
アイゼンは距離を詰めて回り込む。勢いよく、左手のハンドアックスを頭部に叩き下ろした。
ギャイン!! と、断末魔の声が響き渡る。顔を潰された魔物は成す術無く絶命した。
瞬間、空いていた右手のハンドアックスを背後に振った。
背後から襲いかかる最後の一匹の牙に刃が当たり、激しい音を鳴らす。
アイゼンはぶつかった牙にも構わずそのままアックスを振り切る。
刃は牙ごと砕いて魔物の顔ごと横に一閃で薙いだ。
軌跡を描いて魔物の血が舞う。。一回転したアイゼンは魔物を後方に蹴り飛ばした。
真っ二つに裂けた3匹目の魔物は、背後の木にぶつかる。。
形の潰れたそれはドチャッという音を立てて地面にずれ落ちた。
「小僧、名前は」
アイゼンは何事もなかったかのように再度少年に名前を聞く。
しかし、少年は安堵から膝から崩れ落ちてしまった。
アイゼンは倒れ込む寸前の少年を抱きとめた。
「……シュタ、ルク……」
「そうか……派手に転んでいたが大した傷もないようだな。頑丈なやつだ。
シュタルク。何があった。あそこで森ごと燃えている辺りには大きな村があったはずだ」
「角の生えた……大きな斧を持った男が急に村に来て………」
角の生えた男。これだけの被害が出るのであれば確実に魔族であろう。
それも、かなり高位の――
そう思った時、巨大な物体が音速を超えて動く独特の異音が聞こえた。
何かがこちらに近づいてくるのを感じてシュタルクを抱える。
次の瞬間、飛び退いた位置を中心に爆風と爆音が鳴り轟いた。
その衝撃に辺り一帯が吹き飛ぶ。
残ったのは半球状の大穴。
ギリギリ残った位置にある木の上。
シュタルクを抱えたアイゼンは、大穴を開けた者の姿をその目で確認した。
男は地面に打ち据えた拳を持ち上げ、ゆっくりとアイゼンの方を向いてきた
「久しいな、戦士アイゼン!」
嬉しそうに名前を呼ぶ男はアイゼンが世界でもっとも会いたくなかった
「リヴァーレ……!!」
魔族最強の戦士だった。
■目覚めの小道
「旦那!旦那! ドワーフの旦那!!
起きてくださいよ! これ以上近づくのは割に合いませんや。この辺で勘弁いただけませんか?」
「ん……?」
馬車を引く商人に微睡みから引き戻されたアイゼンはムクリと起き上がる。
夢か……。辺りを見回すと、先程の夢で燃え落ちていた森の麓だった。
ここは中央諸国クレ地方。
かつて戦士の村と呼ばれた大きな村の跡地がある。
現在はその跡地に向かう途中。
「そうか、もう近くまで着いたか。商人殿、無理を言ってすまなかった」
「いや、料金はもらってるから良いけどさ。
気をつけてくれよ旦那。この辺は北側諸国や帝国近郊と変わらない。
凶悪な魔物がうようよいるって噂だ」
「まぁ……悪い意味で土壌が良かったんだろうな」
魔物の強さは土地の魔力や餌の質で変わるという。
この地はかつて大魔族が暴れ、多くの戦士の血が流れた場所だ。
「おそらく、問題無い。もう大した数は残っていないだろう」
「本当かい?この街道が無事に使えるなら販路も広がって助かるが。流石に命には代えられないよ」
商人が当たり前のように疑う。まぁ、10年近く危険地帯だったのだから仕方ない、とアイゼンは思った。
「古い友人がここに住み着いた」
「はぁ……」
「近いうちに大陸の中でも1,2を争う安全な場所になるぞ」
「その、お友達はお強いので?」
アイゼンは至って真面目に答えている。しかし、商人は冗談を言っていると受け取ったようだ。
……かと言って答えられる話も冗談のような内容だ。
「魔王を倒すぐらいにはな。
その連れの弟子も今では屈指の一級魔法使いという事だ。
ついでに、おまけの戦士は大魔族を斧で叩き切った大馬鹿だ」
「ぷっ、ははっ!旦那も冗談がうまい」
「街に着いたら商業ギルドに調査隊の派遣を依頼してみると良い。
『戦士アイゼンがそう言っていた』。そんな風に伝えれば動くやつもいるだろう」
「ああ、わかったよ。じゃあ、旦那も元気でな」
まぁ、そのうち判る事だろう。この街道にも商人が通るようになれば必ず役に立つだろう。
そう思いながらアイゼンは村があった方角へと足を進めた。
■日常の始まり
――少しだけ時間は遡る。
「おはようございます。シュタルク様」
「ああ、フェルン。おはよう」
寝袋から出て、魔法で服を洗浄しながらフェルンが朝の挨拶を告げる。
フェルンより先に起きていたシュタルク。彼は釣りや近くで山菜採りをして食料の調達を済ませていた。
ここはかつての戦士の村の跡地。
長年放棄され、見渡せば朽ちた家屋と瓦礫の山。未だ撤去が終わらない。
定住予定地で連日野営生活をするわけにもいかない。
そう決めたフリーレン一行は生活基盤の立ち上げを始めた。
近くの川の上流から水路を引き直して水の確保は終わった。
次は寝泊まり用の簡易ログハウスの小屋を組み立て。
フェルンとフリーレンの魔法も活用しつつ、切り倒した木材を加工している。
本格的な家は専門家の手配ができたら検討である。
「さて、今日こそ野宿脱出がんばるかー」
背伸びをしながらシュタルクがそう言うと
「そうですね、せめて床と屋根は欲しいです」
とフェルンが答える。
そして、シュタルクとフェルンは昨日まで用意していた木材の運搬に取り掛かる。
食は正直な所、旅の中で手慣れたもの。
衣もフェルンの魔法で毎日洗浄すると最悪なんとかなる。
ただし、全員同じフローラルな香りがするが。
だが周辺に全く街も村もない状況。とにかく住がままならない。
なお、シュタルクとしては先日やっとフェルンと気持ちが通じ合ったばかり。
というのにまともな寝床もない。ゆえに、いろいろままならない。
先日、フェルンに叱られたばかりだ。
シュタルクにとっても、あんな獣が自分の中にいるとは思いもしなかった。
なんで今まで大人しくしてくれていたんだろう?
