涼宮ハルヒの混沌(カオス)   作:D-ken

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第十一章:天地鳴動、月下の決戦

ドォォォォォンッ!!

 

北高の跡地で、黄金の拳と漆黒の脚が激突した。

その衝撃波だけで、周囲に残っていた瓦礫が粉々に砕け散り、爆風となって吹き荒れる。

 

(ぐっ……! なんだこの馬鹿げたパワーは……!)

 

コスモスとなった俺(キョン)は、腕に伝わる痺れに歯を食いしばった。視線の高さは50メートル。足元を見れば、米粒のような長門たちが爆風に耐えているのが見える。

ダメだ、ここで暴れたら、あいつらを巻き込んじまう!

 

『あはは! どこ見てんのよキョン! よそ見してると死ぬわよ!』

 

カオスウルトラマン(ハルヒ)は、狂気的な笑い声を上げながら、容赦なく追撃を仕掛けてくる。その蹴りが空を切り、衝撃波が校庭の地面を深く抉り取った。

 

俺はコスモスの記憶――ウルトラマンとしての戦闘本能――に突き動かされるように、その蹴りを紙一重で回避し、ハルヒの胴体にタックルを仕掛けた。

 

ズガァァン!

 

二体の巨人がもつれ合いながら、校舎の残骸を突き破って転がる。

俺はそのままハルヒを抱え込み、足元の地面を強く蹴った。

 

(ここじゃ狭すぎる! 上だ!)

 

シュゥゥゥゥォォォォッ!!

 

コスモス(キョン)とカオスウルトラマンは、音速の壁を突き破り、夜空へと舞い上がった。

 

西宮の燃える街並みが、あっという間に眼下に小さくなっていく。

空中で体勢を立て直したハルヒは、エネルギーを背中から噴出させ、空中で急制動をかけた。

 

『逃げる気!? 私とのダンスはまだ始まったばかりよ!』

「馬鹿野郎! 地上が持たねえって言ってんだよ!」

 

上空数千メートル。雲海の上で、二つの光が激しく交錯する。

ハルヒが放つ漆黒の光線「ダーキングショット」を、俺は両腕をクロスさせて防御する。熱い。コスモスの装甲越しでも、皮膚が焼けるような熱量を感じる。

 

(くそっ、なんてデタラメな出力だ! これがハルヒの「ワガママ」のエネルギー量だってのか!)

 

俺は反撃に転じた。腕にエネルギーを集中させ、光の刃「エクリプスブレード」を形成して斬りかかる。

だが、ハルヒはそれを虹色のバリアで受け止め、不敵に笑った。

 

『甘い甘い! そんなんじゃ私の「非日常」は傷つかないわよ! もっと本気で来なさいよキョン!』

 

ハルヒが両腕を広げると、周囲の大気が歪み始めた。

彼女は、西宮上空の雷雲を自らのエネルギーとして取り込み、巨大な雷撃と共に俺に突っ込んできた。

 

ドカァァァァンッ!!

 

空中で大爆発が起こる。俺たちの衝突エネルギーは、もはや核兵器すら凌駕していた。

衝撃で眼下の雲が吹き飛び、はるか下の日本列島の夜景が露わになる。

 

(……だめだ、空でもまだ足りない。このままじゃ、俺たちが衝突する余波だけで、地上は壊滅しちまう!)

 

俺の中で、コスモスの意志が共鳴した。

――少年よ。もっと高く、宇宙(そら)へ! 彼方ならば、全力を出せる!

 

「……ああ、わかったよ! 付き合ってやるさ、どこまでもな!」

 

俺はハルヒの突進を正面から受け止めると、その両肩をガッチリと掴んだ。

 

『なっ……!? 放しなさいよ!』

「放すかよ! お望み通り、とびっきりの『非日常』へ連れてってやる!」

 

俺は全身のエネルギーを推進力に変え、真上に向かって急加速した。

マッハ10、20……速度計が振り切れるほどの加速。二体の巨人は、一つの光の矢となって成層圏を突破した。

 

青かった空が、急速に深い藍色へ、そして永遠の漆黒へと変わっていく。

眼下には、青く輝く美しい地球の姿が広がっていた。

 

『あは……あははは! すごい! これが宇宙! 私たちが求めていた場所ね!』

 

宇宙空間に出たハルヒは、真空の中でさえ楽しげに笑っていた。彼女の身体から溢れ出るカオスヘッダーの虹色の光が、星々よりも鮮やかに輝いている。

 

「まだだ! 終着点はここじゃねえ!」

 

俺はさらに加速した。目指すは、地球の衛星。静寂の荒野。

 

――月面。

 

ズドォォォォォォォンッ……!!!!

 

音のない世界で、凄まじい振動が月面を揺るがした。

コスモス(キョン)とカオスウルトラマンは、隕石のように月面クレーターに激突した。舞い上がったレゴリス(月の砂)が、重力の少なさゆえにゆっくりと降り注ぐ。

 

俺はゆっくりと立ち上がった。

目の前には、悠然と腕を組んで立つカオスウルトラマンの姿。その背後には、漆黒の宇宙に浮かぶ、青く美しい地球が見えた。

 

『……最高のステージね。ここなら誰も邪魔しない。文句も言わない』

 

ハルヒの声が、直接脳内に響いてくる。

 

『さあキョン、始めましょう。SOS団、最後の活動を! 勝った方が、この世界のルールを決めるのよ!』

 

俺は静かに構えた。

ここには守るべき校舎も、街も、人もいない。あるのは俺とコイツだけ。

 

「ああ、そうだな。……来いよハルヒ。俺が勝ったら、罰として部室の掃除一ヶ月だ。それと、二度とこんな馬鹿げた真似はさせねえ!」

 

月面を舞台に、神と凡人の、最初で最後の決戦の火蓋が切って落とされた。

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