弓ヶ浜半島の最果て、日本海に突き出したその場所には、常に湿った潮風が吹き抜けている。

境港(さかいみなと)。

 国内屈指の水揚げ量を誇るこの街は、昼の間こそ活気ある漁師たちの怒号と、競り落とされる松葉ガニの熱気に包まれているが、日が落ちればその様相を一変させる。

 通りに並ぶのは、百を超えるブロンズの怪異たちだ。街灯が作り出す影の底から、一つ目小僧や塗壁が、道ゆく人々をじっと見つめている。妖怪漫画の巨匠が生まれ育ったこの地では、日常の風景の裂け目に、ふと「見えないもの」の気配が混じるのだ。

 海から響く汽笛が、まるで異界への合図のように低く唸りを上げた。 



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