今朝起きて、今日がバレンタインデーだと漸く気付き、去年書いたのとは別のパターンを書きたくなり、どうしようか考えていたら、ふと藍染が愛娘に泣かされる光景が思い浮かび、そこから今回の話が出来ました。
楽しんでいただけたら幸いです。
事の始まりは、先日導入したテレビのとある番組だった。
「バレンタイン…ですか?」
「そうなのよ」
「う…うぅっ…うぐっ…ぐすっ…ひぐっ…う~…」
明日の予定について、最終確認に来たら困り顔のサチさんに抱き付いて啜り泣く藍染が居た。
何でも、姫様がテレビのバレンタインデー特集を見ていた時に、バレンタインデーの由来について知り、藍染にこう宣言したらしい。
「バレンタインデーはこいびとやふうふのひなんだって!なら、とうさまにはかあさまがいるから、もうわたしからはわたさないほうがいいよね!」
と。
娘を溺愛している藍染にとってこの上無い大ダメージ、何なら瀕死レベルものだろう。
余計な情報を与えたテレビに八つ当たりして(テレビに鏡花水月が鞘ごと突き刺さってる)そのままサチさんに抱き付いて泣き出し、今に至ると言う。
…う~ん、姫様の言動は間違ってはいないけど、流石にこれはなぁ
…しょうが無い、またお節介焼きますか
「藍染様、明日の予定についてですが。姫様もご一緒にチョコブラウニーを作る約束なのですが…私から姫様と直接お話しても宜しいでしょうか?」
「ぐすっ…どうするんだい?」
泣き過ぎて鼻声の藍染に苦笑いしながら、日本式のバレンタインデーについて改めて説明する許可を貰って、姫様に伝えた結果、明日のチョコブラウニー作りに参加する気になってくれた。
藍染から感謝されたのは言うまでも無い。
そして翌日。
旦那様に贈りたい、片想い中、普段からお世話になっている方にお礼を…と、それぞれ理由が違うものの、渡したい相手がいる面々が
「ちゃんとしたのを作りたいから教えて欲しい」
と、休みをもぎ取ってやって来た。
女性死神協会のメンバーとその関係者達である。
「では、先日お伝えした通り、お菓子初心者に優しいチョコブラウニーを作りましょう」
「「「「「はい!」」」」」
「「「「「宜しくお願いします!」」」」」
依頼された時に何を作るかで話し合いをしたら、去年の秋にオーブンとレンジそしてトースターを導入したと聞いた。
…余計な勘繰りに思われるだろうけど、予算は何処から?
…え?歌匡さんとその娘さん達、それとルキアに緋真さん、藤乃さんに紫さんまで来るの?
…あの人達も協会のメンバーなんだ
…うん、言わなくても余裕で財布を出してくれる人がそれぞれに居るわね
「では先ずオーブンを180℃に予熱して、それから材料を全て量ります」
材料は製菓用チョコレート、無塩バター、小麦粉、ベーキングパウダー、卵、砂糖。
※まだ幼いシン君がいる乱菊や、チョコが苦手な白哉に渡す緋真には、チョコレートの代わりにココアパウダーを使ったレシピを用意した。
「ホットケーキミックスはつかわないの?」
「姫様はホットケーキミックスで作りたいですか?」
「うん!」
「では、小麦粉とベーキングパウダーを混ぜたのと同じ分量のホットケーキミックスを用意しましょうね」
「は~い!」
小麦粉とベーキングパウダー或いはホットケーキミックスを粉ふるいで2回ふるう。
「粉が飛び散るのを防ぎたいならこう…コップに計量した粉を入れて、ボウルに粉ふるいを置いて粉ふるいの真ん中辺りを目がけてコップを逆さに置きます。そしてこのままグルグルと粉がなくなるまで回します…すると、はい、粉ふるいが出来ました」
「「「わぁ…!」」」
「これをもう一度繰り返して粉の用意はOKです」
「…これは良いわね」
「毎回、粉が飛び散って大変だったのよね」
「「「うんうん」」」
次に出来る限り細かく割ったチョコレートとバターを耐熱容器に入れてレンジで温める。
「温め過ぎるとチョコレートが焦げてしまいますので、先ずは30~40秒で溶け具合を見て少し混ぜて…まだ塊があるので今度は10~20秒で様子をみて…はい、溶けました」
「チョコレートはレンジで少しずつ温めるのね」