今でも、フェルンの無防備な後ろ姿を見ているとムズムズする。
だというのにフェルンはシュタルクの暇を見ると、すすすっと隣に寄ってくる。
実に困る。始末に負えない。ままならない。
隣に座ろうものなら、肩に頭を載せてくる。
呼吸音が聞こえるぐらいに顔が近い。あと、服とは違ういい匂いがする。
勘弁して欲しい。
―― ああ、本当にままならない。自覚しちゃったこの欲望。
と、幸せなようでちょっぴり地獄のような日々を過ごしている。
「せめて時々ちゅーぐらいはなぁ……」
シュタルクは木材を組みつつしょんぼりしながらもぼやく
「シュタルク様、何か言いましたか?」
「いえ、なんでもありません」
さりとて、先日の魔法の花畑の中の二人の逢瀬。
最後のやらかしで怒られちゃったシュタルクは現在自粛モードだ。
何がと言うか「人目にも付きやすい外では嫌です」とのことだ。
考えてみれば反論できないごもっともなご意見である。
現状、人目と言われるとフリーレンだけなのだが。
フェルンにとってはそういうレベルの話ではないんだろう。
余談だがフリーレンの直近の趣味は魔法の開発。
精神操作魔法を応用し、見た記憶の映像化と紙媒体への魔法の転写の実験途中。
要するにフリーレンの秘蔵本にはその魔法が記録されている。
転写された魔法に魔力を通すと記録された映像が虚空に映し出される。
先日、その途中成果を見せてもらったフェルン。
彼女は己の師がヤバいものを作り出してしまったと戦慄していた。
なお、言うまでもないことだが。
今のフリーレンにとっての被写体はほぼ愛弟子のフェルンである。
そのため、フェルンはフリーレンの前では油断はできない。
✧ ✧ ✧ ✧
とにかく、そんな感じで、気持ちは高まる一方向。
「いてっ」
木材の細かい部分を削っていたら指を切ってしまった。
余計なことを考え過ぎた。20歳も超えた今更思春期男子みたいなことだな、と反省する。
「シュタルク様、大丈夫ですか?」
フェルンは魔法で浮かせていた木材を置いて駆けつけてくる。
「大丈夫。フェルンは気にしないで作業を続けてくれ」
「いえ、駄目です。血が出てます」
「戦士ならいつものことだから」
フェルンはいつもなら「戦士ってなんだろう」で引き下がる。
しかし、どういう心変わりなのか、むぅと膨れて睨んでくる。
「駄目です。放置するとバイキンが入ります」
「……わかった。じゃあ水で洗って包帯巻いてくるよ」
戦闘中なら放置するようなかすり傷。
とは言え引き下がらないフェルン。今日は大人しく従うことにした。
「ちょっと、行ってくる」
と、先日引いた水路の場所まで行こうと立ち上がった所。
「……なに?」
フェルンに服の裾を掴まれていることに気づいた。
彼女はまだ、膨れている。
「シュタルク様、私がやります」
「いや、俺がやるよ。フェルンはここで待っててくれ」
「私がやります」
なんか退いてくれない。
ちなみに、フリーレン一行は3人だとパーティーとしては攻撃特化。
僧侶のザインがいれば変わるが、今は不在。
要するに全員、治療はセルフケア。危なければ教会や医院に駆けつけ。
(こういうのもいつか改善しないとなぁ……)
村には必ずと言っていいほど、女神の教会が建設されるのはそのため。
ゆえに聖都の教会は世界的な権力があるとも言える。
無論、今はないものねだりだ。
「……私がやります」
腰にかけた水筒を取り出して、フェルンはシュタルクの手を掴む。
どうしても、彼女がやりたいらしい。
「……わかった。じゃあ、頼むよ」
「―― はい!」
華やぐ笑顔が眩しい……
なにかできることを、なんでもいいからしてあげたい。
今はそういう強い気持ちがあって。
2人とも常に何かを探している。
そういう気持ちはシュタルクにもわかるから。
シュタルクが感慨にふけっているうちに、フェルンは血を拭き取っていた。
そのまま水筒から水を出して、傷口にかけて消毒を始める。
「冷たい」
「我慢して」
「……はい」
フェルンはハンカチを取り出し、シュタルクの濡れた手を拭き取る。
「……ついさっきの傷なのにもう血が止まってる」
「いつもそんなもんだよ」
「いえ、シュタルク様が異常なだけです」
フェルンはじっと傷口を見つめる。
「……包帯、巻かないの?」
「シュタルク様。人の唾液には抗菌作用があります。
聞いたことがありますか?」
突然フェルンがなんか言い始めた。
「……え?」
「治療薬も潤沢ではありません」
「もう血は止まったよね?」
「はい。ですが傷口はあります」
何をする気だ!! とシュタルクの表情が変わる。
「なのでこれは仕方のないことです」
小さな口をあーんと開けて、シュタルクの指を口へといざなう。
「まって、まって、まってぇぇぇぇ」
……と、フェルンの距離の詰め方はここ数日こんな感じだ。
✧ ✧ ✧ ✧
あれやこれやと、いろいろあって指に巻かれた包帯を眺める。
「……ふぅ」
何故か疲れた。いや、本当に。
気持ちを切り替えて。とにかく住居作りである。
といっても、今作っているログハウスにプライベートなどはない。
つまり、シュタルクとフェルンの悩みは解決しない。
だが野宿も疲れたので、今後のためにも早く終わらせなくては。
そんな最中。シュタルクはふと、フリーレンの姿がないことに気づいた。
「なあ、フェルン。フリーレンはどこ行った?」
「フリーレン様は出かけてしまわれました。
『少し用事ができたから近くの街まで行ってくる』と書き置きが残ってました」
「え、こんな時に?」
「はい。でもいつもの大きなバックは置いたままです。それほど時間がかかる用事ではないと思います」
見た所、大型の荷物は確かに野営の拠点に置いたままだ。
さりとて、フリーレンのいない間に何も進めない訳には行かない。
「仕方ない。フリーレン抜きでなんとか終わらせよう」
「そうですね」
という訳で、今日もせっせと復興作業を開始した。
「しかし、一人で村の立て直しするとか……よく強がり言ったもんだ」
思いの外やることは多い。ここ数日でシュタルクも痛感していた。
フェルンとフリーレンの魔法があってこそ水路や木材の準備もサクッと完了した。
多分シュタルク一人だと準備にも何倍も時間をかけてしまったことだろう。
自分のわがままを今も隣で支えてくれているフェルン。
感謝を通り越した尊さしか無い。
更に言うなら。今作っているログハウスもフリーレンの設計だ。
本人に言うと拗ねるが、年の功だけあって器用に何でもこなすエルフだ。
普段の私生活以外は本当に頼りになる。
そんな感じで簡易ログハウスの組み立てを進めている最中のことだった。
ふと、遠くから人の近づく気配を感じた。
「シュタルク様、誰かこちらに来ているようです。
なんか……すごいスピードですよ」
「……わかってる」
フェルンの口ぶりから分かること。まず、少なくともフリーレンが帰ってきた訳ではないようだ。
こんな所で敵襲は考え難い。だが前衛としてはフェルンに危害が加わる可能性に備えなけれならない。
組み立て中の小屋の屋根から降りたシュタルク。念のため近くに置いていた戦斧を持ち上げて構えた。
――見えた!
