「キョン……ッ!!」
ハルヒの絶叫が、無慈悲に飛来するミサイルの轟音にかき消されようとしていた。
ボロボロになったカラミティ(キョン)は、片膝をつきながらも、迫りくる火力をその身で受け止めようと、折れかけた両腕を広げている。
ハルヒには、何もできなかった。
彼女は、自分がどれほど傲慢で、どれほど無知だったかを思い知らされていた。宇宙人や超能力者を求めていた。非日常を望んでいた。だが、いざ目の前で大好きな青年が怪物になり、死に晒されている今、彼女ができるのは、ただ膝をついて泣き叫ぶことだけだった。
「……お願い。誰でもいい、助けて。キョンを……キョンを助けてぇぇぇ!!」
その瞬間。
夕闇の空を切り裂いて、一筋の柔らかな青い光が舞い降りた。
キョンの背中に降り注ぐはずだった数束のミサイルが、着弾の直前、まるで水の中に溶け込むようにその勢いを失い、柔らかな青い粒子となって霧散した。
「……っ、え……?」
ハルヒが、涙に濡れた目を見開く。
校庭の土煙の中に、静かに着地したのは、禍々しい漆黒の巨人とは対照的な、流れるような曲線と神秘的な青い身体を持つ巨人。
「ウルトラマン……コスモス……」
春野ムサシが変身した、真の勇者――ウルトラマンコスモス(ルナモード)が、そこに立っていた。
コスモスは、背後でボロボロになり、今にもカオスヘッダーの闇に飲み込まれそうなカラミティを一瞥した。その瞳にはカオスウルトラマンへの憎しみなど微塵もなく、ただ、他者を守るために自らを犠牲にした「魂」への深い共感と、慈悲だけが宿っていた。
『……ハルヒ……!』
キョンの、ノイズにまみれた意識がコスモスを捉える。
(……何、しに来た……。……逃げろ、……俺はもう……ダメだ……)
コスモスは静かに首を振ると、校舎の上で震えるハルヒを優しく見つめ、それから自衛隊の包囲網に向かって、争いを止めるための掌を向けた。
「……光の、巨人……。今度は、……本物、なの……?」
ハルヒは、震える声で呟いた。
彼女には何の力もない。だが、あの青い巨人が放つ温かさが、キョンの中に巣食う「冷たい絶望」を少しずつ溶かしていくのを、肌で感じていた。
ムサシの心は、キョンの絶望と共鳴していた。
40年間の孤独。失った日常。そして、二度目の世界で自らを呪ってまで少女を救おうとする、狂おしいほどの自己犠牲。
『もういいんだ、少年。君の想いは、確かに彼女に届いている』
コスモスは、傷ついたカラミティの前に立ち、盾となった。
虹色の粒子が荒れ狂うカオスウルトラマン・カラミティ。そして、それを救おうと舞い降りた慈愛の勇者。
二体の巨人が並び立つ前で、自衛隊の部隊は、圧倒的な「聖域」のプレッシャーに射撃を停止せざるを得なかった。