「お湯で溶かすのは?」
「溶かしている時にお湯がチョコレートに入る危険性がありますので、今回はレンジで作る方法を採用しています。勿論、湯煎でも構いませんよ。お湯の温度に注意して下さいね」
溶けたバター入りチョコレートに卵を入れて混ぜて、砂糖を入れて更に良く混ぜる。
「此処でしっかり混ぜ合わせて下さいね」
「なんで?」
「しっかり混ざっていないと食感や出来上がりに影響が出ますよ。お砂糖のジャリジャリ感とか見た目がデコボコで悪くなったりとか」
「…ちゃんとまぜるね!」
「はい、その調子ですよ」
最後にふるった粉を入れてヘラでサックリと混ぜ合わせる。
※因みに、チョコレートを使わない場合、溶かしバターに卵、砂糖を入れてその都度良く混ぜて、ココアパウダー入りの粉を入れてヘラでサックリと混ぜ合わせて完成。
「このように粉っぽさがなくなれば生地の完成です」
「…チョコレートを溶かす時に温め過ぎないように注意すれば、後は本当に簡単ですね」
「そうですね」
焼きムラを減らす為に、今回はスクエア型では無く、エンゼル型を使用する事にした。
サラダ油を薄く塗ってから生地を流し入れて全体的に厚みが同じになるように均す。
「そして型をこうして台に2~3回落として空気を抜いて、オーブンに入れて温度を170℃に落として20分くらい焼いて完成です」
「わっ、とと…」
「…上手く、均せないわ」
「あぁ…1ヶ所にドッとではなく、こう生地を大体4つに分けて、型の4カ所にポンポンと入れてからヘラで均すとやりやすいかも知れません」
「「…こう…かしら?」」
「はい、とても上手ですよ」
全員のをオーブンに入れて約20分焼いて完成。
「最後に竹串を型の1番生地の厚みがある場所に刺して…何も付いて来ないので、ちゃんと焼けていますね。後は粗熱を取って、型から外して切り分けて味見、銘々が梱包すれば完成です」
「「「「「わぁ…!」」」」」
「これが基本的なチョコブラウニーです。粉を混ぜる時に干し葡萄やナッツ…落花生等を加えて焼いても美味しいですよ」
「美味しそ~!食べていい?」
「…え?あれ?」
「「「「「か、会長!?いつの間に!?」」」」」
いつの間にか今回不参加の筈のやちるちゃんが来ていた。
…って、何で来てるの!?
…あ、よく見たら更木剣八と歌匡さん達の迎えだろう綱彌代時灘が来てる
「みんなひどいよ~!剣ちゃんとお仕事行ってる間にこっちに来てるなんて!しかもお菓子作ってるし~!」
「ご、ごめんねやちるちゃん。声をかけに行った時にはもう居なかったから…」
「知らない!」
「ごめんってば~!」
どうやら不可抗力だったのだが、仲間外れには違いないと、やちるちゃんはすっかりふて腐れてしまった。
しかし、
「あの~、これから試食をするのですが、やちるちゃんと更木様、綱彌代様はどの飲み物にしますか?」
「え、試食?何あるの~?」
「緑茶にほうじ茶、紅茶に珈琲、カフェオレ、ジュースなら林檎と葡萄がありますよ」
「りんごがいい!」
「…緑茶」
「…かふぇおれを」
「ではご用意しますので、そちらの試食室でお待ち下さいね」
「は~い!剣ちゃん行こう!とっきーも!」
「…その呼び方は止めろと言っておろうが」
敢えて空気を読まなかったビアが気をそらして、調理室から遠ざける事に成功した。
「…今のうちに片付けて、各々必要な分を確保して下さい」
呆気に取られているみんなをロカが促し、気を取り直した面々は持って来た容器に入れて隠した。
「助かったわビア、ロカも」
「そう言うメノ姉様も、やちるちゃん用のだけアイスクリームをトッピングしてますよね」
「あ、あはは…」
…1人だけタイミングが合わなくてってのは、流石に可哀想だからね
自分だけ特別なトッピング付きのチョコブラウニーに、すっかり機嫌を直したやちるちゃんだった。
そしてバレンタインデー当日。
練習に練習を重ねたそれぞれの結果は…。
ルキアと緋真の場合。
辛党の白哉は、甘さ控えめに作ってくれた緋真とルキアに言葉少なに感謝しつつ、しっかり完食した。
「…ほわいとでえは何を返そうか」