■再会は襲撃とともに
凄まじいスピード。不規則に左右に揺れながら何かがこちらに近づいてくる。
「ダメです。シュタルク様。動きが不規則かつ早すぎます。私の魔法では捕捉できません!」
「俺が止める。 フェルンは上空に上がって魔法で迎撃の準備をしてくれ!」
「わかりました」
頷いたフェルンは空中に飛び上がる。
しかし、上空へは逃すまいと素早い何かはフェルンに向かって投射物を投げつけてきた。
「させるか!」
跳躍して、投射物を斧で叩き落とす――つもりだった。
空中の投射物が斧の刃に触れた瞬間。
――ぱぁあん!――
という破裂音とともに投射物が割れた。
弾けた何かがシュタルクの顔にぶつかる。
「ぶわっ!!なんだ!?」
透明な液体……これは……ごく普通の水だ。
「シュタルク様!?」
何が起きたかわからず着地する。
まずは顔に掛かった水を手で払う。
「いったい何なんだっ?!」
叩き割った感触と中から出てきた水。
つまり投げ込まれたのは水風船?!何故?
疑問に思いながらシュタルクが侵入者を視界に捉えようとした時だった。
「未熟者め」
背後から聞こえた懐かしい声。そして辺りに『スコン』という乾いた音が鳴る。
シュタルクの頭にいい感じの木の棒が振り下ろされた。
「ッッッ!!痛ってぇぇ!!」
「アイゼン様?」
シュタルクの背後から木の棒を振り下ろしたのはアイゼン。
その姿を確認したフェルンが地上に降りてくる。
フェルンは慌ててアイゼンに頭を下げて挨拶する。
シュタルクの濡れた顔をハンカチで拭き、上着を魔法で乾かし始めた。
「シュタルク様、動かないでください」
「ありがとぉ」
アイゼンはテキパキと世話をするフェルンの様子を見つめる。
「なるほど、そうか」
納得した様子でアイゼンはひとり頷いた。
「怖がらせてすまなかったな、フェルン」
彼はフェルンに謝罪の意を込めて頭を下げた。
「随分と、久しぶりに弟子の顔を見たのでな。思わず試させてもらった」
「師匠、いくらなんでも無茶苦茶だ。だいたい、その謝り方なら俺に言うべきだろう」
頭を打ち据えられたシュタルクが抗議する。
フェルンは隣で「コブはできていませんか?」と頭を撫でている。
シュタルクの抗議にアイゼンは鼻で笑った。
「お前が油断しすぎだ。対象を確認せずに斧で叩き切る馬鹿がいるか。
炸裂弾や爆弾、毒の粉末の入った袋だったらどうするつもりだ?
そんな事で大事な人を守れるのか?」
アイゼンは忠告を告げながら横目でフェルンの方を見る。
まだ何も報告していない。
しかし、我が師は既にお見通しのようだとシュタルクは察する。
言うまでもなく、先程からイチャついているせいなのだが。
「大魔族を討ったからと天狗になりおって」
シュタルクとアイゼンの対面では何年ぶりかという再会。
しかし、喧嘩別れした日のような容赦ない説教が繰り出される。
シュタルクは先程の失態で反論の余地がない。
「うぐ……!! はい……、すいません……」
「トマトケチャップでも大量に入れておけばよかったか?」
「顔がケチャップだらけになるからやめて……」
アイゼンの謎の脅しにシュタルクは抗議する。
フェルンは突然のジョークにプフッっと吹き出した。
真っ赤な髪と上着のシュタルクの顔に真っ赤なケチャップ。
それではもう上半身が真っ赤っ赤だ。
「ねえ、フェルン笑い過ぎだよ」
「――ッッ、ええ、すいません」
謝罪はするものの謎のツボにハマったフェルン。
クスクスとした笑いを止めることができないようだ。
「……まあいい」
アイゼンの様子にシュタルクは説教は終わったのかと顔を上げる。
「それで、師匠。なんでまた突然ここに?」
「フリーレンから手紙をもらった。
『<ruby><rb>魂の眠る地 </rb><rt> オレオール</rt></ruby>行きの依頼は完遂した。そのうちシュタルクを連れて一緒に報告に帰る』
とな」
「いつの間に……。いや、帰るつもりだったけど。師匠が先にこっちに来ちゃってるし」
「お前がいつまで経っても帰ってこんからだ。わざわざ来てやったんだろうが」
「……いろいろあってなかなか出発できなくて」
人差し指同士を当てる言い訳ポーズでシュタルクがぼやく。
「ほう。それで、いつかの峡谷の村のときのように3年程かけるのか?」
「う……」
アイゼンはうなだれるシュタルクにやれやれとため息をついた。
「ともあれ」とシュタルクの肩に手を伸ばす。
まるでお互いに喧嘩別れをしてしまった時間を埋めるように――
「お帰りだシュタルク。長旅からよく戻ってきた」
「ああ、ただいま師匠」
そう、帰還の挨拶を告げた。
■師は世話を焼きたい
「で、わざわざ会いに来た師に茶も出すことができない理由はこれか?」
眼の前の作りかけの小屋を見たアイゼンは呆れ気味にため息をついた。
「お前は良いが。フェルンにも野営をさせているのか」
「それは、大変申し訳ないことだとは思ってる。けど、言い方酷くない?」
「アイゼン様、私もフリーレン様も旅暮らしは慣れてます。これぐらいであればそんなに問題は」
そんなフェルンの言葉をアイゼンは片手をかざして静止する。
そのまま組み立て途中の建物をぐるっと一周する。
腕を組んで「うーむ」と唸りながらしばらく考え込む。
「道具を貸せ」
アイゼンがそう言い出してからは早かった。
✧ ✧ ✧ ✧
流石はドワーフというべきか。
アイゼンは怒涛の勢いで木材を加工していく。
合わせ目がガタガタになっていた壁や床もきれいに揃えていく。
「おい、シュタルク。お前は何をしている。黙っていないで手伝え」
「お、おう……」
シュタルクは急いで手伝いの道具を取りに行く。
「アイゼン様。私にできる事はありますか?」
「魔法で木材を運んでくれ。後は俺がやる」
かくして、アイゼンは怒涛の勢いで小屋を作成していく。
日が沈みかける前にドアと窓と屋根の着いた小屋が完成してしまった。
✧ ✧ ✧ ✧
「……これで、寝泊まりは出来るだろう」
「おおお、さすが師匠というべきなのか。ドワーフってすげぇんだな」
シュタルクの言葉にアイゼンは自慢気に応える。
「お前を保護してから暮らしていた家。あれは誰が作ったと思っとるんだ」
フェルンは目を丸くしながら壁を擦る。
「内装の床と壁がすごくきれいになってる……」
「全部研磨した。と言うか、お前らあんな荒い床で寝泊まりするつもりだったのか」
