涼宮ハルヒの混沌(カオス)   作:D-ken

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第二十一章:連帯する絶望、共犯の巨神

「……キョン、……あんた、……一人で何カッコつけてんのよ……っ」

 

降り注ぐ自衛隊の威嚇射撃と、足元で荒れ狂うカオス粒子の嵐。

その中心で、ハルヒは逃げるどころか、キョン(カラミティ)の折れ曲がった右腕から噴き出す、どす黒い虹色の泥に両手を突っ込んだ。

 

「……っ、あ、ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

ハルヒの絶叫が上がる。

ただの16歳の少女の神経には、カオスヘッダーが運ぶ「キョンの40年分の地獄」は、あまりにも過酷すぎる情報の奔流だった。彼女の脳細胞が焼き切れ、意識が混沌に塗りつぶされていく。

だが、彼女は手を離さない。

むしろ、その虹色の粒子を自分の身体に塗りたくるように、キョンの巨大な指先を強く抱きしめた。

 

「……あんたの……、……絶望も……、……人殺しの罪も……、……全部、半分よ……。……あんた一人が……『特別』な……死神になるなんて……、……私が、許さないんだから……っ!!」

 

『……ハ、ル……ヒ……? ……やめ……ろ……、来るな……っ!!』

 

キョンの意識が、カラミティの巨体の中で激しく動揺する。

だが、遅すぎた。

ハルヒの「自己犠牲を拒絶するエゴ」が、カオスヘッダーの演算システムをハッキングし、キョンの孤独な絶望と強制的に**『連結(リンク)』**させたのだ。

 

ドォォォォォォォォォォンッ!!!!!

 

その瞬間、校庭に巨大な光の柱が立ち昇った。

漆黒だったカラミティの身体が、内側から激しく発光し、再構成されていく。

キョンの持つ「冷徹な絶望」に、ハルヒの持つ「剥き出しの情念」が混ざり合い、化学反応を起こす。

 

それは、神への昇華ではない。

「二人で一人の怪獣」への堕天だった。

 

光の中から現れたのは、これまでのカラミティよりも一回り巨大化した、真の異形。

二人の叫びが重なり合い、西宮の空気を物理的に震わせる。

 

「「――ガァァァァァァァァァァッ!!!!!」」

 

合体変身したカオスウルトラマン・カラミティは、折れていた右腕を瞬時に再生させると、周囲を取り囲む自衛隊のヘリ部隊を、ただ一度の咆哮だけで全て墜落させた。

 

「……ハルヒ……、……お前、……何を……」

 

キョンの声が、巨人の内部でハルヒの声と混ざり合う。

二人の意識は今、完全に共有されていた。

キョンの見てきた40年間のシェルターの風景。二度の世界の崩壊。

その全ての痛みが、ハルヒの脳内を火薬のように爆発させている。

だが、ハルヒは笑っていた。

キョンの腕の中で泣きながら、狂おしいほどの喜びを感じていた。

 

「……あはは、……これね、……あんたがずっと、……隠してたのは……。……最高に、……最低な……景色じゃない……キョン……!」

 

「……ああ、……最低だ。……これで、お前も……もう『普通』には戻れない……」

 

二人の意志が、カラミティの操縦桿を同時に握る。

守るための盾でも、壊すための剣でもない。

ただ、自分たちを拒絶する世界に対し、二人で寄り添い、全てを焼き尽くすための『共犯の力』。

 

長門と古泉は、ただの高校生として、その圧倒的な終焉を地面から見上げることしかできなかった。

彼らの瞳には、かつての仲間だった二人の面影が、巨大な暴力の影に塗りつぶされていく様が映っていた。

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