マシンすら出てないですが。
もうガジェットだけでいいのでは......?
いや待ってください。
これまだ五話ですね......ん? 五話で体力テスト......? 入試が第一話なのに......?
体力テストの為、
『
右肩に『
左手の上に『トリケラカンドロイド』が。
四体のガジェットに囲まれた俺を見て、興味はあるが話しかけづらい、といった落ち着きの無い動きを繰り返すクラスの者が数人。
視線が向いて、外れて、向いて、また外れて。
俺の事について何を口にするわけでもなく。
......相澤消太の近くに立っていた事、最初教室にいなかった事から二の足を踏んでる......のか......?
......まぁ、体力テストで身体を動かせば、また心持ちも変わるだろう。
二人ずつ五十メート走を行っているのを眺める。
砂を踏み締める音、風を切る音、服の擦れる音。
そして『個性』による独自の音。
......例えば、少し奇妙なエンジンに似た音、粘液で滑走する音、ビーム──レーザーを放射する音。
そして、身体を動かした事で軽く昂揚し、会話を始めた声。
......音だけでも楽しめるな。
熱量、走法、身体構造、身体制御、呼吸。
匂い、感情、
五感に留まらない感覚で捉えた情報をリストアップしておく。
......あくまで脳内で、だけど。
後で
観察している内に、俺の番が回って来た。
一緒に走る奴は──
「......よろしく」
「......っ! ......!」
岩のようなゴツゴツとした頭部が特徴的な、喋らない少年。
羞恥と緊張、驚きに、両手をワタワタとさせながら何度も頷く。
身長は俺と同程度で、ガタイも良い。
人見知り、あがり症、内気で引っ込み思案......か。
スタート地点に並び、今も尚俺の周りにいる四体のガジェットを気にしている。
『瑠璃狼』は肩の上に。
『トリケラカンドロイド』は頭の上に。
『茜鷹』と『バットショット』は、俺の右上でじゃれながら飛んでいる。
『位置ニツイテ──!』
測定用のロボットが宣言する。
スターティングブロックもあるが......実戦想定なら必要無い。
隣でクラウチングスタートを取っているのを確認しつつ。
俺は立ったまま──スタンディングスタートで。
『ヨーイ──!』
──パンッ!
空気の振動を感じ取ったと同時、思考と認知速度が加速。
いわゆる、『遅くなった時間の流れ』。
一歩目は前方への跳躍。
これで最短で最高速度まで。
接地。
前傾姿勢。
身体の流れは前のまま。
二歩目。
本来、僅かに大地へ逃げる力を、
失速無し。
三歩目。
──五。
──七。
八歩目。
右足で接地。
前に向いていた力の流れを、大地に。
広く深く分散させて、減速無しで停止。
思考、認知が元に戻り、体感の時間が戻る。
『──二秒
頭の上から飛び降りた『トリケラカンドロイド』を左手で受け止めた。
並んで飛んできた『茜鷹』と『バットショット』が、俺の周りをクルクルと周る。
「「「「「「ええええ!?」」」」」」
ロボットが宣言した測定結果に、息の合った驚愕の合唱が。
「......測定、ありがとう」
『気ニスルナ!』
......ロボットは
素直で可愛いな。
視線が集中する中、元の立ち位置に戻った。
「......っ! まさか得意種目で負けてしまうとは......っ! それにあの動きは一体......!?」
ガタイが良く眼鏡を掛けた少年が、妙に角張った態度で悔しがっている。
身長は俺より低いが、全身が発達した屈強な体格。
骨が太く筋肉も強靭なのは、自らの『個性』の負荷に耐える為か。
両足の発達したふくらはぎに、三本二列の
最初に測定し、『三秒ゼロ四』の記録だった。
走行時の音も、エンジンの排熱、排気に近かった。
......そう考えれば、俺が異常過ぎるな......『変身』してないし......
