仮称:やる夫スレ的世界でオカルトやってくー   作:水野芽生

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【極秘資料群】特異領域『黒山』に関する歴史的記述の変遷と考察

 

編纂:内閣府・対アノマリー対策室(J-GOC情報部)

セキュリティレベル:特級(閲覧には長官の承認が必要)

 

序文

 

 鳥取県境港市北西部に位置する山岳地帯、通称「黒山」。

 本資料は、当該地域に関する歴史的文献、伝承、および非公開の公文書を時系列順に整理したものである。

 これらの記録は、黒山が決して単なる「心霊スポット」ではなく、「日本の国土形成における『排泄物』あるいは『悪性腫瘍』」であることを示唆している。

 

第一章:神代・先史時代

 

~天地開闢の残りカス~

 

1. 『山海経(せんがいきょう)』外伝・東方遺録(紀元前・中国)

 

記述:

 倭の北西、海の果てに「黒瘤(こくりゅう)」あり。山に非ず、島に非ず。これ大地の腫瘍なり。

 

内容:

 古代中国の地理書における記述。「そこは常に腐った魚の臭気が漂い、呼吸するように伸縮する。近づく船は海水ごと飲み込まれる」と記されている。当時の地図では、現在よりも遥かに巨大な「黒い空白」として描かれていた。

 

2. 『古事記』異本・黄泉比良坂之段(禁書指定)

 

記述:

 伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)による国産みの段。

 

内容:

 最初に産み損なった「水蛭子(ヒルコ)」よりもさらに前、形すらなさなかった「産み損ないの汚泥」が存在したとされる。

 神々はこれを忌み嫌い、名前すら与えず、葦船にも乗せず、北の海(日本海)へと放り捨てた。それが漂着し、固まったものがこの山であるという説。

 備考:この記述が事実であれば、黒山は日本列島そのものよりも古い「原初の穢れ」となる。

 

3. 『出雲国風土記』残欠(奈良時代)

 

記述:

 「国引き神話」に関する未公開の断片。

 

内容:

 八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと)が島根半島を引き寄せた際、その綱(弓ヶ浜半島)の一部に「黒い棘」が刺さっていた。神がこれを抜こうとしたが抜けず、触れた御手が瞬く間に腐り落ちたため、巨大な注連縄で厳重に封印し、見なかったことにしたとされる。

 

第二章:古代・中世

 

~陰陽の理が通じぬ虚無~

 

4. 陰陽寮秘録『黒山封じの儀』(平安中期)

 

記述:

 天文博士・安倍晴明による現地視察報告書。

 

内容:

 「此処は鬼門(北東)にあらず、『虚門(きょもん)』なり。陰陽五行の理が通用せぬ、無の領域なり」。

 晴明は、この地が霊的スポットではなく「物理法則の欠落点」であると見抜き、封印は不可能と判断。「地図からこの山の存在を抹消し、人々の認識から外すことこそが唯一の封印」と朝廷に進言した。これ以降、公的な地図から黒山の記述が消える。

 

5. 『吾妻鏡』外伝・平家追討始末記(鎌倉時代)

 

記述:

 源頼朝の命により、逃亡した平家の落ち武者を追って黒山に入った鎌倉武士団の記録。

 

内容:

 「山に入りし五十騎、一夜にして消ゆ。翌朝、浜辺に五十着の鎧のみが、中身を溶かされた状態で打ち上げられた」。

 鎧の中には、海水と混じったドロドロの肉塊と、大量の塩だけが残されていたという。以降、武家の間では「あの山には敵を追い込むな(自軍も消えるため)」という不文律が成立した。

 

6. 毛利家文書・禁足地覚書(戦国時代)

 

記述:

 尼子氏との戦いにおける記録。

 

内容:

 捕虜や裏切り者を処刑する際、斬首の代わりに「黒山への放逐」が行われた。「山入り」を命じられた者は、恐怖のあまりその場で舌を噛み切って自害したと記されている。当時の人々にとって、黒山は「死後の地獄」よりも恐ろしい「消滅の場」であった。

 

第三章:近世・近代

 

~科学による観測と敗北~

 

7. 伊能忠敬『大日本沿海輿地全図』測量日記・第十四巻(江戸後期)

 

記述:

 精密な日本地図を作成した伊能忠敬による、境港付近の測量記録。

 

内容:

 「どう測っても距離が合わない。歩くたびに山の稜線が蠢き、大きさが変わる。夜になると山全体が海へ向かって這い出しているように見える」。

 忠敬は測量不能による精神的錯乱をきたし、最終的にこの黒山部分のみを「雲」で覆い隠して描いた。幕府提出版では、周囲の地形から推測して適当な山が描き足されている。

 