正直アイゼンの人間離れした力と業のなせる達人芸だ。
しかし、今のフェルンとシュタルクにはありがたい。
「フリーレン様は屋根があるならそれでいい程度の感覚なので」
「あいつも相変わらずだな。
いずれにしろ、これはただの寝泊まり小屋だ。生活が出来る家にはならん。
こいつを用意しておいた。フリーレンが戻ったらこの手紙を書いてある場所に送れ。フリーレンの使いの鳥ならすぐだ」
「こちらは?」
「俺の古馴染みで職人になったドワーフの仲間たちだ。
村の建て直しの力になってくれるだろう」
アイゼンから差し出された書状と地図を受け取るフェルン。
「……ありがとうございます。アイゼン様」
「それからシュタルク。明日この地図の店で酒を買ってこい。
大タルで12個分だ。アイゼンのツケで通る。アイツらは酒がないとテコでも働かん」
アイゼンからお前だ分と受け取ったシュタルクは内容を反芻する。
「判った――って、大樽で12個?!しかもめっちゃ遠い!」
「店主が荷車を貸してくれる。それを使って運べ」
「大型の荷馬車とか使って運ぶような重さだよな、これ」
「文句を言うな。この村の再建はお前が言い出したことだろう。
それともフェルンか老いぼれにやらせるつもりか?」
それを言われたらシュタルクが返す言葉もない。
「わかったよぉ」ぼやきながら上着のポケットにしまい込む。
「何から何までありがとうございます。アイゼン様。
しかし良いのですか?支払いまで」
あまりにも準備の良さにフェルンは苦笑する。
おそらく、シュタルクに会いに来る前に四方手を尽くしたのだろう。
「構わん。俺からの餞別と思ってくれ」
旧知へと連絡を取り、交渉し、約束を取り付けてきたのだろう。
何もかも数年ぶりに返ってくる我が子同然の弟子に合うために。
「……わかりました。ありがたく、お受け取りします」
フェルンにとってアイゼンとは<ruby><rb>魂の眠る地 </rb><rt> オレオール</rt></ruby>に向かう前に一度会っただけの人物。
人見知りだった当時は顔馴染みではない人だと距離を置いてしまっていた。
歳を少し重ねた今だから、態度の裏にある深い懐と愛情に気づく。
――私も、いつの日か、この様にあることができるのでしょうか。
かつてのハイターやフリーレンがそうであったように。
血が繋がらずとも人の親の愛とはそういう物なのだろう。
シュタルクと供にあることでフェルンもいずれ親になる日が来る……筈だ
そんな視線に気づいたアイゼンは不思議そうな顔をする。
「どうした?俺の顔になにかついているか?」
いつでもぶっきらぼうなその姿。
フェルンは可笑しくてクスクスと笑いながら
「アイゼン様のお顔はおヒゲだらけです。何が隠れているかは判りませんね」
そう答えた。
シュタルクとアイゼンも目を見開いてフェルンの方を見る。
二人とも、フェルンがそんなジョークを言うとは思わなかったからだ。
「ふむ、違いないな」とアイゼンは自嘲気味に笑ったのだった。
[恩師も来たりなば幸遠からじ(前編)](./02_恩師も来たりなば幸遠からじ(前編).md) の続きとなります。ご注意ください。
# 恩師も来たりなば幸遠からじ(後編)
■ある日の夕暮れ
そろそろ日も暮れ始める時間だ。
フェルンは完成した小屋の中に寝袋や毛布などの日用品を運び入れる。
そんな折、馴染みの魔力を帯びた鳥の到来に気づいた。
その鳥はゆっくりとフェルンの差し出した腕に降り立った。
「……この鳥は」
フリーレンの遣いの鳥だ。差し出した腕に止まった鳥の足には手紙らしきものが付いていた。
「フリーレン様は本日中に戻れないようです。
明日の午後過ぎに戻るようですね。
『頑張るからお土産楽しみにしててね』と書いてあります」
「頑張るって、フリーレンは結局何をやっているんだ?」
「さあ……。書き置きにも手紙にも書いていませんでしたから」
『わかりました。道中お気をつけて。
こちらには今アイゼン様がいらっしゃっています』
フェルンは簡易な返事を鳥に持たせて返す。
その様子をアイゼンは顎に手を当てながら興味深そうに眺めていた。
「あいつが、一日の到着遅れを連絡してくるようになったのか。人間、変われば変わるものだな」
「フリーレンって、そんなにフラフラといなくなっていたのか?」
「旅の最中は、はぐれても長期でいなくなることはなかった。
だが、魔王討伐後は五十年音信不通なのが当たり前と思っていた奴だぞ。
その変わりようには驚きもする」
シュタルクと出会った時、三年の滞在を短いと評したことを思い出す。
確かに今のフリーレンは、三年間を短いとは言わない気がする。
……無論、シュタルクの勘だが。
「そうか……そうだな」
アイゼンは、何かを思い出したように、そういえばと前置きして
「ところでシュタルク、土産といえばお前からあるんじゃなかったのか?」
「ッッ――!ああ、そうだ。師匠、話したいことが沢山あるんだ」
「なら、今日はここに泊まろう。夜は長い。話せ」
今日は何から何まで師匠のペースだな――としみじみ思う。
おそらく、随分と待たせてしまったのだろう。
そうだ、自分も会いたかった。話をしたかった。
くだらなくて、忙しくて、楽しかった、長い旅の話をしよう。
■思い出話をしよう
小屋の中で輝くランタンは、フェルンの魔法で灯したものだ。
長い旅を語る小さな晩餐会を彩る、宴の料理が並ぶ。
シュタルクが釣ってきた魚、アイゼンが取ってきた猪肉、周辺で集めた山菜で作った料理だ。
「そうだな、まずは師匠と喧嘩した後の話からしようか」
実は紅鏡竜のにらみ合いの3年間のことはアイゼンも知っている。
彼が、滞在中村に様子をこっそりと見に来ていたからだ。
「……うむ、話せ」
しかし、シュタルクが語りたいのなら水を差す必要もない。
アイゼンは頷いて、シュタルクの話を聞くことにした。
「師匠と別れた後、でかい竜に襲われる村について――」
―― 紅鏡竜と峡谷の村での出来事。
―― フリーレンとフェルンとの出会い。
―― 魔族との戦い。
―― 新しい人々との出会い。戦い。
シュタルクは不器用ながらも、身振り手振りを交えてアイゼンへと語る。
時折出てくる言葉が足りない部分は隣に座るフェルンが補足する。
その二人の姿は、確かに共に旅した事をアイゼンに感じさせる。
「……そうか」
アイゼンは時折相槌を打つ。
二人の様子を見て静かに、心なしか嬉しそうに聞いていた。
