鬱ゲーの全滅イベントで年上ヒロイン達を庇ったら【暴食の魔人】になって生き残った。――「理性が消える前に殺して」と頼んでも、曇った彼女たちが許してくれない。   作:菊池 快晴

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第17話 口は禍の元。いやマジで。

 昔からお祭りが大好きだ。

 

 屋台に並んでいるときですらワクワクする。

 ベビーカステラとか唐揚げを食べながら、次は何にしようかと考えるのも好き。

 かき氷なんて鉄板だ。最後に花火があればなお最高。

 

 まあ、異世界にそんなものはないが。

 といっても、似たようなものはある。

 

「美味しい……ドルギラのエラ焼き……」

 

 唐揚げのようなパリっとした食感の、ドルギラという豚とイノシシと蝙蝠を掛け合わせたような摩訶不思議な魔物食。

 少しクセがあるものの、味が唐揚げにそっくりなのだ。

 異世界では珍味扱いだが、俺にとっては故郷の味(代替品)である。

 

「レイは本当にドルギラが好きだな」

「食べます?」

「いや、私はチューナを食べる」

 

 チューナとは、イチゴに生クリームをたっぷりつけたクレープのような食べ物だ。

 レズリィはかなりの甘党である。

 朝昼晩と何かしら甘い物ばかり食べているが、カロリー消費量はそれ以上らしく、まったく太らない。

 

 いや、たゆんっとした部分だけは除いて。

 

 実際、あまりにもスタイルが良すぎて初めて見たときは驚いた。

 

 ――ゲームのまんまじゃん、と。

 

 【DWS】では、というか、昨今のゲームは美男美女が当たり前である。

 例にもれず、レズリィのキャラクターデザインは超有名な絵師が手掛けた。

 細かい微調整を含めると完成までに一年かけたらしく、その細部にわたるまでの美しさは息をのむほどだ。

 

 ウルフカットの赤髪は光沢がありながらも油っ毛は一切ない。

 長い睫毛に縁取られた瞳は、パッチリとしたレッドブルー。

 唇もぷるぷる。スタイルは先ほどお伝えした通り、出るところは出て締まるところは締まっている。

 

 気が強いものの、甘い物を食べると満面の笑み。

 うーん、属性過多。良。

 

 エレノアとソフィアもそれぞれ別のデザイナーが手掛けているのだが、個性が際立っていて素晴らしい。まあ、この異世界では関係ないことだが。

 

 おそらくこれが見納め、ということで、俺は師匠たちがキャッキャしている風景を心のシャッターで記憶する。

 

 しかし、こんなゆったりした時間はどれほどぶりだろうか。

 才能で劣る俺は、暇さえあれば自主練習をしていた。

 よって、こういった自由な時間は随分と久しぶりである。

 享受。享受。

 

 スーハ―スーハ―と空気を吸いながら食らい、間食だけでお腹いっぱいにするのはもったいないということで、人気の飲食店にやってきた。

 

 だがしかし、異世界でも行列というものは存在する。

 待ちで時間を潰すのはもったいなく、プラプラ歩いて四人で入れそうなところを探し、入店。

 

 居酒屋みたいなところだ。お酒がメインで置いてあって、それを肴に料理を頼んでいく。

 こういったところは冒険者が好むので、昼間っから飲んだくれているやつも多い。

 

 で、この騒ぎがいつから続いているのかは知らないが、みんなめちゃくちゃ酒を飲んでいた。

 まあ、世界の脅威が減ったことで、ということだろう。

 俺も嬉しかったので、笑顔で見つめつつ、四人分のお酒と料理を頼む。

 

「レイくん、もっと超高級料理店のフルコースじゃなくていいの? もう少し奥に行けば、満漢全席が頼めるところがあるって」

「流石に昼からはキツイっすね。エレノアさん。あと、少しこの店に失礼っす」

「聖女御用達の超高級精進料理はどうでしょうか? 一カ月煮込んだアドラ草のスープがとっても美味しいですよ。少しだけエグ味と臭みがありますが、とっても体に良いです」

「来世で生まれ変わっても行きたくないっスね」

 

