教室の窓の外には途方もないくらいに砂漠が広がっていた。
砂漠の先には光るタワーがある。
あれが何を意味しているのか分からないけど、私は天使の輪をつけた私の隣でそれを見ることにした。
あれは何?
「ねえあれは何?」
聞いてみるけど反応しない、私の声は私には届かないみたい。
肩に触れると幽霊のように通り抜けてしまう。よく見れば私の身体はぼんやりと透けている。
そこで私はこれを夢なのだと気づいた。
窓から砂漠が見える校舎と天使の輪を浮かべる私が目の前にいる時点でおかしいと思うべきだったのに。
どういう世界観なんだと、過去の自分を振り返るが思い出せない。
教室内は見覚えがある。
去年まで通っていた有美土巣高等学校旧校舎によく似ている。
「もしかして去年の記憶?でもなんで私に動物の耳?それに砂漠が見えるけどここはどこ?鳥取?」
別に鳥取砂丘が見える学校を知ってるわけじゃない。なんとなく頭に思い浮かんだだけだ。
「おはようございますシロコ先輩」
「ん、おはようアヤネ」
扉から聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、後輩の彩音が赤い光輪だけでなく、エルフのような長い耳を生やして現れた。
私みたいに動物の耳がみんなに生えているわけじゃないみたいだ。
「シロコ先輩いつも早いですが何時に起きてるんですか?」
「そんなに早くないよ。5時に出てそのあと自転車でここまで対して距離もないし。それよりもノノミは?」
「もうすぐ来ると思いますよ。」と言ったところで扉についた窓から三人の影が見えた。
「おはようございます~」
「うへへ、おはよ~みんな~」
「ホシノ先輩ちゃんと目を開けてよ~。あ、おはようシロコ先輩、アヤネちゃん」
一気に教室は賑やかになり、それぞれの席に着き始めた。
そしてみんな、頭上に光輪を浮かべていた。
優しい性格の野々美っぽい黄緑色の光輪。
むくれやすい瀬里香らしいコンロみたいな形をした紅色の光輪。
可愛いけど鳥の瞳みたいにも見える桃色の光輪。
みんな形状が全く違う。
私と彩音も違った。
私達の光輪は映画でスナイパーが狙撃するときに覗く照準スコープみたいな形をしている。
ただ色よく見れば形状も色も少し違う。
彩音のは赤くてスコープにある縦横線(よく見ると円形)が二重円の内側にある。
私のは水色で縦横線が二重円の外側の円についている。
みんな私の体をすり抜けて、光輪が付いた私のほうを向いている。
「シロコちゃん今日は早いね~」
「ん、今日は先生がこっちに来るから」
「成程~。」
先生が学校に来るなって当たり前のことをなんで楽しそうにしているんだろうかと無表情ながらも若干浮かれている私を見てると、
彩音や瀬里香もどこかそわそわしているように見えた。
「1か月ぶりだもんね~」と星乃先輩。
「それじゃあ、駅までお迎えに行きますか?」と海外映画でしか見たことのないガトリング砲を背負いなおす野々美。
そこまでするほど?と思って聞こうとするけど私の声なんて聞こえるわけもなかった。
野々美の発言を皮切りに他のみんなも身支度をし始めた。
「あれ、ショットガンの弾なくなってきたね。」
「もう?…こっちも私とシロコ先輩のマガジンがないかも」と『銃弾置き場』と張り付けられた箱を2人は見ていた。
みんなのうれしそうな表情にはあまりにも似合わない、拳銃や手榴弾等と凶器が机やそれぞれのバッグにあった。
日本だっららみんな銃刀法違反で逮捕されてもおかしくないものをスマホや化粧品のように自然に持っていて脳が追い付かない。
「それじゃあ行こうか」
そう私が言うと、教室を施錠して学校を出た。
そこで私の視界は電気が消えるように真っ暗になり、再び目を見開いたときに移ったのは天井だった。
2026年5月11日(月)
AM7:55
有美土巣高等学校
生徒会室
大型連休が終わって一週間たった5月半ばの月曜日という憂鬱な雰囲気がところどころで感じる。