8. 大日本帝国陸軍参謀本部・極秘ファイル「K地区要塞化計画」(明治30年)

 

記述:

 日露戦争に備えた、対ロシア防衛用砲台の建設調査。

 

内容:

 「地盤がコンクリートを喰らう。着工から三日で基礎が沈下し、作業員の精神錯乱および失踪が多発」。

 軍部は物理的な要塞化を断念。代わりに、この地を「毒ガス」や「廃棄兵器」の処分場として利用し始める。皮肉にも、人間が捨てた毒が、この山の「穢れ」を加速させることとなった。

 

9. 民俗学者・柳田國男の未投函書簡(大正時代)

 

記述:

 『遠野物語』の著者が、知人へ宛てた手紙。

 

内容:

 「鳥取の黒山について取材を試みたが、地元の古老たちは口を閉ざし、ただ震えながら『塩を撒け』と繰り返すばかりだ。あそこには、日本の民俗学の枠に収まらない、外(とつ)国、あるいは星の外由来の何かが眠っている」

 

第四章:現代

 

~管理社会の限界と崩壊~

 

10. 『特務機関・黒山地下壕計画』(昭和19年)

 

記述:

 本土決戦に備えた軍部の起死回生の計画。

 

内容:

 黒山から湧き出る未知のエネルギー(泥)を、兵器転用および無限動力源として利用しようとした。しかし、「泥の巨人」の制御実験に失敗し、研究部隊が全滅。終戦の混乱に乗じて入り口が爆破封鎖された。

 関連:第9話で佐藤蓮が発見した資料の前身にあたる。

 

11. 高度経済成長期の開発失敗記録(昭和40年代)

 

記述:

 リゾート開発ブームによるゴルフ場・ホテル建設計画。

 

内容:

 造成中に地中から巨大な「塩の柱」が出土し、重機が飲み込まれる事故が多発。建設会社が相次いで謎の倒産・失踪を遂げ、計画は頓挫。「昭和の祟り山」として一時的に週刊誌を賑わせたが、その後、報道規制が敷かれた。

 

12. J-GOC(対アノマリー特殊作戦群)設立趣意書(平成初期)

 

記述:

 頻発する黒山の「漏出(リーク)」に対処するため、政府主導で設立された非公開組織の基本方針。

 

内容:

 「物理的な破壊および科学的な解決は不可能と断定する。よって、古来の呪術的アプローチと現代工学を融合させ、『人柱(アンカー)』を用いた永続的な物理封鎖(蓋)を施す」。

 表向きは自衛隊の管理区域とし、その地下では非人道的な「契約」による封印維持が行われてきた。

 

結論:現在の状況(第10話以降)

 

 平成25年(2013年)5月某日:

 内部協力者(五条悟)の介入と、イレギュラーな「契約者(佐藤蓮)」、および外部アノマリー(博麗霊夢)の接触により、地下封印施設が崩壊。

 J-GOCが維持してきた「人柱システム」は破綻し、黒山は再び「管理不能な領域」へと回帰した。

 

 しかし、博麗霊夢の言葉通り、「山そのもの」は依然としてそこに在り続けている。

 施設が崩れようとも、泥が抜けようとも、この「産み損ないの黒い瘤」は、日本の片隅で静かに呼吸を続けているのである。

 

【警告】:

 今後、当該地域への不用意な接近、および地下資源の採掘は、日本列島の物理的崩壊を招く恐れがあるため、永久にこれを禁ずる。

 

(以上)

 

 

 

 

 

【調査報告書】特異領域『黒山』の多角的分析資料

 

作成:J-GOC科学技術研究所・第4研究室

協力:東方大学・民俗学研究室 / 境港市郷土史編纂委員会(非公式)

 

1. 地質学的特徴(Geological Features)

 

~物理的矛盾と「地層の癌化」~

 

基盤岩の組成異常

 黒山の主体となる岩石は玄武岩(Basalt)に近いが、通常の火山活動によるものではない。

 

 岩石の微細孔には、石英や長石の代わりに「高純度の岩塩結晶」が充填されている。これは、マグマが海水中で冷却されたというレベルではなく、「海そのものが瞬時に岩石へと置換された」ような組成を示している。

 

非連続的な層序(Stratigraphic Disorder)

 ボーリング調査の結果、地層の重なり方に致命的な矛盾が見られる。

 

