立ちて死すとも心火は消えず   作:巌颪

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約1ヶ月ちょい振りの投稿になってしまいましたね。

本当に申し訳ない。

次回はなるべく早く投稿できるように頑張ります。

では最新話どうぞ!



夢想と思惑

「わざわざ貴重な1本使ってまで確かめる必要があったかね。宿儺の実力。」

 

とある繁華街の交差点。そこに何やら異質な雰囲気を纏った者達が居た。

 

袈裟を着た怪しげな男に3体の異形。

 

頭がグツグツと煮え立っているまるで生きる火山のような者の名は漏瑚。

 

そして眼の部分から木を生やし左腕を布で覆っている者の名は花御。

 

最後に全身を布のようなもので覆い、顔からタコの職種のようなものが垂れている者の名は陀艮といった。

 

周りの人間は漏瑚たち3体のこの世のものとは思えぬ異形の姿に驚いてはいない。いやそもそも視認できてないのだろう。

 

彼らは呪霊だ。そしてこの中で唯一の人間は袈裟を着た男、夏油傑のみだった。

 

夏油は漏瑚の言葉に笑って返す。

 

夏油「中途半端な当て馬じゃ意味ないからね。それなり収穫はあったさ。」

 

漏瑚「フンッ!言い訳でないことを祈るぞ。」

 

そして4名はレストランへと入っていく。

 

店員「いらっしゃいませ!1名様のご案内でよろしいですか?」

 

夏油「はい1名です。」

 

どうやら虎杖悠仁の出現を機にこの世界の闇もまた鼓動を始めたようだ。

 

・・・英集少年院での戦いが終わり、虎杖の遺体は補助監督が回収した。

 

戦いで負傷した釘崎はすでに病院で治療を受けており、伏黒もまた軽度であるが負傷してるため伊地知が車で送っていった。

 

重國はと言うと伏黒たちが去った後、補助監督の指示のもと少年院内に祓い損ねた呪霊がいないか確認したのち高専へと戻った。

 

そして今、重國は遺体安置室にいた。

 

「わざとでしょ?」

 

その一言が部屋全体を木霊する。

 

目の前にいる伊地知にそう質問したのは五条だった。

 

伊地知「と仰いますと?」

 

伊地知の額には汗が滲んでいた。明らかに目の前な最強の雰囲気が今までと違うためだ。

 

五条「特級相手しかも生死不明の5人救助に1年派遣はあり得ない。僕が無理を通して悠仁の死刑に実質無期限の猶予を与えた。面白くない上が僕のいぬ間に特級を利用して体良く彼を始末ってとこだろう。実際、特級を祓える可能性があった重國に偽の任務を伝え、”帳”内に入れず3人と隔離したのが良い証拠だ。仮に恵と野薔薇が死んでも僕に嫌がらせができて一石二鳥とか思ってんじゃない?」

 

五条の圧に伊地知は震えながら言葉を返す。

 

伊地知「いやしかし派遣が決まった時点では本当に特級に成るとは・・・」

 

五条「犯人探しも面倒だ。上の連中、全員殺してしまおうか?」

 

五条の殺気が空間を満たしたその時、1人の女性が部屋に入ってきた。

 

「珍しく感情的だな?」

 

彼女の名は家入硝子。五条の同期にして呪術高専の医師をしている呪術界にとって欠かせない人物の1人だ。

 

家入「随分とお気に入りだったんだな、彼。」

 

五条「僕はいつだって生徒思いのナイスガイさ。」

 

家入「あまり伊地知をイジメるな。私達と上の間で苦労してるんだ。」

 

家入の言葉にキュンとときめく伊地知だが五条から男の苦労なんて興味ないと言われ家入もこれ以上何も言わなかったため結局、不憫なままに終わったのであった。

 

家入「それで君が重國?」

 

家入は重國の方を見た。重國もまた家入の方を見て自己紹介をした。

 

重國「儂の名は柳田重國。よろしく頼む。」

 

家入「噂はかねがね聞いてる。」

 

重國「噂?」

 

初めて聞くことに怪訝な顔をする重國。

 

家入「君、上の連中から色々言われてるよ。指3本分とはいえ宿儺を単騎で迎撃できる強さ。五条が連れてきたっていうのも相まって話題沸騰中ってわけ。」

 

重國「全く知らなかったわい。」

 

家入「それで君は何でここに居るんだ?まさか五条がここに呼んだのか?」

 

重國「儂が同行したいと言ったのじゃ。少し悠仁のことで気にはなることがあったのでのう。」

 

家入「なるほど、でコレが宿儺の器か。」

 