......しかし。
俺の、一部の『変身』における変身条件。
また、ガジェット、ウェポン、マシンの一部。
......そして、各『変身』の
それぞれの影響で、俺の身体は大きく変質している。
──『生体兵器』、『特異点』、『霊』、『情報生命体』......とか。
......色々と、混ざりすぎた。
『人間であり人間では無い』。
『死者でありながら生者である』。
そんな矛盾した不条理と理不尽が、『俺』という存在として成立している。
......要するに、『人間の皮を被った化物』、とすると、認識が楽になる。
......だからこその、異常な身体機能。
......都合が良いのは、『個性』という概念。
外見的変化の無い『異形型』──『増強型』と言ってしまえる。
俺の場合、申請時点で発動、変形、異形の『複合型』の『個性』としている為、そこまで不自然でもない。
......程度はおいておく。
相澤消太から、呆れているのか睨んでいるのか、鋭い視線が向けられている。
本気でやる、との宣言通りだが。
眼を合わせて、一拍。
溜息と共に、相澤消太からの視線は無くなった。
「──ねぇ、少しいいかしら?」
「......あぁ。どうした?」
クラスの者たちの中から一人、物怖じする様子もなく話しかけて来た。
今まで、タイミングと俺の振る舞いを
顔を向ける。
黒に近い緑の長髪、丸く大きな黒い眼。
猫背気味なのは、筋肉と骨格の影響か......?
眼や口元、平均よりも大きな手、そして五十メートル走を見る限り、身体能力まで強化されている『異形型』の『個性』。
視野が広く観察力が高い。
感情が波立っていない冷静さと行動力もある。
......空気を読んで、率先して動くだけの察しの良さと面倒見の良さもある。
「けろ、良かった。まずは初めましてね。私、
「......俺は
「大丈夫よ。私、そういうのあまり気にしないの。それに私も思ったことをなんでも言っちゃうの。気分を悪くした時は遠慮なく教えてちょうだいね、九條ちゃん」
「......分かった」
表情はあまり変わらない。
が、感情はしっかりと動いている。
周りが積極的に聞き耳を立てている。
分かりやすいな......可愛らしい......
......だが、
蛙吹梅雨の眼が、ガジェットへと向いた。
四体それぞれが反応する。
「その子たちはあなたの『個性』かしら」
「......あぁ、その通りだ」
「そう......そうなのね」
『瑠璃狼』が宙返りして見せた。
『茜鷹』と『バットショット』が蛙吹梅雨の近くに寄り、『トリケラカンドロイド』が鳴き声を一つ。
「......可愛いわ」
四体のガジェットを眺めて。
それこそ思った事を口にした。
その眼が、俺に向けられる。
「それじゃあ、入試の時の子たちも九條ちゃんなのね」
「......あぁ。不意打ちを食らいそうになった者を助けていたな」
「......覚えて......見ていたの?」
会場にいた全員の顔も行動も覚えている。
だからどうと言う事も無いが。
「......けろ。なんだか少し恥ずかしいわ......」
「......あの状況で、ライバルに手を貸す者は少なかった。隣の者を心配する者も、同じように。しっかり励まし、前へ進ませた。蛙吹梅雨、お前は受かると思っていた。同じクラスで嬉しい」
「けろ......けろけろっ」
紅くなった顔を、大きな両手で隠してしまった。
......ふむ......?
