山手線とは、ロマサガ2とはいったい……うごごごご   作:葛城

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 わぐなす「えっほ、えっほ……山の天気が酷そうだな、雪も多い。日を改めるしかないか。う~ん、近場の城は不穏な空気だし……少し、ユウヤンに滞在するかな、それじゃあ、急がなきゃ、えっほ、えっほ……」

 それは、少し前の事。



第20話: 前触れもなくボス戦突入はロマサガのうま味

 

 

 

 ──正直に言おう。

 

 

 俺たちは、まったく身構えていなかった。

 

 何だかんだ道に迷って、ジャングルを抜けることに時間が掛かったのも、そう。

 

 そこから『ヤウダ地方』へと入り、たまたま抜けた先にあった町……『ユウヤン』にたどり着いたのも、そう。

 

 これまで巡って来た町とは根本から異なる街並み、風景に、意外なぐらい喜んだのが、ロックブーケだったのも、そう。

 

 

 特に喜んだのが、食事だ。

 

 

 意外な話かもしれないが、実はロックブーケ……『米』と呼ばれる食材が大好物で、特に塩を擦り込んで手で成形させる……『おにぎり』なる料理が特に好きなのだが。

 

 この『ユウヤン』にはなんと、その『米』が栽培されており、主食として人々の命を支えていたのだ。

 

 

 これには、ロックブーケは文字通り、飛び上がって喜んだ。

 

 

 ぴょんぴょんと、本当に子どもみたいに飛び跳ねて全身で喜びを露わにしていた。

 

 おそらく、ロックブーケが街並みを見て喜んだのは、もしかしたら米が……と、ちょっと期待していたからなのかもしれない。

 

 そこに、実際に米があったと分かったのだから、予期せぬ出来事だっただけに、その分だけ嬉しさが増したのだろう。

 

 俺としては、米が美味しいのは認めるが、どちらかと言えばパンの方が好きであるするのだが……なお、実は俺たちの中ではノエル隊長も米が大好物だったりする。

 

 そういうのを見ると、この二人って兄妹だよなあ……って実感する。

 

 まあ、ロックブーケは分かりやすくテンションが上がるし、傍目にもはっきり分かるぐらい上機嫌になるけど、ノエル隊長はちょっと分かりにくいという点はあるのだけど。

 

 ちなみに、ワグナスもけっこう好きらしいのだが……正確には、シチューがたっぷりかけてあるやつが特に好きで、単体ではそこまでではない。

 

 スービエとダンターグは、とにかく腹に溜まって力が出るようなやつ……後は、食い応えがあって味が濃ければOKみたいな感じなら、で。

 

 ボクオーンだけは、はっきりと苦手な味だと公言していたりする。

 

 なんでも、食感というか、舌触りというか、そういうのがどうしても受け入れがたいのだとか。

 

 まあ、分からんでもない。

 

 豆だと思って食べたら味が違うし、食感も違うし、豆と同じようにスープに入れたらまた変わるし……カレーですら、ちょっと嫌な顔をしていたぐらいだし。

 

 

 ……で、話を戻すが、俺たちは身構えていなかった。

 

 

 なにやらこの地域一帯を領土にせんと睨み合っている城が二つあって、少しずつ緊張が高まっているのも、そう。

 

 昔はまだ良かったらしいのだが、最近では余所者と見たら敵の間者かと疑われて襲われる可能性があるという話も、そう。

 

 実際、全身黒ずくめの集団に襲われて、返り討ちにしたは良いけど、なんか指名手配されているっぽいのも、そう。

 

 なんだかんだ、いきなりそういった形で人間からのトラブル……少なくとも、この世界に戻ってきてからは初めてみたいな感覚だったから、余計に。

 

 そして、それでもまあ俺たちはどこか楽観視というか、何とでもなるさと余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)に捉えていたのが……悪かったのかもしれない。

 

 

 だから、俺たちは……その瞬間も、身構えていなかった。

 

 

 そう、『ヤウダ地方』の勢力争いを二分している、『チョントウ城』と『ハクロ城』。

 

 どちらに向かっても、くせ者だとか言われて武器を向けられるのは分かっていたから、近寄るようなことはしなかったのだけど。

 

 せめて、遠目から、どんな城をしているのかぐらいは見ておこうぜってことで、『ユウヤン』を離れて移動していた時……それは、突然起こった。

 