因みに、13番隊と同期で仲の良い隊士達にもチョコブラウニーは配られ、とても喜ばれた。
何処ぞの赤毛君は「例え義理でも」と感涙していたらしい。
藤乃と紫の場合。
白哉とは逆に甘い物は割と平気な響河は、ドライフルーツのシロップ漬け入りを貰ってかなり嬉しそうだった。
「…ほわいとでえ?その日に休めるとは思えぬな…ならば、今度の休みの日に、2人が行きたいと言っていた店に連れて行くとするか。ついでにあの甘味処にも…」
因みに銀嶺と蒼純は両方からしっかり貰っている。
歌匡と娘達の場合。
歌匡と娘達から貰った時灘、超ご満悦。
バレンタインデーをしっかり調べて本来の意味通り、娘達には欲しがっていた物を贈り、歌匡には、最近忙しくて全然出来ていなかった夜空を眺めながら、2人でチョコブラウニーを食べて過ごした。
歌那枝の場合。
何気に珈琲好きの双也、そのお供にちょうど良いとブラウニーを完食。
義父、時灘から本来のバレンタインデーについて入れ知恵された双也は、悩んだ末に歌那枝が任務中に壊してしまったお気に入りの簪を、仕事の合間を縫って直したのを渡した。
彼女が簪を更に大切に扱うようになったのは言うまでも無い。
乱菊の場合。
両方のレシピのを作成。
息子のシンにはココアパウダーのを、ギンには両方の食べ比べをして貰った。
案の定、ギンはチョコ入りを気に入った。
ギンはホワイトデーは3倍返しと聞いて、内心焦っている。
雛森の場合。
日番谷と祖母に贈った。
大事な幼馴染みからの贈り物を無碍にする訳が無く、完食した。
ホワイトデーのお返しは既に購入済み。
ただ、当日渡せるかどうかは不明。
七緒の場合。
8番隊みんなと、普段からお世話になっている各隊の隊長、副隊長にも渡した。
京楽には、そのついでとして渡す事に成功。
貰った直後からの京楽の浮かれっぷりに
「やっぱり、渡さなければ良かったかしら」
と言われて慌てる京楽の姿が見られたとか。
砕蜂の場合。
「女性死神協会の皆で作ったものだ!受け取ってくれダーリン!」
と、何度もやり直しただろうヨレヨレのリボンが結ばれたちょっと(?)クシャクシャの紙袋を大前田に突き出した。
反射で受け取ってしまった大前田だが、余りにも必死過ぎるその様子を流石にスルーは出来ず、渋々その場でひと切れ食べた。
「…チョコは余り食わねぇっすけど、まぁ、悪くはねぇっすね」
感極まった砕蜂に抱き付かれそうになり、脊髄反射で全力逃亡。
何とか鯖折りは回避出来た。
※その代わりに柱が1本折れた。修理費は逃げた大前田持ち。「解せねぇっすよ!」
ホワイトデーに‘家族だけ’で毎年催している、実家の夜桜を見ながらの食事会に砕蜂を招待した。
が、案の定、暴走した砕蜂との鬼ごっこが始まった。
翌日、疲れ切った大前田の姿を見かけたとか。
都の場合。
義妹の空鶴と共に13番隊みんなの分と家族の分を頑張って作り、配った。
但し、海燕と岩鷲には干し葡萄のラム酒漬け入りを用意してとても喜ばれた。
姫様とサチさんの場合。
無事、チョコブラウニーを貰えて大歓喜の藍染。
暫くの間、怖いくらい上機嫌だった。
そしてメノリに臨時ボーナスが出た。
※チョコを貰えた者達からのお礼が含まれている。
だとしても、
「…この桁、おかしくないですか?」
「…済まないが、受け取っておいてくれ。我々の胃の為にも」
なんて遣り取りがあった。
メノリ、ロカ、ビアの場合。
色々なアレンジをしたチョコブラウニーをおやつに出した。
甘いのが苦手なテスラ他数名には、コッソリと塩チョコブラウニーをあげた。
仕事で此方に来た檜佐木と射場、吉良の3人にビアがお疲れ様の意味を込めて手渡した。
おかげで彼等は今年‘は’貰えた勝ち組に入れた。
因みに、チョコブラウニーのアレンジの中にアルコール入りを用意したのに気付かず、誤ってメノリが食べてしまい、翌朝、作ったシャルさんが土下座して謝って来たのに困惑しっ放しだった。
…また何かやっちゃったの?
…だから、何やらかしたか教えてよ、もう!
執筆の過去最速を更新したかも知れません。
何にせよ、タイムリミットまでに書けて良かったです。