そう言うと家入は解剖台にあったシートをめくる。そこには胸にまだ痛々しい傷を残した虎杖の姿があった。

 

家入「好きに解剖していいよね?」

 

五条「役立てろよ。」

 

家入「役立てるよ。誰に言ってんの?」

 

五条と家入が会話してる中、重國はただ虎杖の遺体を見つめていた。

 

釘崎「長生きしろよって自分が死んでりゃ世話ないわよ。」

 

あれから時は経ち、治療を終えた釘崎と伏黒は高専の入り口にある階段に座り込み、虎杖のことを考えていた。

 

釘崎「アンタ、仲間が死ぬのは初めて?」

 

伏黒「同級生は初めてだ。」

 

釘崎「ふーん、その割に平気そうね。」

 

伏黒「・・・オマエもな。」

 

釘崎「当然でしょ。会って2週間やそこらよ。そんな男が死んで泣き喚く程、チョロい女じゃないのよ。」

 

唇を噛む釘崎を見て伏黒も天を仰ぐ。

 

伏黒「暑いな。」

 

釘崎「・・・そうね。夏服はまだかしら。」

 

2人が話していると何処からか声が聞こえた。

 

「なんだいつにも増して辛気臭いな、恵。」

 

見ると高専の制服を着たメガネの少女が立っていた。

 

「お通夜かよ。」

 

伏黒「禪院先輩。」

 

「私を苗字で呼ぶんじゃ・・・」

 

禪院と呼ばれたその少女の言葉を遮るように誰かが少女の名が叫んだ。

 

「真希!真希!!」

 

後方を見るとホワイトベージュ色の髪をした少年と謎のパンダが木に隠れていた。

 

「まじで死んでるんですよ!昨日、1年坊が1人!」

 

「おかか!!」

 

その言葉に少女の額から汗が滲み出る。

 

「はやく言えや!これじゃ私が血も涙もねぇ鬼みてぇだろ!!」

 

「実際そんな感じだったぞ!」

 

「ツナマヨ!」

 

1年生そっちのけで騒いでいる状況に釘崎は困惑し、思わず指を刺しながら伏黒に聞いた。

 

釘崎「何あの人(?)達・・・?」

 

伏黒「2年の先輩。」

 

どうやらこの人達は先輩らしい。

 

メガネの少女の名は禪院真希。呪具の扱いなら学生1らしい。

 

そして先ほどからおにぎりの具を連呼してる少年の名は狗巻棘。言葉に呪いを乗せる呪言師であるがその危険性を考え、普段はおにぎりの具でのみ会話してるそう。

 

そして最後にパンダの見た目をした先輩、パンダである。

 

伏黒「あと1人、乙骨先輩って唯一手放しで尊敬できる人がいるが今、海外。」

 

釘崎「アンタ、パンダをパンダで済ませるつもりか?」

 

先輩達の紹介も終わったところでパンダが話しかけてきた。

 

パンダ「いやースマンな、喪中に。」

 

伏黒「いえ・・・。」

 

パンダ「そういや最近、新しい1年がまた来たって聞いたけど今は居ないのか?」

 

伏黒「重國のことなら寄るところがあると何処かに行きました。」

 

パンダ「そうか。なら先にお前達には言っておくかな。」

 

伏黒・釘崎「?」

 

パンダ「実はオマエ達に”京都姉妹校交流会”に出てほしくてな。」

 

釘崎「京都姉妹校交流会ぃ?」

 

伏黒「京都にあるもう一校の高専との交流会だ。でも2、3年メインのイベントですよね?」

 

真希「その3年のボンクラが停学中なんだ。人数が足んねぇ。だからオマエら出ろ。」

 

釘崎「交流会って何するの?」

 

パンダ「東京校、京都校それぞれの学長が提案した勝負方法を1日ずつ2日間かけて行う。つってもそれは建前で初日が団体戦、2日目が個人戦って毎年決まってる。」

 

釘崎「戦うの!?呪術師同士で!?」

 

真希「あぁ、殺す以外なら何をしてもいい呪術合戦だ。」

 

パンダ「逆に殺されないようミッチリしごいてやるぞ!」

 

釘崎「・・・ん?っていうかそんな暇あるの?人手不足なんでしょ?呪術師は。」

 

パンダ「今はな。」

 

真希「冬の終わりから春までの人間の陰気が初夏にドカッと呪いとなって現れる。繁忙期ってやつだな。年中忙しい時もあるがボチボチ落ちついてくると思うぜ。」

 

釘崎「へぇ〜。」

 

真希「で、やるだろ?仲間が死んだんだもんな?」

 