✧ ✧ ✧ ✧
余談だが、シュタルクの話にはフェルンの知らない人助けの話が入る。
内容はピンキリだ。
しかし、流石にフェルンの知らない少女を助けた話はいただけない。
「……シュタルク様。その話初耳です。なんですか……それ?」
「えっ?ああ、フェルンがいない時のことだっけ……?」
御礼で親切にしてもらったと聞くと苦情を上げざる得ない。
今までは看過してきた。
「え……なんかめっちゃ怒ってる?」
「今は怒っていません。シュタルク様の口から真意を聞いてから判断します」
「それ、割と怒ってるよね!?」
だが、今は違う。フェルンにはシュタルクの隣を占有する権利がある……はず。
今後の戒めをこめて両手を握りシュタルクの胸元をポコポコ叩く。
「えぇ、ちょっ、フェルンさん。やめて、あぁッ!」
「――ッッ!!――ッッ!!」
頬を膨らませてむーむー言いながら、ポコポコされるとシュタルクは弱い。
ちょっといい匂いがするぐらい至近距離。
シュタルクが掌で受ければ包み込めそうな女の子の手。
嫌ではない、痛くもない。昔はちょっと苦手――だったが。
今は、ただ、とにかく弱い。
むくれる顔が可愛いので、背中に手を回したくなる。
が……戦士は我慢だ。
その様子を目の前で見せられたアイゼンは……
「お前らは普段からそんな事をしているのか?」
と呆れ気味にぼやくしかなかった。
✧ ✧ ✧ ✧
「――で、そのときにフリーレンが……」
ふいに、シュタルクの肩に体重が掛かるのを感じた。
隣を見るとフェルンが寝息を立てながらもたれ掛かっている。
そういえば随分と長い時間、話した気がする。
「……フェルンが寝たか」
フェルンの意識が途切れたためランタン中の明かりが消えた。
「いい時間だな。今回はこの辺にしよう」
「まだ、話したいことはいっぱいあるんだけどな」
「まあ、またいずれな。次はお前たちが話しに来い。今夜は俺は外で寝よう。星が見たいんだ」
思い出話に終了を告げて、膝に手をつきながら立ち上がるアイゼン。
「一緒に小屋で寝ればいいじゃないか」
「阿呆か、遠慮する」
シュタルクは止めようと立ち上がろうとするが、アイゼンはそれを制止した。
「立ち上がるな、フェルンが起きるぞ」
「うッ――」
確かに、隣でかわいい寝息を立てるフェルンを押しのけては動けない。
「――お前は、説明しようとせんが、選んだのだろう。フェルンを」
「……。ああ」
「お前の人生の全力と全霊を持ってその手を握り続けろ。それが戦士の戦いだ」
もちろん、優しく握れと不器用に付け加える。
この人からすると何でも戦士に例えられてしまう。
いかにも師匠らしいアドバイスにシュタルクはわずかに口角を上げた。
「……戦士ってのは大変だな」
「ああ、そうだ。何があっても守らねばならん。俺にはそれができなかった。お前は頑張れ」
そういいながら年老いた戦士はドアを閉じた。
――と、思った瞬間にがちゃっとドアがわずかに開く。アイゼンの顔が中を覗いている。
「気持ちよさそうに寝ているんだ。今夜は余計なことをするのはやめておけよ。おやすみ」
「やらねーーーよッ!おやすみ!」
そうしてその日の夜は更けていくのだった。
■出発の朝
翌朝。
「師匠。起きろ。朝飯の準備ができた」
シュタルクは木の根元でひっくり返って寝ていたアイゼンを起こす。
「ん……ああ、わかった」
朝食に使ったのは昨晩の残り。後は食料保存食の乾パン。
シチューにした猪肉と魚を乾パンと合わせる簡単なもの。
「……結構いけるな」
「はい。残った食材は凍らせていたので傷まずに済みました」
そんな朝食の後。
シュタルクはアイゼンの指示通りに隣町まで酒の回収に向かうことにした。
✧ ✧ ✧ ✧
「じゃぁ、ちょっと行ってくる」
ブーツの紐を結び直しながらシュタルクはアイゼンに告げる。
「帰りは荷物あるから飛ばせないけど、本気で走って行けば多分日が落ちる前には帰れると思う」
「気をつけて行ってこい」
無茶振りを言っているのにアイゼンの応答はあっさりとしたもの。
苦笑しながらもシュタルクはアイゼンのこの後の予定を聞く。
出来れば帰る前にもう一度アイゼンの顔を見たいし見送りたい。
「師匠はこの後どうするんだ?」
「フリーレンが戻ってきて、軽く話したら帰る」
「……そっか、わかった。なんとか間に合わせるよ」
じゃぁ、行くかとシュタルクは村の出入り口跡に歩き出す。
フェルンはすぐそこまで見送りますとシュタルクに同行した。
「アイゼン様が帰ってからでも良かったのではないですか?」
これはシュタルクも聞いたときに感じた疑問。
しかし、アイゼンがこういう無茶を言う理由には察しが付く。
「多分だけどさ、俺が近くにいると言い難い話があるんだと思うよ」
「私にですか?」
フェルンはキョトンとした顔で首を傾げる。
かわいい。行ってきますのハグをしていいですか?と思ったが口に出すのを止めた。
理由を口にして説明するのは少し恥ずかしい。
「多分、俺のことよろしく頼むとか、そんな感じの話」
シュタルクは頬を指でかきながらフェルンに説明する。
「……既にシュタルク様はわかられているのに、お互い秘密にするのですか?」
「師匠はああいう人だからさ。
フェルンもあるだろ、フリーレンを目の前だと言いにくい感謝の気持ち」
「そう……かもしれませんね」
気持ちは察してもらえたのかフェルンは苦笑して答えてくれた。
シュタルクが気にし過ぎなのかもしれない。
「変かな?」
と問いかけるシュタルクの言葉にフェルンは
「――いいえ、素敵なことだと思います」
朝日を浴びた笑顔で答えてくれた。
■感謝の言葉を伝えたい
シュタルクが出発を見送ったフェルンはアイゼンのもとへと戻る。
「シュタルクは何か余計なことを言っていたか?」
という言葉に結局通じ合っているではないかとフェルンは苦笑する。
その顔をみたアイゼンは察する物もあったのだろう。
バツが悪そうに視線を落として顎髭を掻いてから、ゴホンと咳払いをした。
「この地に眠る戦士たちに挨拶をしたい。そこに行くまでに少し話をしよう」
「わかりました。こちらです」
どうやら剣塚を見たいらしい。フェルンはその言葉に従って案内を始めた。
アイゼンがフェルンの歩幅に合わせてくれる姿は少しシュタルクの仕草に似ている。
大切な人との小さな共通点を見つけてフェルンは微笑む。