 通常、地層は下に行くほど古くなるが、黒山では「白亜紀の層」の上に「現代のプラスチック片を含む泥層」があり、そのさらに上に「先カンブリア時代の変成岩」が乗っている。

 地質学者はこれを「地層の癌化(Malignant Stratigraphy)」と呼び、時系列が物理的に破綻していることを示唆している。

 

土壌汚染物質「ブラック・ピート」

 地表を覆う黒い土は、植物性の泥炭(ピート)に似ているが、炭素年代測定が不能である。

 この土壌は「有機物を急速に分解する酵素」と「無機物(金属)を酸化させる触媒」の性質を併せ持つ。

 

※第9話で坂口の車や、第8話の工事用ヘルメットが急速に劣化したのは、この土壌が発する揮発性成分による「時間的腐食」である。

 

2. パラサイエンス的分析(Para-scientific Analysis)

 

~観測不能なエネルギーと空間歪曲~

 

局所的位相幾何学歪曲(Local Topological Distortion)

 伊能忠敬が測量に失敗した原因の科学的解明。

 黒山内部では、外部とは異なる「距離の定義」が存在する。

 GPS信号は乱反射し、レーザー測距計はエラーを吐く。これは空間が物理的に「折り畳まれている」あるいは「引き伸ばされている」ためであり、内部空間の体積は、外観の体積よりも約1.4倍広いと推測される(クラインの壺的構造)。

 

負のエントロピー(Negentropy)と「泥」

 地下から湧き出る「黒い泥」は、熱力学第二法則に逆らう動きを見せる。

 通常、エネルギーは拡散するが、この泥は「集合・凝縮」しようとする性質を持つ。

 泥は周囲のエネルギー(熱、電気、そして人間の精神エネルギー)を吸収し、自らを増殖・維持するための動力源としている。

 

※五条悟が「六眼」で見た情報の奔流は、この凝縮された情報の塊である。

 

塩分による霊的絶縁(Spiritual Insulation)

 山中に異常発生する「塩」は、この暴走する泥(負のエントロピー)を閉じ込めるための、自然界の防衛反応、あるいは「かさぶた」である。

 塩の結晶構造が、異界からの波動を乱反射させ、外部への流出を(不完全ながら)防いでいる。

 

3. 形而上学的分析(Metaphysical Analysis)

 

~「存在」の定義と、世界からの拒絶~

 

オントロジー(存在論)的「異物」

 現地の郷土史家およびオカルト研究者による見解。

 黒山は、「在る」場所ではなく、「世界が『無い』ことにしようとした場所」である。

 哲学的概念で言う「アブジェクション(Abjection/卑しいもの)」の具現化。

 神話における「水蛭子(ヒルコ)」のように、世界のシステムから「排泄」されたが、消滅できずに残ってしまった「世界の残余データ」。

 ゆえに、この山は常に世界に対して「私はここにいる」と主張し続け(泥の流出)、世界はそれを「お前はいない」と否定し続ける(塩による封印)。この相克が、黒山のエネルギー源となっている。

 

意識の「鏡」としての性質

 黒山には、固定された「姿」がない。

 観測者の深層心理にある「恐怖」や「罪悪感」を反映(ミラーリング)し、その姿を変える。

 

※坂口(公務員)には → 「巨大な工事現場の穴(隠蔽の象徴)」として。

佐藤蓮(家族思いの息子)には → 「両親が苦しむ地獄」として。

博麗霊夢(博麗の巫女)には → 「管理すべき境界の綻び」として。

 

 それぞれの主観的現実に侵食するため、複数人での共有認識(客観視)が極めて困難である。

 

※第10話で蓮が「サングラス(情報遮断)」を使ったのは、このミラーリング機能を強制停止させるための最適解であった。

 

4. 総合評価

 

分類:

 クラスA・指定禁足地(Spatial Singularity)

 

推奨対処法:

 物理的な破壊は、空間の裂け目を広げるため厳禁。

 「認識しないこと」「地図に載せないこと」「関わらないこと」による、概念的風化(忘却)のみが、この山を沈静化させる唯一の手段である。

 

 ただし、2013年の事件(※第10話)において、内部の「人柱システム」が破壊されたため、現在は博麗霊夢による「博麗大結界(信仰による概念封印)」によって辛うじて安定している状態にある。

 

特記事項:

 当該地域には、「異世界からの転生者」や「物語的特異点を持つ人物」が引き寄せられる傾向がある。

 これは黒山が持つ「虚構と現実の境界が曖昧」な性質が、彼らにとって「居心地が良い(あるいは干渉しやすい)」ためではないかと推測される。

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