「おいしかったね~、それにご飯を食べたら眠くなって……zzz」
旅館の豪華な夕食を食べた3(2)人は雑談を交わしていた
「そう言えばミスラさんはアビドスの生徒なんですよね」
「そうだね。僕を含めて三人だし、借金の関係で廃校寸前だから崖っぷちではあるけどね」
「それは…………」
「気にしなくて良いよ。少なくとも僕の代では潰させないから。それに同級生にホシノってのが居るんだけど桁違いに強いから案外どうにかなるんじゃないかな」
「そんなに強いんですか?」
「次元が違う強さって感じかな、昼の魑魅一座もホシノなら片手間でやれると思うよ」
「つまりミスラさんよりずっと強いってことですよね」
「僕なんて足元にも届かないんじゃないかな。戦ったこと無いからなんとも言えないけど。…………そう言えばここって温泉あるって言ってたよね」
「そうですね。ここのお部屋にも露天風呂が備え付けられてるそうですから、先にいかがですか?」
「う~ん、……僕は後で入ろうかな。ちょっと行ってみたい場所があってね。ミモリとツバキが先に入ってて」
「湯冷めしちゃうと風邪を引いてしまう原因になりますからね。場所のご案内などは大丈夫でしょうか」
「問題ないよ、すぐそこだから」
「でしたら、先に頂きますね。ミスラさんお気を付けて」
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ミスラは旅館から足を踏み出し夜の百鬼夜行を彷徨う。目的地は桜並木の桃色に染まる道
(魑魅一座が来た時に避難して見失った先祖代々のタレより塩の方がうまい焼き鳥の屋台。明日にはお土産買ったりで時間ないだろうから今日中に見つけたいな)
そうして魑魅一座と戦闘を繰り広げた場所へと戻ってきたミスラは辺りを見回すと、目的の屋台と雪女のように真っ白な姿に青い羽織を身にまとう客を見つけた
「こんばんは、ナグサさん」
「……」もぐもぐ
「こんばんは……えっと、……」
「ああ……そう言えば昼間の時はお面がずれちゃって顔が見えてませんでしたからね。改めて商伊ミスラです。お昼の時はありがとうございました」
「大体はアヤメがやってくれたから……それに私なんて美人な事しか取り柄がないし……」
(思ったより自己肯定感が高いのか低いのか判断に困るな……)
「……そう言えばそこの屋台の焼き鳥ってタレと塩だとどっちの方がいいとかオススメってありますか?」
「あそこの屋台なら基本的には塩でねぎまと砂肝はタレがよくて、せぎもとかレバーはあの店だと塩の方が美味しいよ」
「そうなんですね、なら早速買ってきます。教えてくださりありがとうございます」
ミスラは屋台にてねぎまのタレとせぎも、ももの塩を買い、夜の百鬼夜行を写真におさめて旅館へと戻った
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部屋に入るとミモリとツバキが浴衣を着て卓球をしていた。戻ってきたことに気づいたミモリはミスラに話し掛ける
「戻られたんですね、ミスラさん。お布団は私が敷いておくのでゆっくりお浸かりになってください」
「ならゆっくり浸からせて貰うよ。それと焼き鳥の屋台で何本か買ってきたからよかったら二人で食べて」
「焼き鳥を買いに行ってたんですね」
「明日はお土産買ったら早めに帰る予定だから、時間がなくてね。それじゃあ温泉に浸かってくるよ」
そう言うとミスラは温泉へと向かう。足を踏み込む度に聞こえる木の軋む音に自分達以外の客は誰も居ないのだと改めてミスラは感じていた
(にしても、温泉って広いな。自分以外に誰も居ないとホラゲーとかのシーンでありそうで困る。)
温泉にはミスラ1人であり辺りは静まり返っている。そんな中で湯船に浸かり自然の景色を見ていた
(桜並木から覗かせる月の光。懐かしいと言うより、馴染みがあるようで落ち着く。……定期的に来たいけど、金銭の余裕もそこまではないし……家に帰ったら資産運用の勉強もだけど、ミスラと言う存在が何をしてたのかも調べないとか)
そんなことを考えながらミスラは湯船から上がり、部屋へと戻っていった
「ミスラさんはもうお休みになりますか?」
「そうだね、今日は早めに寝ようかな。新しく買った枕の具合もだし睡眠の指導も頼みたいからね」
「それじゃあ寝ようか」
「よろしくね」
買ったばかりの枕と布団を被り目を閉じる。だんだんと意識が薄れて、世界から音が消えたようで体も軽くなるような感覚に襲われた