自分も幼い頃ハイターに生き方を学ぶとき、色々な癖がうつってしまった。
ふいに、隣から 「ありがとう」 というアイゼンの礼の言葉が聞こえた。
「このくらいのこと、構いませんよ」
道案内程度であれば礼を言われるほどでもない。
しかし、フェルンの応答にアイゼンは首を振る。
「違う。色んなことだ。
閉じこもっていたシュタルクの背中を押してくれたこと。
旅の間、未熟なアイツを後ろで支えてくれたこと。
今の俺にはできなかったことだ。全部に感謝を述べたい」
「……」
「だから俺は、俺に出来ることでお前達を支えたい」
―― 『私は私のできる限りでフェルンの望むことを何でもしてあげたい』
いつか、フリーレンにそんな似たような事を言われた事を思い出す。
「それは、私が生きる上で必要だったことです。
私がしたくてやってきた事ですから」
そう、誰に言われたからではない。フェルンがそうしたかった。
お礼を言われることではない。
「フェルン、そうじゃない」
「え?」
しかし、アイゼンは正面を向いたたま静かに否定した。
「仮に誰かの施しが善意や真心ではなく利己のためだったとしよう。
お前の言っているようにな」
生きるうえで必要で、したいからしたこと。
フェルンの言葉を反芻する様にアイゼンは告げる。
「だが俺が誰かに受けた恩に感謝することは何も関係がない。
俺は嬉しかったんだよ。フェルン」
そう言って、アイゼンはフェルンの顔を見上げる。
「俺がフェルンに感謝したいんだ。感謝をさせてくれ」
まっすぐにフェルンを見るアイゼンの目には一切の偽りも迷いもない。
この人はきっと、ただその言葉の通りにある人なのだろう。
「はい……わかりました」
その大き過ぎる感謝をどんな形でか応えられる自分でありたい。
フェルンはアイゼンの感謝に言葉短く返事をした。
■戦士の約束
戦士たちが眠る剣の塚。
並ぶ剣はどれも10年近く野晒しにされてきたものだ。
「いつかは慰霊碑を建ててやらねばならんな。このままでは墓代わりの剣が錆朽ちて折れる」
「そうですね」
フェルンもかがんで錆びてしまった剣を覗き込んで同意する。
「時間があるときに良い霊石と職人を探しておこう」
まだまだあいつがやらねばならん事は多いな。アイゼンは顎に手を当てた。
「フェルン、今更頼むのは失礼かもしれん。
だが、これからもあのバカ弟子を支えてやってくれないか?
臆病なあいつは誰かが背中を押してやらんと立ち止まってしまう。
隣で支えてやらんと倒れてしまう。
これから先、俺では助けてやれん日が来る」
今のアイゼンにシュタルクを助ける事が出来ないとはフェルンも思わない。
だが、今そんな答えを返すのは違う気がした。
だから――
「元よりそのつもりです」
覚悟を告げることが、今は相応しい。
比翼連理。シュタルクもフェルンも幼い頃に大きなものを失った。誰かに支えてもらってここまで来た。
ならば、互いを支え合うことで自由に羽ばたくことが出来るだろう。
「シュタルク様が私を必要としてくれているように私も必要としています。
私もシュタルク様がいないと前に進むことができません。
シュタルク様は世界で唯一人の、魔法使いフェルンの前衛たり得る戦士です」
そう伝えるフェルンの言葉にアイゼンは目を閉じ頷く。
「ならよかった」と彼は小さく答えた。
改めて剣の塚に視線を向けたアイゼン。
「ここにはあいつの家族が眠っている。俺はそれを助けることができなかった」
「……」
「せめて、親代わりになろうと思っていた。
しかし、俺はこんな性格でな、戦士として育ててやるのが精一杯だった」
アイゼンはフェルンと出会う前のシュタルクにすべての技術を叩き込んだ。
これが如何ほどのことなのかは魔法使いのフェルンにはわからない。
「シュタルクは俺のことを師匠としか呼ばん……
だが、それでも俺はあいつが大切で仕方ない」
そう語るアイゼンは少し淋しげに見えた。
フェルンを魔法使いとして育て、フリーレンへ引き継いだハイターの姿が重なる。
「アイゼン様……シュタルク様は……」
ふと、出会って間もない頃からシュタルクの口にしていた言葉を思い出した。
これは。こめられた想いは、アイゼンに伝えるべきだろう。
「……知っていますか、アイゼン様?」
「なんだ?」
「シュタルク様は旅ができないアイゼン様に旅の思い出を語ることを目的としていました。
代わりに経験して語り聞かせることを恩返しだと言っていました」
「ああ」
そうらしいな、とアイゼンは頷く。
「シュタルク様はその恩返しの事を、こう表現していました。
――『親孝行』だと。
だから、きっと伝わっていると思います」
フェルンの言葉に、目を見開いたアイゼンは驚いたようだった。
アイゼンは「そうか、そうか…」と空を見上げて呟いた。
「フェルン、最後に一つ頼みたい事が……今更な……願い事ができた。聞いてくれるか」
「はい、私に出来ることであれば」
見上げた空から視線を落として、フェルンに向き合った老戦士は
「もう少し長生きをして、孫の顔が見たくなった。頼めるか?」
そう告げる顔にぶっきらぼうさはない。あたたかな笑顔で言っているように見えた。
「はい、必ず。いつかお見せしに行きます」
そしてフェルンも笑顔でそう答えるのだった。
■剣塚にて想う、いつかの出来事
フェルンには小屋に戻ってもらい戦士の眠る剣の塚にアイゼンは一人。
膝をつき、手を合わせて戦士は祈る。
「助けられなかったこと、今は謝りはすまいよ。戦士達の願いは悔いを聞く事ではない筈だ」
✧ ✧ ✧ ✧
「リヴァーレ……!!」
「こんなところで再会するとは縁とは奇なものだな」
木から降り、衝撃で気を失っているシュタルクを地面に座らせる。
そしてそのまま、リヴァーレから庇うようにシュタルクの前に立った。
リヴァーレは大斧を振りかぶりアイゼンの位置まで一気に飛び込んでくる。
今のハンドアックス2つで真正面から受けるのは不可能。
避ければ背後のシュタルクが衝撃で吹き飛ばされてしまう。
リヴァーレの一撃にアイゼンは体を反転させた。
大斧の軌道から体を逃し、リヴァーレの斧の柄を側面から蹴り飛ばす。
ガインッという音と共に軌道の逸れた斧は勢いを失って地面に刃をつけた。
「ほう、戦い方を変えたか?」
「貴様のような化け物と真正面から戦える歳ではなくなったのでな」
ふむ。と突然リヴァーレは戦闘態勢を解いた。
