ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「いよいよ大戦の足音が近づいてきた……か」
政府や軍部、経済界の重鎮達が集い、東京にある料亭で会合が行われていた。
勿論その料亭は転生者が関わっており機密管理には徹底している場所である。
「外交部から対ヨーロッパ外交において幾つか確認しておきたいことがございます」
アジアの歴史はだいぶ変わっているが、欧州やアメリカ大陸での歴史はあまり変わってない。
そのため、大まかな未来予測も立てられていた。
来年以降ドイツが本格的に戦争を見据えた行動を開始すると思われるため、日本政府としては弾圧されるユダヤ人の脱出を手助けする方向で動けないかと考えていた。
日本国内に取り込むのは思想や宗教的な対立を引き起こす可能性が高いとして、大人数の取り込みは危険であるが、技術者や知識人の脱出は人類のために脱出を扇動するべきと考えられていた。
ここらへんはナチスの外交とも接触しており、ナチスの中でも良識がある者は抹殺では無く欧州からの隔離程度で留めたほうが良いと考えており、日本側が費用の大部分を出すこと、資源の貿易レートを下げる事を条件に、ユダヤ人の脱出作戦実行の話が裏で進んでいたのである。
大多数のユダヤ人は日本領土に組み込まれていたが、ダンジョンがあるわけでも無い樺太島をユダヤ人の仮住まいとするのはどうかとユダヤ系の大物との話し合いも行われていた。
ユダヤ人達は聖地に固執する者も多かったが、悲願であるユダヤ系国家建国ができるのであれば場所はとわないという人物も一定数以上存在し、島として物理的に隔離されている場所であれば国境問題で史実イスラエルの様に中東大暴走はしないだろうと考えていたのである。
「ユダヤ系国家を樺太に建国することにより、日本との友好国を増やしつつ、アメリカのユダヤ系コミュニティを通じて和平交渉をしやすくする……なるべく東西冷戦の形に持っていき、その間に日本は宇宙研究や産業技術をリードし、経済的覇権を実現する。日本人は日本を開発し尽くしたら、宇宙に進出すればいい」
「それに人工島の成田や南洋諸島の開発技術、あとダンジョンの居住性向上により、日本の国土は空間的に増え続けている。世界が最終戦争に向かっても、日本人は生存できる環境を作らなければ……」
「それにゲームを元にした世界故に、数多のエンドが出てくる可能性が存在しますからねぇ……宇宙人と戦うみたいな選択肢が出てきても私は驚きませんよ」
「まさか……エイリアンModでも入れなければ宇宙人が攻めてくるなんてことはないでしょう。現に人工衛星で宇宙研究も始まっていますが、知的生命体の情報は入ってきていない」
「あとはダンジョンが世界各地に出現する新世界エンド……これを気をつける必要があるな」
「新世界エンドはランダム発生、トリガーはダンジョンの技術の核心に触れること……」
「人工ダンジョンの研究は行われていますが、今のところ大きな進展は無かったはず……異空間化の技術止まり」
「ふむ……引き続き研究は続けるが、東西冷戦に移行できないようであれば、新世界エンドを本格的に考えなければならんな」
「アメリカが日本にどこまで手を出すか……これに尽きますな」
アメリカを迎撃する予定の海軍と陸軍に話が振られる。
「海軍さんはどうですか、アメリカが海軍の大軍拡をしていますが」
「こちらも太平洋の制海権を奪えるだけの最新鋭の潜水艦隊を整備していますし、洋上艦である戦艦、空母、巡洋艦、駆逐艦でもアジア米機動部隊を短期間で制圧できる戦力は有していると研究が出ています。あとはいかに現有戦力で敵に対して損害なく完勝できるか……これですね」
「長門型と予定していた戦艦名を御坂と麦野にしたの私はまだ怒ってますからね」
「いや、超電磁砲と言えば現代人なら御坂だろう」
「しかりしかり」
おっさん達が長門派と御坂派で口論をしていたが、少しすると落ち着き、陸軍の村上元帥に質問する。
「村上さん、陸軍の方はどうなんですか」
「陸としては米軍拠点の台湾、フィリピンをいかに制圧するかにかかっています。なるべくオランダとイギリスは刺激しないようにしたいのと、ベトナムを出来ればフランスから独立させる事が出来れば最高だな」
補足として陸軍大臣が語る。
「陸軍の主戦場は大陸方面になると思うが、史実以上にガタガタの中国と独ソ戦が早期決着でもしない限り攻撃する余力の無いソ連相手なので、韓国軍と協力すれば何とかなるでしょう」
「韓国軍は役に立つのか? 中国やソ連に我が国の武器を横流しした過去があるが」
「韓国政府はあまり信用できませんが、韓国軍は信用できます。アジアに限れば自国で武器や軍艦を生産できる国力を有した限られた国ですし、南満州を得たことで資源や食料生産能力も史実の比じゃないくらい豊かです。汚職は多少ありますが、国内投資に積極的なので、韓国財界も成長していますし」
「韓国とは立地上、共に味方でなければならない。ロシア占領によって小中華主義が粉砕されていたからこそ、史実以上の友好性が存在する」
「韓国とタイの2国はアジアで中華をけん制できる数少ない国力を有した国だから協調路線でいきませんと」
「中華が肥大化した時が一番恐ろしい。第二のアメリカになりかねないからな」
そして第二欧州大戦が始まったらどうするのかという考えをこの場の人達は共有する。
「北欧……ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、この3国は技術力、将来性が確実にあるし、政治的にも堅実だ。ドイツのウェザー演習作戦を上手く阻害することができれば北欧3国をイタリアと共にドイツをけん制する役目を担える」
「イタリアはリビアでの石油と日伊の経済協力により戦争をしなくても大丈夫なほど国の状態が良い。一発に賭けてドイツと手を組むということはないだろう」
「フランスは戦車に力を注いでいるが、航空戦力が貧弱で、現在のドイツ空軍にも規模で負けていると聞く。あの国は史実通り分割される可能性が高いな」
「イギリスはどうなのだ?」
「技術の進歩で既にスピットファイアの配備とレーダー網の整備が始まったらしいが、ドイツの猛烈な追い上げを考えると負けないためには日本からも支援をした方が確実だろう。バトル・オブ・ブリテンが発生しない可能性もあるがな」
「あとはポーランドがどれだけ頑張れるか……でしょうか」
「難しいだろうな……工業地帯もろくに無いし」
「ソ連が冬戦争をするようであればそれに付け込んでフィンランドに武器を供与したり、義勇軍を送ってソ連の実力を確かめる……というのもやったほうがよろしいかと」
「うむ、そうしよう」