 若干のブラックジョークも交えつつ、師匠たちのお誘いを断る。

 ちなみに上記を踏まえた上で、迷い猫(ロストキャッツ)の飯決め担当の割合は、

 

 俺(60%)。

 レズリィ(23%)。

 エレノア(16%)。

 ソフィア(1%)。

 

 と、体感だがこんな感じだ。

 俺とレズリィは割と庶民派なので、美味しくて量があって、それなりに安いところなのでお財布的にも良い。

 エレノアは貴族出ということもあって、舌が肥えているため値段が高い。

 ソフィアはとにかく、それいつ食べたくなるの? みたいな感じの店を言ってくる。

 最初はできるだけ丁寧に断っていたが、最近は「わざとですか?」みたいな感じになってきて俺含めこんな感じだ。

 

 ただ、驚いたことにソフィアも気にしていたらしく(わざとだと思っていたので)、

 

『私ってもしかして、変な料理が好きなんでしょうか?』

 

 と、本気で相談してきたことがある。

 気にしてたんだ、と真剣に向き合い、4時間ほど一般的な食の話をした。

 その次の日が、満面の笑みで『十種類の薬草を使ったディナーを食べに行きませんか?(白米なし)』だった。

 

 ちなみにその日は朝から夜まで魔物と戦っていた。飯を食う暇もなかったので、みんなくっっそお腹が空いていた

 そのときのエレノアのぶち切れ顔、今思い出しても笑えてしまう。

 

 料理一つとっても思い出がたくさんだ。

 笑えるものから笑えないものもあるが、そういうのがいいんだよな。

 過去の振り返りが、楽しい。

 

 ほどなくしてビアーが届いた。

 あ、違った。一人だけストロベリービアー(レズリィ)。

 

 いつもはカンパイなんてしないが、今日は特別な空気感があった。

 三人とも俺の顔を見るので、一言。

 

「ええと、今日はありがとうございます。あんまり長々と喋るのもあれですが……マジで最高のパーティーです。これからもよろしくお願いします」

 

 過去形にしなかったのは、【DWS】へ抵抗。

 三人は一瞬だけ目を伏せたが、すぐに笑顔になった。

 

          ◇

 

「そろそろ教えてくださいよ~。なんでリュックさんにあんな詰め寄られてたんですか?」

 

 ふと聞こえる。後ろからの声。

 聞き耳立てるのはよくないが、それは前世の世界の話。

 異世界ではむしろバンバン耳を立てる。これ、冒険者の常識。

 なんせ、お宝級の情報ってのは案外その辺に転がっている。

 

 もちろん、意図的に聞いてやるぜー! みたいなときは少ない。

 こういった雑談をしながら、とか。

 何かの待ち時間、とか。

 そういったときに耳を立てる。

 

 で、今はその中間くらい。

 ビアー飲んで、過去と未来のことを考えて咀嚼し、沈黙の時間。

 

 後ろから、そんな声が聞こえてきた。

 

 リュックの名は、今の俺たちにとっちゃ感度ビンビンのビッグネームだ。

 反応しないわけがない。

 

 当然俺だけじゃない。

 レズリィ、ソフィア、エレノアの目がスッと変わる。いやマジで、師匠たちのこの瞬間マジかっけーんすよ。

 

 十中八九、【魔人】についてだろう。

 

 ちょうど俺の後ろなので声しか聞こえないが、取り巻きが多いみたいだ。

 教えてくださいよ、と、周りがまくしたてる。

 で、一人の男が、「まったく、しょうがないな」と言っている。

 

あのこと(・・・・)ですよね?」

「教えてくださいよ~」

「ボス、頼みます」

 

 ボスも渋るじゃねえか。

 俺も気になってきた。教えてくださいよ~と声上げようかな。

 

「しょうがねえな。いいか? 誰にも言うなよ? 実はな……【魔人】倒したのは、俺――」

 

 

 その瞬間、師匠たちから濃密な殺気が立ち上っていた。

 

 




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