「このままいつかの再戦を申し込みたいが、今回は俺も古い友からの頼まれごとでな。その小僧を渡せ」
「断ると言ったら?」
「実力で押し通ろう」
先程はうまく流せた。
しかし、大斧も全力で振れなくなったアイゼンではリヴァーレには勝てない。
防御に徹すれば、ある程度耐えられるにしても限界はある。
「では、俺はシュタルクを連れてお前から全力で逃げよう」
アイゼンの言葉にリヴァーレは意外そうな顔をする。
考え込むように怪訝な顔でアイゼンを見つめる。
腕や足、体に流れる魔力を読み取っているのだろう。
「かつてあれほどの強さを見せた戦士アイゼンが今はこの有り様か。
随分と老い細ろえたものだ。これだから寿命差はつまらん」
「あの日も言ったが俺は臆病者だ。
命を捨てるような戦いは出来ん、逃げるべきときには逃げる」
アイゼンのその言葉にリヴァーレは顎に手を当てる。
先と違い、今度は愉快そうにも見える。
「ふむ、誰も彼もがその小僧を生き残そうとしている。
俺に最後まで立ちふさがった赤い髪の剣士もそうだった。
偶然に戦士アイゼンに拾われる……強い運と縁でも持っているのかもしれん」
「何を言っている」
「俺が戦士の村の元に訪れ、そこにいる"戦士"たちを滅ぼせと。今回はそういう仕事の話だ」
リヴァーレの言葉はどこまでも曖昧で要領を得ない。
「やはり、村を焼いたのはお前か」
「やり方は俺流になるが頼まれごとは果たす主義でな。
だが少し気が変わった」
リヴァーレは魔力で構成された斧を地面に突き立てた。
斧はその手から離れると自然と霧散して虚空に消える。
「気が変わった?」
「先の戦士の戦いとお前との再会に免じて俺が引いてやってもいい。
その小僧は戦士ではないしな」
「どういう事だ?」
目の前の最強の将軍はいつか見た嗤い顔で答える。
「その小僧を最強の戦士に育てろ。
そしてその小僧をお前の代わりに俺の前に立たせるんだ。それで決着とする。
それがここで俺が退く条件だ」
✧ ✧ ✧ ✧
目を開くと剣の塚が眼前に広がる。
あの日リヴァーレに抗った結果の光景だ。
約束は果たした。
結果的にシュタルクはリヴァーレを討ち果たしたと聞いている。
「お前たちはシュタルクを守り抜いた。だから俺と出会い今がある。
誇り高き戦士達の魂に感謝を――」
そう祈った時
――ありがとう――
と不意に剣の塚からそんな声が聞こえた気がした
■友との再会
背後から聞こえる覚えのあるテンポの足音。
振り返ると見知った顔が見えた。
「アイゼン、来ていたんだね」
「戻ってきたかフリーレン。久しいな。いや、お前にとってはそうでもないか?」
フリーレンにとっての数年はつい先日という感覚らしい。
そんなのりで話されたことを思い出した。
アイゼンもエルフほどではないにしても長命種のドワーフだ。
種族間の時間感覚の違いは実感がある。
しかしフリーレンからは否定の言葉が帰ってきた。
「そうでもない、最後に会ってから数年経ったんだ。私も久しく思うよ」
微笑むフリーレンは
「あれから説明するのも面倒なほどいろいろあったからね」
と付け加える。
「そうか……、いつかの人生の1/100の旅と一緒か。
フェルンとシュタルクと一緒にいた時間もまたお前を変えたんだな」
「そうだね。私は今この時の一瞬が愛おしくて仕方ない。
無為に過ごしてしまうと凄くもったいないからね」
フリーレンの言葉に「お前らしい理由だ」と答えてアイゼンは笑った。
✧ ✧ ✧ ✧
「あ、あははは……し、しんどい……もう動けない」
「大丈夫ですか?シュタルク様」
夕暮れ時。宣言どおり大酒樽をダースで持ち帰ってきたシュタルク。
全力で走りきった彼は、汗だくのまま地面にぶっ倒れてしまった。
ぶっ倒れた現場をフェルンに捕獲されて小屋の中に運び込まれた。
汚れた服を魔法で洗われたり、汗を拭かれたり、甲斐甲斐しく介抱されていた。
「身体が休まるまで、しばらくここでご休憩しますか?」
「いや……」
せっかく急いで戻ったのだからと力を振り、絞り立ち上がろうとする。
「膝枕ぐらいしますよ?」
「ッッ!?」
とフェルンの言葉に一瞬シュタルクは固まる。
しかし、アイゼンの帰りにせっかく間に合ったのだ見送りたい。
フェルンの膝枕の提案は大変惜しいが……
「負けて……たまるか……!!」
「何と戦ってるんですか?」
「膝枕の誘惑……」
「はあ……」
キョトンとした顔でフェルンはシュタルクを見つめる。
ガクガク震える膝を腕で押さえてシュタルクは立ち上がった。
「……今は、今は師匠を見送ろう」
「わかりました、今はそうですね」
シュタルクは村の入口でフリーレンと話をしているアイゼンの方へと歩を向ける。
しかし、何かを思い直したのか一度だけ歩みが止まった。
肩をプルプルと震わせたと思ったら、くるっとフェルンの方に振り向き
「―――――膝枕は後で!……後でお願いします!」
シュタルクにしては珍しくフェルンにちょっとした我儘のお願い。
その姿に苦笑したフェルンはそれを了承しつつ――
「ほら、シュタルク様、早く行きましょう。アイゼン様が待っていますよ」
立ち上がりシュタルクの右腕を両腕で掴み取ってその体を支えた。
「……フェルン。胸があたってる……」
「この姿勢だと仕方がありません」
「……仕方ないか」
「はい、仕方ありません」
そうして二人は不器用な二人三脚で歩き出した。
✧ ✧ ✧ ✧
村の入口跡では、アイゼンとフリーレンが楽しげに話をしていた。
久々に合うから思い出話に花を咲かせているのかもしれない。
シュタルクとフェルンがやってくるのを確認したフリーレンが手を振ってきた。
「アイゼンはもう帰るってさ」
「ああ。シュタルク、フェルン、壮健でな」
少しだけ……悩んだ顔をしたシュタルクは精一杯の覚悟を決めて。
「師匠、ここに残る気はないのか?」
ずっと考えていた一緒にここで暮らさないかというシュタルクの提案。
シュタルクの言葉にアイゼンは目を丸くしたが、すぐに表情を戻しす。
「申し出はありがたいが……遠慮しよう」
「師匠……」
シュタルクとしては、かなり勇気を振り絞った言葉だったのかもしれない。
拒否の言葉にシュタルクの表情が曇った。
「シュタルク。あそこには、かつての妻と子の墓がある。
それにな。魔王討伐に出た日とは違う。もう捨てられない思い出も多い」
これは伝わるのかどうかもわからない想いだ。
