涼宮ハルヒの混沌(カオス)   作:D-ken

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第二十三章:慈愛の捕食、拒絶の福音

西宮の空の下、静寂の青い光を放つウルトラマンコスモス(ルナモード)は、異形の巨神の前に立ち、静かに掌を向けた。

 

『……少年、少女……。もうやめるんだ。その悲しみは、君たちを焼き尽くすだけだ……!』

 

ムサシの必死の呼びかけが、カオスウルトラマンカラミティの精神世界に響く。

だが、その「正しさ」こそが、今の二人の逆鱗に触れた。

 

「「――うるさい」」

 

二人の声が重なり、衝撃波となってコスモスを襲う。

カラミティは、自らを守ろうとするコスモスの腕を強引に掴むと、その掌から溢れ出る浄化の光「フルムーンレクト」を、真っ黒な霧で包み込んだ。

 

「……コスモス、あんたに何がわかるのよ! キョンが一人で、暗い部屋で、どれだけ私の名前を呼んでたか……! あんた、それを見てたの!? 助けてくれたの!?」

 

ハルヒの激情が、巨人の右腕を通じてコスモスの肉体を浸食する。

キョンの記憶――シェルターの壁に刻まれた無数の傷跡、止まらないアラート音、そして冷たくなっていくハルヒの感触――それら全ての情報が、呪いとなってコスモスの脳内に直接流し込まれる。

 

『……ぐ、あ、あああああああぁぁぁぁっ!!』

 

慈愛の勇者が、激痛に膝をついた。

あまりにも濃密な、一人の人間が背負うには巨大すぎる「40年分の絶望」。それは、宇宙のウイルスであるカオスヘッダーですら制御しきれなかった、純粋な人間の業(ごう)だった。

 

「……誰も、……助けてくれなかった。……光なんて、……どこにもなかったんだ。……今更、……救いなんて……語るな!!」

 

キョンの意志が爆発し、カラミティの全身から漆黒の棘が噴き出す。

巨神はコスモスの胸ぐらをつかみ上げると、そのカラータイマーに直接、自分の指先を突き立てた。

 

「「――あんたの光、……私たちが……全部……飲み干してあげる……!!」」

 

カラミティの身体が、コスモスの青いエネルギーを吸い取り、さらに巨大に、さらに禍々しく変質していく。

ルナモードの「優しさ」は、二人の「執着」というフィルターを通ることで、「外敵を寄せ付けない絶対的な拒絶」へと書き換えられていく。

 

コスモスは、その輝きを奪われ、灰色の石像のような姿になって、地面に力なく転がった。

 

「……あは、……あはははは! 凄い、力が……力が溢れてくるわ! ねぇキョン、これなら……これなら、世界を丸ごと、私たちの部室に作り変えられるわね!」

 

「……ああ、……そうだな、ハルヒ。……誰も邪魔しない、……永遠の放課後だ」

 

巨神の足元では、長門と古泉が、その圧倒的な「絶望の輝き」に目を焼かれ、ただ地面に伏せていた。

彼らが信じていた「日常」は、今、本物の光を喰らった怪物によって、完全に終わろうとしていた。

 

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