......まぁ、可愛らしい様が見られて役得だが。
──爆発音が聞こえた。
......『
記録は『四秒
不慣れでコレなら、鍛えれば相当な速度に至るのも分かる。
「......ねぇ、九條ちゃん」
「......どうした?」
顔を覆っていた手が降りた。
まだ少し紅みが残っている。
「さっきの五十メートル走なんだけど......なんて言えばいいかしら......『個性』は、この子たちを出すモノなのよね」
人差し指で口元に触れながら、目の前の『茜鷹』と『バットショット』を見ている。
「......俺の『個性』は、『発動』、『変形』、『異形』の『複合型』だ。身体機能も向上している」
「......? それじゃあ、『個性』を二つ持っているの?」
「......いや、そうじゃない」
首を傾げて俺を見る蛙吹梅雨と、興味津々に聞き耳を立てるクラスの者たち。
そして視線を向けてくる相澤消太。
......全員聞いているな......一応、今のメインは体力テストだぞ。
「......『個性』の発展と応用。その結果がコイツらだ」
『茜鷹』と『バットショット』がクルリと回った。
『瑠璃狼』が宙返りして一鳴きし、『トリケラカンドロイド』が前足を上げて鳴き声を。
......『どういう事だ?』、という意思が、俺に向けられる視線に乗っている。
「......『個性』というのは身体機能の一種だ。どんな『個性』でも鍛える事ができる。鍛え、発展させた『個性』は時に、発現当時とは見え方が大きく変わりもする。本質が同じであろうとな」
......『そんな事があるのか』、という意思。
「......『個性』の発現は、百年以上前の物理学と、人類生物学の一部を崩壊させた。進化しやすく、変化が早い。この『個性』はこんな事もできる、という強い確信と鮮明なイメージが、『個性因子』をより活性化させる」
空気が固まっている。
蛙吹梅雨も、ガジェットに反応を返さず俺を見つめている。
「......すまない、喋りすぎた。今のは俺の考えだ。あまり深く気にするな」
四体のガジェットでも謝意を示すように鳴き声を上げ、動かして見せる。
......返事は短く、簡単に。
一応、知っておいてほしい認識の例ではあったが、今ここで並べ立てる必要も無かった。
『
「......やっぱり......」
ポツリとこぼれた声。
蛙吹梅雨は、俺から視線を外さない。
「......入試の時から思っていたの。この子たちを見て、きっと、とっても凄い人がいるんだろうなって」
空気が変わった。
......本当に良く見ている。
判断と選択も早い。
「だから......私も、あなたと同じクラスになれて嬉しいわ」
「......ありがとう」
明るく嬉しそうに笑う蛙吹梅雨に、俺も笑って見せる。
ガジェットを動かせば、聞き耳を立てていたクラスの者たちも力が抜けた。
\────\── 〈 ◯ 〉 ──/────/
相澤消太から何をどうと言われる事も無く、体力テストは順調に進んだ。
『握力』は測定器が『千』以上を測れなかった為、『error』の表記で『測定不能』。
......ゆっくりと力を込めて正解だったかもしれない。
『立ち幅跳び』は『五十三メートル』。
砂場を超えたが、ロボットがしっかりと測定してくれた。
『反復横跳び』は『百六十三回』。
......
アレに平気な顔で耐えられる頑丈な身体は、身長や体格に見合わないな。
そして今。
『ボール投げ』で、『
力を込めず、空に向けて放ったのみ。
『個性』以外無い。
「九條」
俺の番。
円の中に立って、相澤消太に眼を向けた。
「お前のガジェット、ボールを運べるか?」
「......あぁ。『茜鷹』は、最高飛行速度三百六十キロだ。三日以上休み無しで飛べる。サイズを変え、人を乗せる事もできる」
「......そうか。他は」
「......物体を宇宙に移動させる手段がある」
『原典』よりも強化されている能力が多い。
......『茜鷹』も、『原典』より速い。
余程耳の良い者でなければ会話は聞こえない。
だから今聞いているんだろう。
「......お前、今までの記録全部で測定不能出せるんじゃないか」
「......できる。が、素体で測る、と言っただろう。全て本気でやっているぞ」
「それは、そうだが......はぁ。まあいい。投げろ」
「......分かった」
ボールを受け取った。
ボール投げは二回。
......少し、趣向を変えてみようか。
まず一回目。
技量を抜いて、単純な身体能力のみで投げた。
投げる力が拡散している。
......やっぱり、技量の無い力は弱いな。
ボールの後を追わせた『茜鷹』が、測定の終わったボールを回収してきた。
「......」
「......相澤消太、記録は?」
「ん」
俺だけに向けられたスマホの画面には、『八百十三点五メートル』。
「......ありがとう」
二度目。
重心を僅かに落として後ろに。
上体を反って、左足を前に。
大地を俺の重さに。
大地から足に。
足から腰に。
腰を捻って、更に力を加えて。
腰から上体、上体から肩、腕、肘、手首。
角度は四十五。
空気の壁は叩き破るのではなく、力の流れに乗せて歪める。
手首から平へ。
指先からボールへ。
派手な音は無く、分かりやすい衝撃も無く。
ただ静かに滑らかに、速度の乗った投擲。
「......お前、誰かに教わった事あるか」
「......無い。独学だ」
「そうか......」
観察と知識から練り上げた、鍛錬の賜物、とでも言えば格好はつくか......?