「お前が……ここに戻ってきて、暮らし始めたのと、同じだ……」
シュタルクを拾い、戦士の手一つで育ててきたあの日々は、あの場所にある。
誰もいない、森の中。己の魂の原点ともいえる場所。
「そっか……わかった」
伝わったのかはわからないが、シュタルクはうなずいてくれた。
「……だから、時々お前が来い」
「……ああ、これからは機を見て会いに行くよ。家族だからな」
今は守るべき場所はそれぞれにある。それで良い。
そんな二人のやり取りを見届けたフェルンとフリーレン。
彼女らも各々に別れの言葉を告げる。
「アイゼン様お元気で」
「またね、アイゼン。長生きしてよね」
アイゼンもフリーレンとフェルンの方を向いて応える。
「フェルン、フリーレン、シュタルクを頼むぞ」
「はい、任されました」
フェルンの答えにアイゼンは満足げに頷いた。
「フリーレン。出来るだけ長生きはするさ。約束をしたからな」
「そっ。じゃあ安心だ」
何の約束のことかも聞かないフリーレン。だが、彼女らしい。
いずれ分かることだろうとアイゼンは3人を背にする。
「では、またな」
そうして、アイゼンはシュタルクたちのもとから帰っていった。
✧ ✧ ✧ ✧
アイゼンが去った後、フリーレンはアイゼンの言葉が急に気になり始めたらしい。
「ところで、フェルン。アイゼンとなんか約束したの?」
その言葉にフェルンは顔の前に人差し指を立てて「秘密です」と答えた。
「秘密じゃしょうがないか……
シュタルクはなんで顔赤いの?」
「いや、なんか師匠が今お願いしそうなことの予想がついたから……」
「……どんな事?」
フリーレンは何故か今更興味津々だ。
「いや、なんでもないよ。気にしないでくれ」
「そう?じゃあ、いいけど……」
シュタルクはフリーレンの問いに答えず、誤魔化すように笑う。
フリーレンは納得してなさそうだったが、それ以上追求するのを止めたらしい。
一方のシュタルクは、ご機嫌そうに正面を歩くフェルンの後ろ姿を見つつ
「やっぱちゃんとした寝室いるなぁ……」
と日の沈みかかった空を見上げぼやくのだった。
■いつの日か来る領主生活
数日後、シュタルクはアイゼンから手紙の到着をフリーレンから聞いた。
「フリーレン、何、この紙の束?」
はい、とフリーレンから渡されたのは紙の束。
「アイゼンからの手紙だね」
「いや、それはわかるけど多くない?」
手に取って、パラパラとめくる。
目に入ったのは『シュタルクの説明がわかり辛かった点』という文字。
「いや、本当になにコレ?」
「一枚目は、季節の挨拶と先日のお礼って感じだね。
それ以降は……私が戻る前に、アイゼンに旅の説明したんでしょ?
書いてある通り説明がわかり辛かった場所のダメ出しじゃないかな?」
「えぇ……」
シュタルクから受け取り直したフリーレン。
数枚に目を通しながら「へえ」と感心している。
「アイゼンはああ見えて理論派だからね。
シュタルクの話でチグハグだった部分を整理しある。
読み取れた経緯と結果纏めているみたいだ……
うん、凄いね。地図までついているよ」
隣から覗いたフェルンも目を丸くした。
「これは、伝記にでもされるのでしょうか?
確かに、シュタルク様の説明って時々勢いと擬音で誤魔化しますから」
「ねえ、みんなしてダメ出ししなくても良くない?」
シュタルクは再度受け取った紙束を読みながらうなだれる。
「まぁ、次回に向けて原稿作っていきなよ。私も手伝うから」
「そんなぁ……」
「アイゼンに向けては愛嬌ってことで済むけど。
今後領地を治めるため書類仕事も出てくるからね。
文章は書けて損はないよ」
「そうかなぁ……」
ん?と、今の会話でフェルンは違和感に気付いた。
一瞬流されそうになった。しかし、物凄く聞き捨てならない言葉がある。
「フリーレン様、今……今さっきなんとおっしゃられました?」
「文章は書けて損はないって話?」
「いえ、もう少し前です」
「領地を治めるための書類仕事……?」
首を傾げるフリーレンの発言に息を呑む。
「「領地!?」」
フェルンとシュタルクの声が重なった。
驚く二人を見て「ああ、忘れてた」と言わんばかりにフリーレンは『ぽん』と手をつく。
「そうそう、お土産の話を忘れてた。
実は聖都まで行ってきたんだよ。
私達で村の復興を始めるって国に申請しよう思って」
3人だと資金も人手も限界があるしねとフリーレンは付け加える。
「突然いなくなったのはそのためだったのですね。」
「そしたら偶然、南部や北部の今後について話し合う領主会議が開かれてて。
北側諸国と中央諸国の主だった領主が集まってたんだ。
招集されてたグラナト伯爵とか何人かの知り合いにも会ってさ」
話の流れに察しがついたフェルンは頭が痛そうに額へ指先を当てた。
「なるほど、続けてください」
「事の経緯を説明したら、シュタルクと妻のフェルンが代表の自治領にしようって。
大魔族討伐の英雄が住まう地として復興を進めたら支援も捗るって話になってさ。
ほら、そうした方が生き残った村の縁者にも伝わりやすいでしょ」
シュタルクにもその理屈はわかる。わかるが待ってほしい。
「待って、待ってくれフリーレン……。
代表が俺なの?あと、英雄とか恥ずかしい肩書やめてよ」
フェルンは、領主会議の中で既にシュタルクの妻で通っていることに固まる。
だってまだ式も何も上げてないのにと。
シュタルクにはもはや事態が急すぎて、ツッコミが追いつかない。
「いずれにしろ、シュタルク村のシュタルク村長の予定だったし。
土地が広がってシュタルク自治領になるだけだし良いかなって」
フリーレンは、思い出したように書類を取り出して二人に見せる。
「グラナト伯爵も政治に直接巻き込むことはしないって言ってるしなんとかなるよ。
ほら、名代でサインしてきちゃった」
むふーっと、自慢げにサインした書類を出すフリーレン。
「ああああ、本当にサインしている!
あと、自分の名前を村の名前にするとか恥ずかしいからやらねえよ!」
「自治領として土地が再編されるのは結構先の話だよ。
頑張ろうね、シュタルク、フェルン」
「いや、無理だってぇぇぇ」
必死にフリーレンに泣きつくシュタルク
そんなやり取りをみたフェルンは苦笑しながらも
「どこに居たところで、結局この先もいろいろ起きてしまうのですね」
と、未だ見ぬ未来に想いをはせるのだった。
~ fin & to be continued ~