流星たちのヒーローアカデミア 作:ハルカンドラの呪物
説明が終了した後、僕はエクトプラズム先生に同伴して指定された演習会場に到着した。
「試験ガ開始サレルマデ、ココデ準備をシテモ構ワナイ。健闘ヲ祈ル。」
そう言うとエクトプラズム先生は足早に去っていった。彼もまた試験監督、試験を見るために急いだのだろう。
「さて、となると作戦会議をしなきゃだね。」
軽く指をスナップする。すると空から様々なマシンがやってきた。いつもの『ワープスター』に加え、鳥の翼のような主翼を持つ『ウイングスター』、悪魔の羽を持つ黒紫色の『デビルスター』、四角い箱の形をした『ワゴンスター』、一輪の一つ目バイク『ウィリーバイク』が集結する。
「試験の内容は把握してるよね?この試験の要点は、他の人より早く仮想ヴィランを素早く探し出して倒すのが重要。そこで各マシンに役割を与えるよ!
ウイングは上から仮想ヴィランの探してすぐに連絡、可能なら戦ってね。
デビルはその攻撃力で3Pの奴を中心に仮想ヴィランを倒す、再起不能は避けて。
ワゴンとウィリーは共闘して撃破。離れないようにね。
そしてワープスターは僕と一緒に戦うよ、皆んな理解出来た?」
皆んなからOK!の意志が伝わってくる。それぞれ配置についてスタートダッシュは完璧そうだ。
「その子、恐らく精神統一でリラックスしようとしているじゃないか?君はその邪魔をするつもりか?」
「あ、いや!そ、そんなつもりは…」
ワープスターに乗り換えたとき、前からどよめきの声が上がっていた。先ほどの説明会で0Pの仮想ヴィランについて指摘したメガネの子と、その子に注意されていた緑髪の子だ。緑髪の子はどうも自信がないようで、周囲からはすでに不合格確定の冷笑が飛び交っていた。
少し可哀想だ、と思って声を掛けようとした時…
「スタァート!!」
プレゼントマイクによる開始合図。一瞬誰もが不意を突かれるもすぐさま走り出す。だが、僕やマシンが既に先頭に躍り出ていた。
大抵のマシンにはエネルギーをチャージする機構があり、それを解き放つことで一時的に加速することが可能。尤もチャージ中は止まる必要があるため、スタートダッシュ以外だとカーブを曲がるときに使っている。
『ターゲットカクニン!ブチコロ_』
ガシャン!
早速仮想ヴィランと遭遇。やけに殺意満々だったがデビルスターに一瞬で粉砕された。
『オノレ!ナカマノカタキ_』
ドゴォ!
更に別の仮想ヴィランが迫るが、特注した木槌でその胴体をかっ飛ばした。
「そろそろ作戦通りに散開。」
中央に着いたところで作戦を開始。ウイングが仮想ヴィランを捕捉し、それをデビル、ワゴンとウィリーのペア、僕とワープスターのペアで撃破していく。仮想ヴィランは見た目に反して脆かったのでデビル以外でも問題なく倒せる。この調子でポイントをどんどん稼いでいこう。
♢
「すごいな、あの受験生。」
「火力はお世辞にも高いとは言えないけど、スピードが早いおかげですぐ次の仮想ヴィランを狙えるわね。」
「しかもあの翼のようなものと連携を取っているみたいだ。判断も早いから尚更得点率が高い。」
教師達は管制塔から受験者達を観察している。情報力、機動力、判断力、そして純然たる戦闘力など様々な点をポイントで置き換えれている。
ある者は足のブースターによるキックで、ある者は浮かせてからの落下で、ある者は腹からのレーザーで、受験者達はそれぞれの方法で仮想ヴィランを倒していく。
「いやぁまだ分からんよ。真価が問われるのはこれからさ。」
誰かがそう言うと、制御盤の特徴的なスイッチ押された。
♢
ドゴォーーン!!
突然の轟音。その方へ振り向けば、大きな土煙が上がり、その中からこの試験会場のどの建物より遥かに高い0Pが現れた。
「ターゲット…タイリョウ!!」
その巨躯を以て受験者達に圧を掛けるのが目的なのだろう。だがそのせいで建物もお構いなしに前進している。このままではケガ人が出てしまう。
「ウイング!0Pを陽動して!」
《___!》
僕はウイングに指示を出す。了承したウイングは0Pの周りでそれを挑発する。
「チッコイハムシガ!ウットウシイ!!」
案の定、殺意の高い仮想ヴィランはウイングに意識を持ってかれた。
「ここは僕らが抑えるから、皆んなは避難して!」
『わ、分かった!ありがとよ!』
その間に僕と他のマシン達が他の受験者を避難させる。皆んな予想外の大きさの0Pに軽くパニックしているようだ。
「ほら、君も早く!」
「あ、うん……?」
立ち止まっていた人、緑髪の子もハッとして逃げようとしたが、後ろを振り向いてまた止まった。
何かあったか、と思って僕も振り向いてみると、なんと0Pの足元に茶髪の女の子がいた。崩れた建物に足を掬われ、倒れてしまったようだ。
「うっ…誰か、助けて…」
「「!!!」」
すぐにワープスターを走らせる。が、その行動の前より早く緑髪の子は駆け出していた。反射神経なんてレベルでは説明できない行動速度に僕は一瞬呆気に取られた。
「君はあの子を!僕は0Pを止める!」
「!分かった!」
緑髪の子に指示され、女の子の救出に全力を注ぐ。ウイングを追い返した0Pがすぐさま拳を振り下ろすが、間一髪で女の子を連れ離脱する。
あの子は、と振り返ると、緑髪の子は空高く飛び上がっていた。握り拳を作ると、ジャージが破れてエネルギーを込めた光る腕が顕になる。
「SMAAASHH!!!!」
雄叫びと共に振るわれた拳は、0Pの顔面を粉砕し、爆散させた。
死ぬ危険すらあるかもしれないのに、一人の女の子のために駆け出し0Pを撃ち倒すその姿は、最近のプロヒーローと遜色ない景色を醸し出していた。
その後、落下死しそうになった緑髪の子を、女の子と共にキャッチし救出。試験終了の合図がプレゼントマイクによって伝えられると、よほどショックだったのか緑髪の子は気絶、女の子は個性のキャパオーバーで嘔吐し、それがワープスターに全弾ヒットした。*1しばらく二人を駆けつけたメガネくんと介抱していたらリカバリーガールが到着し、介抱してたのを褒められて飴をもらった。嬉しい、ワーイ。
最後はエクトプラズム先生に見送られながらワープスターで家へ帰ることになった。汚れたワープスターが不機嫌になっていたので高い空を通って気分晴らしした。
合否発表まで、1週間。