ピピッと通知音。
測定が終わったらしい。
画面を見た相澤消太の投げやりな気配が強くなった。
......まぁ、そうだな。
記録は『千二百三十八点三』。
ボールを持った『茜鷹』が戻ってきた。
ボールを相澤消太に受け取らせて、場を離れた。
「おつかれさま、九條ちゃん」
「......ありがとう」
傍に来た蛙吹梅雨と、その後の測定を眺める。
鳥に運ばせた者や、モンスターじみた姿の影を操る者などは、独特で面白い。
そして......あぁ。
『
「イレイザー・ヘッド......聞いた事あるわ。アングラ系のヒーローよ」
『イレイザー・ヘッド』を知らないクラスの者たちに混ざった蛙吹梅雨の声。
......一般への認知度が低く、プロ間での認知度が高い特殊なヒーロー。
知っているだけで博識だ。
緑谷出久は酷い顔で俯き、ブツブツと呟いている。
相澤消太は、そんな様を眺めながら目薬を。
『個性』を発動すると、髪が逆立ち眼が赤く光る特徴があって分かりやすい。
......負担は大きそうだな。
「──あの子、大丈夫かしら......」
......ん、わざわざ戻ってきたのか。
視線に乗る疑問、意思。
どうにも、他のクラスの者たちも気にしている。
......話して大丈夫そうだな。
「......見ていたが、ずっと余裕が無い。種目を終えるごとに焦りが増している」
「えぇ、そんな感じがするわ」
合いの手を入れてくれるのか。
空気のバランスをとっている。
......気を遣いすぎだな。
頭にポンと手を乗せて、軽く撫でた。
「......けろ......」
「......何かを試しているようにも見えた。恐らくだが、『発動型』、『増強型』の『個性』なんだろう」
視線の先。
俺の声が聞こえたのだろう緑谷出久が、俺へ顔を向けた。
──そして、爆豪も声を漏らして、俺を睨みつけてきた。
「......そして、制御ができない」
「制御......じゃあ、思うように扱えないのかしら」
緑谷出久の反応が答えを示している。
とても分かりやすい。
......素直、純粋、誠実、実直。
嘘や隠し事には向かないタチだ。
「......『個性』としての出力が高いんだろう。負荷に耐えられず、身体が壊れる可能性が高い」
「それは......確かに、簡単には使えないわね。でもそんな事ってあるのかしら?」
これは周りの為の質問だな。
「......有名なヒーローなら。『エンデヴァー』や『エッジショット』が分かりやすい」
『エンデヴァー』は『炎熱系』の『個性』の持ち主。
『エッジショット』は『変形型』の『個性』持ち主。
「......エンデヴァーは自らの熱で身体が焼ける。エッジショットは、身体を細くしすぎると元の肉体に戻れなくなる」
分かりやすく自滅する可能性のある『個性』だ。
「......鍛錬で肉体と『個性』を鍛えた結果が、両者の今だ」
「そうだったのね......」
まぁ、『個性』の弱点なんて見て推察する他無いが......
......俺は情報源が違うからな......
「......あの者──緑谷出久というらしいが。『個性』の出力を変えられないなら、別の手段を取る必要がある。そこに気付けるかどうか、だろう」
視線の先。
緑谷出久が、ボールを振りかぶった。
ボールを放つ寸前。
指先に赤い紋様が浮かび上がったのが見えた。
エネルギーが莫大だからだろう。
離れていても、『個性』の
衝撃に立ち昇った砂埃。
......派手だな。
指先は、赤黒く変色してしまっている。
......内までボロボロだろう。
──いや、動かすな。
......馬鹿なのか......?