伏黒・釘崎「やる!」

 

釘崎「でもしごきも交流会も意味ないと思ったら即やめるから。」

 

伏黒「同じく。」

 

真希「ハッ!」

 

パンダ「まぁこん位、生意気な方がやり甲斐あるわな。」

 

狗巻「おかか。」

 

伏黒と釘崎もまた仲間の死を経験し、さらに強くあろうとしているのであった。

 

そして場所は変わりレストラン。

 

夏油たちはこれからの事について話していた。

 

夏油「つまり君達のボスは今の人間と呪いの立場を逆転させたいと、そういうわけだね?」

 

夏油の言葉に漏瑚は机を指で叩き、否定する。

 

漏瑚「少し違う。人間は嘘でできている。表に出る正の感情や行動には必ず裏がある。だが負の感情、憎悪や殺意などは偽りのない真実だ。そこから生まれ落ちた我々呪いこそ真に純粋な本当の”人間”なのだ。偽物は消えて然るべき。」

 

夏油「・・・現状、消されるのは君達だ。」

 

漏瑚「だから貴様に聞いているのだ。我々はどうすれば呪術師に勝てる?」

 

夏油「戦争の前に2つ条件を満たせば勝てるよ。五条悟及び柳田重國を戦闘不能にし両面宿儺、虎杖悠仁を仲間に引き込む。」

 

漏瑚「死んだのであろう?虎杖というガキは・・・。」

 

夏油「さぁどうかな・・・。」

 

漏瑚の言葉に夏油は不敵に笑うのであった。

 

・・・見渡す限り血のような赤い液体とツノの生えたまるで牛のような頭蓋骨が地を埋め尽くしている不気味な場所で2人は対面していた。

 

「許可なく見上げるな。不愉快だ、小僧。」

 

着物を着たその男、宿儺が眼下にいる人間にそう言う。

 

「なら降りてこい。見下してやっからよ。」

 

そして眼下の少年、虎杖は宿儺の言葉に青筋を立て、言い返した。

 

死んだはずの虎杖が謎の空間にて宿儺と対面してるのだ。

 

宿儺「随分と殺気立っているな。」

 

虎杖「当たり前だ。こちとらオマエに殺されてんだぞ。」

 

宿儺「腕を治した恩を忘れるとはな。」

 

虎杖「その後心臓とっちゃったでしょーが!!ともかく死んでもテメェと一緒なのは納得いかねぇけど丁度いいや。」

 

そう言うと虎杖は近くにあった頭蓋骨を掴み、振りかぶった。

 

虎杖「泣かす。」

 

骸骨を思いっきり宿儺に向かって投げる虎杖。だが宿儺はそれを難なく避け、上にあった背骨のような物体へと飛び移った。

 

そして避けられる事を予想していた虎杖も背骨の上を走り、宿儺との距離を縮める。

 

虎杖「歯ぁ食いしばれ。」

 

宿儺「必要ない。」

 

お互いの拳がぶつかる瞬間、虎杖はそのまま足場を殴り揺らした。そして宿儺の体勢が不安定になったところを蹴りを繰り出したがそれも避けられた。

 

虎杖「アレ?」

 

宿儺「オマエはつまらんな。」

 

背中を蹴られ、下へ落ちていく虎杖。そしてそのまま落ちた背中を再度、踏まれ最終的に椅子がわりになってしまった。

 

そして椅子がわりにしたのち宿儺が口を開いた。どうやら何か言いたいことがあるようだ。

 

宿儺「ここはあの世ではない。俺の生得領域だ。」

 

生得領域。

 

それは人が持つ心の中の風景を具現化した空間のことであり、呪術師や非術師に関わらず、誰もがみな生まれながらに持つ心の空間で術式の核心部分にあたると言われているものである。

 

宿儺「”心の中”と言いかえても良い。つまり俺達はまだ死んでいない。オマエが条件を飲めば心臓を治し生き返らせてやる。」

 

虎杖「偉っそうに、散々イキっといて結局テメェも死にたくねぇんだろ。」

 

宿儺「事情が変わったのだ。近い内、面白いモノが見れるぞ。」

 

宿儺「条件は2つだ。①俺が「契闊」と唱えたら1分間、体を明け渡すこと。そして②この約束を忘れることだ。」

 

虎杖「駄目だ。何が目的か知らねぇがキナ臭すぎる。今回の事でようやく理解した。オマエは邪悪だ。もう2度と体は貸さん。」

 

宿儺「ならばその1分間、誰も殺さんし傷つけんと約束しよう。これでいいだろう?」

 

虎杖「信じられるか!!」

 