少し聞き耳立てるとクラスメイト達の後悔の声ややり直したい、夏休みのこと考えよう!と多種多様な声が聞こえてきたが
荷物を机の中に入れて、そんな雰囲気を拭い去る勢いで教室を出てすぐに生徒会室に向かった。
戸を開くと、いつものみんなが雑談を交わしている。
どんなに憂鬱な日でもここにくれば私は落ち着ける。
おはよう、と軽く挨拶をして席に着いた。
そして何を話そうかと一瞬だけ考えて、夢の話をすることにした。
「変な夢を見た。」
「変な夢?」
「みんなの頭に天使の光輪がついてる夢。」
生徒会室にいる4人は私のほうを見た。今日見た夢を少しだけ思い出す。」
「天使の輪ってそれ、私死んじゃってない白子ちゃ~ん?」とふにゃっとした眠たそうな声で言う生徒会長の小鳥遊星乃先輩。
「あと、彩音はアニメで見たエルフ耳で瀬里香は猫耳生やしてた」
「エルフですか?…えっと、エルフ」と少し戸惑った返答をする1年書記の奥空彩音。
「猫耳?どんな夢なのよそれ」
「あとみんな海外映画みたいに銃とか手榴弾もってたかな」
「ますますどんな夢よそれ!」
朝から元気なツッコミをいれる1年会計の黒見瀬里香。猫耳をみたせいかなんだか物足りなく感じる気がする。
「まあ、猫耳の瀬里香ちゃんって絶対可愛いですよそれ~。私や星乃先輩はどうでしたか?」とふんわりした優しい声で私と同級生で同じクラスで副生徒会長の十六夜野々美は聞いてきた。
「2人はなかった。」
「あら残念…。白子ちゃんはどんな感じだったんですか?」
「私は狼の耳。」
「あら~モフモフしててかわいいですよそれ!」
そういって抱きしめてくる。ちょっと苦しい。
ちなみに私は庶務担当。
「猫耳ってなんで?」
「分からない。だけど瀬里香って猫っぽいよね」
「それ答えになってないですから白子先輩。あと銃を持ってるとか私達生徒会がテロリストか指定暴力団みたいじゃない。どんな夢見たんです?」
「先生を迎えに行くの」
「白子ちゃん、端から聞いたら先生をこれから拉致しに行くイメージしかできないんだけど」
あくびをしながら星乃先輩は言うと、何かを思い出したように話を変えた。
「そういえば白子ちゃん野々美ちゃんのクラスに転校生来るみたいだけど誰が来るの?」
「そうなの?」
「そうですよ。男の子らしいですね」
「そうなんだ。」初めて知った。
「気にならないのですか?」と聞かれてもそんなに気にならなかった。
「別に。小学生じゃないし」
「白子ちゃん、大きくなったね~。去年までは私よりもちっちゃかったのに」
なんて言いながら星乃先輩は30㎝物差しをもってウソ泣きをしだした。
「そんなに小さくない」
そんないつも通りの時間が流れていく。
生徒会の役割をこなして、勉強して、生徒会のみんなと話をしたり、部活動に時々助っ人にでたり、そうやって今日が終わって明日がやってくる。
そんな時間が、学校で過ごす時間が私は大好きで、このまま続けばと思っている。
夢の中の私もそんなこと考えているのかなと思っていると時計の矢印はいつの間にかホームルーム10分前をさしている。
「あ、それじゃあ解散ってことで。午後食堂でね~」
星乃先輩の気だるそうな号令を合図にみんなそれぞれの教室に戻ろうと席を立つ。
「それじゃあ、先行くね野々美。」
一番に戸を開き、教室に向かおうとすると足元に誰かが倒れていた。
「な、なに・・?誰?」
制服からして男子だとは思うけど、まさか廊下で気絶しているとは思わず私は裏返った声を出して後ずさりしてしまった。
「どうしたの白子ちゃん」と一番扉から離れた場所にいた星乃先輩が飛んできたように私の隣に立った。
「・・・倒れてる?君、大丈夫?」
倒れてる男子生徒の肩をゆする。
「う、う・・・」
うめき声が聞こえる。意識はある。
119番に連絡しようと端末ボタンを操作しようとすると、間抜けな声が聞こえた
「おなか、すいた・・・・」
これがセンセイと私達の最初の出会いだった。