クラスの者たちが盛り上がっている。
「──どういうことだ......!!」
ザラついた声と爆発音。
「こらァ!! ワケを言えェ!! デクてめぇ!!」
緑谷出久に向かって駆け出した爆豪の前に、『茜鷹』を。
瞬時に巨大化させて壁に。
「──あ!?」
鈍った。
その隙に相澤消太の『捕縛布』が、爆豪を捕らえた。
「......ッ! んだっこの布っ......! 固え......!!」
「炭素繊維に特殊合金を編み込んだ『捕縛武器』だ」
髪を逆立て、眼を赤く光らせる相澤消太の威圧に、クラスの者たちが身を引いた。
直接感情を向けられた訳ではないが、それでも怯えている。
『茜鷹』がサイズを戻して、俺の元へ。
指先で撫でた。
「たく......何度も『個性』使わせるな......──俺はドライアイなんだ!」
......クラスの者たちの内心が一致している。
「......時間がもったいない。次、準備しろ」
髪が降り、『捕縛布』を回収した相澤消太は、爆豪から視線を外した。
俯いて、小さく震える爆豪。
そんな爆豪を見ながら、そそくさと緑谷出久がクラスの中に戻る。
「......九條ちゃん?」
麗日に照れた顔をする緑谷出久へ。
「あっ、えっと、九條くん......」
「えっ......!?」
先に反応したのは麗日。
振り返った緑谷出久に眼を向ける。
「......お前、緑谷出久、でいいか?」
「はっ、はいっ! 緑谷出久です!」
......何に緊張しているんだ......? 怯え混じり......怖いのか?
「......そうか。俺は九條とがね。よろしく」
「えっ、あっ、はい......! よっ、よろしくお願いします......!」
......なんだその、人付き合いの苦手なオタクみたいな反応......
コクコクと人形のように頭を振っている。
「あのっ! わたしっ、
「......あぁ。よろしく」
緑谷出久を......そう、半ば庇うように身を乗り出した。
......何に怯えてるんだコイツら......
「......緑谷出久、手を出せ」
「へ?」
「......右手だ。出せ」
「はっはいっ!」
「......触れるぞ」
差し出された右手を、下から支えるように持ち上げる。
震えている。
それも当然だが。
骨は砕けているだろう。
変形が見られない以上、骨の破片が移動したという事も無さそうだ。
筋繊維、筋はズタズタでも千切れてはいない。
内出血から、血管は破裂していると見ていい。
皮膚は裂けていない。
裂傷にはなっていないか。
「......緑谷出久。自分の手首を握れ」
「へ? えっ、はいっ!」
掌を模したバックルを出して、右手中指に指輪を。
バックルに翳して。
〈コネクト! プリ〜ズ!〉
「えぇ!? なにそれ!?」
「えっ!? 『個性』は動物型の機械を出すのと身体能力の強化だって──!」
「何アレっ!?」
「なんだよソレぇ!?」
響く声と、空間に浮かんだ
無視。
〈コネクト〉は空間と空間を繋げる魔法だ。
離れた場所にある物を取ったり、コレを使って遠距離攻撃や防御もできる。
魔法陣に手を突っ込んで、『
添えてサイズを確認。
幅も長さも問題無さそうだ。
「......痛むぞ」
二枚の板で上下に挟んで、魔法陣から包帯を取り出し手早く巻いた。
包帯を魔法陣に放り込む。
魔法陣、バックル、指輪を消した。
「......終わりだ。今はコレで耐えていろ」
「う、うん......ありがとう......えと、九條、くん......?」
「......好きに呼んでくれていい」
一歩離れた。
冷や汗の止まらないまま、若干血の気の引いた顔が、俺に向けられている。
「......緑谷出久」
「はっはいっ......!?」
「......今のお前の結果を、正しく認識しておけ」
「っ......! ......はいっ!」
ポンと頭を撫でて、場を離れた。
いくつも視線が追いかけてくるが、話しかけようとはしない。
......何に気後れしているんだ......?