宿儺「信じる信じないの話ではない。これは”縛り”、誓約だ。守らねば罰を受けるのは俺。身に余る私益をむさぼれば報いを受ける。それは小僧が身をもって知っているはずだ。」

 

虎杖「前は大丈夫だったろ!」

 

宿儺「あの時は俺も代わりたかった。オマエもあの術師に言われてやっただけ。利害による”縛り”。呪術における重要な因子の1つだ。」

 

宿儺の提案に暫し考えた後、虎杖は言った。

 

虎杖「分かった、どいてくれ。条件を飲む。何がしてぇのかよく分からんけどまぁ生き返るためだしな。」

 

宿儺の拘束から解放され立ち上がった虎杖は条件を飲むフリをしてそのまま宿儺の頬を思いっきりぶん殴った。

 

虎杖「なんて言うわけねぇだろ。無条件で生き返らせろ。そもそもテメーのせいで死んでんだよ。」

 

宿儺「・・・ではこうしよう。今から殺し合って小僧が勝ったら無条件で俺が勝ったら俺の縛りで生き返る。」

 

宿儺の提案に虎杖は笑った。

 

虎杖「いいぜ!」

 

キンッ!

 

その瞬間、もう虎杖の頭を二等分にされていたのであった。

 

五条「夢があるんだ。」

 

解剖室にて五条は伊地知にそう言った。

 

なぜそんな話になったかと言うと五条が教師なんて柄でもないことをやっている理由を伊地知と重國に聞いてとお願いしたからである。

 

伊地知「夢・・・ですか?」

 

五条「そっ、悠仁のことでも分かる通り上層部は呪術界の魔窟。保身馬鹿、世襲馬鹿、高慢馬鹿、ただの馬鹿、腐ったミカンのバーゲンセール。そんなクソ呪術界をリセットする。上の連中を皆殺しにするのは簡単だ。でもそれじゃ首がすげ変わるだけで変革は起きない。そんなやり方じゃ誰もついて来ないしね。だから僕は教育を選んだんだ。強く聡い仲間を育てることを。」

 

五条なりの呪術界のこれからを考える気持ちが伊地知にも伝わってくる。

 

五条「そんなわけで自分の任務を生徒に投げることもある。皆優秀だよ。特に三年、秤に二年、乙骨そして勿論、重國も僕に並ぶ術師になる。」

 

悠仁もその1人だったと拳を固めたその時、家入が言った。

 

家入「ちょっと君達、もう始めるけどそこで見てるつもり?」

 

家入が解剖を開始しようとしている。だが家入の後ろでとんでもないことが起こっていた。

 

なんと虎杖が体を起こしたのだ。

 

虎杖「おわっ!フルチンじゃん!」

 

虎杖の姿を見た五条は笑い出し、そのまま虎杖に手のひらを突き出した。

 

五条「悠仁!おかえり!」

 

虎杖「オッス!ただいま!」

 

そうして2人はハイタッチをした。

 

そして虎杖が蘇生したのち五条、重國、2人は解剖室を後にした。

 

重國「・・・。」

 

歩いている途中、重國の神妙な面持ちを五条は疑問に思い聞いた。

 

五条「どうかした?虎杖が起きた時もあまり喜んでいなかったし。」

 

重國「いや、やはりこうなったかと思ってな。」

 

五条「まさか重國が気になってたことって悠仁が蘇生するかどうかってこと?」

 

重國「確かに悠仁は死んでいた。鼓動も止まり、呪力も感じられなかった。じゃが宿儺の呪力は死んだ後も感知できた。宿儺が仮に悠仁の中でまだ生きているとしたら虎杖を蘇生させたのも宿儺の仕業じゃ。何かしらあったと考えて良いじゃろう。」

 

五条「確かにね。それとなく聞いてみるか。」

 

重國「そういえば悠仁が蘇生したことについて上に報告するのか?」

 

五条「いや家入にも言ったけどまた狙われる前に悠仁に最低限の力をつける時間が欲しい。だから記録上、悠仁は死んだまましてもらった。」

 

重國「ではこのまま悠仁を匿う感じか?」

 

五条「いや交流会までには復学させる。」

 

重國「交流会?」

 

五条「そうかまだ説明してなかったね。」

 

重國「いやそれよりも何故、交流会までに復学させるんじゃ?」

 

五条「簡単な理由さ。若人から青春を取り上げるなんて許されていないんだよ。何人たりともね。」

 

両面宿儺の器、虎杖悠仁の復活。果たしてそれが吉となるか凶となるかまだ誰も知らない。




最後までお読みいただきありがとうございます。

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