自称・未来人の幼馴染   作:千夏ケイ

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第10話 幼馴染でも恥ずかしいらしい

 午前の授業が終わり、昼休み。

 

 俺は部室棟横の非常階段に腰を下ろした。

 祐奈と話すため……ではなく、普通に昼食をとるためだ。

 

 隣には誰もいない、ボッチ飯の始まりである。

 

 このボッチ飯を回避するために祐奈と一緒に食べる、という手もあるにはあるが、そうするわけにはいかない。

 祐奈にはたくさん友達がいるし、彼女たちから毎日のように昼食に誘われている。

 わざわざそこに水を差すような真似はしたくない。

 

 じゃあ、タツはというと、ほかの友人と食堂へ行ってしまう。

 彼も友達が多い人間なのだ。

 

 2人以外友達と呼べる間柄の人間がいない俺に残された道はボッチ飯のみだった。

 

(うん、どれもおいしそう)

 

 悲しい事実から少し目を背けつつ弁当の蓋を開け、今日の昼食たちの対面する。

 プチトマトや卵焼きによって、弁当は非常に色鮮やかだ。

 食欲がどんどん湧いてくる。

 

(いただきます)

 

 どれから食べ始めるか悩んだが、俺が選んだのはそのプチトマト。

 赤くて瑞々しい、良いトマトだ。

 

(祐奈もこれくらい——)

 

 ふと、ここにいないはずの祐奈のことを想像してしまう。

 耳まで赤くして見つめあった彼女は、正直かわいかった。

 

(……本人がいないのに祐奈のこと考えるなんてな)

 

 最近、祐奈のことを考えてしまう時間がだんだんと増えているように感じる。

 勉強会など、祐奈と一緒にいる時間が増えたからだろうか。

 

(って、また考えちゃっているな)

 

 頭を振り、思考から祐奈を追い出す。

 そして、チュンチュン、と鳴く小鳥の合唱をBGMにご飯をかきこんだ。

 

 俺はこの場所が大好きだ。

 階段だから普通に座れるし、日当たりもちょうどいい。今のように小鳥のさえずりも聞ける。

 部室棟のトイレがあるので、お腹が痛い時への対策だって完璧。

 校舎から少し離れていることがネックだが……それはそれで人通りが少ないのでいい。

 なんてボッチ飯に最適な場所なのだろうか。

 

 だが、誰かとここで出くわしたことは一度もない。

 ここは俺しか使っていない場所のようだ。

 

 もしかすると、この学校でボッチ飯しているのって俺だけだったり……

 

 いや、変なことを考えるのはやめておこう。

 きっとほかのボッチたちも各々好きなスポットがあるのだろう。

 うん、そうに違いない。そうであってくれ。

 

(ごちそうさまでした)

 

 そんなことを考えながら食べているうちに、お弁当を食べきってしまった。

 さすがボッチ飯。余計なことを考えながらとはいえ、食べるスピードは誰かと一緒のときより段違いに速い。

 

 スマホを取り出して時間を見ると、午後の授業まではかなり時間がある。

 祐奈はまだ食べているだろうし、教室に戻ってもやることはない。

 

 それに、4時間目の体育は水泳の授業だったこともあり、少し疲労感がある。

 まだまだ続く小鳥の合唱もそこに合わさり、少し眠くなってきた。

 

 ……昼寝でもするか。昼寝はいい効果があるって聞いたことあるしな。

 ただ、寝過ごすのは怖いので、アラームだけはつけておこう。

 

 階段の踊り場に寝転がり、目をつむる。

 

 しかし、やっぱりここはいい場所だな。

 誰も来ないから安心して眠れる。

 

 今度、祐奈を誘ってみるのも悪くないかもしれん。

 金属製の階段は固いけど、きっと気に入ってくれるはずだ。

 

 そうして俺はまた隣にいない幼馴染のことを考えつつ、意識を手放していった。

 

 ◇

 

 何か夢を見た、という訳でもなく、普通に目が覚めた。

 

 手に持っていたスマホのアラームもまだ鳴っていない。

 アラームが鳴るまで、まだ寝られると思い、もう一度眠ろうとして……気付いた。

 

 誰かがいる。それも背後に。

 

 今まで誰も来なかったこの非常階段。

 どうして今この爆睡しているタイミングで人が来てしまったのだろうか。

 あまりにも恥ずかしすぎる。

 

 再び目をつむって寝たふりをするも、隣にいる気配は動く様子はない。

 

(なんでずっといるんだよ! 頼むからどこかへ行ってくれ!)

 

 心の中で強く願うも、それが届くことはなかった。

 

 これはもう無理か。

 

 諦めた俺は寝返りを打ち、恐る恐る目を開ける。

 

 するとそこには——

 

「白……」

「っつ!! 起きたのならちゃんと言ってよ!」

 

 綺麗な脚と隠されておくべき白い布地……だけでなく、真っ赤になってスカートを握りしめる幼馴染の姿があった。

 

「下着見られたぐらいでそこまで恥ずかしがることはないだろ。俺だぞ?」

「いくらひろくんでも、恥ずかしいのは恥ずかしいの!」

「2人でお風呂に入ったこともあるのに?」

「お風呂って……それ小さい時の話でしょ!? 今とは違うじゃん!」

 

 ……まぁ、そうか。

 

「とにかく! なにか言うことは?」

「えっと……素敵な目覚めをありがとう」

 

 ただでさえ赤かった祐奈の顔がさらに赤くなる。

 恥ずかしさと怒りで限界突破しているようだ。

 

「もう、知らない!」

 

 祐奈が俺の上体を起こす。

 

(あ、これはビンタの流れか……?)

 

 女の子からのビンタ。

 それは様々な作品で描かれてきたラッキースケベには欠かせない要素だ。

 

 まさか俺がそんな物語の主人公みたいな目に合うなんて思いもしなかった。

 でも、見てしまった分はしっかりと受け止めよう。

 罪を犯したのであれば、その分罰はしっかりと受けるべきなのだから。

 

「ひろくんにはこうしてやるんだから!」

 

 ——ギュッ!

 

 そう覚悟した俺に飛んできたのは、ビンタではなく祐奈のハグであった。

 あまりにも予想外の出来事に逃げようとするが、祐奈の手はしっかりと背中まで回されている。

 そうしているうちに甘い香りが脳を直接刺激し、力が出なくなってしまった。

 

 ……どうしてこうなった?

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