爆豪も、俺を強く睨みつけている。
......相澤消太からも、若干睨まれているな。
......動きすぎたか......?
いや、だが......コレでも堪えた方なんだが......本当なら、さっさと回復させたいところだし。
「......九條ちゃん」
「......どうした?」
聞きたい事はたくさんあるが、今は聞かない方がいい、と判断しているようだ。
ただ、何を言うべきか迷ってもいる。
俺を見つめる蛙吹梅雨が、少し黙った。
「......ヒーローを目指すなら。応急処置はできるようになっておけ。被災地や仲間の負傷を悪化させない対処は、必ず必要になる」
四体のガジェットを動かしてみる。
......雰囲気を和らげる事ができればいいが......空気食っちまったか......
「そう......そうね。確かにその通りだわ。ありがとう、九條ちゃん」
「......あぁ。俺の方こそ、助かっている。ありがとう、蛙吹梅雨」
「けろっ......梅雨ちゃんと呼んで」
蛙吹梅雨に笑ってみせた。
──そこから。
『持久走』。
バイクを作り出した者がいた。
ヘルメットもそうだが、振る舞いに育ちの良さが滲んでいる。
......俺の方が速かったが。
『上体起こし』は『六十三回』。
粘り、体幹、瞬発がモノを言う。
......あまり気にした事は無かったが、いざ数値にするともう少し伸ばしたくなる。
コツを掴めば百はいけそうだ。
『長座体前屈』は『七十三センチ』。
身体だけならこんなモノだ。
一応、長座の際、足の上に身体を乗せられる程度の柔軟性はあるが......
......蛙吹梅雨が、舌を伸ばす事で記録を出していた。
──全種目終了。
グラウンドで、クラスの者たちは相澤消太の前に集まった。
......妙な反応を向けられるから、少し距離を置いた。
「んじゃぁパパッと結果発表」
緑谷出久は俯いている。
「トータルは単純に、各種目の得点を合計した数だ」
相澤消太がスマホを取り出した。
「口頭で説明すんのは時間の無駄なんで、一括開示する」
ピッと音が聞こえて、ホログラムとして順位表が提示された。
最下位は、緑谷出久だ。
ソレを確認した緑谷出久が、悔しげに息を漏らした。
「──ちなみに除籍はウソな。君らの『個性』を最大限引き出す合理的虚偽」
「「「はああー!?」」」
緑谷出久、麗日お茶子、生真面目な眼鏡の少年が声を上げた。
ホログラムを消した相澤消太は良い笑顔を見せた。
そして、緑谷出久たちを呆れた顔で見る少女が。
「......あんなのウソに決まってるじゃない......ちょっと考えれば分かりますわ......」
今回の場合。
正しくは嘘ではなく前言撤回。
緑谷出久を除籍させる必要は無い、と判断した為。
「コレにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類があるから、戻ったら目ぇ通しておけ」
言いながら、緑谷出久の傍に移動した。
「緑谷」
「......っ!」
「保健室で
『利用書』を緑谷出久に渡して、そのまま歩いていく。
「......明日からもっと過酷な試練の目白押しだ。覚悟しとけ」
ふと、相澤消太が立ち止まって振り返った。
その視線が、俺に向けられた。
「九條、保健室行く時は付き添ってやれ」
「......分かった」
「じゃ」
相澤消太が立ち去った。
「......緑谷出久」
「っ、はい!」
「......教室に戻るぞ。荷物を取って保健室へ向かう」
「はい!」
「......教室で待ってる」
先に戻る。
どうにも、俺がいると遠慮してしまうらしい。
あまり会話を行わない。
ガジェットを連れ立って移動した。
クラスの者たちの視界から外れたところでガジェットを消した。
ついで、バックルと指輪を出して。
〈ドレスアップ! プリ〜ズ!〉
バックルも指輪も消して、教室へ向かった。