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「…………ん~」
眠りについていたミスラは目を覚ます。しかし、辺りは身に覚えがない空間。少しばかりボヤける視界の中で意識が揺れる
「これは…………」(雰囲気は百鬼夜行と似たものではあるな。けど、こんな場所は無かったはず)
「おや、こんな所へ迷い込んどるからてっきり、狐とばかり思っておったが迷い子であったか」
「…………え~と……こんばんは?」
恐る恐る振り向けば、淡く桃色の毛先に狐耳を立て、和服のようなものを身に付けた人物が目に入った
「まずは、自己紹介をするべきかの。妾はクズノハ。大預言者クズノハと呼ばれることもあるの。して、其方はなんと申す」
「僕は商伊ミスラです。……その、ここは何処ですか?」
「ここは何処なのか……些か難しい問いとなるな。夢というには神聖で現実と言うには役不足と言ったところかの。夢と現実の境目とでも、思って貰えればかまわん」
「夢と現実の境目……なら、戻れない事はなさそうかな」
「現実と夢の狭間とは言い表したが、夢と大体同じものと考えて貰ってかまわぬ。妾もこの場に人が迷い込んでくると言うのは、始めての経験での、困惑しておる」
「……まぁ問題なさそうでよかったです。夢見が悪い日が続いていたので、こう言う落ち着いた感覚になれるのは久し振りですね」
「其方は普段どのような夢を見ておるのか、少しばかり聞かせて貰えぬかの?」
「どうせやることもありませんからね、一通り語るので愚痴みたいになりますが聞いてください」
ミスラは砂嵐の中から現れた機械の蛇に、世界が赤い空に染まった話をした。クズノハはミスラの足から頭、指先にと
「話を聞いて思うたが、其方の夢は1つの現実と捉えていいやもしれぬ」
「あれが現実……ですか?」
「そもそも夢とは、過去の記憶を整理するなかで生まれる記憶の断片のようなもの。しかし、其方の夢に出てくるものは突拍子のなさの割に、あまりにも具体的であった……」
「そして、其方の魂とでも言おうかの。それが肉体と言う器に収まりきっておらぬ」
「魂が肉体に収まってない……?」
「この事から考えるに……ミスラよ、其方の見る夢と言うのは肉体に収まりきらぬ魂に刻まれた記憶を、辿っているように思う。収まりきらぬ魂と言うディスクに込められた記憶を、其方と言うプレーヤーで再生していると言ったところかの」
「…………」
「心当たりが無いわけではないのであろう。妾もその様な現象に会ったことはない。しかし人より長く生きてる故に分かることもある。何かあれば『黄昏の寺院』と呼ばれる場所へ訪れるとよい。全てをどうにかしてやることはできぬが力にはなれるであろう」
「そうですね、その時はクズノハさんを頼ります。何かお土産でも持っていった方がいいですかね?」
「なら洋菓子を持ってきて貰おうかの。ロールケーキやマカロンといった菓子を食べる機会がなくての、あとそれに合う茶も頼もうか」
そうやって次の時のことを言葉に残せば、ミスラの視界は霞みだす。深く海の底へと沈んでいくように景色は暗く、音は小さくなっていく
「そろそろ時間のようじゃの。いずれ、また会う時を楽しみにしておるぞミスラよ」
その言葉を最後にミスラの意識は黒く塗り潰される
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「ミモリもツバキもありがとう。お陰で百鬼夜行を満喫できたよ」
「眠りに困る人を助けるのも修行だから」
「ミスラさんには色々と買っていただいて、私もお祭りを楽しめましたから」
「そう言って貰えると嬉しいよ。また来る時も二人の事を頼ってもいいかな」
「もちろん頼ってください。精一杯お手伝いします」
「次は冬用の布団を探そうね」
クズノハとの会話のあとに目を覚ましたミスラは旅館で朝食を終えて、ホシノとユメへのお土産を見繕った。そして、荷物を抱えて電車へと乗り込んだ
(帰りくらいは何も起きないといいなぁ)
そんなことを思いながら席へと着いたが、またチンピラが暴れていたので結局疲労を抱えて帰宅することとなった
ちなみにミスラを男性であると正しく捉えてる人はあまりいません。理由として彼は筋肉あんまり無くて変声期来てなくて顔も中性的な感じによってるからです。ミスラの立ち絵描けたら良いんだけど技量がないので期待せんといてください