 

 ──俺たちの前に降り立ったのは、いつぞや目撃した、女の身体に、鳥の翼を持った……巨大なモンスター。

 

 

 一目で、そこらのモンスターとは格が違うというのが分かった。

 

 立ち振る舞いとか、そういう話じゃない。

 

 その身から放たれるオーラというか、エネルギーが別格過ぎて……俺もそうだが、ロックブーケが反射的に小剣を構えたぐらいには、強いと思える存在であった。

 

 ……本当に俺たちは……後に思い出せば羞恥心を覚えるぐらいには能天気に、構えていなかった。

 

 

『──おまえたちが、クジンシー、ダンターグ、ロックブーケを倒したとかいう、私たちと同じ名を持つ人間だな』

 

 

 そう、まさか、間近に見たそいつの顔が……かなり面影を……そう、思わずワグナスの顔を思い出してしまうぐらい似ていたことに加えて。

 

 

『話を聞いてはいたが、驚いたな。どういうわけかおまえたちは……かつての私たちに似ている。いったい何者なのだ、おまえたちは?』

 

 

 手足が鳥(?)である部分を除けば、どこから見ても人間の女性にしか見えない造形……すなわち、デデドドンっとロケットのように飛び出した二つの膨らみと。

 

 

『答えてもらおう……黙秘をするのであれば、速やかにおまえたちを排除する。好きな方を選ぶといい』

 

 

 可憐としか言い表しようがない顔、その唇から飛び出した、妙にセクシーな男の声……分かる人が聞けば、一発で『あっ……』っと言葉を無くしてしまう、そんな現実を前に。

 

 

「……(おい、笑うんじゃなかったのか?)」

「……(笑えないわよ、まったく……)」

「……(だよな、実物見たらマジで笑えねえ)」

「……(どうしよう、ワグナス様のこと、ちゃんと見れないかも)」

 

 

 まったく身構えていなかった俺たちは……かつてないレベルで居た堪れない気持ちになりながら、そっと互いに目くばせするしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………まあ、うん、この状況を例えるならば、だ。

 

 

 双子って思ってしまうぐらいそっくりな、友人のそっくりさんが、おっぱい丸出しニューハーフだった……だろうか。

 

 実際はパラレルワールドの、あったかもしれない可能性の自分とかいう、いまいち説明しづらい部分だが……とにかく、だ。

 

 

 なんで、そうなったのおまえ……これが、俺たちが同時に思った事だった。

 

 

 ある意味、モンスターみたいになっていた『七英雄クジンシー』、完全にモンスターに……いや、見た目だけで中身変わっていないかもしれなかった『七英雄ダンターグ』。

 

 そして、魅了術で男を操って色々やっていた『七英雄ロックブーケ』……よりも、衝撃的な現実であった。

 

『七英雄クジンシー』は、なんかパラレルワールドの自分とは思えないぐらいに小物っていうか、とにかく偉くなりたい王様になりたいって気持ちは分かる。

 

『七英雄ダンターグ』も、見た目が違うけど、中身はそんなに違っていないのではってぐらいだったし……『七英雄ロックブーケ』も、方向性が違うだけで見た目はそこまで変わっていなかった。

 

 それなのに、眼前に居る……おそらくは『七英雄ワグナス』は、どうだろうか、どう判断すれば良いのだろうか。

 

 

(わ、ワグナス様って、そういう趣味があったのかしら?)

(いや、違う、そうじゃない)

 

 

 不安そうに視線をさ迷わせるロックブーケから、こそっと囁かれた俺は……同じく、『七英雄ワグナス』に聞こえないよう声をひそめながら、俺なりに……ロックブーケを気遣う。

 

 俺よりも、ロックブーケはワグナスとの付き合いが長い。

 

 ワグナスに惚れているっぽいロックブーケからしたら、片想いしている相手が実は性転換願望があると知ったら、動揺するのは当然だ。

 

 

(おそらく、あっちのワグナスにはとても辛い事があったはずだ。それこそ、男であることを辞めてしまうぐらい、辛い出来事が……)

(そ、そんな……)

(冷静になって考えてみろ。俺たちの知るワグナスに、そういう趣味嗜好(しゅみしこう)があったように思えるか?)

(それは……)

(むしろ、時にはスービエより熱い男を見せる時があっただろう?)

