鬱ゲーの全滅イベントで年上ヒロイン達を庇ったら【暴食の魔人】になって生き残った。――「理性が消える前に殺して」と頼んでも、曇った彼女たちが許してくれない。 作:菊池 快晴
内乱の平定、および規格外の魔物討伐を目的として組織された、王家直属の特殊部隊である。
表向きは国境警備などを担う国防戦力の一翼に過ぎないが、有事にこそその真価を発揮する。
部隊の席次は、常に十名。
戦死による欠員、あるいは苛烈な序列戦を勝ち抜くことでしか、その座を奪うことは許されない。
属する者すべてが各分野の最高峰たるスペシャリストであり、幼少期より王家の剣として鍛え上げられた
黒装束の住人が、それぞれ屋敷を囲っていた。
剣や二刀、短剣や暗器、魔法杖を持っている。
そんな彼らに出撃命令を下したのは、冒険者ギルド本部長、リュック・ドロップ。
『
罵詈雑言に近い――いや、罵声がリュック・ドロップに浴びせられる。
『……リュックさん、どういうことですか。一体、これはどういうことですか!!!』
いち早く反応したのはルノだった。
冒険者として活動しながら、リュックとの付き合いも誰よりも長い。
しかしそんなルノですら、この第二の作戦については何も聞かされていなかった。
いや、ルノはわかっている。
これが、これこそが本当の作戦だったことを。
『ごめんなさいルノ、恨まれることはわかってるわ。でも私は、
誰よりも【魔人化】を危険視していたリュックは、この作戦にすべてを賭けていた。
また、
よって、これこそが本当の作戦だったのである。
まず精鋭部隊を投入させることで、
聖女ソフィアが結界を無視することは想定外だったものの、リュックの想定通り、レズリィ、エレノア、ソフィアは誤認してしまった。
――敵は精鋭部隊をぶつけてきている。全力を持って対応し、撃退すれば【レイ】を救える、と。
当然、この行為は到底許されるものではない。
騎士団長や宮廷魔法使いたちの命が奪われてもおかしくない采配であり、ルノに対しても失礼極まりない行為である。
『…………』
ルノは沈黙した。
ここまでの独断専行への追及は避けられない。つまりリュック・ドロップは、この作戦を持ってして冒険者ギルド本部長の退任を余儀なくされる。
それだけでなく、罪に問われることも考えられる。
何よりも、冒険者の命を囮に使うなど、あってはならないことだった。
リュック・ドロップの評判は間違いなく地に落ちる。
嫌われ者が辿る末路として、不可解な死が待っていてもおかしくはないほどに。
『――リュックさん。俺たちはソフィアに攻撃は仕掛けません。距離を取りながら、味方の増援を待ちます。……今まで、ありがとうございました。俺は、あなたのことを今でも尊敬してますよ』
リュックがどれほど仕事に対して誠実であり、仲間想いだったかを誰よりもルノは知っている。初心者パーティーを助けるために、単身でダンジョンに挑んだこともあった。
だからこそ、この作戦にどれほどの覚悟を賭けたのかも理解できる。
すべては、【魔人化】による二次被害を出さないため。
リュックは、ルノに応えなかった。
すべてを把握して行った行為ということもあり、謝罪は失礼に値する。
また今必要なのは、冷静に戦況を見極めること。
血が出るほど唇を噛みながら、結界の術者の元へ走る。
この作戦に穴はない。
およそ、今のところは。
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「……っっぃってなぁ」
地下室のベッドの上で、レイが目を覚ました。
割れるような頭痛、燃え盛る炎に手を突っ込んでいるような右腕の痛み。
先ほどのリュックの
そして、
「――おいこら【DWS】ぅ! 本編に存在してねえクッッソやっっっっべえエピソードぶち込んでんじゃねえよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。……つうか師匠たち、めちゃめちゃかっこよすぎんだろうがぁ………………」
悲しみと嬉しさが混じったような悲痛な叫び。
幸か不幸か、誰の耳に届くことはなかった。