(……そうね、そうだったわ)

 

 

 俺の言葉に、ロックブーケは色々と思い出したようで、ちょっと顔色が良くなった。

 

 そう、アレは俺たちが異世界にて。

 

 色々と紆余曲折を経て、悪に立ち向かう少年アキラと、ワグナスが一緒に『ブリキ大王』と呼ばれる巨大ロボットに乗り込んだ時の事。

 

 憤りを抑えきれず、正義の怒りを爆発させて発揮した超能力にて、『ブリキ大王』を動かしていた、その時だ。

 

 

『怒りに身を任せるな、アキラ!』

『わ、ワグナスさん!』

『お前の怒りは憎しみを晴らすためのモノではない! 無慈悲に奪われ、それでもなお正義を想って託した者たちのためのモノだ!』

『わ、ワグナスさん……!!』

『忘れるな……その気持ちこそ、まさしく愛なのだ!!』

『──はい! 行くぞ、ブリキ大王!!』

 

 

 という感じの、熱いセリフが傍受した通信装置から流れて来た時は……思わず、スービエより『さすがだ、ミスター武士道……!』とあだ名が授けられたぐらいに……とにかく、だ。

 

 そんなワグナスを知っているからこそ、俺たちは……眼前の『七英雄ワグナス』に対して……どうにも、敵意というモノを持てなかった。

 

 せめて、これまで会って来た『七英雄』のように、明確に誰かを傷つけているという話ならば違ったのだが……少なくとも、今はまだそんな話を知らないわけで。

 

 

『……こそこそと、相談事は終わりかな? では、返答を聞かせてもらおう』

 

 

 そして、俺たちの気持ちなど何も知らないソイツは……バサッと翼を広げ、合わせて、ぼよんと揺れる胸も気にせず……まあ、だからこそ。

 

 

「お、お労しや、ワグナス様……」

 

 

 ポロっと、堪らず涙も零してしまったロックブーケを前に。

 

 

『は?』

 

 

 さすがの『七英雄ワグナス』も、あまりに想定外の反応だったのか、困惑した様子で威圧を止めたのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………困惑した『七英雄ワグナス』をしり目に、ロックブーケの優しさは留まらなかった。

 

 

「ワグナス様……お辛い事があったのですね、このロックブーケ、悲しくて涙が止まりません」

『……??? 何の話だ?』

「皆までおっしゃらなくても大丈夫です。短慮なわたくしには、想像すらできない苦しみがあったのですね」

『待て、いったい何の話をしているのだ???』

 

 

 困惑を深める『七英雄ワグナス』。

 

 よく見れば、目元より下に伸びる模様が、まるで血の涙を思わせる……それが余計にロックブーケの涙を誘うのだろう。

 

 ぽろぽろ、と。

 

 涙を流し続けるロックブーケに、先ほどまで冷たい殺意を向けていたとは思えないぐらい、さらに困惑を深める『ワグナス』。

 

 俺たちが知るワグナスとは違う……とはいえ、ロックブーケの事は気にかけていたようで、傍目にも分かるぐらい、困った様子だ。

 

 たとえ、『ワグナス』の知る『ロックブーケ』を倒した存在だとしても、見た目がまったく同じであるからこそ、泣かれることに戸惑っているようで。

 

 

「ワグナス様にも似合う、とっておきのブラジャー……ご用意致しますわ」

『???????』

 

 ──おい、おまえの連れだろ、なんとかしろ。

 

 

 そう言わんばかりに、チラチラと俺に視線を向けてくる『七英雄ワグナス』に。

 

 俺は……曖昧に笑ってやることしか出来ない──そして、そんな俺をあざ笑うかのように、天は俺を見放した。

 

 何気なくあさっての方を見た俺の目が……彼方の小さな影を捉えた。

 

 それはまだ、距離があった。

 

 しかし、確実にこちらを視認し、近寄ってくる小さな影。

 

 

(ま、まさか、アレは……!!!)

 

 

 そう、その影は、アバロンを離れてから初めての再会になるやもしれない……こちらに向かって手を振る、ワグナスであった。

 

 

 

 

 

 

 





 わぐなす「むむ! アレは、クジンシーにロックブーケ……それに、見慣れぬモンスター! こうしてはおれん、助太刀に行くぞ!」
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